正しい色を表示するためにはモニターキャリブレーターが必須
写真を続けていくうちに、編集もしてプリントもして。。となってくると避けて通れないのがカラーマネジメントです。
カラーマネジメントの概要については過去にも紹介してきたので、よく分からない方はそちらを参照頂くとして、今回はお使いのモニターの発色をキチンと整える(正しいプロファイルを作る)方法についてご紹介してみます。
カラーマネジメント入門はこちらのエントリーをどうぞ!
解説はX-rite社の i1 DisplayProという定番キャリブレーターで行っていきます。おそらくアマチュアの方でもこの機器を使っている人は多いと思いますが意外と情報が少ないのでインストールから私のオススメ設定、さらにプリントして正しく設定できているかチェックするところまでご紹介します。
今回もかなり長くなってしまいましたが最後までお付き合い下さい。。^^;
*画面はWindowsですがMacでも同じ流れです。ハードウェアキャリブレーションに対応していない普通のモニター向けに解説していきます。
*よく誤解している人がいますが、今回紹介する i1 DisplayProのようなキャリブレーターを使ったキャリブレーションの事をハードウェアキャリブレーションと言うわけではありません。
キャリブレーターを使った色調整はただのキャリブレーションで、それをOS上でソフト的に行うのがソフトウェアキャリブレーション(グラフィックボードからの出力を絞る)、キャリブレーターをモニターに接続してハード的に調整するのがハードウェアキャリブレーションです(グラフィックボードからは100%出力してモニター側で最適に調整する)。
ハードウェアキャリブレーションするためにはハードウェアキャリブレーションに対応する専用のモニターが必要です(高価)。
*機器のスペック等は記事執筆時点のものです。
キャリブレーターの選び方
今回使用するモニターキャリブレーターはX-rite社の i1 DisplayProです。3万円以下*という(専門機器としては)求めやすい価格でありながら、同社の上位機種と同じソフト(i1 Profiler)で運用できるとてもコスパが良い機種。*追記:執筆時より円安になったので3万円超えちゃいましたね。。
中身は同じ(たぶん)の平行輸入版だともう少し安いですね。ただし、何か不具合があったときに国内のサポートを受けられない可能性があります(Amazonで買えば30日間返品可能ですが)。
キャリブレータをまだ持っていない方はとりあえず i1 DisplayProを使っておけば間違いないです。
同じX-rite社から出ている2万円程度のColorMunki Displayは、センサーは恐らくi1Display Proと同じもの(たぶん)だと思いますが、付属のソフトウェアがやや物足りないです。
写真用としてモニターと自宅のプリントの色を合わせるのが目的であれば、白色点の目標を任意(実測値)で決めるのがベストですが、ColorMunki Displayは6500K(D65)や5000K(D50)など代表的な値からしか選べないのです。写真用として使っていくのであれば数千円高くてもオリジナル(任意)設定が可能なソフトが付いているi1 DisplayProが断然おすすめです。
安いキャリブレーターや古いものは要注意
これより下位の1万円程度の機種(ColorMunki Smileなど)は測定精度が経時劣化しやすかったり、設定可能項目が少なく写真用にはかなり力不足なのでオススメしません。。白色点が6500Kしか選べないので、5000K程度の昼白色蛍光灯を使っている環境など、お使いの環境に寄っては全く使えない(使ってもあまり意味が無い)ものになります。
将来カラーマネジメントディスプレイを購入するような場合、このクラスは非対応になっている可能性もあるので注意。
ColorMunki Smile(現在廃盤?)に使われているセンサーはゼラチンカラーフィルターなので、ガラスカラーフィルターの i1 DisplayProに比べて経時で劣化しやすいと言われます。センサーが劣化してしまえば、測定結果も当然ズレてしまうのでそのキャリブレーターはただのゴミになってしまいます。
