写真をやっていると自分はセンスが無いからなぁ。。と悩んでいる人もいるかも知れません。また、最近なんだか同じような写真しか撮れないんだよなぁとマンネリやスランプを感じている人もいるでしょう。
でも、実は多くの場合写真のセンスは技術や工夫で補えるんです。スランプやマンネリもしかり(レベルにもよりますが。。)。
私もいきなり紙とペンを渡されて絵を描きなさいと言われたらとんでもない絵を描く自身があります(笑)たぶん絵を描く能力は小学校から進化していません^^;
そこで今回はそんなちょっとお悩みモードに入ってしまった写真好きの方に今日からスグに使える撮影のヒントを5つほど紹介してみます。
レベル的には写真を初めて最初かその次の壁を感じている人向けの内容かと思います。
1.ホワイトバランスは自分で決める
一つ目は構図とか難しい話は抜きにしてカメラの設定をするだけでどうにかなってしまう写真の色の話。
写真の色は「ホワイトバランス」という項目で変えることができます。「WB」というボタンや、メニューの中にホワイトバランスの項目があるはず。
カメラを買ってそのままの人はここがオートになっています。オートホワイトバランス(AWB)の良いところは何も考えなくてもカメラが自動的に見た目に近い色にして撮ってくれる事。最近のカメラは優秀なのでオートホワイトバランスにしておけばみんな見た目に(ほぼ)忠実な色で撮ってくれるんですね。
でもこれ、逆に考えればオートに設定しているということは、どんなカメラでも同じような色になってしまうということ。。
*もちろんメーカーや機種ごとに色味は微妙に異なりますが。。
つまり、あなたの撮った写真はみんなと同じような写真(の色)になってしまいがちです。
色は写真に与える影響が大きいので、ここを変えるだけでも写真の印象はずっと違ったものになるはずです。
日中屋外で撮影する場合、ホワイトバランスは「太陽光」がだいたい見た目通りの色になります。そこから暖色系にしたければ「くもり」、寒色系にしたければ「(白色)蛍光灯」を使ってみると良いでしょう。最低限、この3つだけでも覚えておけば様々な場面で応用が利くはずです。
例えばこの2枚。朝焼けを撮影したのですが曇りとホワイトバランスの2パターンで同じ写真を見てみましょう。こんなに印象が違うんです。
ホワイトバランス:くもり
夕焼けのように真っ赤に空が色づいて力強さが出ています。一方、同じ景色を(白色)蛍光灯でとってみるとどうでしょうか。
ホワイトバランス:(白色)蛍光灯
今度は全体的に寒色よりになり、朝焼けの印象は弱まりましたがスッキリとより朝らしい色味になりました。
屋外だから蛍光灯モードを使ってはいけないというワケではありませんよ。
記録写真や商品撮影を除いて、写真は見た目に忠実な色で撮影する必要はありません。その日の気分やお天気、季節感などに応じて自分が一番しっくりくる色を探して撮ってみると良いでしょう。
ホワイトバランスの詳細は下記の過去記事が詳しいです。
2.構図はレイヤーを意識する
構図も撮影者を悩ませる原因の一つですが、これもいくつかの基本の型を覚えるだけでかなり良くなります。
まずはこの記事で構図の基本形(三分割構図、対角構図、日の丸構図)を覚えてみましょう。
詳しくは上記記事を見ていただきたいですが、一番の基本は万能な三分割構図。
画面の中に”ナナメ”を作る対角構図も人目を惹きやすいオススメ構図です。
これらの基本の型を覚えたのに上手くならない。。
三分割構図や対角構図など基本の型を覚えてなんとなく当てはめることが出来るようになったのになんだかしっくりこない。。という場合もあります。
そんなときは次のステップとして目の前の景色をレイヤー(層)化して奥行きを意識しながら考えてみると良いでしょう。壁とか撮らない限り実際の被写体は奥行きのある三次元空間だからです。
レイヤー(層)を意識してみる
基本の型を覚えているのに上手く構図を作れない。。という人の多くは目の前の景色を"平面"として捉えている人が多いように感じます。平面として考えてしまうと、その人は構図を作る為にレンズのズームリングをグリグリ回したり、カメラを向ける方向を変える事しかできなくなります。。
でも実際には景色というのは奥行きのある三次元空間。まずは目の前の景色を遠景と近景2つくらいのレイヤー(層)として考えてみます。するとどうでしょう、奥行き方向に並んだ二つのレイヤーの関係が意識できるようになるはず!
