モニタとプリントの色が合わないのは当然なんです。。
デジタル写真を始めてしばらくしてぶつかる壁がパソコンモニターとプリントした写真の色が合わない。。という問題。
まずは前提として、「パソコンのディスプレイとプリントの色は合わないのが普通である」と思っておくのが良いかと思います。理由はこの後説明していきますが、無限の組み合わせがある色を液晶ディスプレイとインクジェットプリンタの間で完全に一致させるというのがそもそも大変難しい問題だからです。
イメージとしては、モニタとプリントそれぞれの色の出力は、朝のあいさつを「おはようございます」というのか「good morning」というのかの違いくらい異なるということ。モニタとプリンタでは色の言語が違う といったイメージを持っておくことが大事です。
そんなまったく違う色の世界を適切に結びつけるのが「カラーマネジメント」。このカラーマネジメントを適切に行って初めてモニターとプリントの色が合うようになるのですね。このような色合わせの事を「カラーマッチング」と言ったりもします。
いきなり難しい話をしてしまいましたが、今回は初心者には厄介な「カラーマネジメント」の全体像についてできるだけ簡単にご紹介していきます。色というのは数値で表すことが難しく、厄介なテーマなので今回の内容をすっ飛ばしてカラーマネジメントをしたつもりになっていると、実はまったく違う色の世界で作業をしていた。。なんて事にもなりかねません。
ちょっとややこしい話かもしれませんがなるべく丁寧に話を進めるのでがんばって付いてきてくださいね!
*偉そうに言いましたが私も完全にカラーマネジメントを理解しているかというとそうでもなかったりします。。もし間違っておりましたらご指摘いただけると幸いです。
カラーマネジメントとは?
さて、冒頭でも紹介した「カラーマネジメント」。言葉で説明すれば、「異なる機器間で同じ色を扱うための環境を整備する」といった意味でしょうか。
Aさんのパソコンとプリンタの間で色を揃えたり、そのデータをBさんのパソコンにコピーしたり、写真屋さんにプリントをお願いしてもキチンとした色が表示されるような環境を作るのが「カラーマネジメント」です。
この場合、当然Aさん、Bさん、写真屋さんのそれぞれが、正しいカラーマネジメントをしている必要があります。
ちなみに、狭義のカラーマネジメントとして、Aさんのお家の中だけで写真の色が合うようにすることを「カラーマッチング」と言ったりします。
また、カラーマネジメントをする仕組みのことを「CMS(カラーマネジメントシステム)」といいます(コンテンツマネージメントシステムではありませんよ)。CMSは異なる機器間で正確な色を表現できるようにする、色の翻訳者というイメージを持っておいていただけるといいと思います。
色情報を証明するICCプロファイル
さて、カラーマネジメントを理解するうえでキモとなるのが「ICCプロファイル」です。省略されて「ICC」とか「○○プロファイル」と呼ばれることもあります。
ICCプロファイルの主な役割は自分がどのような色であるかを明確に示す身分証明書となることです。
冒頭で、モニタの色とプリントの色の間には日本語と英語くらいの差がありますよとお話しましたが、自分は英語を使ってます とか、私は日本語が母国語です といった感じで自分はどのような言語(色)を扱えるのかを示すのがICCプロファイルの役割。
そして、ICCプロファイルを読み取って、正確に色の変換(翻訳)を行うのがCMSというわけです。
図にするとこんな感じ。
普通の人が関係するICCプロファイルは3つで、1つ目が写真データそのものに付与されている「カラープロファイル」。2つめがモニターでどのくらいの色が表現できるかを示した「モニタープロファイル」。最後が、プリンタで扱える色を示した「プリンタプロファイル」です。
撮ってきた写真をパソコンのモニタで見ながら編集し、その写真をプリンタに出力するためには、「カラープロファイル」「モニタープロファイル」と「プリンタプロファイル」のどれもきちんと設定がなされており、さらに「CMS」がしっかりと仕事をする環境としておく必要がありますね!
