APS-C機としてはほぼ完璧な仕上がり?
IMAGE MONSTERと銘打ってEOS 7Dが出たのは2009年の9月のことでした。
当時、APS-C機といえばEOS X3, 50Dなどエントリー~アマチュアクラスのカメラしか無かったキヤノンでしたが、7Dが出てから様相が一変。秒間8コマの高速連写に優れたAF性能、視野率100%ファインダー、防塵防滴など、ハイアマチュア~プロユースに十分対応出来る機種を出したことで、7DはキヤノンAPS-C機の不動のフラッグシップになりました。
センサー性能も当時としては優秀(同じセンサーが、X4、X5、60Dまで使われました)で、当時のEOS 5D MarkIIと並んでキヤノンの黄金期を支えた名機です。
名機であるが故に通常2~3年周期くらいでモデルが入れ替わるデジイチ業界で異例の5年もの間 旗艦の座を保ってきたのですが、いよいよフルモデルチェンジとなったのが今回紹介するEOD 7D MarkII(7DMk2)です。
発売は2014年11月上旬を予定しているとのこと。
これぞ正常進化
EOD 7D MarkIIを一言で言うと、まさに正常進化。これまでの7Dの良いところが鋭く研ぎ澄まされているそんな感じです。
そのため、特にサプライズとなるような目玉機能が搭載されていると言うわけではありません。7Dが得意としていた動体向けにより特化したそんな印象です。
どこを比較するかにもよりますが、総合力では現状 世界最高のAPS-C機となっているのではないでしょうか。
去年はK-3が世界最高だと言っていました^^;
(参考)PENTAX K-3が本気出したので、キヤノン党の私が妄想全開でレビューしてみた!
そこで今回はショールームで実機を触った感想を踏まえながら、EOD 7D MarkIIの主な特徴14個と、逆に注意した方が良いデメリットの両方について私の独断と偏見でご紹介していきます。
**実機レビューも公開中です!**
- EOS 7D MarkIIファーストインプレッションをレビュー(外観編)!
- EOS 7D MarkII徹底実写レビュー!【高感度、AF性能編】
EOD 7D MarkIIの目玉機能
さきほど堅実な進化を遂げた正常進化モデルだと言いましたが、目玉になる機能はいくつかあります。まずはそれらをちょっと詳しく見てみましょう。
まずは下記に挙げる5点について紹介してみます。
- オールクロスの65点AF
- 連写10コマ
- フリッカーレス撮影
- デュアルピクセルCMOS AF
- フルHD 60p撮影
オールクロスの65点AF
なんといっても一番の目玉はこれでしょうか。
どうしても65という測距点の多さに目が行ってしまいますが、大事なのはそこではなく、オールクロスと、横一杯まで広がった測距エリアの広さです。
65点オールクロス
一眼レフのAFは通常、被写体の縦のラインのコントラストを読み取ってピントを決めるのですが、縦だけでは無く、横のラインも読み取ってピントを決めるセンサーをクロスセンサーといい、通常のセンサーよりも精度良くピントを決められます。
このクロスセンサーがあるかどうかが、一眼レフエントリー機と中~上級機を分ける一つの目安となるのですが、7DMk2はすべての測距点がクロスセンサーで、中央はナナメの線まで対応したデュアルクロスセンサー(F8対応)です。
旧7Dもオールクロスでしたが、測距点は19点。今回は3倍以上も測距点が増えたのに65点すべてで精度の高いクロス測距が可能になっています。
↑キヤノンHPより
ちなみにキヤノンフルサイズのプロ機1DXですら測距点は61点でクロス測距可能なのはうち41点。残りはシングルライン測距です。(ニコンフラッグシップのD4sは51点中15点がクロス)
他メーカーの機種(APS-C機)を見てみると、ニコンD7100が51点中クロスが中央の15点、ソニーα77 IIが79点中クロスが中央の15点。PENTAX K-3は27点中クロスが中央の25点。
65点もの測距点を備えていてかつ、すべてが精度の高いクロスセンサーというのは、プロ機含めても驚異的です。