遠景と近景、それぞれ別に三分割構図を適用してみたり、手前は三分割、奥は対角構図みたいな考え方もできて構図のバリエーションが増やせます。
例えばこの2つのあじさいの写真。同じ場所で撮りましたがどちらが安心して見られるでしょう?
恐らく多くの人は「下の写真」の方が安心して見ることが出来るはずです。
主役であるあじさいはどちらも三分割構図の左下交点のあたりにあります。いったい何が違うのでしょうか。。
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2つの写真の大きな違いは「背景」です。背景に見える白いアーチの位置が違いますよね。上の写真はアーチの位置が中心に近いところにあり、右側1/3の領域が死んでいます。一方、下の写真はアーチの位置が三分割構図(四分割気味)の右上交点くらいにあり、背景のバランスも保っています。
さらに、背景の地面と緑の境界線も良く見ると1/3のラインに乗っていますよね。
前景のレイヤーと背景のレイヤーの2層をそれぞれ意識しながら構図を整えてみました。
レイヤーを意識できると横移動が出来るようになる
このように奥行き方向に並んだ2つの被写体のバランスを調整するなら自分が横(縦)に移動すれば良いことも分かります。ズームリングやカメラをこねくり回してもこの2つのレイヤーのバランスは調整できません。
このあたり、普段よく考えずに三脚を使ってしまう人が陥りやすいポイントです。
慣れてきたら、遠景、中景、近景と3層で考えたり、4層、5層と増やして考えられるようになるとさらに構図が上達するはず!
3.F値は2つ使い分ける
多くの人はカメラを初めてしばらくすると絞り優先モード(Av, A)を使い始めるはずです。殆どの入門書にもそう書いていますし私もオススメしています。
絞り優先モードの特徴はF値(えふち)を変えて撮影ができることで、F値が小さければ良くボケる、大きければボケにくいと言う説明が一般的(F値のことを絞り値と言うこともあります)。でも、具体的にどんなF値を使ったらいいのかということは誰も教えてくれません。。(人によって撮るものは様々なので当然なのですが)
数字は重要じゃない。だいたい2通りのF値を使ってみる
また、一見規則性が無いような F = 3.5とか、5.6、9、22とか数字嫌いの人には拷問のような値が出てくることも理解を妨げる要因だったりします。。
もちろん、F値は被写体に応じて様々な値を使い分けることができればベストですが、初めはそこまで難しく考えなくてもOK。まずはざっくり2種類のF値を使い分けられればOKです。
1つ目は、設定できる一番小さなF値を使うこと。専門用語でこの事を「絞り開放」といいますね。ここは結構多くの人が知っていて使っていると思います。
F値を小さくした状態で撮影すると先ほど説明したとおり、フワッとボカした表現をすることができるので、スマホやコンデジでは得られない一眼レフやミラーレスならではの写真を撮ることができます。とりあえず、フワッとした写真を撮りたければF値は一番小さくしておく。最初はこれだけ思えておけば(とりあえず)大丈夫です。
また、F値を小さくするとカメラの中に光が入って来やすくなるのでシャッタースピードを早くすることができ、手ぶれも防ぎやすいです。
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ただ、これだけだといつまで経ってもフワッとした写真しか撮れなくなってしまうのでいつしか「同じような写真ばっかり。。」とマンネリしてくるかもしれません。
大きめのF値で狙って撮ってみる
そこでオススメしたいのが大きめのF値を使うこと。
これが2つめのF値となります。大きめといってもF値にはなんだかよく分からない数字がズラズラと出てくるのでどの値に設定して良いか迷ってしまいます。初めは”だいたいF=10くらい”と覚えておきましょう。だいたいでOKなのでF=8でもF=11でも大丈夫です。
2つのおすすめポイント
このF=10くらいがオススメというのは2つの理由があって、1つはF値が大きいためピントが合う範囲が大きくなりビシッとピントが合ったクリアな写真を撮ることができること。特に風景などちょっと遠くのものを撮るときに有効です。
*F値を大きくしてもカメラから数十センチの範囲は少しボケることが多いです。
同じ花壇の花でもF値を上げるとフワフワ感が薄まってカッコいい感じになりました。(↓F8で撮影)
もう一つの理由は、一般的に入門用のレンズの解像力が最も高くなるのがこのF=8〜11くらいの間であるから。ピントが合った部分の画像の鮮明さは実はF値によって微妙に変わっていて、だいたいF=10くらいがレンズの一番オイシイ値なんです。
