可憐で幻想的なハスの花を撮ろう
蓮(ハス)は7〜8月にかけて咲く夏の花で、インド原産の多年生水生植物。
地下茎から茎を伸ばして水面で葉を出し、鮮やかなピンクや白色の花を咲かせます。 花の命は短く、3〜4日ほどで散ってしまいます。花が咲くのは早朝で、7時〜9時頃に満開となり、午後には閉じていきます。
蓮の名前の由来は、花の中心部にできる花托(かたく)の形が蜂の巣に似ていることから「はちす」→「はす」と呼ばれるようになったようです。
仏教とも関わりの深い花として知られ「蓮は泥よりいでて泥に染まらず」という言葉があり、泥の中に生まれても汚れなく清らかに咲くことから「清浄無比の花」とされていて、仏像の台座にも蓮が描かれています。そう聞くと幻想的な美しさを感じますね。
時期になれば各地の池で見ることのできるハスですが、しっかりポイントを押えるととってもステキな写真にすることができるのです。今回はそんなハスの撮り方について必要な機材や基本の撮り方、ステップアップするためのテクニックについてまとめてみました。
ハスの撮影に必要な機材とは
望遠レンズを用意しよう
基本的に蓮の花は池に咲いているので、花に近づくことが出来ない場合がほとんど。
標準ズームレンズに加えて望遠ズームレンズなど、できるだけ焦点距離が長いレンズがオススメです。撮影バリエーションを増やしたい方は広角レンズも。お持ちの方はマクロレンズもあると良いですね。
望遠レンズは35mm換算で300mm以上あるズームだと様々なバリエーションを作りやすいでしょう。(APS-Cのカメラなら200mm、マイクロフォーサーズなら150mm以上)
キットの望遠レンズでも大丈夫ですよ!
70-300mmくらいのズームレンズは使い勝手が良くコスパもよいですね。
Canon 望遠ズームレンズ EFレンズ EF70-300mm F4-5.6 IS II USMフルサイズ対応 EF70-300IS2U
長靴や暑さ対策グッズもあると便利
蓮池は足元が悪い場合があるので場所によっては長靴があると安心です。また、蓮は雨も似合う花なので雨の日の撮影にも重宝します。
季節がら炎天下での撮影になってしまうこともあります。午前中の撮影とは言え、帽子やタオル、水分もしっかり用意し熱中症にならないよう注意して撮影しましょう。
ハス撮影の基本
どんなカメラで撮るにしても最低限押えておきたい蓮撮影の基本についてまとめてみます。
早朝に出かけよう
蓮は朝咲いて、午後には閉じてしまうものが多い花です。
ですから蓮を撮影するなら早朝に出発し、満開となる7時〜9時頃にしっかり撮影できるスケジュールを考えておきましょう。蓮の咲く時期は暑いですが、早く出かければ涼しい午前中に撮影を終えることができますよ。
キレイな花を厳選する
蓮池に到着すると「わー綺麗!」と、ついパシャパシャとすぐに撮りがちですが、まずは慌てずに蓮の花をじっくりと観察しましょう。最も綺麗と思う蓮を見つけて、より魅力的に見える角度や構図を考えていきます。
どのようなイメージで撮りたいのか?それぞれだと思いますが、まずはよーく観察しましょう。
蓮池を見渡してみると元気な花とそうでない花を見つけることが出来ると思います。
花が遠かったりロケーション的に元気な花が撮影できない場合もあると思いますが、できるだけ形が美しい花を見つけてみましょう。
カメラの基本設定
ハスを撮影する時のカメラ側の設定はとくに難しい事はありません。お花の撮影ですので背景がボケていた方がふんわり柔らかなイメージにすることができます。
絞り優先(Av, A)モードにセットして、F値を一番小さな値にすればOK。日中の撮影ですのでISO感度もオートのままで大丈夫かと思います。
望遠レンズでボケを大きくするコツは、
・できるだけ蓮に近づく(あまり近づきすぎるとピントが合わなくなるので良い塩梅で!)
・できるだけ望遠側で撮る。
です。試してみてくださいね。
迷ったらこの構図で撮ろう!
蓮池では同じような高さで葉と花が混在するので、いかに画面を整理できるかがポイントになります。迷った時はまず王道の三分割構図を使ってみましょう。 横位置だけでなく縦位置も!
蓮の花に限らずですが、背景にも気を配りましょう。
↑の写真は背景がごちゃごちゃせずに、蕾が入るような場所を探して撮影しました。「どうしたら主役が引き立つか?」を考えながら撮影位置を探りましょう。
対角線構図もおすすめです。
構図についてはこちらの記事も参考に!
