α7RIIIは5D MarkIV, D850キラーなのか?
先日(17/10/25)またしてもソニーからスゴいカメラが発表されました。
α7RIIの後継となるα7RIII( ILCE-7RM3、α7R3)です。今年5月に発表され”ゲームチェンジャー”とも言われ世界を驚かせたα9の登場以降、次に登場するソニーのフルサイズミラーレス機に注目が集まっていました。キヤノン機をメインに使っていた私もこれならばとα9を手に入れたほどw α9については下記エントリーをどうぞ。
今回のα7RⅢは先代のα7RIIの定評ある高い解像度とα9の速写性、操作性を融合させたような高バランスの「いいとこ取り」のカメラだと言えます。(α9は驚異的な高速連写とAF性能をウリにしてキヤノン、ニコンのフラッグシップ機である1DX MarkII, D5を狙い撃つようなスペックでした)
スペック的にはα7RⅢはプロカメラマンの多くが使うキヤノン EOS 5D MarkIV, ニコン D850にガチンコの勝負を挑むような感じ。プロの使用するカメラの中でも最もボリュームがあるであろう、5D系、D800系の牙城を本機で崩しに掛かる大変なカメラです。
今回は一足先にα7RⅢの実機を触らせてもらえる機会を得ましたので、動画付きの実機レビューを含めながらファーストインプレッションとキヤノン EOS 5D MarkIVやニコン D850とのスッペック比較から今後のカメラ業界図はどうなるのかざっくり考えてみたいと思います。
ちなみに発売は11/25。予約は10/31から開始しています。初値はAmazonで税込み359,523円。
*今回の実機体験は1時間に満たない短時間のものでしたので不足点などもあるかもしれません。誤りがある場合はご連絡下さい。随時更新していきます。
*発売日に手に入れることができましたので使ってみた感想なども追記しました!
ここがスゴい!α7RIIIの概要&インプレッション
まずはザッとα7RⅢの概要とSonyフルサイズミラーレス機の中での立ち位置(特にα9、α7RⅡとの比較)について概要をまとめてみましょう。
α7RⅢはネーミングから2015年発売のα7RⅡの後継機となりますが、その外観や操作性、AFなどは最新のα9のものを多く引き継いでいます。
イメージセンサー、画質など
イメージセンサー(撮像素子)は先代α7RⅡのものと同じ約4,240万画素の裏面照射型(Exmor R)を採用。2年前のセンサーということで物足りなさを感じる人もいるかも知れませんが、当時先端を行きすぎていただけで現在においても世界トップレベルのセンサーである事は間違いありません。
例えばこちら、α7RⅢで撮影したJPEG画像です(撮って出しから明るさだけ少し調整)。
使用レンズはFE 85mm F1.4 GM。F4、ISO200。赤枠の所を等倍で切り出すとこんな感じです(クリックすると等倍サンプル表示)。そのままだと圧縮された画像なのでぜひパソコンでクリックして見てみてください。スゴいから。Profoto D2使用。
これ見てこの程度の解像力では足りないという人はほとんどいないでしょう。2年前にこのセンサーを乗っけてたα7RⅡがスゴすぎたんですw(FE85mmF1.4GMの描写力も相当良い)
また、イメージセンサーは同じでも画像エンジン(BIONZ X)の処理能力はα7RⅡ対比で1.8倍まで高められており、ISO800ー3200程度の中感度域では1段分のノイズが改善しているとのこと(RAWでも効果あるのかは分からない)。画像の読み出し速度も2倍に向上しているため後述のAF機能も大幅にアップ。
約1億6,960万画素相当のピクセルシフトマルチ撮影
さらに今回からイメージセンサーを1ピクセルずつずらして撮影し後に合成をするピクセルシフトマルチ撮影にも対応していることもポイントです。
シグマのFoveonセンサーなど特殊なものを除いて、世の中のデジタルカメラは1画素にRGBのうち1色の情報しか記録できません。ある画素がRの情報を記録したとすると、残りのGとBはまわりのセンサーの情報から推測して色を決めているのがデジカメのセンサーです。つまり、デジカメの画像はすべての色を直接記録しているのではなく、推測した結果にすぎないのですね。
ところがこのピクセルシフトマルチ撮影はセンサーシフト可能なα7RⅢの利点を生かし、1度の撮影に1ピクセルずつセンサーをずらして4枚の画像を撮影し、それを重ねることで1画素にRGBのすべての情報を取り入れようとする技術。ペンタックスのリアル・レゾリューション・システムと同じような技術です。
得られる画像は変わらず約4240万画素ですが、1枚の写真を作っている情報量は約1億6,960万画素相当で、現場で大判プリントを見てもかなりスゴい解像感でした。これを使えばα7RⅡを超える解像感をたたき出すことが可能。
ただし、超微小な1ピクセルぶんのシフトで撮影するため被写体は完全に静止している必要があります。ブツ撮りや建築などで使える機能かと。使える場所は限られます。
手ブレ補正向上、フリッカー低減も!
