中級以上のカメラは自分でも調整できます!
前回のエントリーでは自作のピントテストチャートを使って、カメラのピントズレを自分で確認してみる方法を紹介しました。
ピントがぴったり合っていてホッとした人や、思ってたよりもズレていてびっくりした人や、今まで気づかなかったけどためしにテストしたらズレていてモヤモヤしてる人などいろんな人がいそうです(笑)
今回はチェックの結果もしピントがズレていた場合に自分でカメラ側ピント調整ができるAF微調整(AFマイクロアジャストメント)の使い方を紹介致します。
自分でピント調整してみよう
不幸にもチェックの結果、もしピントがズレていた場合の選択肢は3つあって、
- 1.メーカーサービスセンターに持ち込む(前回エントリー参照)
- 2.自分で調整する
- 3.ズレていたことは忘れてそのまま使う
です。
メーカー持ち込みが最も確実ですが、手間も費用も掛かって大変なので、お手持ちのカメラがAF微調整機能を持っているならそれを使わない手はありません。モヤモヤしたまま撮り続けるよりは精神衛生上も良いですよね。
残念ながら、入門機種などAF微調整ができないカメラをお持ちの方は、あきらめるか、メーカー持ち込みとなります。。
自分で調整できる機種
各社中級クラス以降で使うことができる機種が多いです。キヤノンだとAFマイクロアジャストメントという名前がついています。5D MkII, III, 6Dといったフルサイズ機や、7D, 70D, 50Dあたりは調整可能です。なぜか60Dが出来ないのが大変残念な所です。。
ニコンだとAF微調整という名前。D700、D800、D600といったフルサイズ機や、D300、D300s、D7000、D7100あたりは調整可能です。
その他、ソニー、ペンタックスの一眼レフにもAF微調整という名前で設定項目があるはずです。どうやら最近のペンタックスカメラはK-30など入門機にもこの機能がついているようです。
一方、ミラーレスカメラは一眼レフカメラとは異なるピント合わせ機構なので、AF微調整機能は無いはずです。
*ソニーαにはAマウントレンズ(+マウントアダプター)用にAF微調整項目がありますが、Eマウントレンズは調整する必要がないはず
コラム:一眼レフにはどうしてAF微調整機能が必要なのか??
一眼レフ機にピント微調整機能がついているのは、ピント合わせが「位相差式」という方法になっているからです。
一方、ミラーレスの場合は(多くの場合)「コントラスト式」という方式のためそれが必要ありません。分かりやすいように、このピント合わせ方式を大砲で標的を命中させることに例えてみましょう!
一眼レフ(位相差式)の場合、大砲を標的に命中させる(ピントを合わせる)流れはこんな感じです。
位相差方式
・隊員A「レーダー情報によると、標的は方角○○、距離△△!」
・隊長「よし!角度××、火薬量□□にセットして発射~!」
・隊員A「命中しました!」
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コントラスト方式
・隊長「まずは適当に撃ってみろ!発射~!」
・隊員B「ダメです。。近すぎます!」
・隊長「では、火薬の量を増やしてもう一度発射~!」
・隊員B「今度はちょっとオーバーしました。。」
・隊長「ムム。。角度を変えてもう一度だ!発射~!!」
・隊員B「ふぅ、やっと命中しました。。」
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ざっくりいうとこんな感じです(笑)
一眼レフの位相差方式が速い!と言われるのはこのためです。
レーダー、大砲の精度を調整するのがAF微調整
しかし、完璧ともいえるこの方法にも落とし穴があって、レーダーや大砲はそれぞれ独立した機器なのでその精度が理論値より少しでも狂っていると、着弾点はわずかにズレることになります。この狂いを直すのがAF微調整機能というわけです。
一方、コントラスト方式は見ての通り大変遅いです(最近は技術の進化でずいぶん速くなりましたが)。また、読んで分かるようにトライアル&エラーで標的を狙うので、大砲の精度が狂っていても(ばらつきは無いとします)大した問題ではありません。着弾点を見ながら数を撃って確実に狙いに行くので大砲が狂っていたとしても結果は非常に正確です。だから、AF微調整は必要ないのですね!