撮影を工夫してより良いハスの写真に仕上げる
もう少し周りと差を付けたいという人は次に紹介するテクニックを使ってみるのも良いでしょう。ただシャッターを切るよりずっと良い仕上がりになるはずです!
露出補正で爽やかさを出す
普段より少し露出をプラスにして明るめに撮ると花の色が綺麗に出やすくなります。 蓮は夏の朝に咲く花なので、思い切って+1〜+2ほどプラス補正すると朝らしく爽やかな印象になりますよ。
印象が大きく変わりますよね。
現場で露出補正しても良いですし、現像時に補正してももちろんOKです。
寄りと引きでバリエーションを作る
蓮は寄りで撮っても、引きで撮ってもどちらも美しい絵になる花です。
グッと寄って蓮の細部を表現する
蓮の花びらには端正で繊細な美しさがあります。
マクロレンズを使って花びらを大きく撮ってみましょう。マクロレンズをお持ちでない場合はズームレンズを望遠側にして、できるだけ花に近づいて撮ってもOKです。
風がある日は花が大きく揺れやすいので、特に望遠側で撮影する際は被写体ブレが起こらないようにシャッタースピードに注意しましょう。
目安として、シャッタースピードはフルサイズ換算で1/焦点距離以上あると安心です。例えば、焦点距離が200mmのレンズで撮影するときは、フルサイズなら1/200以上、APS-Cなら焦点距離✕1.5(キヤノンは✕1.6)=1/300→1/320以上、マイクロフォーサーズなら焦点距離✕2=1/400以上ですね。
これはあくまで目安なので、撮影後にブレが無いか確認して必要に応じてシャッタースピードを調整しましょう。
とはいえ、この時期の午前中は光が十分に降り注ぐことが多いので、絞り優先(Av, A)モードにセットして、F値を一番小さな値にしておけば上記のシャッタースピードより遅くなることはほとんど無いと思います。
もし、曇り空や日陰など暗くなり被写体ブレが起こるようなら、シャッタースピード優先モード(Tv,S)モードにセットして、シャッタースピードを早めに調整すればOKです。
マクロ撮影はこちらの記事も参考に!
引きで臨場感を表現
次は引きでも撮ってみましょう。
レンズの広角側を使って背景に他の蓮や空などの要素を入れることで、臨場感がある写真にすることができます。
広角でただ撮影すると写真が散漫になりがちなので、構図やポジション、アングルも意識しましょう。(ポジション、アングルについては後述します)
足下にも着目してみよう
蓮の花は最後の日になると閉じること無くパラパラと落ちていきます。
そんな花びらを探してみるのも良いでしょう。
ポジション・アングルを変えて撮る
花を撮影するときは目線を花の高さに合わせて撮ることが多いと思いますが、あえてアングルを変えて撮ると新鮮な表現ができます。特に蓮の花は水面から高いところに咲くので、上手くアングルを使い分けることで表現の幅が広がります。
アングルって何?という方はこの記事も参考に!
地面からローアングルで透け感を出す
花に近づくことができる場所があれば、地面(水面)から見上げるアングルでも撮ってみましょう。レンズの広角側を使うと奥行きが強調されて蓮の葉が空に向かってグングンと伸びている印象の一枚になります。
逆光になることが多いので、露出補正でプラスにして明るめに撮ると、葉が透けて見え、爽やかで透明感がある表現ができます。
場所によっては高い位置から見下ろす様にハイアングルで撮影するのも意外性が出てきます。
生き物との共演を楽しむ
ハスの大きな花は昆虫たちにとって美味しい蜜や花粉にありつける楽園。花と一緒に生き物たちにも注目してみましょう。
まとめ
いよいよ夏も本番。
うだるような暑い日は外出するのが億劫になりがち…ですが、蓮の花の撮影は7時〜9時頃がベストタイム。涼しい朝の時間帯に蓮の花を撮りに出かけてみてはいかがでしょうか。 撮影に夢中になって池に落ちないように足元には注意してくださいね!
今回お伝えした中で、特に「寄りと引きで撮る」「ポジション、アングルを変えて撮る」は花に限らずどのような被写体にも応用できるポイントです。
撮ることに慣れてくると、普段の目線で撮ってしまいがち。
寄り・引き・ポジション・アングルを駆使すると、見慣れたものも新鮮に見えるはずです。マンネリからも脱却できますよ!