デジタルだって現像しなきゃ!
前回ご紹介したカンタン星空撮影法、もうそれだけでも結構キレイに夜空が撮れてしまうのですが、しっかり後処理をしてあげるとさらに星たちが輝きを増します。デジタルカメラは撮りっぱなしでも写真が見れるという手軽さが魅力ですが、その日撮ったお気に入りの数枚くらいはしっかりデジタル現像してあげるといいですね!
フィルム時代の現像といえば、暗室を用意して、いろいろ薬品をそろえて。。(フィルムはほとんど経験ないですが。。)と個人の趣味程度では手を出せないものでしたが、デジタル現像はお手軽です。
パソコンさえあれば、あとは撮影時にRAW形式で保存しておき、カメラ購入時に付属する無料の現像ソフトを使うだけです。ほとんどの方は撮った写真はパソコンに保存しているでしょうから、初期投資はほぼゼロで現像環境が整うのです。
また、デジタル現像に慣れてきたら、有料ではありますがAdobe Lightroomなどのサードパーティー製の現像ソフトを使ってみるのもありです。無料ソフトにはない設定項目の多さや、使い勝手の向上など様々な工夫がされています。
ということで、今回はキヤノン純正でフリーソフト(キヤノンのカメラ所有者限定)のDigital Photo Professional(以下DPP)とサードパティー製の代表格であるAdobe Photoshop Lightroom(以下LR)を使った星空の現像についてご紹介!
ステキな福島の夜空
今回の題材はこちらにしましょう。
先日福島県に行って、夜のドライブを楽しんでいたところ、思いがけず満天の星空に出会いました。どうしても写真に収めたかったのだけど、持っているのはカメラとそれほど明るくないF4のレンズのみ。。三脚はありません(><)
思案した結果、クルマのボンネットにカメラを置いて、カメラの2秒タイマーで撮影。
日中の街中スナップするときと同じ機材だけで撮影しました♪
カメラの設定だけで撮った写真はこちら。ピクチャースタイルを風景、ホワイトバランス(WB)を白熱電球にしただけで撮ったのがこちら。(DPPでRAWファイルからシミュレーション)
EOS 5D MarkII / EF 24-105mm F4 IS USM / 24mm f4
ISO6400 / SS 15s / WB 白熱電球 / ピクチャースタイル 風景
三脚が無かったので構図がイマイチですが、トリミングしちゃえば何とかなるレベル。カメラで撮るだけでも結構キレイに星が写りました!
次は、前回おススメした、ピクチャースタイルをしっかりセッティング(風景+コントラスト4)にした設定。
EOS 5D MarkII / EF 24-105mm F4 IS USM / 24mm f4
ISO6400 / SS 15s / WB 白熱電球
ピクチャースタイル 風景(コントラスト+4)
黒に締りがでて、一層深い感じの闇になりましたね!ただ、全体的にちょっと暗いかも。。現地でSS 30sも撮っておくべきだったかなーとちょっと反省。。
実際に見た感じではもっと星が瞬いていて、たくさん写っている感じ。この写真をRAW現像で蘇らせましょう!
闇はいっそう深く、光はいっそう明るく
まずはフリーソフトのDPP(Ver3.11)で現像してみます。
DPPはキヤノン純正のフリーソフトであるため、他社のRAWファイルは扱えません。。ニコンなど他社のカメラをお使いの方は、そのメーカーが提供しているRAW現像ソフトをお使いください。
ソフトによって操作方法は若干違ってきますが、現像の方向性は同じ。
ポイントは、「闇はいっそう深く、光はいっそう明るく」です!
1.DPPからRAWファイルを開く
DPPを立ち上げたら左側のエクスプローラーから、現像したいRAWファイルが保存されているフォルダを選択して目的の写真を探します。
現像したい写真が見つかったら”RAW ”(キヤノンの場合は拡張子が.CR2)のマークがついているサムネイルをダブルクリックします。
RAW+JPEGで撮影している場合は同じサムネイルでRAWとJPEGが二つ並んでいるので、RAWと書いてある方を選択します。
2.ツールパレットから、ホワイトバランス、シャドウ、ハイライトを調整
すると、下図のように写真とツールパレットが表示されるはず。現像の調整はこのツールパレットで行います。
ツールパレットが出てこないよ。。という方は、表示>ツールパレット にチェックを入れるか、Ctrl + Tを押してみてください。
ホワイトバランスはお好みで
ホワイトバランスはお好みで調整します。今回は撮影時に白熱電球を選んで青みを強くしていますが、もうちょっと青くしたかったので、”色温度”を選択後、スライダーを調整して2800Kにしました。
ハイライトはプラス側
”光はいっそう明るく”なので、ハイライトはプラス側にしていっそう明るくします。今回は効果が薄かったようなので最大(+5)にしました。
シャドウはマイナス側
”闇はいっそう深く”したいので、シャドウはマイナス側に設定して、いっそう暗くします。今回は元の写真が暗めだったのでやや控えめのー2にとりあえずセット。
3、ハイライトポイントを左側に
ここが今回の調節のキモ!