像面位相差タイプのカメラは必要ない
最近増えている像面位相差タイプのカメラはイメージセンサーに位相差センサーが埋め込まれているのでこの例で言えば、レーダーと大砲の精度ズレを考えなくても良い理想のシステムです。そのため、像面位相差AFを採用したミラーレス機はAF微調整をする必要がなくなっています(ソニーαなどマウントアダプター経由で位相差AFできるものはそれ用の調整項目が残っている)
AFを実際に自分で調整してみる!
前置きが長くなってしまいましたが、実際に調整してみましょう!
今回はキヤノンのAFマイクロアジャストメントを例に調整していきますが、その他のメーカーでも基本的には同じ操作出来ると思います。
ニコンやペンタックス、ミラーレスカメラでも一部の機種は対応しているはずです。マニュアルをみてみましょう!
準備するもの
準備するものは前回エントリーと同じく、簡易ピントテストチャートです。もちろん専用のチャートをお持ちならそれを使っても大丈夫。(専用チャートの場合はそちらの説明書に従ったほうが良いかとは思いますが。。)
まずはこのエントリーを見て、ピントチェック環境を作りましょう。
必要なのはこれだけです^^
AF微調整をする方法
1.まずはカメラのピントをチェック
テストチャートを使ってピントのズレを確認しましょう。ここでズレていない判定が出れば以降の操作は必要ありません。
ズレていた場合はAF微調整(マイクロアジャストメント)の出番です。今回は5D MkIIIとSP 24-70mm F/2.8 Di VC USD (A007) の例で説明していきます。
補正をしていない初期の結果はこんな感じです。。
前回もお見せしましたが大幅に前ピンですね。。
ちなみに、1目盛は1mmで作っていますが、”㎜”という単位には特に意味はありません。斜めですし。撮影距離によってもズレ量は変わります。だいたい-3.5 (-35目盛)あたりにピントが来てるなーという目安で考えてください。
2.メニューからAFマイクロアジャストメントを選択
マニュアルを見て探してみてください。キヤノンの場合はAF関連のメニューにあるはずです。
EOS 5D MkIIIの場合はこんな感じです。
「しない」「全レンズ一律調整」「レンズごとに調整」の3つの項目があり、初期値は「しない」です。
「全レンズ一律調整」はこのカメラにつけたレンズをすべて同じ値で調整します。カメラ側が原因でピントがズレていることが分かっていたり、特別な意図があって調整する場合を除いてあまり使いません。
「レンズごとに調節」はカメラが装着されているレンズを判断し、レンズごとに設定をする項目で、通常はこれを使います。設定値はカメラに保存され(5DMk3は40本まで)、一度設定してしまえば、後レンズを付け替えても自動で設定が読み込まれます。
純正以外のレンズでもOK
サードパーティー製のレンズにも使用できます。今回はSP 24-70mm F/2.8 Di VC USD (A007) を付けていますが、ちゃんと24-70mmと認識されますね。純正レンズであればキチンとした製品名(EF 24-105mm f/4L IS USMとか)が表示されます。
さらに、純正レンズであればシリアルで認識して、同じ製品の複数のレンズに別々の値を記録できます。サードパーティー製(少なくとも手持ちのタムロンとシグマ)はシリアル認識しないので、同じ製品はには1つの値しか登録できません。通常は必要ないですけどね。。
また、今回のカメラ(5DMk3)はAF微調整機能が充実していて、ズームレンズであれば広角側(ワイド側、W)と望遠側(テレ側、T)を別々に調整することができます。というのも、ズームレンズの場合、広角側と望遠側でズレ量が変わることがあるからです(普通は大きく異なることはないですが。。)。
普通のカメラの場合はズームレンズの場合でも一つの値でしか設定できません。この場合は、広角で設定するか、望遠で設定するか、真ん中で設定するか。。どこか妥協点を探して設定をします(普通はほとんど変わりません)。
3.補正値を入力する
INFOボタンで設定画面に移り、設定値を入力します。
プラス側にするとピントは後ろ(奥)に移動し、マイナス側にすると前(手前)に移動します。
今回は前ピンで、ピントを奥に移動したいのでプラス側に設定します。
ここで注意しなければならないことは、この補正値とテストチャートの目盛の数値は何も関係がないという事です。チャートの目盛が-10だから、ここで+10とかにしてもダメです。