センサーシフト式の手ブレ補正はα9の5段を超えて5軸5.5段まで向上。α7RⅡの4.5段からは1段分の進化です。
また、搭載が望まれていたフリッカー低減機能もα7、α9系では初搭載です。
室内(特に古い照明の事務所とか体育館とか)で撮影することが多い人は待ち望んでいた機能ではないでしょうか?
AF、連写など
AFも強化
像面位相差可能な測距点はα7RⅡと同じ399点ですが、これを補うコントラスト式測距点が従来の25点から425点へと細分化。読み出し速度の向上と処理系の強化によってAFの補足率もα7RⅡ対比でアップしています(約2倍)。
399点の位相差AFポイントは画面の縦横68%x68%の範囲をカバーしており、さらに広い範囲まで425点のコントラストAFポイントがびっしりあります。
連写はα9の20コマには及ばないもののAF追従で10コマ/秒と十分すぎるレベル。連写可能枚数(RAW)も76枚まで増え、さらにカード書き込み中にもメニューや再生画面にアクセスできるような仕組みになりました。
これは便利。
ブラックアウトはあるがライブビュー連写可能
α9では連写中にもリアルタイムな景色(ライブビュー)を見ながら撮影ができる「ブラックアウトフリー撮影」が出来ましたが、α7RⅢはブラックアウトフリー撮影には対応していません。
ただし、僅かなブラックアウトはあるものの8コマ/秒(Hi)までは遅延の無いリアルタイムな景色(ライブビュー)を見ながら連写できます。
10コマ/秒(Hi+)ではα7RⅢでもライブビュー連写はできず、撮影結果をワンテンポ遅れて見るパラパラ漫画のような画面になります。10fpsで滑らかに表示されるのでブラックアウトフリー撮影っぽくみえますがブラックアウトフリーではないのです。α6500と同じような仕組みですね。
ちなみに、α7RⅡの連写はすべてパラパラ漫画になります(ライブビュー連写非対応)。
実際にα7RⅢの連写時のブラックアウト具合を撮ってきたのでこちらをどうぞ。
*10コマ連写時に画面が暗く見えるのはこのカメラの露出設定が大幅にアンダーになっていて撮影画像が暗いから。ストロボ用セッティングされててライブビュー効果がOFFになっていたのでモニター表示と撮影結果の露出結果が一致しなかったということです。ライブビュー効果ONにするか適切な露出で撮影すれば10コマ撮影で暗くなると言うことはありません。
シャッター音がメカっぽくてステキ
シャッターは従来とは別機構のものになりメカシャッターで10コマ/秒を実現。電子シャッター(サイレントシャッター)でも10コマいけます。メカシャッターのフィーリングもミラーレス特有の弱っちい甲高い音ではなく、メカっぽいしっかりした音で「撮ってる!」という感じがします(振動は若干大きい気がするが。。)
こちらも動画撮ってきました。
瞳AFは実用レベル。スゴい。
AF性能で忘れてはならないのがα9で大きく性能向上した「瞳AF」。これは実際に使ってみると止められないくらい快適なのでα7RⅢでどの程度の性能があるのか注目していたのですが、十分実用レベルの高い精度に仕上がっています。
α9とα7RⅢで瞳AFの効き具合を比べてみたのでどうぞ!(画面揺れまくっててすみません。。)
α9に比べると僅かに反応が遅い気もするけどここまで追えれば十分でしょう。あとは低照度の環境でもα9並に瞳を追えるかどうか(試してない)
ファインダー、外観など
α9とほぼ同じ
ファインダーは個人的にかなり完成度が高いと思っているα9の有機EL368万ドットのEVFと同じもの(たぶん)を採用しています。広々と見やすく光学ファインダー使っている人にも違和感少ないと思う。
外観は左上部のモードダイヤルを除いて、ボタン配置などはほぼα9と同じです。α7系にもようやくマルチセレクター(ジョイスティック)が搭載。背面のコントロールホイール(電子ダイヤル)はα7RⅡより大型化されしっとりとしたクリック感のあるものになっています。
α9で搭載されていたモードダイヤル(ドライブとAFモード)が廃止されてしまった点はやや残念です(キヤノンにはもともと無いダイヤルなのでそんなに落胆はしていないのですが、Fnボタンが不足しそう)。