色空間と色域の話
色空間は色の言語
先ほど、モニターの色とプリントの色には言語が違う(日本語と英語)くらいの差があると言いましたが、言語に相当する部分の事を色の世界では「色空間(いろくうかん)」と言います。
具体的にはモニターの色は”RGB色空間(あーるじーびーいろくうかん)”で表現されており、プリントの色は”CMYK色空間(しーえむわいけーいろくうかん)”で表現されます。
・RGB色空間
RGB(レッド、グリーン、ブルー)は光の三原色ですね。液晶ディスプレイはディスプレイそのものが光を発して色を表現するので、光の三原色であるRGBで色が表示されるのです。
・CMYK色空間
一方、CMY(シアン、マゼンタ、イエロー)は色材(絵の具)の三原色。プリントは自ら光を発するのではなく、太陽や蛍光灯の光を反射させて色を表現するので色材の三原色であるCMYで色が表現されるのです。プリンタの詰め替えインクにレッドとかグリーンがなく、シアンやマゼンタとなっているのはこのためです。
ちなみに、理論的にはCMYを全部混ぜれば黒を表現できるはずですが、実際はそう上手くはいかないため、黒(K)を混ぜたCMYK色空間がプリンターでは一般的に用いられています。
*家庭用のインクジェットプリンターはCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)だけでなく、ライトシアンや機種によってはブルーやオレンジなど特殊なインクを用いることでより色再現性を高める工夫がされています。
モニターとプリントではそもそも色の発色の原理自体が違うのですから、色を合わせるのは大変なわけです。(正確な身分証明書=ICCプロファイル と 翻訳者=CMS が必要)
色域は語彙力?
同じ日本語でも、小説家のような高尚な日本語を扱える人もいたり、私のようなショボイ日本語しか扱えないような人もいますよね(笑)
このように、同じ色空間(言語)の中でも、扱える色の数(語彙力)の違いを表すためには ”色域(しきいき)”という言葉を使います。(英語でガマット[gamut]と言うこともあります)
RGB色空間の中では2つの色域が代表的
有名なものとしては、RGB色空間の中では「sRGB(えすあーるじーびー)」と「AdobeRGB(あどびあーるじーびー)」の2つがありますね。
・sRGB
現在世界で最も普及しているRGBの規格。現在発売されているデジタル機器はたいていこのsRGBを基準に製造されているが、色域が狭い(扱える色が少ない)のが欠点。
・Adobe RGB
PhotoshopやPDFで有名なAdobeさんが、提唱した規格でsRGBよりも色域がかなり広い(扱える色が多い)のが特徴。ただし、その豊富な色を表示できるモニターが少ない(高価)というのが欠点。
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sRGBとAdobeRGBの違いを図示するとこんな感じです(xy色度図)。グラフの色が付いている部分は人間が視覚できる色の範囲を表しており、三角形で囲った内側の部分がsRGBとAdobeRGBそれぞれの色域になります。
グラフを見れば一目瞭然ですが、AdobeRGBのほうが緑~青緑の領域にかけて扱える色の数が多いのがお分かりですね。
写真を適切な色で見てもらうには、写真にsRGBで作成したものなのか、AdobeRGBで作成したものなのかをICCプロファイル(カラープロファイル)で明示してあげなければなりません。
その他の色域
上記のような世界共通の色域以外にも、モニターで表示できる色の範囲を表した色域(RGB)や、プリンタで表示できる色の範囲を表した色域(CMYK)などがあります(機械ごとにちがう)
・モニターの色域
例えば、私が現在所有しているDELLの広色域モニタ U2711とLGの安モニタ W2442PA の色域はこんな感じです。薄い三角形はそれぞれAdobeRGB、sRGBの色域です。
U2711はメーカー公称AdobeRGBカバー率が96%と謳われていますが、実際に測定してみると確かにほぼAdobeRGBの範囲をカバーしていることが分かりますね。また、赤色の部分はAdobeRGBよりも広い色域を持っています。
一方、ずいぶん昔に買ったLGのW2442PA(普通のモニタ)はU2711に比べると表示できる色の範囲がずいぶん狭い結果。。ただし、sRGBの色域とほぼ同じなため、ネット上の画像がほぼ100%sRGBであると考えれば、普段使いには十分であることが分かります。(大抵の普通の液晶モニタはsRGBとほぼ同じ色域です)
上記の図を見てお分かりになったと思いますが、写真データ、モニター、プリンターそれぞれで表現できる色の範囲(色域)が異なります。
