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i1 Display Proは経時で劣化するのか?!5年前の機種と比較してみた!【キャリブレーター検証】

更新日: by 中原 一雄

モニターのカラーマネジメントをする上で最も大事なアイテムであるキャリブレーター(測色機)。巷では経時で劣化して色がズレていくから定期的に買い換えるか、高級な機種を買いましょうという話も聞きます。今回はX-riteのi1 Display Proを使って5年後の劣化について検証してみました。

キャリブレーター比較 i1 Display Pro

i1 Display Proは経時劣化に強い?

モニターのカラーマネジメント(色合わせ)をする上で最も大事なアイテムはキャリブレーター(測色機)です。どんなに高級なモニターを購入してもそのモニターは経時で徐々に色がズレていくため、定期的キャリブレーションしてあげなければ安定した色が表示出来ないから。

でも、モニターの調整につかうキャリブレーター自身の精度がズレてしまっては正確なキャリブレーションはできないですよね(何が正しいのかよく分からなくなる)。

巷では安価なキャリブレーターは経時で劣化して色がズレていくから定期的に買い換えるか、高級な分光式の機種を買いましょうという話も聞きます。そこで今回はほぼ業界標準となっているX-riteのi1 Display Proを使って購入5年後の劣化について検証してみました。

結果を先に言えば5年程度ならほとんど気にしなくて良いよという事になりました。

カラーフィルター式と分光式の違い

キャリブレーターの経時劣化の話をするまえに、キャリブレーターには「カラーフィルター式」と「分光式」の2つの方式があることを知っておきましょう。

安価で手軽なカラーフィルター式

現在一般的に使われているキャリブレーターの多くは「カラーフィルター式」のものになります。今回紹介するX-Rite社のi1 Display Proもそうだし、Datacolor社のSpyderシリーズも同じ方式。

キャリブレーター比較 i1 Display Pro

i1 Display Pro。このレンズの奥にカラーフィルターがある

これはキャリブレーターの内部にRGBのカラーフィルターが入っており、そのフィルターを通った光を計測することでモニターの色を測る方式です。仕組みもシンプルだし安価に製造できるため普及機はだいたいこの方式なのですね。

この方式の測色機は色彩計(Colorimeter)と言われます。

昔のフィルターは劣化しやすかった?

カラーフィルター式キャリブレーターの欠点は色の精度をカラーフィルターに頼っているので、そのフィルター自身が劣化してしまうと測定する色がすべてズレてしまうということです。

で、昔のキャリブレーターはこのカラーフィルターに経時で劣化しやすいゼラチンフィルターが使われており使えば使うほどモニターの色がズレていくという不具合に見舞われる人がいたようです(私はこのタイプ使ってないので経験したことない)。

ただし、私がずっと使っているi1 Display Proに関してはフィルターの素材が劣化しにくい「ガラスフィルター」が使われています。これは経時での劣化に優れていると言われます。へそ曲がりな私は「ホントなの?」って思ったので今回検証してみたわけですw

高精度だけど高価な分光測色式

もう一つの方式は分光測色式です。これは光を波長ごとに分解して細かく計測する方式。プリズムに光を入れたら虹が出てきますよね。これを測定しましょうという仕組みです(ザックリ言うと)。

分光式 スペクトル

フィルター式だとRGBの3色の情報しか得られませんが、分光式なら波長ごとに細かく光の情報を得られるので高精度なわけです。フィルターを使わないので経時での劣化も少ないと言われます。

キャリブレーターで言うとX-riteのi1 Pro 2i1 Studioなんかがそれですね(現行品の場合)。ただ、安くても6万円くらい、i1 Pro 2だと20万くらいしますw

めっちゃ高いうえに取り扱いにも手間がかかるのでモニターキャリブレーションだけ考えるなら結構大変です。

キャリブレーター比較 i1 Display Pro

計測器部分だけでもこのくらい差がある。箱もバカデカい

こういうのを分光測色計(Spectrophotometer)と言います。

プリントの色も測れる

ただし、分光式のキャリブレーターはモニターだけでなく、プリントの色も測れます。つまり自分でプリンタープロファイルまで作れちゃうということ。プリントまで極めたいというならこれを選ぶのもアリかも知れません。(プリンタープロファイル作るのかなり面倒です)

私も一応i1 Pro2は持ってるのですが稼働するのは年に数回程度ですね。。w

5年前のi1 Display Proはどのくらい色がズレているのか?