追記:i1 Display Proを購入して5年経過後の経年劣化について検証してみました!普通に使うなら5年でも全然問題ないですね。
Datacolor社のSpyderシリーズは使ったことがないので何とも言えません。以前は散々な評価をされてましたが、最近はワリとよく見かけますよね。プロでもSpyder使っている人もよく見かけるので、モデルによってはちゃんと使えるかと思います。
(BenQ PV270など一部のカラーマネジメントディスプレイでは非対応)
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とりあえず、i1 DisplayProに付属のi1 Profilerというソフトウェアが大変優秀で使いやすいので、迷ったらi1 DisplayProが間違いないです。写真業界におけるデファクトスタンダードといっても良いと思います。
*ColorMunki Displayなどソフトウェアがイケてない機種をお持ちの方は、”Argyll CMS”と検索してみると幸せになれるかも知れません(ただしかなり上級者向けです)。
これだけで完全に同じ色にはなりません
始めに大事なことを一つ。
キャリブレーターを導入するとそれだけで色が完璧に合うと思い込んでいる人が多いですが、モニターキャリブレーションを行ったとしても、モニターやプリンター、キャリブレーターの性能によっては色が完全に一致することはないと考えたほうが無難です(感じ方は人にもよりますが)。
もちろんソフト側の設定を誤れば色は全然合いません。
2~3万円くらいの普通のモニターに対してキャリブレーションを行う場合は、完全に色を合わせるためではなく、”再現性良くだいたい色が合った環境を維持する”ということを目的として考えた方が精神衛生上良いかと思います。もちろん目視での調整よりは良い結果が得られると思いますが^^;
特に通常のノートPCのモニターを使う場合は(機種によっては)モニターの性能が著しく低いので、キャリブレーターを買うより、先に外付けモニターを買った方が良い結果が得られると思います。(後半でノートPCの結果も載せてみます)
現状、ノートPCのモニターで現像にそこそこ使える機種はMacbook Pro Retinaなどごく一部の高級機種だけだと思っておいて下さい。
*追記:2016年現在、ノートPCのモニターの性能も良いものが比較的多くなってきていますがアタリを引き当てるのは容易ではありません^^; また、通常のノートPCは上手くキャリブレーションしにくいです(OSDメニューがない)
限りなく色を同じように近づけるには、正しいカラーマネジメントの知識、技術と、高機能なモニター(20万円くらい)と、高性能なキャリブレーター(20万円くらい)を揃えるくらいの環境が必要です。
追記:モニターの選び方特集もしています
上記キャリブレータを買えば基本的にどんなモニターでもキャリブレーションできますが、本来のモニターの性能を超えて調整する事は当然出来ません。
ノートPCや古い液晶モニターを使っている方はそれよりもまずモニター本体をキチンとしたものにする方が先かも知れません。最近(2016年)は良いモニターがかなり安くなりました。
モニター選びの記事も書いたのでこちらも参考にどうぞ!
i1 Profilerのインストール
では早速 i1 DisplayPro に付属の i1 Profilerをインストールしていきましょう。といってもインストールは単純です。
箱に付属のCDからインストールするだけ。普通のソフトと同じです。もちろん日本語でインストール可能です。
i1 Profiler本体の他に、Pantone Color Manager(任意)やX-Rite Device Service Managerなどのインストールも続くと思いますが、全部インストールしちゃって大丈夫です。
最後にPCを再起動したらインストール完了。
*最初の起動時に最新版へのアップデートをオススメされることがあります。その場合は上記と同じようにアップデートを進めて下さい。(執筆時点での最新版はVer 1.56)
簡単でしたね!
