たぶん3倍はピント合わせが楽になる
アマチュアカメラマンは5%しか使ってないけど、プロは95%くらい使っているというくらい、便利なテクニックです。しかもぜんぜん難しくない。(*当社比)
「親指AF」(おやゆびえーえふ)という方法、ある程度写真を続けている中級者以上の方ならご存知の方も多いかもしれませんが、写真を始めたばかりの初心者の方なら聞いたことすら無い人が大半かと思います。
というのも世の中のほぼ全てのカメラは買った時点では「親指AF」は出来ないから。メニューの中から自分で設定しないといけないのです。今回はそんな「親指AF」の設定の仕方から実際の使い方までご紹介します!ミラーレスや一眼レフを使っている人はぜひお試しあれ。
通常、カメラのピント合わせはシャッターボタンを半押ししてAF(オートフォーカス)を作動させるのですが、親指AFとはピント半押しではなく、グリップを握ったときの親指(背面)側のボタンでAFを作動させる撮り方です。
「ピントは親指、シャッターは人差し指」と役割分担をすることで驚くほどピント合わせが簡単になるんです。子供とかペットとか乗り物とか、ピント合わせが難しい被写体を撮るときの強い味方ですよ!
*しっかりした統計を取ったわけでなくて、ざっくりとした私の肌感覚です。プロの場合は当然ながらいつでも親指AFを使ってるわけではなく、MFに切り替えたり、AFストップなど他の機能を割り当てたり、撮るものやシーンに応じて切り替えて使ってる人が多いと思います。
こんなシーンに有効です!
なんだか難しそうな響きがするテクニックですが、ちょっと使えばすぐ慣れると思います。そして、その労力以上のメリットがあるのが親指AF。基本的にはAF(オートフォーカス)を使う全てのシーンでシャッター半押しAFを上回るメリットがあるはず。
具体的な使い方は後半に説明しますが、特に有効なのはこんなシーンです。
動きが速い被写体
「ピントは親指、シャッターは人差し指」と役割を分担して撮影するため、AIサーボやAF-Cなどピント追従系の設定との相性が抜群です。
フォーカスロックして撮影する場合
ピントを決めた後に半押しのまま構図を決めるフォーカスロックも不要になります。AFボタンが独立しているので半押しせずともフォーカスロックできます。というかロックという概念自体がなくなります
置きピンするとき
シャッター半押ししなくて良くなるので、置きピンするのも楽チンです。電車や車など乗り物系写真を撮る人におすすめ。
三脚を使うとき
シャッター半押しでAFが作動してしまうと不都合な三脚撮影のときでも、親指AFならMFに変更しなくても意図しないAF動作を防ぐことが出来ます。
親指AFの仕組み
親指AFの仕組みを知る前に、まずは普通のピント合わせ(AF)の仕組みをおさらいしておきましょう。
通常のピント合わせの仕組み
通常のピント合わせの動作はシャッターボタンを半押しすることでスタートします。この際、カメラがレンズから入ってくる光を明るいのか、暗いのかを判断する「測光」も同時に行われていることを理解しておきましょう。
通常はシャッターボタンを半押しすると測光が始まり、それとほぼ同時に「AF」がスタートし、ピピッっとピントが合ったらそこでシャッターを押し込んで撮影をすることになります。
で、同じ被写体でそのまま2枚目を切ろうとすると、また「測光」⇒「AF」から始まるわけです。おんなじ被写体が相手なのにまた同じ事をするのは二度手間で面倒ですよね。。
親指AFの仕組み
一方で、今日のテーマの「親指AF」ではシャッターボタンは測光と「シャッター」を切るためだけにしか使いません。
そして、AF(ピント合わせ)はカメラの背面にある他のボタンに割り当てるようにします。AFを割り当てた背面ボタンは通常親指で押すことになるので「親指AF」という通称がついているのです。
中上位機種には親指AF専用の「AF-ON」ボタンが付いていますし、入門機でもAEボタン(*マーク)とか、ムービーONボタン、FnボタンなんかをAF用に割り当てられる機種も多いです。
「シャッター」と「AF」の役割を分離することで、自由度の高いピントあわせを可能にするのが親指AFの利点です。
具体的に便利な場面は後で説明しますが、例えば、上で書いた同じ被写体を2枚連続手撮影する場合、特にフォーカスロックをしていると、半押しでAF ⇒ 半押ししたまま構図を整える ⇒ シャッターを押し込む という動作を2回しなければなりません。。
半押しでAF ⇒ 半押ししたまま構図を整える ⇒ シャッターを押し込む(1枚目) ⇒ カメラの位置を元に戻す ⇒ 半押しでAF ⇒ 半押ししたまま構図を整える ⇒ シャッターを押し込む(2枚目) / 計7手順
一方、親指AFなら、親指AF ⇒ 構図を整える ⇒ シャッターを押し込む(1回目) ⇒ シャッターを押し込む(2回目)とかなり少ない手数で撮影することが可能です。半押しをしなくていいので、微妙な力加減で指がプルプルすることもありません^^
親指AF ⇒ 構図を整える ⇒ シャッターを押し込む(1枚目) ⇒ シャッターを押し込む(2枚目) / 計4手順
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いままで7手かかっていた撮影を4手で行えるというのはすごく便利です。同じ被写体を3枚撮るなら、11手かかっていたのが5手で済みますね!