たとえば厳しい環境だとシングルセンサーは信頼性の面であまり使いたくないのですが、オールクロスであればすべての測距点を同じように使うことができるわけです。
(追記)1DXと比べると合焦精度はやや1DXの方が上回るようです(1DXはすべての測距点がデュアルライン化されているため。そらそうか。。)。ただ、被写体の追従性能などは上回っている模様。
測距エリアの広さ
もし7DMk2を手に取ることがあったら、ぜひファインダーを覗いてみて下さい。測距エリアがファインダーの端の方までびっしり並んでいるのが分かるはず。APS-C機はフルサイズ機に比べて測距点を端まで配置しやすいのですが、本当に画面全体でAFが効くんじゃないか思えるほど。
いくら測距点が多くても中央にびっしりと固まっていては意味がありません。測距点が画面全体にちりばめられているのがとても素晴らしいです。
ちなみに、旧7Dと7DMK2を比較してみるとこんな感じです。
↑画像はデジカメWatchさんからお借りしました。(7D、7DMk2)
特に左右の広がりがヤバいですよね。もう一度言いますが、これらすべてがクロスセンサーです。
連写10コマ
普通の人にとっては先代の8コマでも十分すぎた訳ですが、今回は秒間10コマに伸びました。プロ機の1DXが12コマ、D4sが11コマですからそれに匹敵するコマ数です(ミラーサイズが小さいのでAPS-C機の方が有利な条件ではありますが)。
とりあえず十分プロが使えるレベルの連写性能です。
実際に手にとって高速連写してみましたが、1DXの轟音とは違って比較的控えめな音です。先代の7Dと同じくパコパコ系な音なので好みは分かれそうですが非常に気持ちの良い連写。
ただ、ちょっと気になったのが高速連写中のボディの揺れ。10コマ/秒で撮っているとグリップを握っている手にもブルブルと振動が伝わってきます。1DXではボディの揺れはあまり感じない気がするのですが、これはボディの軽さに影響しているのかも?
バッテリーグリップを付けてボディを重くするか、一脚を使うなどしないとブレが気になるかもしれません(実写への影響は検証してません)
※追記:実機入手して試してみましたが、ショールームで感じたようなブルブルはあまり感じませんでした^^; 今のところしっかり構えて持てばさほど問題無いかと思っています。
旧7Dには搭載されてなかった静音シャッターも搭載されています。静音連写は秒間4コマ。もともとシャッター音は小さめの機種ですが、室内での撮影などでは結構重宝します。普段使っている5DMk3の静音シャッターを使ってから、静音シャッターを手放せなくなりました^^
フリッカーレス撮影
今回の変わり種機能としてはこれでしょうか。必要ない人にはまったくどうでも良い機能なのですが、室内スポーツ系のカメラマンであれば、この機能のためだけにカメラを買い換えてもいいと言ってもいい凄い機能です。
蛍光灯や水銀灯は電源の周波数(50Hz or 60Hz)に応じて人間には気づかない早さでチカチカ点滅しています。最近では点滅を押さえたタイプの明かりも多いですが、ちょっと古い屋内などに入るとチカチカしているわけです。
一定周期で明かりがON/OFFされている訳ですから、人間の目には気づかなくても高速シャッターで撮ったカメラの目には明るさのムラが如実に表れます。これがフリッカー現象。
これまでこの現象を解決する方法はなく、タダひたすら多くのシャッターを押して枚数を稼ぐことでしか対応することが出来ませんでした。どんな良いシャッターチャンスでもフリッカーで画面に輝度ムラが出ているモノはNGカットとなっていたわけです。
今回新たに搭載された「フリッカーレス撮影」機能は環境光の周波数を読み取って、点滅のONのタイミングを狙いながらシャッターを制御するという画期的な機能。連写中に点滅OFFのタイミングになりそうであれば、そのタイミングをわずかにずらし、点滅ONのタイミングでシャッターが切れるように自動的に制御します。
通常点滅のONから次のONまでの間隔は約1/100秒ですので、0.01秒以下のタイミングを精密にずらしてシャッターを制御するという恐ろしい機能。
フリッカー環境下で撮影をよくするカメラマンにとってはまさに唯一無二の機能です。キヤノンやるじゃないか!