i1 Profilerのアクティベーション
インストールが終わってi1 Profilerを起動してみると、こんな画面になっているはずです。
ライセンスの所が全部「?」マークになっています。これだけでは使えないので、i1 DisplayProをPCに繋いでアクティベーションをします。
アクティベーションはPCのUSBに接続するだけでOK。
完了したら、使うことが出来る機能に緑色のチェックマークが付きます。
右の4つのアイコンには依然として「?」マークが付いていますが正常です。i1 DisplayProではプリンターやスキャナーのICCプロファイルは作成できないのでチェックが付きません。上位版のi1 Pro(非常に高価)を繋ぐとすべての機能が使えるようになります。
これでモニターのキャリブレーションを行う準備が出来ました(一応プロジェクターのキャリブレーションも作成することが可能です)。
キャリブレーション前の下準備
ソフトの準備が整ったところで、さっそくキャリブレーションを始めたいところですが、その前に下準備をしておきます。
お部屋の下準備
モニターとプリンターの色を合わせる事が目的ならお部屋の環境も重要です。
モニターは自ら光を発する表示機器なので、外の環境にあまり影響されませんが、プリントは環境光が反射されて目に届くので、室内の環境によって色が違って見えます。
そのため、現像作業を行う部屋は外からの光をなるべく入れない遮光環境が理想的です。暗室のように厳密に遮光にする必要はありませんが、少なくとも窓には遮光カーテンをしておきます。遮光カーテンをしないと時間帯によって室内の環境光は数百ケルビンくらい変わってきます。
また、普段使っているデスクライトや部屋の電気は付けたままキャリブレーションします(いつも同じ明かりの下で作業を行う)。
PCの下準備
モニターの色設定はこれから作成するモニターのICCプロファイルで制御することになるので、グラフィックボードのカラー設定でモニターの色を弄っている人は初期設定に戻しておきます。
以前紹介したキャリブレーターを使わない色調整の方法(下記リンク)を試した人はたぶんこの項目を弄っているはずなので戻しておきます。
そんなところ触ったことがないよ!と言う方はそのままでも良いと思いますが、念のため確認しておきましょう。
グラフィックボードのカラー調整はICCプロファイルで設定した調整のさらに上から色を変更するため、これが有効になっていると予期しない結果になるかもしれません。
NVIDIAのグラフィックボードの人
例えばNVIDIAのグラフィックボードを使っている人なら、デスクトップを右クリックして、NVIDIAコントロールパネルへ入ります。
「デスクトップのカラー設定の調整」の項目を初期設定に戻し、「他のアプリケーションによってカラー設定をコントロールする」にチェックを入れておきます。
Intel HD グラフィックスの人
Intel core i シリーズのCPU搭載のノートPCやグラフィックカードを使っていないPCの人はIntel HD グラフィックスで色を制御しているはずです。
同じくデスクトップを右クリックして、「グラフィックプロパティ」を選択して色調整の項目へ。
設定を変えていた人はデフォルトの状態に戻しておきましょう。
Macの人
私自身Windowsユーザーなのでよく分かりません(汗)
たぶん、OSやグラフィックドライバで色を弄っていない限りは何もする必要は無いと思います。
間違ってたら教えて下さい^^;
モニターの下準備
PCを起動した直後はモニターの色が安定していません。一部の高速で安定する機種を除いて、最低でも起動後30分ほど置いてからキャリブレーションを行って下さい。
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i1 Profilerの設定
前準備が整ったら後はi1 DisplayProでキャリブレーションするだけです。
といってもここの設定(i1 Profiler)によっては結果がかなり違ってくるので、私のオススメ設定をご紹介していきます。
*i1 DisplayProをPCに接続した状態で作業を進めて下さい。
まずは詳細モードで
初期設定ではユーザーモードが簡易モードになっていると思うので、これを「詳細モード」にして、左上の「プロファイルの作成」からキャリブレーションをスタートします。
簡易モードでもいいのですが、測定項目が限られるのと、自分がどのような環境に合わせてキャリブレーションしているのかが曖昧になってしまうので、できることなら詳細モードで行った方が良いと思います。
ディスプレイの光源を設定
始めにディスプレイの設定を行います。
図はデュアルモニター環境のためディスプレイが2つ検出されています(通常は1つ)。モニターの光源タイプを選択します。
一昔前の液晶モニターならCCFL(冷陰極管)を選択。広色域版なら広色域CCFL、最近のLED液晶のものの場合、バックライトの種類が白色LEDやWLEDとなっているものは白色LEDを(広色域や高価なものが多い)、特に記載が無いものならRGB LEDでいいのかな?と思います。分からない場合はメーカーの仕様表を見てみましょう。
*どうしても分からない場合はCCFL(デフォルト設定)に設定しておいても結果が著しく変わることはないと思います。
白色点の設定