あくまでこの数値は目安の数値。同じ+10でもレンズの種類や焦点距離によってもピントの移動量は変わりますし、同じ"プラス5"でも 0→+5 と +10→+15 ではピントの移動量が違う気がします。トライアル&エラーで少しずつ設定を動かしながらピントが中央に来るようにします。コントラスト方式と同じ作戦ですね(笑)
けっこう前ピンだったので、とりあえず、W:+10、T:+10としてみました。(望遠側でチェックを行っていますが、とりあえず広角側も同じ値に設定)
4.再びピントズレの確認
1.と同じ内容でピントチェックを行います。1枚ではなく複数枚の写真を見て判断すること。
+10に設定したことでピント位置がかなり中央に近づきました!
-1.5のあたりにピントが来てるでしょうか。でもまだ前ピンなのでもう少しプラス側に設定する必要がありそうです。
5.補正値の入力とピントチェックを繰り返す。
トライアル&エラーで、設定値を微調整して、ピント位置を真ん中に持ってきます。何度か試したところ、今回は+15が最適でした!結果がこちら。
かなり真ん中になりましたね。ここまで設定できれば十分です。
6.(ズームレンズの場合)他の焦点距離でもチェックする
ズームレンズの場合は、ほかの焦点距離でもチェックしましょう。5D MkIIIのように、広角側、望遠側別々に設定できるカメラは別々に設定してあげます。
別々に設定できないカメラは焦点距離ごとにズレ量が変わっているのであれば妥協点を探ります。よく使う焦点距離に合わせるのか、ちょうど中間くらいの所に合わせるのか。。
今回は広角望遠ともに同じくらいでしたのでどちらも+15に設定しました。
7.最終チェック:実際の被写体で設定前後を比較する
通常はこれで完成ですが、慣れない状態で設定を行うと実は悪い方向に設定をしていた。。という可能性もありますので、普通の被写体でビフォーアフターを体感してみると良いでしょう。
今回の補正前と補正後の劇的ビフォーアフターです!(等倍切出し)
なんということでしょう。。
焦点距離70mm、F2.8で50㎝くらい離れた場所から名刺サイズの紙を撮影しました。
もう一目瞭然ですね。。補正OFF、補正ON共に3枚づつ撮りましたが結果は同じ。今回は初期値がかなりズレていたので、このくらい大きな差になりましたが確実に補正後の方が良くなっています。
ここまで確認できればあなたの行った調整は成功している(少なくとも悪い方向には行っていない)ということです。
ちなみに、SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD (A007) の名誉のために言っておくと、このレンズが特別悪いというよりはこの程度の製品のバラツキはあり得るということです(ちょっと大きすぎるかなぁと思うこともありますが。。^^;)
この後、純正のEF 24-105mm f/4L IS USMも調整しましたが、W:+13、T:+10とやはり前ピンでした。。じゃぁ、このカメラが前ピン個体なのというとそうでもなく、EF 70-200mm f/4L IS USMはW:、T:ともに±0と補正の必要なし。まぁこんな感じで結構個体差があるということです。キヤノンの場合は特に個体差が大きいという噂もあるけれど。。
また全然関係ないですが、サンディスクのCFやSDカードを買うと箱の中に上記のような紙切れが一枚シリアルナンバーと共に入っています。間違ってカードをフォーマットしたときにデータを救出できるレスキューソフトの使用権です。かなりシレッと入っているので気づかず捨ててる人もいるかもしれませんが、お守り代わりにとっておくといいです(笑)
7.手持ちのレンズを片っ端から補正していく
一度流れを覚えてしまえば簡単です。あとは流れ作業で手持ちの(普段使う)レンズをどんどん登録していきましょう。
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カメラを買ったらテスト撮影と慣れもかねて、こんな感じでどんどん手持ちのレンズを登録していきます。正直面倒な作業ですが、儀式みたいなもんです。それに、ピントがズレていると知ってるレンズで撮影を続けるのも精神衛生上よくないですし。
なにより、ピンボケはカメラのせいに出来なくなるので気合が入ります(笑)
あまり神経質になることもないと思いますが、せっかくAF調整機能がついているカメラをお持ちなら使わない手はないと思います。
調整中に困ったら??