次はそんな便利な親指AFの設定の仕方についてご紹介していきます。
親指AFの設定方法
設定自体はとても簡単です。メニューの中のボタン割り当て設定を変更するだけ。ただし、設定方法はメーカーによって微妙に違ったり、一部の入門機種やミラーレス機では設定自体が出来ないことがあるかもしれません。。
ここからはキヤノンの一眼レフの画面を使って説明していきますが、他メーカーのミラーレスでも問題なく使えますよ!最近の機種だと私はキヤノンEOS R、EOS R5、ソニーα7R IV、α9、α6400などで親指AF使ってます。
他のメーカーの方でもマニュアルを見ながら、ボタンのカスタマイズやシャッター半押しの挙動とかの項目見てみると良いかと思います。
メニューからボタンのカスタマイズをする
キヤノンの場合はメニューのカスタムファンクション(C.Fn)の中に項目があるはずです。EOS 5D MkIIIならC.Fn2の中の「操作ボタンカスタマイズ」がそれです。
で、この中を見てみるとカメラの絵があって、それに対応するボタンを細かく設定できるようになっています。
ここでシャッター半押し時のAF動作をOFFにします。最初は”測光・AF開始”になっていると思いますが、AFはいらないので”測光”のみに切り替え。これでOKです。
念のためその下のAF-ONボタンを見てみましょう。AF-ONボタンが付いているカメラは初期設定で測光・AF開始になっているのでそのままでOK。
ちなみに5D MkIIはちょっと古いので絵は出てこないで文字だけで表示されます。
シャッターは測光のみ / AF-ONボタンは測光・AF開始 と上で設定したのと同じにすればOKです。
AF-ONボタンが無い場合。。
たとえばキヤノンの入門機KissシリーズにはAF-ONボタンがありませんが、AEロックボタン(*マーク)ならあります。AEロックは普段あまり使わないかな?と思いますので、このAEロック(*)にAF-ONボタンを割り当てて使うことが可能です。例えばソニーのα6400はAF-ONボタンがありませんが割当て可能です。
その際はシャッターの半押し設定を”測光・AF開始”から"測光"に切り替えておくこと。
他のメーカーでもニコンだったらAE-Lボタンとか、オリンパスのミラーレス機ならムービーの録画開始ボタンにAF-ONを割り当てて使うことも出来るようです。説明書をよく読んでみましょう。
具体的な使用方法と有効なシーン
はい、設定が出来たらちゃんと動くか確認してみましょう。一眼レフタイプ場合はこんな感じで持ちます。
AF-ONボタン(機種によってはAE-Lや*ボタン)でピントを合わせ、シャッターボタンはシャッターを切るだけに使います。
当然始めは慣れずに戸惑うと思いますが、半日くらいスナップしていたらすぐ慣れると思いますし、コレに慣れてしまったら快適すぎて後戻りできません(笑)
追従AFと組み合わせる
親指AFはAF-CやAI サーボといったAF追従モードの設定との相性が抜群です。普段なら指をプルプルさせながらシャッター半押しでピントを合わせ続けるところを、親指AFなら、AF-ONボタンを親指でグッと押している間はずっとカメラがピントを追い続けてくれます。うっかりシャッターを押し込んでしまった。。ということがありません。
AF測距点を被写体に合わせて、AF-ONボタンを押し続けながら人差し指で好きなだけシャッターを切るだけ。半押しの微妙なチカラ加減は必要なくなります。
特に予測困難な動きをする子供撮影やスポーツ撮影の場合に非常に有効です。
親指でボタンを押し続けながらピントを追い、ここぞというタイミングで好きなだけシャッターを切れますね。さらに連射モードも組み合わせ、「親指AF+AI SERVO(AF-C)+連射」とすることでまさにスナイパーのように被写体を狙い打つことが可能になります。
フォーカスロックは不要になる
普段のスナップでも半押しでピントをロックして撮影しているなら、親指AFでそれが不要になります。
真ん中の測距点でピントを合わせて、AF-ONボタンを離せば自動的にロックされる(再びボタンを押さない限りAFは作動しない)からです。親指でピントを決めたら後は構図や被写体に集中して好きなだけシャッターを切れば良いのです。