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。一応、経時劣化に強いといわれるi1 Display Proは5年でどのくらい変化があるのか試してみました。

手元に分光式のi1 Pro2もあるのでそれと比較しても良かったのですが、どうせなら同じ機種で比較しようと思い最新i1 Display ProをAmazonでポチりました。この記事お金かかってますw

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ちなみに購入したのは並行輸入品のやつ。正規品と比べて8000円くらい安かったので。(キャリブレーターの性能自体は全く同等のものですがなにか不具合があった場合に国内のサポートは受けられないはずなのでご注意を・・・)

測定条件

検証はウチのモニターで一番信頼性が高いBenQのカラーマネジメントモニターPV270を使いました。

BenQ PV270
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「良い写真編集をするには良いディスプレイが必要だ」 ということでstudio9ではこれまで何度もカラーマネジメントディ別のタブで開く

環境光に合わせて約5100K、120cd/m2、ガンマ2.2にキャリブレーションしているPV270を使い、X-riteの純正キャリブレーションアプリのi1 Profilerで環境光の測定をしたあと、5000K、120cd/m2、ガンマ2.2でソフトウェアキャリブレーションした結果を比較します。

i1 Profiler設定

こんな感じで設定しました

i1 Profiler設定

カラーパッチは「大」で

キャリブレーションに際し、ディスプレイ側のパラメータはまったくイジっていません。すべて同じ条件での比較です。

キャリブレーターの使用状況は

この5年のキャリブレーターの使用状況的には1~3ヶ月に1回くらいの頻度で普通に使ってました。モニター複数枚あるので稼働率も高め。湿気に弱いという話を聞いていたのでできるだけレンズの防湿庫に入れるようにしていましたが結構忘れがちでデスク回りに数ヶ月放置されているということもチラホラ(ズボラ)

まぁそれなりに大事に使ってはいましたという感じです。

環境光測定の比較

キャリブレーションをはじめる前に、環境光測定の比較をしてみました。i1 Display Proの場合、作業環境の明るさや色温度を測れるので、それに合わせたモニター設定にするとプリント評価もやりやすくなるから。この辺りは過去記事も読んでみて下さい。

カラーマネジメント プリント設定
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過去にもいくつかカラーマネジメント関連の記事を投稿してきましたが、今回はモニターキャリブレーターを使って正しくモニターキ別のタブで開く

ほとんど同じくらい?

私の作業デスクの上の環境光を測定してみました。結果としては輝度、白色点(色温度)共に新旧ほぼ同じ結果。i1 Pro2でも測定してみましたが同じくらいの数値です。

 輝度白色点
luxcd/m^2xy
【旧】i1 Display Pro263800.3390.349
【新】i1 Display Pro270800.3380.350
i1 Pro 2298800.3410.349

x,yの値から色温度を求める術を知らないのですが、参考までに5000Kと5500Kの違いはこんな感じです。

5000K = x: 0.346 y: 0.358
5500K = x: 0.332 y: 0.347

これを見るに100Kくらいの違いでしょうか。どのキャリブレーターも微妙に値がズレているのでこれだけだと経時でズレたのか個体差なのかちょっとよく分からないですね。大幅にズレているってことではないようです。

乳白板には触れないこと!

ちなみに、環境光を測定する場合は白いプラスチックの部分で拡散された光を使います。つまりここが汚れてしまうと正しい色が測れません。この部分は外部に露出しているので汚れやすい部位ですが、運用時はここになるべく触れないのが大事です。私は定期的(年1~2回)にレンズ用のクリーニングティッシュで拭いてます(正しい方法かどうかは知らない)。

キャリブレーター比較 i1 Display Pro

i1 Pro2なんかは環境光測定用の乳白板は測定時以外外部に露出しない設計になってます。

キャリブレーション結果の比較

つづいて、上記の条件で作成したモニターのICCプロファイルの差を比較してみました。

3つのプロファイルを色度図(ICE1931)に表示したのがこちら。【旧】i1 Display Pro(黒)、【新】i1 Display Pro(赤)、i1 Pro2(紫)で表示しているのですがほとんど重なってしまい分からないですね。どのキャリブレーターを使ってもほとんど同じ結果になると言うことです。(内側の点線はsRGBの色域)