ここが一番重要です。この設定がモニターとプリントの色合わせにおいて最もインパクトがある項目です。
最初にも言ったとおり、プリントは環境光が反射されて目に届くので、室内の環境によって色が違って見えます。
つまり、室内(プリントを評価する場所)の環境光の色温度(白色点)とモニターの色温度(白色点)が揃っていなければ、2つの写真の色は同じようには見えません。
i1 Profilerの場合、実測値と既定値の2つを設定できるのですが、家庭内で色を揃えるなら、実測値で設定するのがオススメです。
白色点を実測値に設定する
実測値を使う場合は、白色点のドロップボックスで「測定」を選択。
i1 Display Proを円形の乳白色板が上を向くように、プリント評価する場所に置きます。私は普段は色評価用蛍光灯のデスクライト下でプリントを見るので、デスクの上にポンと置くだけです。
すると画面に「測定の準備が完了しました」と出るので、白色点の測定項目を「環境光」にセットして、右側の「測定」ボタンを押します。
測定は一瞬で終わり、環境光の色温度と照度が表示されます。この測定値をそのまま使うことも出来るのですが、なぜか私の環境(Win7)では最後(プロファイルを保存するとき)にソフトがフリーズしてしまうため(バグ?)、一度名前を付けて保存してから使用します。
設定を保存したら、白色点の項目で今保存した設定値を選択します。
これで、環境光の色温度とモニターの色温度を揃えてキャリブレーションすることができます。
白色点を任意(既定値)に設定する
あらかじめ決まった色温度に任意で指定したい場合は、ドロップダウンボックスから適当なものを選びます。
「CIEルミナント D50」は5000Kのことで、色評価の世界で標準的な規格。D65は6500Kのことで一般的なモニターの基準となっている規格。
完全に任意で決めたいなら「色温度を指定」で好きな値を記入します。
これらは環境光をキチンと管理できている人や、複数の環境でプロジェクトを進める人向けの設定なので、普段は環境光を測定して指定すれば良いと思います。
輝度の設定
輝度はモニターの明るさです。これも一般的には環境光の照度と合わせるのが良いと言われているので、先ほど測定し保存した環境光のデータをそのまま流用します。
白色点と同じように任意の照度を設定することもできます。
コントラスト比の設定
モニターの白と黒のコントラストを決めます。普通のモニターは出荷時に1000:1などかなり高めのコントラスト比で設計されているのですが、プリントのコントラスト比は200:1くらいなので、ちょっと高すぎます。
よってここを低めの設定にすると紙と同じくらいのコントラストで見えるのですが、普通のモニターの場合、低コントラストを狙って設定すると特に暗部のガンマカーブをゆがめる結果となってしまうので、あまり好ましくないかも知れません。
階調を豊かに保ったまま、良好な発色をさせるためには「固有の値」を設定してモニター本来のコントラスト比(デフォルト設定に近い値)を設定してあげるのが良いのかな?と今のところ思っています。
PhotoshopやLightroomでは校正表示をする(後述)ことで、紙に印刷した時と同じようなコントラストにシミュレーションしてくれるモードがあるので高めに設定しておいても大丈夫です。
もちろん任意でコントラスト比を指定することも可能ですが、ハードウェアキャリブレーションに対応していない通常のモニターは狙った値に設定するためにはちょっとしたコツと労力が必要です(後述)。
フレア補正、環境光のスマートコントロール
フレア補正と環境光のスマートコントロールはOFFで大丈夫だと思います。
フレア補正はディスプレイ表面の反射によるコントラスト低下分を補正してくれる機能のようですが、測定方法によっては再現性が低そうなので通常はOFFにしてモニターフードを使ってた方が良いかと思います。
- 1000円以下で!高機能モニターフードの作り方。[自作]
反射の多いツルツルの画面の方は試してみても良いかも。
環境光のスマートコントロールは、私自身ほとんど使ったことがないのですが、たぶんセンサーを常時接続して環境光を測定し続ける必要があるモードかと思います。センサーを常時デスクの上に置いておくのはフィルターの劣化を促進したり、乳白色板が汚れやすくなる(汚れれば正しい色は計れない)ので、あまりオススメしません。
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ディスプレイの設定が出来たら「次へ」を選択しましょう。
プロファイルのデフォルト設定
続いてモニタープロファイルの設定(規格)を決めます。基本はそのままでも良いのですが、Windowsユーザーはプロファイルタイプを「マトリクスベース」ではなく「テーブルベース」に設定します。(Macの人はデフォルト設定で問題なし)
「マトリクスベース」にしておくとWindowsフォトビューアーの色がおかしくなるというバグに見舞われます。。(i1ではなくWindows側の問題)
キヤノン純正のDigital Photo Professional(DPP)は「バージョン4+テーブルベース」のプロファイルを正しく認識しないことが分かりました。。(Windows版DPP3.14, DPP4.2にて確認)
よってWindows環境でDPPもフォトビューワーも使いたい人はICCプロファイルのバージョンを「バージョン2」にしておく必要があります!