シャッターボタンもα7RⅡのフニャフニャなやつではなく、α9と同じしっかりしたものに変わってます。マウントプレートの取り付けねじもα9と同じく6本で剛性も高められています(α7RⅡなどは4本)。
実際触ってみてα9との違いを感じたのは電源スイッチのフィーリングくらい(説明員の話ではグリップ形状なども僅かに変わっているらしい)。
不満の多かったバッテリーもα9にならって容量倍増。軽めの撮影なら1個で十分だし、丸一日撮影でも2本あれば足りることが多いかな(α9の経験上。スペックではα7RⅢの方がさらに電池持ちは良いみたい)。
転送速度もかなり速い
インターフェイスはソニーαとしては始めてUSB 3.1 TypeC(Gen1)を採用。データ転送速度は従来のUSB2.0 microと比べて最大10倍と劇的に早くなってます(Gen1のため転送速度はUSB3.0 microBの5Gbpsと変わりありませんが端子サイズは小型化されています)。
今回同時に発表された「Imaging Edge」を使ったテザー撮影の様子を撮ってきたのでどうぞ。1枚約42MBのRAWファイルがスルスルPCに入っていきます。
Imaging Edgeのテザー撮影機能も強化されており、PC側でAFを制御したり、ブツ撮りなどでありがたい画像重ね合わせ撮影も可能です。
また、従来のMicro USB(ソニーはこれがレリーズ端子になる)も残っているため、データ転送はUSB-Cを使いながら従来のレリーズも使える模様。
---
ということでα7RⅡからの主な変更点を挙げただけでも結構な量になります。他にも動画機能が向上していたりといろいろ変化があります。
α9のようにハード性能が大進化!という訳ではなく、良く見てみるとα7RII, α9、α99IIで使われていた既存ハード性能をうまく組み合わせ、それを高いレベルで最適化したといった仕上がりです。冒頭でも言いましたが「いいとこ取り」という表現がしっくりきます。(ハード大進化のモデルはα9Rとかになるんじゃないかと)
表にまとめたので細かな点は以下の表からご確認下さい。
α7RⅢ、α7RⅡ、α9スペック比較
α7RⅢ | α7RⅡ | α9 | |
---|---|---|---|
発売日 | 2017年11月25日 | 2015年8月7日 | 2017年5月26日 |
画素数 | 4240万画素 | 4240万画素 | 2420万画素 |
ISO感度 | 100~32000 | 100~25600 | 100~51200 |
ISO感度(拡張) | 50~102400 | 50~102400 | 50~204800 |
測光輝度範囲(EV) | -3~20 | -3~20 | -3~20 |
連写(AF追従) | 10コマ/秒 | 5コマ/秒 | 20コマ/秒 |
ライブビュー連写 | 8コマ/秒 ブラックアウト あり | ✕ | 20コマ/秒 ブラックアウト フリー |
連続撮影可能 枚数(RAW) | 76枚 | 23枚 | 241枚 |
最高シャッター速度 | 1/8000 | 1/8000 | 1/32000 |
ストロボ同調 シャッター速度 | 1/250 | 1/250 | 1/250 |
位相差AFポイント (コントラスト式) | 399(425) | 399(25) | 693(25) |
測距輝度範囲 | -3~20 | -2~20 | -3~20 |
顔認識 | 〇 | 〇 | 〇 |
瞳認識 | ◎ | 〇 | ◎ |
手ブレ補正 | 5軸 5.5段 | 5軸 4.5段 | 5軸 5段 |
ピクセルシフト撮影 | 〇 | ✕ | ✕ |
フリッカー低減 | 〇 | ✕ | ✕ |
EVF | 368万ドット | 245万ドット | 368万ドット |
ファインダー視野率 | 100% | 100% | 100% |
ファインダー倍率 | 0.78 | 0.78 | 0.78 |
背面モニター | 144万ドット | 123万ドット | 144万ドット |
モニターチルト | 〇 | 〇 | 〇 |