また、ピント半押しの時はAF-CやAI SERVOなど追従系のAFモードの場合、測距点を決めたあとに半押ししながらカメラを動かすと、ピントがズレて背景に抜けたりしますよね。しかし、親指AFなら半押しでAFが作動しないので、どんなAFモードにしていても大丈夫です。
置きピンも楽チン
電車の撮影なんかでは、あらかじめ線路の狙った場所にピントを合わせておき、電車が来たタイミングでシャッターを押す、置きピンというテクニックが良く使われます。
普通なら電車が来るまでピントを半押ししながら待たないといけない所を、親指AFならシャッターを押した時にAFが作動しないため、一度ピントを決めたらあとはそのまま電車が来るのを待つだけ。 もうプルプルしながら電車を待つ必要はなくなります(笑)
流し撮りをする際にも有効ですね。
三脚撮影の時もMFに切り替えなくてOK
三脚を使って静物や風景を撮る時はMF(マニュアルフォーカス)でピントを狙った場所に正確に合わせる事が多いでしょう。キヤノンのレンズなんかはAFのままMFも使えて便利なのですが、AFのままだとせっかく狙った場所にピントを合わせたのに、シャッターを押した瞬間 AFが作動してピントがズレることがあるのですね。
親指AFならシャッターを押してもAFは作動しないので、AFモードに設定したままレンズのフォーカスリングを回してピントを合わせ、そのままシャッターを押すことが可能です。AFボタンを押さない限り、意図せずピントがずれることはありません。
*フルタイムMF機能やS-AF+MFモードなど、AFが効く状態でもMFでピントを調整できる場合に限ります。
親指AFのデメリットは?
慣れるのに半日~1日かかることを除いて、実用上のデメリットを感じたことはありません。メリットしか存在しないのではないかと思ってます。
唯一、親指AFで困る場面はカメラを他人に貸したときくらい?普通の人は親指AFなんて存在を知らないので、たぶんピントが合わなくて超困るはずです^^;
メリットしかないんじゃない?というのはあくまで私の主観なわけですが、いろいろ反響を見ていて確かになぁと思ったのは、縦位置シャッターボタン下の時の安定性がやや低下すること。この時は上の手になる左手でややしっかりめに持ち、右手に掛かる重量を分散してあげるといいですね(完全に左手で持っても安定性は悪くなります)。
あと、AF-ONボタンを別ボタンに割り当てるカメラの場合はボタン位置や手の大きさによって片手で撮るときの安定性がやや低下する場合がありますね
ただ、カメラを他人に渡して写真を撮ってもらう場合は親指AFの方が安全な場合が多いです。カメラを普段使わない人はピントを狙った場所に合わせるという意識が殆ど無い(スマホの場合は意識しなくてもほぼ全域にピントが合う)ため、観光地でそのままカメラを渡して撮ってもらうとピントが後ろに抜けた残念写真になってしまう場合があります。。
そんな時は、一時的に親指AFをオフにして渡すか、F値をF5.6~8くらいと少し大きめに設定しておき、あらかじめ撮って欲しい場所でピントを合わせてから、「ココからこれ(ファインダー)覗いて、シャッターボタンだけ押していただければOKです」とカメラを渡します。シャッターを押してもAFが作動することはないので、ピントがずれる可能性が非常に少なくなりますね^^
まとめ:便利なので一度は試してみて!
ということで便利な親指AFについてまとめてみました。
一眼レフ時代はホントに便利だった技ですが、最近のミラーレスカメラはAF関連の進歩がめざましく顔認識など便利機能も多いのであまり必要無いかも?と思う人もいるかも知れませんがまずは一度試してみるのをおすすめします。
私はミラーレスに完全移行してしまった後でも親指AFは止められずいまだにメインで使ってます。一方、小型の散歩用ミラーレスでは無理やり他のボタンに割り当てるというのももったいないのでシャッター半押しを使っている感じ。
カメラや撮り方に向き、不向きはあると思いますがこんなに便利な親指AF、使わない手はありません。ぜひ活用してみてはいかがでしょう?