Adobe系のソフト(Photoshop, Lightroom etc.)はどのバージョンでも正しく認識してくれます。
(参考)キャリブレーション後にWindowsフォトビューアーの色がおかしくなる時の対処法
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設定したら「次へ」を選択。
既定のパッチセットの設定
次はキャリブレーションを行う色の数を決めます。デフォルトは118色でとなっています。このままでも良いですし、より精度を高めたいなら「パッチセットサイズ」を大きくして測定色数を増やします。
私はメインのモニターは中(211色)、サブモニターは小(118色)で測定しています。当然色を増やせば測定時間が長くなり、中で約4分、小なら約2分測定にかかります。
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設定したら次へ。。。
いよいよ測定!
デフォルトの測定値の画面でいよいよ測定開始なのですが、その前にもう一つ設定を済ませておきます。
「ハードウェア設定を表示」の項目で、「ブライトネス、コントラスト、RGBゲインを手動で調節」にチェックを入れておきます。
自動ディスプレイコントロール(ADC)はハードウェアキャリブレーションに対応した高級機種でしか使えないと思うので、普通のモニターを使っている人はチェックを付けていても意味が無いです(環境によっては測定中にフリーズします。。^^;)
ちなみに、「ブライトネス、コントラスト、RGBゲインを手動で調節」というのは、ディスプレイのOSD機能(モニター側のボタンを押して色や明るさを調整するやつ)で調整することを指します。
よって、OSD機能が無いノートPCの場合はここにチェックを付けていても画面の明るさくらいしか手動で設定できません。。
設定が出来たら「測定を開始」をクリック!(デュアルモニターの人は、キャリブレーションしたい画面にウィンドウを持ってきて、測定開始を押します)
いろいろ設定しましたが、覚えてしまえばワンパターンな設定なので、慣れれば準備に1分とかかりません。
i1 DisplayProでキャリブレーション
「測定を開始」を押すと、モニターの設定が初期状態に戻り、画面に案内が出てきます。とても分かりやすいのでコレに従って設定していけばOKです。
測定器を正しく設置する
まずは、キャリブレーター本体をクルリと回してモニターにセット。コードに付いているウェイトの位置を調整しながらモニターの表面にぴったり付けるように設置します。測定器とモニターの間に隙間が空いていると正しく測定できません。
*OSDメニューが画面中央に表示される機種の場合はOSDメニューに重ならないように中央を外して設置します。
ノートパソコンの場合も同じです。
手動設定項目にチェック
前画面で「ブライトネス、コントラスト、RGBゲインを手動で調節」にチェックを付けておけば画面の左上に設定項目のチェック画面が出ているはずです。
私の環境だと、コントラストにチェックを付けていても設定画面が出てこないので、RGBコントロールとブライトネスにチェックを付けて次へ。
画面にも出ていますが可能であればディスプレイの設定もデフォルト設定に戻してから調整した方が良さそうです。
ノートPCの場合はブライトネスだけにチェックを付けて次へ。
RGBコントロールの設定
上記画面で「次へ」を押すと少し画面がチカチカして、RGBゲインの調節画面になります。(RGBコントロールにチェックを付けていた場合)
*ノートPCは通常この設定は関係ないです。
左上に現在のRGBゲインが表示されるので、RGBそれぞれが中央の線に一致しチェックマークが付くようにモニター側のOSDメニューからRGBそれぞれの値を調整します。