キャリブレーター比較 色度図

各プロファイルのカバー率も求めてみました。

【旧】i1 Display Proに対して、【新】i1 Display Proのカバー率は99.8%(面積比101%)、i1 Pro2のカバー率は99.3%(面積比99.5%)。ほとんと同じといって良さそうです。

色差も比べてみた

ついでに色度図内120点の計測値の色差(ΔE00)の平均も比べてみました。【旧】i1 Display Proに対して、【新】i1 Display Proとの平均ΔE00は0.45(最大0.79)、i1 Pro2との平均ΔE00は0.88(最大1.1)でした。

色差2.0以内ならかなり優秀と言われるので経時での劣化はとくに気にしなくても良さそう。(色差にはよく使われるものにΔE00とΔEabがあるみたいで「2.0以内」がどっちを指すのかちょっとよく分からない。。だれか詳しい人教えてください)

ちなみに、これらの計算はColorACを使ってます。フリーソフトでこれだけできるのはすごい(Windows専用)。

肝心の目視での比較は?

ここまでキャリブレーター間の比較でほとんど差はない(差の原因が経時によるものか、個体差なのか分からない)ということが分かりました。

では、実際に目で見たときに果たして全く同一に見えるのかどうか、気になる所ですよね。

実のところ、同じディスプレイでICCプロファイルを連続的に切り換えると、僅かに色が違って見えますw

人間の目が最も色の変化に敏感なグレーの背景で3つのプロファイルをポチポチ切り換えると、【新】i1 Display Proは【旧】に対してちょっとマゼンタがかった色に見えます。一方、i1 Pro2のプロファイルは(【旧】i1 Display Proと)ほとんど同じ(僅かにブルーっぽい)。

数値的には新旧のi1 Display Pro同士の方が近い値で色差も小さかったのに、実際に目にした感覚だとi1 Pro2のプロファイルの方が近い色に感じました。

ただこの違いは同じ画面で連続的に切り換えたり、横並びにすれば気付くかなという感じで、目をつぶっている間に切り換えられたらちょっと見破る自信はないかもなーというレベルです(個人的な感覚として)。

ちなみにプロファイルの切換はX-riteで無償配布されているDisplayProfile Freeware for Windowsが便利です(Mac用はない。。)

まとめ:経時劣化は気にしなくて良さそう

ということで、あくまで私の使用環境においてですが、i1 Display Proの経時劣化というのは(少なくとも5年くらいは)気にしなくても良いかなといったところです(経時の変化なのか個体差なのかよくわからない)。

追記:正常に使えるけどキャリブレーターの黒い部分が加水分解してベタベタになってしまったという声を何件かいただきました。私のはまったくべたつく様子はないのですが、そういう経年劣化はあるかも知れないのでご注意を。補完するときは高温多湿環境は避けましょう。

たいへん優秀なキャリブレーターなんじゃないかと思いました。ただ、上でも書いたようにキャリブレーター毎に僅かな差は生じるため、複数のディスプレイで色を合わせたいという場合は同一のキャリブレーターを使って合わせた方がより正確なのかなと思います。

さらに正確な色合わせをしたいとなると、もう分光式のキャリブレーターを半年とか1年に1回メーカーで校正してもらって使うみたいな個人では手に負えない領域になるのかなと思います。

とりあえず、i1 Display Proを買えば5年以上は戦えるのでこれで安心してカラーマネジメント出来ると思えばかなり安い出費なんじゃないかと思います。一家に一台キャリブレーターを常備しておきましょう。(X-riteの記事広告ではないですw

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この記事を書いた人
中原 一雄
中原 一雄 / studio9管理人
studio9(すたじお・きゅう)の管理、運営をしています。中の人です。 「写真をもっと、あなたのそばに」をテーマに、カメラに使われるのではなく、カメラと友達になる方法を広めるために活動中のフォトグラファー。 中原 一雄のプロフィールページ

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