↑キヤノンHPより
もちろん自然光(太陽光)にはフリッカーなど存在しませんので、屋内撮影をほとんどしない方にはあまり恩恵がないのかも知れません。。^^;
また、屋内でも1/100秒以上のSSで撮る場合は原理的にフリッカーは発生しないのでこの機能は屋内で高速シャッターを使う方に最も恩恵のある機能です。
デュアルピクセルCMOS AF
これは去年発売のEOS 70Dに初搭載なので目玉というわけではありませんが、上位機種にようやく搭載されたセンサーです。
デュアルピクセルCMOS AF(DPCAF)については70Dの記事でやや興奮気味に解説しているので良かったら参照してみて下さい。
(参考)キャノン党歓喜!EOS 70Dが「買い」のカメラだと思う4つの理由。
要はライブビューの時でも高速で正確なAFが作動するという機能(像面位相差AF)です。他社でも像面位相差AFのカメラは出ていますが、他社はAF検知用の画素を捨てているのに対して、キヤノンのDPCAFはAF検知用の画素自体も画像の記録に使えるという点で優れています。
動画の場合は必然的にライブビューになるので、ヌルヌルと高速で動くAFで動画撮影が出来てしまうわけです。
センサー画素は2,020万画素とEOS 70Dのものと同じですが、キヤノン説明員の話では同じセンサーではなく新開発センサー(設計から変えたと)だと言っていました。
(追記)どうやら70Dからはプロセスルールから変わった(より微細工程となった)ようです。ちょっと期待してしまいますね。
フルHD 60p撮影
これも動画を撮らない人にはほどんど関係ないですが、キヤノンのカメラとして始めてフルHD(1920×1080)で60p(60fps)撮影に対応しています。通常の動画は1秒間に30フレーム(30fps)なので、60pで撮影しておけば2倍のスローモーションにしたとしても通常と同じなめらかな状態で再生が可能です。
動体を多く撮る場面ではスローモーションが必要なことも多いでしょうから、この機能は有り難いですね。
出来ればフルサイズの5DMk3や6Dにも搭載して欲しかった機能ではありますが、新たに搭載されたデュアルDIGIC6による画像エンジン(CPU)高速化による恩恵なのでしょう。
他にもある嬉しい機能
さすがに5年ぶりのフルモデルチェンジですので、嬉しい機能はてんこ盛りです。
気になったモノをいくつか挙げていきます。
EOS iSA System
1DXに搭載されているRGB+IRセンサーを使った新しい測光センサーを積んでいます。1DXに搭載されていたのは10万画素でしたが、7D MarkIIに搭載されるモノは15万画素。
明るさだけでなく色を使いながら測光・調光、被写体検知をします。
おそらくこのセンサーの高画素化に伴ってAI SERVO AF(コンティニュアスAF)時に顔追従も可能になりました(EOS iTR AF)
AF系は1DXのものをごっそり移植して、さらに高性能化させていると言った印象。
常用感度 ISO16000
カタログ値では常用感度は16000、上限感度は51200となっています。
ショールームの実機(中身は試作機)でISO12800, 16000を撮ってみましたが確かに旧7Dと比べれば大幅に良くなっているように感じました(5年前のセンサーなので当然)。ISO16000でも写真としては十分成り立つレベルのノイズだと思います。
特にシャッタースピードを稼がなければならないスポーツや動物、乗り物系のカメラマンにとっては高感度性能は気になりますよね。
ただ、私が見たのは背面液晶の拡大画面でRAWではありません。最近のキヤノンは後処理でノイズを上手に消すという小手先の高感度性能向上に走っていて、センサーそのものの高感度性能はさほど向上していない。。という可能性もありますので、実写サンプルを良く見てから判断しても良いかも知れませんね。
キヤノン公式実写サンプルページ
↑ISO6400の作例を見ることが出来ます
新しい測距エリア選択レバー
これもEOSに初搭載。7DMk2にはスポットや領域拡大、ゾーンなど7つの測距エリアが選択できますが、その変更をマルチコントローラーと一体化したこのレバーで行うことが出来ます。
これまではシャッター横の小さなM Fnボタンを押しながら変更しなければならなかったのですが、このレバーでより素早く変更が出来ます。
実機で試してみましたがファインダーから目を離すことなくサクサクとエリアモード変更が出来てなかなか使い勝手の良いレバーだと思います。
このレバーに他の機能も振り分けられられそうなので使い方によってはさらに便利に使うことも出来そうです。
↑キヤノンHPより
デュアルカードスロット
待ってました!ようやくデュアルスロット対応(CF+SD)してくれました。もうそろそろSDデュアルだけでもいい気がしますが、CFが手元にたくさんある既存ユーザーにはかえってこっちの方が歓迎されるかも。
特に仕事で使う場合はデュアルじゃないと不安でしょうがないので、お仕事カメラマンにも歓迎されそうですね。
新型バッテリーグリップ
バッテリーグリップも5D MarkIIIと同じカートリッジ式で縦に2本入れるタイプに変わっています。旧バッテリーグリップは電池挿入の方向が異なり、持ち心地が悪かったのでありがたいです。
もちろんマルチコントローラー、測距エリア選択レバー、AF ONなどなど縦位置撮影に必要なボタン類はすべてバッテリーグリップにも付いています。
バッテリーグリップ付けたら1DXよりも高性能になるんじゃ。。(笑)
Digital Photo Professional 4.0対応
先日新しくなったキヤノン純正のRAW現像ソフトDPP4.0ですが、APS-C機として始めて(たぶん)正式対応になりました。
旧機種に対応しないというところが意味不明だったわけですが。。
防塵防滴機能の強化
実際に濡らしてみないと分からないですが、旧7Dに比べて防塵防滴部材の点数は4倍になっているそう。マウント周りは1D系と同じ機構を備えているようです。
雨の日のスポーツも安心です(もちろんレンズ側も防塵防滴である必要がありますが)。
↑キヤノンHPより
GPSの搭載
残念がららWiFiの搭載は見送られたようですが、GPSが搭載されています。
これも使う人と使わないひとが大きく分かれる所だと思うので何とも言えませんが、個人的にはアリな機能だと思います。Lightroomで写真管理している場合は7DMk2で撮った写真を地図上で管理できるようになりますね。
電池が使い回せる
標準搭載は容量がアップした新型のLP-E6Nですが、旧型のLP-E6との互換性はあるようです。旧7Dユーザーや5D、6D系ユーザー、70D、60D系の幅広いユーザーと互換性を持っていて一安心。
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ということで、めぼしい機能を中心に14個紹介してみました。もう小さな1DXと言っても良いんじゃないかと思います。
ただ、当然ながらすべてのひとにオススメできるカメラではないので、注意した方が良い人についてちらっと考えてみます。
こんな人は注意した方がいいかも?