*OSDメニューがないモニターは無視して次へ
RGBゲインそれぞれが出来るだけ大きな値となるように調節するのが良いはずです(RGBのいずれかは100にしておく)。
OSDメニューでしっかりRGBゲインを調整しておくことでモニターの発色を最大限生かせるようになります。
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設定できたら次へ
ブライトネスの設定
続いて画面の明るさの設定。同じくOSDメニューの明るさの項目を調整してチェックマークが付くように設定します。
明るさは正直なところ自分が見やすい(疲れない)明るさにしておいても良いかと思います^^;
ノートPCの場合はキーボードに画面の明るさを調整するボタンが割り当てられていると思うのでここでざっくりと明るさを合わせましょう。(バッテリー状況に応じて画面の明るさが変わるのであんまり意味ないかもしれませんが。。^^;)
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「次へ」を押すと、様々な色が画面に表示されて測定が開始されます。
先に設定したパッチセットサイズに応じて測定時間が異なりますので、測定終了までしばらく待ちましょう。
測定終了したら画面に案内が表示されるので、測定器を元に戻してキャリブレーション終了です。
プロファイルの作成と保存
測定が終了したら元の画面に戻るので、「次へ」を押してプロファイルの保存画面へ。
右側の色度図の下に測定結果が表示されます。
プロファイル名に名前(調整日が分かるように日付を入れるのがおすすめ)を付けたら「プロファイルを作成して保存」をクリック。
自動的に新しいモニタープロファイルが適用され、これでキャリブレーション完了です。
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長々と書いてきましたが、慣れれば準備から測定完了まで10分とかかりません。モニターは経時で色が変化していくため、200時間表示を目安にキャリブレーションをすると良いと言われています。
ざっくり1ヶ月に1回くらいやっておけば大丈夫だと思います。
リマインダー機能や環境光の監視という機能もありますが、これらをONにしておくとi1 Profilerが常駐するんじゃないかと思うので私はOFFのままで使ってます。
コントラストの調整をしたい場合
すべてのモニターに共通することかどうかは分かりませんが、普通のモニターはコントラストの調整をOSDメニューでリアルタイムに調整できないんじゃないかと思います(私の環境では調整できませんでした。。)
任意のコントラスト比に設定したい場合は、一度測定を行い、測定結果の「コントラスト比率」の値を見ながら勘でコントラストを調整し、再びキャリブレーションを行うというトライアルアンドエラーで調整すると良いと思います(正しい方法かどうかは分かりません)。
例えば今回、モニター側のOSDメニューでコントラストの値をデフォルトの50に設定した状態で測定すると、上記のようにコントラスト比は 819:1 となりました。
これを30まで下げて測定すると、コントラスト比が 300:1 程度になりました。このように調整していけば目的のコントラスト比に近づけることが出来ると思います^^;
作成したプロファイルを確認してみる
Windowsユーザーの方はColorACというフリーソフトでプロファイルの色域を確認することが出来ます。Macの方は、OSのColorSyncユーティリティで確認が可能なはずです。
詳しい使い方はパーソナルの記事をどうぞ!