私もピント調整の専門家ではないのですが、調整中に困りそうなことを挙げてみました。参考になれば幸いです^^
ピントの来ている位置が分からない。。
開放F値の大きなキットレンズだと被写界深度(ピントの合う範囲)が広くてなかなか見つけられないかもしれません。出来るだけAFターゲットに近づくと被写界深度が浅くなるので山を見つけやすくなるかも。
ただし、あまり近距離で調整すると誤差が大きくなるので、調整後のチェックはしっかりと。
というか、テストチャートで違いが判らない程度なら普段の撮影でも違いを感じることは無いと思いますので、無理に補正をしなくても大丈夫です。
ピントがチャートの目盛内に収まらない
まずは正しく測定できているかもう一度設定を見直しましょう。AFターゲット以外の場所でAF測距点を合わせたりしていませんか?
それでも収まらないなら、カメラかレンズの不良の可能性が高いです。AF微調整で補正できる量ではないのでメーカーに相談しましょう。
半年前と補正値が違う!
レンズも動作中の部品摩耗なんかで、経年で値が変わることがあります。1年に一度くらい総点検をしてみてもいいかもしれませんね。
調整をしているうちに訳が分からなくなった
まずは落ち着きましょう。いつでもやり直せるので設定値を±0に戻します。
これで初期状態に戻りました。
気が向いたらまたゼロから挑戦してみてください。
中央と端の測距点でピントのズレが違うんだけど。。
仕様です。
確かにAF測距点ごとに微妙にズレ量が異なる場合がありますが、残念ながらプロ機を含め、AF測距点ごとに補正ができるカメラは無いはず。諦めましょう。
メーカーサポートやメンテナンス専用ショップなどではこの調整をしてくれるところもあります。
撮影距離を変えるとピントのズレが違うんだけど。。
仕様です。
レンズのタイプによっては撮影距離によってピントがわずかに前後するものがあります。残念ながら自分で補正することはできないため、妥協点を探すか、メーカー調整に出しましょう。
最近話題のシグマのUSB dockに対応しているレンズだと自分で補正できるようですが未体験なので何とも言えません。。
F値を変えるとピントのズレが違うんだけど。。
仕様です。
レンズのタイプによってはF値を変えると焦点がわずかにズレる(焦点移動)ものがあります。が、これが気づくレベルであればもっとしっかりとした専用のテスト環境で検証した方が良さそうです。普通のMFでも解決できない問題なので厄介です。。
レンズの特性と言ってしまえばそれまでですが、気になるならメーカーに相談してみましょう。
まとめ
2回にわたってかなり長編になってしまいましたが、以上が自分で出来るレンズのピント確認と調整の方法でした!
簡易方法と言いながら結構グダグダといろいろ書いてしまいましたね。。最後までお読みいただきありがとうございます。
失敗してもゼロに戻せばOKな調整ですので、ぜひともチャレンジしてみてください(テスト撮影は必ずしてね)。
ちょっと面倒な方法ですが、自分で設定するとカメラやレンズに一層愛着が湧くはずです^^
ではではー