ですから、カラーマネジメントをするなら、モニターやプリンターで使える色域もICCプロファイルでしっかり明示する必要があるのです。
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さっきの日本語の話しで言えば、しょぼい日本語しか扱えないのがsRGB、高尚な日本語を扱えるのがAdobeRGBです。もちろん、この異なる色域間の翻訳もICCプロファイルとCMSが活躍します。
ショボイ日本語しか使えない人に、高尚な日本語で話をしてもその一部しか伝わらないということを考えれば、sRGBしか表示できない普通のモニタで、AdobeRGBで撮ってきた写真を編集してもあまり意味がないというのがお分かりかと思います。
RAWファイルの色域
最近だとRAWで写真を撮る方も多いかと思いますが、RAWファイルの色域はなんでしょう?実はRAWファイルには色域という概念が存在しません。なぜなら、RAWファイルは写真になる前の状態で色の概念が無いから。センサーに記録された光の情報そのものなのです。
RAWファイルはRAW現像ソフトに読み込ませ写真にしたときに初めて色域が付与されます。そのとき付与する色域をsRGBにするのか、AdobeRGBにするのかはあなた次第です。
モニターのカラーマネジメント
ICCプロファイル、色空間、色域の話が終わったところで、実際のカラーマネジメントの流れついてみてみましょう。
撮ってきた写真がパソコンモニタに表示されるまでの挙動
1.アプリケーションで画像のICCプロファイルを判別
まずはパソコンで画像を読み込みます。Macの場合は全てのアプリケーションでカラーマネジメントシステム(CMS)が働くのでどんなソフトを使ってもOK*。Windowsの場合はWindowsフォトビューアーやPhotoshopなどCMS対応のソフトで読み込みます。
*Mac/Windowsの両プラットフォーム対応アプリなどではカラマネ非対応のアプリのあるようなのでMacだからカラマネ万全というわけではないことに注意
2.モニタのICCプロファイルを判別
次に画像を読み込んだアプリケーションはモニターに設定されているICCプロファイルを判別します。
3.画像、モニタ間でCMSが働き、正しい色を表示する
アプリケーションは画像とモニターの間でICCプロファイルの情報に基づき、適切な色になるように色変換を行い、ディスプレイに表示します。
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このように、写真の色をディスプレイに正しく表示するためには3つの関門が必要で、1.画像にプロファイルが付いている、2.モニタに正しいプロファイルが付いている、3.アプリケーションがカラーマネジメント(CMS)対応している の3つの要素が必要です。
モニターのICCプロファイル
画像のICCプロファイルはカメラの設定をするだけでよかったのですが、モニターはそう簡単にいきません。というのも、モニターで表示できる色は機種ごとに全て違うから。メーカー間でも違うし、機種間でも違う。もっと言えば同じ機種でもロット間で色が違うし、使えば使うほど色がずれるというクセ者なんです。。
*モニターのICCプロファイルを設定する方法は以前の記事(モニタの見た目とプリントの色を合わせる方法![写真カラーマネジメント])を参考にしてみてください。
モニターのICCプロファイルを扱う方法は大きく分けて3種類
1つめが、キャリブレーターという機械でディスプレイの発色傾向を測定し、オリジナルのプロファイルを作る方法。2つめが、買ったときについてきたICCプロファイルを使う方法。最後がICCプロファイルを適当に決める方法。
1.キャリブレーターでICCプロファイルを作る方法
当然ながらこの方法が最も正確な方法です。逆にこの方法でしかモニターの正しいプロファイルは作れません。詳細な方法はまた後日にしたいと思いますが、キャリブレーターという機械でモニタを測定します。
キャリブレーターは以前はプロ向けの非常に高価な機械でしたが、最近では一般の方でも十分手が届く価格帯になっています。私が使っているのはX-rite社の i1 DYSPLAY PROという製品で25,000~30,000円程度の製品。このソフトについてくる i1 Profiler というソフトはこのブランドの最上位機種(10万円以上)のものと同じもので、非常にコストパフォーマンスに優れます。
これより安い1万円台の製品は耐久性やソフトがイマイチという感じであまりおススメではないかも。。
このキャリブレーターさえあれば、あなたのモニターにマッチさせたオリジナルのICCプロファイルが作れます。もちろん、定期的にキャリブレーションをすれば経時のモニターの発色変化にも対応できます。
i1 DisplayProの使い方の記事を書きました!