試しに、i1 DisplayProで作ったプロファイルから、Dellの広色域ディスプレイ U2711と、普通の安い液晶モニター LG W2442PAと、ノートPCのモニター Lenovo U310 の色域を見てみましょう。
ちょっとごちゃごちゃしていますが、赤い大きな三角がU2711の色域、緑がW2442PA、紫がU310の色域です。参考までにグレーの大きな破線はAdobeRGB、小さな破線がsRGBの色域です。
ノートPCの色域が異常にに小さいですが、普通のノートPCのモニターなんてこんなもんです。ですので、冒頭で述べたようにノートPCのモニターは外付けのモニターを使用して編集しないと正しい色で編集できません。。
いくら正確にキャリブレーションをしても、そもそも表示できる色の範囲が限られているからです。一方外付けモニターのLG W2442PAなんて5年くらい前に買った、当時売り場でも安い方のモニターですが、sRGBの色域を表示するだけの能力があります。
プリントして比べる
キャリブレーションが終わったところで、本当にキチンと設定できているのか確認してみましょう。
プリント設定はこれまた奥が深いのでここではLightroomとPhotoshopを例に簡単に紹介してみます。
Lightroomでチェックする
Lightroomでプリントする場合は、プリントモジュールの「カラーマネジメント」で使用したいプリンタのプロファイルを指定します。
今回はEPSON PX-7Vで純正の写真用紙(光沢)、ブルーインク使用だったので「PX-7V Photo Paper(G) Blue」を選択。純正のプリンタードライバーをインストールしていればお使いのプリンター用のプロファイルがインストールされているはずです。
次に右したの「プリンター」アイコンをクリックしてプリンタードライバーのプロパティ画面へ。
プリンタードライバのプロパティで色補正をOFF(色補正なし)にします。これで、カラーマネジメントはLightroom側に任されることになります。ここがとても重要。他のプリンターでも同じような項目があるはずです。
プリンタドライバー側で”色補正しない”に設定しておかないと、Lightroomとプリンタドライバーの二重で色変換されるためおかしな色で出力されてしまいます。
*プリンタドライバにカラーマネジメントを任せる方法もありますが今回は割愛
この設定でプリントしましょう。当然ながら、純正インクと純正用紙を使わなかった場合、正しい色に表示されない可能性があります。
意味が分からないよ。。と言う方は下記エントリーをよく読んでみましょう。
画面上は現像モジュールに移動し、メイン画面の下にある「ソフト校正」にチェック。さらに、ヒストグラム下に表示される「ソフト校正」の欄にあるプロファイルを印刷したときと同じプロファイルに指定します。
これで画面上に、プリント結果をシミュレートした表示がされます。
キチンとキャリブレーション出来ている場合は、プリントした写真とモニターに表示された写真の色がだいたい合っているはずです。
Photoshopでチェックする
Photoshopを使う場合はファイル>プリント(Ctrl +P) のカラーマネジメントの設定を変えます。
カラー処理の項目を「Photoshopによるカラー管理」とし、プリンタープロファイルを上記と同じくプリンター、用紙、インクに合ったものを選択。
「プリント設定」からLightroomの時と同じく、プリンタードライバー側の色補正をOFFにします(重要!)。
この設定でプリントアウト。
画面上は 表示(V) > 校正設定(U) > カスタム と進み、プリント時と同じプリンタープロファイルを選択し、下の紙色をシミュレートをチェック。その後、表示(V) > 色の校正(L) にチェックが付いていることを確認して、プリント結果と比べてみましょう。
キチンとキャリブレーション出来ている場合は、プリントした写真とモニターに表示された写真の色がだいたい合っているはずです。
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上の写真はモニター表示とプリントを比べたときの写真。モニター上にプリントを貼り付けて写真を撮ってみました。
上の段がモニターに表示されている写真(左がPhotoshop、右がLightroom)、下段が2L版の用紙にプリントアウトしてプリントをモニターに貼り付けたもの(左がPhotoshopからプリント、右がLightroomから)です。
モニターの明るさだけプリントに合うように少し下げましたが、モニター表示とプリントの色はほぼ同じですよね。(モニターの右上にデスクライトがあり、モニターフードをしていないため右上のコントラストが低めで、プリントの色もモニター上で評価するものではないので、若干違って見えますが。。)
完全に一致しなくとも、正しくキャリブレーションし、カラーマネジメント運用すればこの程度までは色を合わせられます。
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ということで、気軽に書くつもりが、やはりカラーマネジメントをテーマにするとかなり長くなってしまいましたね。。
i1 Displayを持っているけどなかなか使いこなせない人、キャリブレーターを導入してみようかと思っている人はぜひ参考にしてみて下さい!