ヒストグラムの右端にあるハイライトポイントをちょっとだけ左側にずらします。
ハイライトポイントとは写真上で完全に白になるポイントのことで、ここにあるデータは完全に白、いわゆる白とびした状態になります。
その白飛びしちゃう範囲を狭めることで、微妙な明るさの星たちが、より完全な白に近づく(より明るく)なるわけです。
画像処理を始めたばかりの人にはなかなか理解しづらいかも知れませんが、とりあえず、ハイライトポイントを左にずらすと、写真(特に明るい部分)がより明るくなると覚えておきましょう。
こうすることで、ちょっと暗かった星がグッと浮き出てきます♪
でもやりすぎると、一緒にノイズが浮き出てくるので、ずらすのはちょっとだけです。
4、シャドウを微調整
ハイライトポイントを左にずらすと、写真が全体的に明るくなったので、シャドウをもう少しマイナス側に振って、闇を締めます。
5、ノイズリダクションは強めに
ハイライトポイントをずらすと、ノイズのレベルも増加してしまうので、ノイズリダクション(NR)は強めにかけます。
NRは「NR/ALO」のタブから。プレビューを見ながらちょうど良さそうな量にセット。設定を変更したら「適用」を押すのを忘れずに!
NRはかけ過ぎると細部が潰れたような甘い描写となりますが、ノイズだらけの写真よりはいいはず。こと星空に関しては、多少細部が潰れてもそれほど目立ちません。
6、不要な部分はトリミング
もちろんトリミングの必要が無ければ、この項目は飛ばしても構いません。
トリミングは ツール>トリミング/角度調整ツールを起動 から。
起動すると別画面が立ち上がるので、画面上でドラッグして残したい部分を選択後、OKを押しましょう。すると元の編集画面に戻ります。
7、現像して保存する
すべての調整が整ったら、ファイル>変換して保存 (またはCrtl+D)を選択して保存します。上書き保存や別名で保存はRAWファイルの設定を保存するための項目なので今回はいじりません。(今回の設定を保存したい場合は上書きや別名で保存してください)
変換して保存を選択すると一枚あたり数秒間、現像に時間がかかります(PCの性能や画素数による)。
その後、保存画面が出てくるので適当な場所に保存しましょう。ファイル形式は基本的にJPEGでOKだと思います。より高画質で保存したいならTIFFを選択。
せっかくRAW現像をしたので、画質は最大にしておきましょう。
*今回は出来るだけ手順を簡素化したかったのでレンズ補正は適用せず。。
8、完成!
これで現像終了です!完成はこんな感じ。
現像前はこんな感じでした。。↓↓
カメラで撮りっぱなしよりもグッと星が際立って、ちょっと宇宙に近づいた感じになりましたね!
RAW現像ができるようになると、写真の楽しみ方がグッと広がります♪
Lightroomで現像する
次はLightroomで現像してみましょう。最新版のLR4をお使いの方なら超簡単です☆
LRはサードパーティー製の現像ソフトなので、RAWファイルの場合、カメラ側で設定したピクチャースタイルは反映されません(JPEGには反映されます)。Adobeが用意したプリセットを使って現像することになるわけですが、スタンダード、風景、忠実、ポートレートなど、ほぼ純正に応じたプリセットが用意されているので大丈夫。
現像画面の「カメラキャリブレーション」の中からお好きなプリセットを選びます。
私は基本AdobeStandardしか使いませんが。。w
LRの場合は写真の読み込み、管理、現像、プリントまですべての作業をLR内で完結させることができます。特に管理機能は秀逸で、”カタログ”という機能を使って、たとえ数万枚の写真でも簡単に管理することができるのです!