重いのが苦手な人
重さは旧7Dと同じ910gです。これはエントリーフルサイズの6D (755g)よりも大幅に重く、5D MarkIIIの950gよりちょっとだけ軽い程度。
APS-C機だからといって軽いと思ったら大間違い。重い機材が厳しい人は注意しましょう。
まぁこんだけ機能をてんこ盛りにして、旧7Dと同じ重さに仕上げたのはエラいと思います。もちろん、場合によってはレンズが小型化できるのでシステム全体の総重量はフルサイズよりも軽量といえるかも知れませんが。
静物(風景、ブツ撮り)をメインに撮る人
三脚を使って、低感度で撮影することが多い人は本当にこの機種が必要かどうかはじっくり考えた方が良いかも知れません。
実写しないと未知な部分もありますが、最近のキヤノンセンサーの傾向から言って、低感度時の画質やダイナミックレンジが大幅に上がることが期待できない可能性があります。
静物メインの人は実写サンプルを良く見てから判断しても遅くないかもしれません。
子供を撮るお父さんカメラマン
動体性能が大幅にアップした7DMk2ならチョロチョロ動き回る子供たちの強い味方になることは間違いないですが、本当にここまでの高機能が必要かどうかは一度吟味する必要はあるかも知れません。
特に家族で行動を共にする場合、機材の重量の問題はなかなかシビアです。これまで7Dを使っていて買い換えと言うことであれば、大いに結構ですが、軽いKiss系からステップアップする場合は中間の70Dあたりと共に検討しても良いかと思います。
(参考)キャノン党歓喜!EOS 70Dが「買い」のカメラだと思う4つの理由。
子供がメインであれば70Dに明るい単焦点やズームレンズという組み合わせも良い選択肢になると思うので。
まとめ
といことであたEOS 7D MarkIIのよさげなポイントをズラズラと並べて書いてみました。機能的にはAPS-C版の1DXといった所。AF機能に限って言えばスペック的には1DXを凌駕している恐ろしいカメラです。
今は無き、1D MarkIVの後継機として考えることも出来そうです。
それでいて、売り出しのボディ価格は実売で20万前後と比較的落ち着いた価格になりそう。発売は2014年11月上旬を予定しているとのこと。
20万で落ち着いた価格とはどういうことだ!と言われそうですが、1DXは65万、5DMk3は35万くらいの売り出し価格だった気がするので。機能から考えればこの20万は決して高くないんじゃないかと。。^^;
あえて残念な点を挙げれば、バリアングル液晶が付かなかったこと、背面液晶が3.0型とやや小さい(1DX, 5DMk3は3.2型)こと、WiFiが搭載されなかったこと、連写時の振動が少し気になること くらいでしょうか。
他の機能についてはほぼ満足か期待以上のレベルに仕上がったモデルかと思います。
まぁ、最初に言ったとおり実機を少し触った後に、カタログを見ながら妄想しながら書いているので、またじっくり使うといろいろ感じることもあると思います。とりあえず私はこのカメラなら買い換えても良いかなぁと思いました。
すぐとは言わないですが(予約してしまいましたw)、近い将来手元の7Dをドナドナして、新しいEOS 7D MarkIIをお迎えすることになりそうです。
だれか、新型機を提供してくれたらもうすこし詳しくレビューするのですが、そんな優しい方はいませんかね?(笑)