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初期投資は必要ですがこれが一番確実で簡単な方法です。(カラーマネジメントを理解していれば)
2.買ったときについてきたICCプロファイルを使う方法
3.ICCプロファイルを適当に決める方法
キャリブレーターが無い方は2.か3.のどちらかを選ぶしかありません。色の再現という意味では1.の方法よりも劣りますが、よほど拘りがないのならある程度ごまかしつつ合わせることは可能です。
以前の記事を参考に挑戦してみると良いと思います(結構長いです。。)。
モニターは自ら光を発するので、劣化を考えなければ周りの環境(部屋の明かりなど)が変わっても表示される色はいつだって変わりません。一方、プリントの色は環境光(太陽光や蛍光灯など)が紙にあたり、反射した色を見るので、周りの環境によって見える色が違います。
モニターの設定をするときは、プリントの色を確認する環境を一定にして(カーテンを閉めて蛍光灯の明かりだけにするとか)、その条件で設定をしなければなりません。
写真編集向きのモニターの選び方記事も書きました!
プリンターのカラーマネジメント
さて、次は写真がプリントされるまでの流れをみてみます。
編集した写真をプリントするまでの挙動
1.アプリケーションで画像のICCプロファイルを判別
ここはさっきと同じです。画像を出力するのだから、アプリケーションは画像のICCプロファイルを読みに行きます。
2.プリンタのICCプロファイルを判別
続いてプリンタのICCプロファイルを判別しにいくのですが、ここがまたややこしいポイント。。
ICCプロファイル(プリンタプロファイル)を読みに行くソフトは、現在画像を表示しているアプリケーションの場合と、アプリケーションはプリンタプロファイルを読みに行かず、プリンタドライバに全ての処理を任せてしまうアプリケーションもあります。。
PhotoshopやLightroomはソフト自体がプロファイルを読んでくれますが、他のソフトはたいていプリンタドライバに丸投げしてしまいます。。(すべてがそうかはわかりません)
3-a.アプリケーション内でCMSが働いてプリントされる
色を合わせるという点ではこれが一番理想的な状態です。PhotoshopやLightroomなどアドビ社製のアプリケーションは、画像とプリンタのプロファイルをアプリケーション内で読み込み、適切な色変換を行いその結果をプリンタドライバに渡します。(プリンタドライバに丸投げするモードも選べます)
プリンタドライバは受け取った(色変換済みの)画像データを印刷するだけ。この際、プリンタドライバは色補正をしない設定にしておきます。
3-b.プリンタドライバ内でCMSが働いてプリントされる
通常のアプリケーションは、アプリケーション内でCMSは行われず、一度画像データをプリンタドライバに丸投げします。続いて、プリンタドライバ内で画像とプリンタのプロファイルが読み込まれ色変換されてからプリンタ出力されます。
この方式でも適切に設定をすれば正しく出力することが可能ですが、プリンタードライバの操作はメーカーや機種の間でもマチマチで、様々なオートモードに埋もれて良く分からないので難易度が高め。。家庭用の普及機についているドライバではそもそもプロファイルの指定が出来ない(カラーマネジメントできない)ものもあります。
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このように、画像を正確にプリントするためには、1.画像に適切なICCプロファイルが付与されていて、2.適切なプリンタプロファイルを設定し、3.アプリケーション側でCMSの動き方を適切に指定する の3つの要素が必要です。
プリンターのICCプロファイル
プリンターも機種ごとに表現できる色が異なるので、当然ICCプロファイルが異なります。また、用紙が変わることでもICCプロファイルは変えなければなりません。
プリンターのICCプロファイルを扱う方法は大きく分けて2種類
1.プロファイルを自分で作る
これが最も確実な方法ですが、モニタープロファイル作成と同様専用機器が必要です。しかも高価(最低でも5万円~)で作業もとても面倒です。。
よほどこだわらない限り一般の方がここまでやる必要はありません。
2.メーカーから配布されているプロファイルを使う
モニター場合はメーカ付属のプロファイルは大変お粗末でしたが、プリンタはキヤノン、エプソン製を使う限りかなりしっかりしたICCプロファイルが配布されていますので通常はこれを使います。
プリンタプロファイルはプリンタ機種と用紙の組み合わせて決まるのですが、当然メーカーで配布されているプロファイルは純正インク+純正用紙の組み合わせのみです。正確な色を出したければ純正インクと純正用紙を使いましょう。
普通はドライバインストール時に自動的にインストールされ、Windows7なら「C:WindowsSystem32spooldriverscolor」の中に保存されてます(すべてのICCプロファイルが入ってる)。
ピクトリコなど写真用紙を作っているメーカーでは独自にICCプロファイルを配布しているところもあります(写真印刷向けプリンターのみ対応)。