通常のフォルダを使った管理とはイメージがちょっと違うので最初は戸惑うかもしれませんが、慣れると便利すぎて手放せませんw
1、目的の写真の現像画面に移る
LRの場合はすべての写真をLR内で管理しているので、現像時にファイルを読み込むというような概念は存在しません。カタログ内の写真を選択して、現像画面に移動する そんなイメージです。
そんなLRの現像画面はこんな感じ。RAWファイルを読み込んだ初期状態です。
中央に写真、右に現像パレット、左にプリセット、下にカタログとDPPに比べてずいぶん洗練されスッキリした画面です。有料ソフトなので当然といえば当然ですが。。
2、ホワイトバランス、コントラスト、白レベル、黒レベルを調整
基本的にやることは一緒。色を決めて、「闇はいっそう深く、光はいっそう明るく」するだけです。
ホワイトバランスはDPPと同じ2800Kにしました。好みの色になるように色かぶり補正もちょっと修正。
コントラストはやや大げさに上げます。ピクチャースタイルでコントラスト+4にしてたイメージ。
そして最大のポイントが白レベル、黒レベルのスライダー!
白レベルは画面の中で完全な白に近い明るい部分の明るさを調整できます。星は点光源でかなり明るいのでこのスライダーを動かすと、ぐっと浮き出るのです。
黒レベルは画面の中で完全な黒に近い暗い部分の明るさを調整できます。これを思い切って暗くすることで深い闇になります。
その上のハイライト、シャドウはもうちょっとミッドトーンの明るさを調節する項目で、微妙な明るさの部分を調節するときに使います。今回は出来るだけ簡単にしたかったのでこの項目は無視で。。
そうして調整するとこんな感じ!
スライダーをちょちょっと動かすだけでほぼ完成ですね!
LRのいいところは、このくらい派手にRAW現像してもノイズの発生が比較的少ないこと。タダでさえ高感度で撮ってノイズが発生しやすい状況なのに、ノイズリダクションをかけない状態でもDPPよりノイズが少ない気がします。
3、ノイズ除去する
DPPに比べればかなりノイズが少ないですが、それでもノイズが無視できる訳でもないのでかけておきましょう。
輝度ノイズの除去を強度50くらいで。
4、トリミングする
トリミングはヒストグラム下の四角いアイコンです。16:9のシネマサイズにしてみました。
5、書き出し
LRは書き出し機能も便利。写真の上で 右クリック>書き出し と進みます。
書き出し画面はかなり細かく設定できます。Adobeのソフトなので、保存後の写真を自動的にPhotophopに読み込ませるなんて設定も可能。
基本的にはオレンジの線で囲った部分を設定すればOK。毎回これを全部設定するのは大変ですが、一度決めてしまったら、プリセットとして保存(追加)してしまいましょう。次からはボタンひとつで書き出せます♪
ここ2年ほど試行錯誤しながらLRを使ってきましたが、私の場合は撮った写真は基本RAWファイル(別途レタッチする場合はTIFF)で管理しているので、書き出すときは闇雲に最高画質とかじゃなく、ブログ用、Facebook用、納品用。。などそれぞれに応じたプリセットを作って、その都度書き出すようにしています。
LRはDPPよりも現像スピードが速いので、都度書き出してもそれほど大変じゃありません♪
6、完成!
完成版はこちら♪
DPPで現像したのはこちら↓↓
Lightroomで現像した方が星が浮き出てたくさん見えますね!しかもDPPに比べてノイズレス。
私がDPPに余り慣れていないってこともありますが、特に大きめの調整を伴う現像はLRのほうが優れている気がします☆
さすがは有料ソフト!
まとめ
以上、DPPとLRでの星空現像の方法をご紹介しました!
後半はAdobeの回し者のような感じになってしまいましたが、ホントにLR便利なので仕方ありません。。
とはいえ、LRは有料(実売13,000円くらい)ソフトでいきなり導入するのも敷居が高いでしょうから、まずはお手持ちのメーカーが用意した無料現像ソフトを使ってRAW現像を楽しんでみるといいと思います☆
コントラストやシャドウ、ハイライトなど最初は聞きなれない単語が多く、なかなか馴染めないかもしれませんが、いろいろスライダーを動かしているうちに体で覚えてくるはずです。
慣れてくれば撮影する段階から”こんな感じで現像しようかな?”なんてことを考えながらシャッターを切れるようになります。せっかくRAWで撮れるカメラを持っているのだから、現像しないと損ですよ!
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