遠景を撮る時はF値を小さくしてもほとんどボケないので、解像力的に一番オイシイF10ぐらいで撮ってみましょう。空、海、山あたりは大きめのF値で。
(↓F9で撮りました)
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ということで、”一番小さなF値” と ”だいたいF=10” くらいの2つのF値を使い分けることができれば、ふんわり系、カッチリ系と2つのイメージを撮り分けることができてバリエーションが広がりますね。
欲張って最初から全部のF値を使おうと思っても、いったい何が効いているのか分からなくなってしまうので、使うF値をある程度限定してしまうのがオススメです。F値の違いによるボケ感の感覚が掴めてきたらさらに別のF値を使っていけると良いですね。
ただし、F値を大きくボケにくくすると誤魔化しが効かないのでやや難易度は上がります^^;
4.1/10秒で撮ってみる
「写真は一瞬を切り取る」というのが世間一般の共通認識な気がしますが、写真を使って時間の流れを切り取る事も可能です。スローシャッターを使ったブレの表現がそれに当たります。
動いている被写体を1秒間のシャッタースピードで写し取れば、被写体の1秒ぶんの動きが写真に切り取られるわけ。多くの人はF値を小さくしたボケの表現をしたがりますが、シャッタースピードを長くしたブレの表現が出来るようになると写真のバリエーションはグッと広がります。
ただ、初心者の人がいきなり1秒のシャッタースピードを使うのはちょっと大変かもしれません。しかもカメラだけで無く三脚も必須です。
万能な「1/10秒」
そこでオススメしたいのが”1/10秒”のシャッタースピード。1/10秒くらいなら歩いている人をブラして撮影出来たり、水の流れを滑らかに見せる事も可能です。
しかも、しっかりカメラを構えて、手ぶれ補正をONにしておけば、望遠で撮らない限り手持ちでもギリギリ手ぶれを防げます。写真を撮りに行って動いている被写体を見つけたら1/10秒を考えてみましょう。
スローシャッターについては下記エントリーがおすすめ
この場合は絞り優先モード(A, Av)ではなく、シャッタースピード優先モード(S, Tv)を使ってみるといいですね。
シャッタースピード優先モードって?という方は私が解説した下記の動画を見てみるのもオススメです(他のモードも一通り動画を用意しています)。
5.ネコの目線になってみる
カメラの仕組みにどんなに詳しく、どんなに設定にこだわって撮影したとしても撮影者の視点が他の人と一緒なら、その写真はなんだか代わり映えしないなぁと思ってしまうかも知れません。
そこでオススメしたいのは、みんなと視点を変えてみること。
普通よりも高い所から撮ってみたり、低いとこから撮ってみたりすると普段目に見えている世界とは違った雰囲気が出てくるはずです。
低いところからが手軽でおすすめ
高い所から撮るのは脚立などが必要で大変ですが、低いところからならその場にしゃがめばOKなので簡単ですね。自分がネコやアリになったつもりで地面スレスレから撮影してみると新たな世界が見つけられるはずです。
ポイントは地面から0~30センチくらいの高さで撮ること。”低い位置から”といっても普通にしゃがんで構えると地面から50センチくらいの高さになりますが、この高さだとあまりインパクトは出てきません。地面に近づけば近づくほど写真にインパクトが出てきますよ!
この高さではファインダーを覗こうとすると地面に寝そべらなければならないので、通常はライブビュー撮影がオススメ。とくにバリアングルモニタの人はぜひ活用しましょう。
地面じゃなくて壁でも良い
また壁などに近づいて撮ってみるのも面白いです。例えば木の幹に思いっきり近づいて撮影すればカブトムシの視点ですね。
ただし、地面スレスレから写真を撮る場合はあらぬ疑いをかけられないように近くに人がいないことを確認して撮りましょう。夢中で撮ってると気づかないこともあるので特に街中で撮る場合は要注意。。^^;
まとめ
ということで写真をはじめてしばらくして、「なんだか自分の写真がマンネリしてきた。。」と感じてきた方向けにオススメの処方箋を5つほど紹介してみました。
今回はテクニカルな部分だけでしたが、これ以外にも写真を撮る友達を探してみるとか、撮影会やワークショップに参加してみる、投稿サイトに写真を公表してみる なんてことも以外と新しい知見が得られたりするのでオススメです。
あとは無理に写真を上手くなろうと思い詰めないことも大事。自分の求める写真って何なんだろう?ってことがちゃんと分かってないとこの問いは自分を追い詰めるだけなので。
自分の好きな写真ってなんだろう?って方はコチラの過去記事もオススメです。
肩の力を抜いてよき写真ライフを!