色が合わない理由の答え
ということで、カラーマネジメントについてざっくりと(かなりの分量でしたが。。)紹介してきました。
ここで、今日のお題であった、モニターとプリントの色が合わない理由を考えてみましょう。ここまで読み進めていただいた皆さんならもうお分かりですね。
モニターとプリントの色をあわせるために必要なこと
モニターとプリントの色を合わせるためには、A.画像 ⇔ モニター間のカラーマネジメントと、B.画像 ⇔ プリンター間のカラーマネジメントを両方行う必要があります。
もっと細かく見ていくなら、A.に関しては、
1.画像に適切なICCプロファイルが付与されている
2.モニタに正しいプロファイルが付いている
3.アプリケーションがカラーマネジメント(CMS)対応している
の3つの要素が必要。 B.に関しては、
1.画像に適切なICCプロファイルが付与されている
4.適切なプリンタプロファイルを設定する
5.アプリケーション側でCMSの動き方を適切に指定する
の3つの要素が必要です。
1.のみ重なっていますから、合計で5つの関門を全てクリアしなければモニタとプリントの色は合いません。
理由は1.~5.のうちのどれか
よって、”モニターとプリントの色が合わない理由” として考えられるのは上記1.~5.のどれかです。
なかなか合わないなぁと言う場合は殆どの場合、このステップが漠然としか理解できておらず、なんとなく設定していることが大半かと思います。
全体像をしっかり理解して、どこのステップが間違っているのかをよく考えて見ましょう。
一番簡単にカラーマネジメントする方法
こんなに関門があるなら一般人ががカラーマネジメントするなんて無理じゃね?と思うかもしれません。確かに全ての環境でカラーマネジメントをするのは大変レベルの高い作業ですが、写真を編集し、プリントと色を合わせるという工程だけならパソコンの環境を整えるだけでかなり簡単になります。
とにかくアドビのソフトを使いましょう
別にアドビの回し者ではないですが、簡単にカラーマネジメントを導入したいなら悪いこと言わないのでアドビのソフト(Photoshop, Elements, Lightroom)を使いましょう。もうこれだけで1.3.4.5.の項目が解決します。もちろん適切に設定する必要はありますがアドビソフトの情報は書籍でもネットでも他のソフトの比較にならないくらい豊富です。
通常のソフトのカラーマネジメントシステム(CMS)はWindowsならWSC、MacならColorSyncというOSに依存したシステムを使うのですが、アドビのCMSはACE(Adobe Color Engine)という独自のCMSを搭載しています。
だから、アドビのソフト中だけはWindowsだろうがMacだろうが同じCMS内で作業をすることができる聖域なわけです。プリントするときに、アプリケーション内でCMSを行える(3-b.)のもACEのおかげです。
かつては一般の人が手を出せなかったPhotoshopも今なら毎月980円を支払えばPhotoshopとLightroomセットで使い放題という良い時代になりました^^
・Adobe フォトプラン (Adobe公式)
他社のソフト(GIMP、DPP、Capture NXなど)でもカラーマネジメントには対応していますが、設定が少しわかりずらいため良く理解していないと設定を誤る可能性があります。
Macを使えばすべてOKというわけではない
文中でもちらっと触れましたがMacは(多くのアプリが)OSレベルでカラーマネジメントを行う仕組みになっているので、(厳密な所に目をつぶれば)どんなアプリケーションを使っても色は同じになります*。ただし、これはアプリケーションの話で、Macを使えばカラーマネジメントする必要は無いと言うことではありません。
Macを使っていてもモニターに正しいICCプロファイルが当てられていなければ色は全く違うものになるので注意です。ここはWindowsと一緒なので注意しましょう。
Macは正しくカラーマネジメント環境が整ったハードウェアを使う限り、使用するアプリケーションの制限がありませんよ*と覚えておくと良いかと思います。
*アプリのカラマネに関しても一部のアプリはMacOS側でカラーマネジメントされない仕組みになっているものもあるので注意。
余裕があればキャリブレーターを
2.のモニタープロファイル だけはどう頑張ってもAdobeソフトでは無理なので、自分で何とかする必要があります。
目視で設定するなら過去記事(モニタの見た目とプリントの色を合わせる方法![写真カラーマネジメント])あたりを参考に気合で頑張ってみましょう。かなり面倒ですがそこそこのレベルでは色が合うと思います。
でも、いまいち良く分からないとか、もっとキチンとカラーマネジメントしたいならキャリブレーターの導入も考えて見ましょう。上記でおススメした i1 DYSPLAY PROがあれば普通の液晶モニターでもかなり精度良く合いますし、なにより手軽です。もちろん複数のディスプレイで色を合わせるのも朝飯前。
手順さえ覚えてしまえば5分とかかりません。プリントにこだわろうとか、デュアルモニタで運用している方はぜひ導入を考えてみてください。
そのうち i1 DYSPLAY PRO特集もやる予定。
i1特集しました!
・キャリブレーション後にWindowsフォトビューアーの色がおかしくなる時の対処法
【コラム】ハードウェアキャリブレーションとは?
よく誤解している人がいますが、 i1 DisplayProのようなキャリブレーター使った色調整がすべてハードウェアキャリブレーションになるわけではありません。
キャリブレーターを使った色調整はただのキャリブレーションであり、それをOS上でソフト的に行うのがソフトウェアキャリブレーション、キャリブレーターを専用のモニターに接続してハード的に調整するのがハードウェアキャリブレーションです。
ハードウェアキャリブレーションするためにはハードウェアキャリブレーションに対応する専用のモニター(高価)が必要です。
一般的なモニターはハードウェアキャリブレーションには対応していないため、キャリブレーターを使ったとしてもソフトウェアキャリブレーションになります。とはいえ、このソフトウェアキャリブレーションでも、目視の調整に比べれば格段に精度は高いので通常はソフトウェアキャリブレーションでも問題ありません。
また、キャリブレーターを使わない色調整はそもそもキャリブレーションとは言いません。ただの目視による色調整です。。
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カラーマネジメントの設定構築だけを考えれば、実際の作業は驚くほど簡単で、適切なソフトとキャリブレーターさえあれば10分とか15分で出来てしまう作業なのですが、色というあいまいなものを扱っている関係で、もし結果がおかしくなった場合に一体どこが間違っているのかをしっかり特定できなければ意味がありません。
今回は全体像だけで、実際の具体的な方法などは詳しく示さなかったのもこのためです。作業手順だけを書けばもっと簡単。でもやるからにはある程度の概要を知っておく必要があると思ったので、長くなってしまいました。。
みなさまの心が折れていないことを祈っています(笑)
参考サイト、図書
もうちょっとカラーマネジメントについて勉強したいなぁと思った方は下記サイトがおススメです。やや古い情報ではありますが、かなり詳しく丁寧に情報が紹介されています。
追記:写真編集向きのモニターの選び方記事も書きましたよ!
また入門用の書籍としては以前にも紹介しましたが、以下の2冊をおススメしておきます。以下自己引用
「基本から分かる!モニターとプリントの色あわせ」はあくまで、個人が趣味として写真を楽しむという前提で、モニタとプリントの色あわせに特化した実用的な本です。この手の本はデザイナーなど業界の人向けの内容が多いので、個人の趣味目線で書かれているのが嬉しいです。
カラーマネジメントについてはそれほど突っ込んだ内容は書かれていませんが、難しい言葉もあまり出てこないので、入門用には持って来い。カラーマネジメントはさっぱり。。という方の最初の一冊におススメです。
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「写真の色補正・加工に強くなる ~レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」はカラーマネジメントに限らず、色や写真を編集(レタッチ)する上での基本的な考え方が幅広く纏まっています。
初心者がいきなり読むのは苦労するかもしれませんが、最近写真の編集を始めたけど、トーンカーブとかコントラストとかそういう専門用語がイマイチ分からないんだよな。。という方にはおススメ。
よくあるPhotoshopのテクニック本ではなく、色やレタッチに対する基本的な考え方が良く書かれている良書です。一冊読んで理解できれば、かなりの応用力が付いているはずです。ただし、やはり使用するソフトはPhotoshopが中心なので、その点は注意したほうがいいかもしれません。