タッチ操作 | 〇 | ✕ | 〇 |
動画(FullHD) | 120p | 60p | 120p |
動画(4K) | 30p | 30p | 30p |
4K撮影時クロップ | なし (クロップも可) | あり | なし (クロップも可) |
HDMI出力 | 4K UHD 4:2:2 8bit | 4K UHD 4:2:2 8bit | 4K UHD 4:2:2 8bit |
Log撮影 | 〇 | 〇 | ✕ |
HDR動画 | 〇 | ✕ | ✕ |
USB | USB 3.1 TypeC(Gen1) | USB 2.0 micro | USB 2.0 micro |
USB給電 | 〇 | 〇 | 〇 |
Wi-Fi | 〇 | 〇 | 〇 |
GPS | ✕ | ✕ | ✕ |
Buluetooth | 〇(位置のみ) | ✕ | 〇(位置のみ) |
記録スロット | デュアル | シングル | デュアル |
記録メディア | SD UHS-II / UHS-I | SD UHS-I | SD UHS-II / UHS-I |
バッテリー | NP-FZ100 | NP-FW50 | NP-FZ100 |
撮影可能枚数 | 530(650) | 290(340) | 480(650) |
使用可能温度 | 0~40℃ | 0~40℃ | 0~40℃ |
耐候性 | 防塵防滴に配慮 | 防塵防滴に配慮 | 防塵防滴に配慮 |
重量 | 657g | 625g | 673g |
サイズ(mm) | 126.9x 95.6x 62.7 | 126.9x 95.6x 60.3 | 126.9x 95.6x 63.0 |
価格(税込み) | 360,000円前後 | 280,000円前後 | 440,000円前後 |
*もし誤っている点などあればご連絡下さい。。
α7RⅢ、5D MarkIV, D850の性能比較
さて、ここからが本エントリーの本題です(遅くなりました。。)。ではこのα7RⅢは他社を含めたレンズ交換式フルサイズ機の中ではどのような位置関係にあるのかということです。
このカメラはタイトルにもあるように完全にキヤノン5D系、ニコンD800系のユーザーを奪いに来ているカメラでしょう。スペックをみても、価格を見ても。
まずはα7RⅢ、5D MarkIV, D850のスペック一覧を見ていただきましょう。
α7RⅢ、5D MarkIV, D850のスペック一覧
α7RⅢ | 5D MarkIV | D850 | |
---|---|---|---|
発売日 | 2017年11月25日 | 2016年9月8日 | 2017年9月8日 |
画素数 | 4240万画素 | 3040万画素 | 4575万画素 |
ISO感度 | 100~32000 | 100~32000 | 64~25600 |
ISO感度(拡張) | 50~102400 | 50~102400 | 32~102400 |
測光輝度範囲(EV) | -3~20 | 0~20 | -3~20 |
連写(AF追従) | 10コマ | 7コマ | 7コマ (9コマ*) |
連続撮影可能枚数(RAW) | 76枚 | 21枚 | 51コマ(XQD) |
最高シャッター速度 | 1/8000 | 1/8000 | 1/8000 |
ストロボ同調シャッター速度 | 1/250 | 1/200 | 1/250 |
サイレント (無音)撮影 | ◎ | ✕ | 〇 (ライブビュー) |
AFポイント | 399点(425点**) | 61点 | 153点 |
測距輝度範囲 | -3~20 | -3~18 | -4~20 |
顔認識 | 〇 | 〇 | 〇 |
瞳AF | 〇 | ✕ | ✕ |
手ブレ補正 | 5軸 5.5段 | なし (レンズ側) | なし (レンズ側) |
APS-Cクロップ | ◎ | ✕ | 〇 |
インターバルタイマー | ✕ | 〇 | 〇 |
バルブタイマー | ✕ | 〇 | ✕ |
フリッカー低減 | 〇 | 〇 | 〇 |
ピクセルシフト撮影 | 〇 | ✕ | ✕ |
ファインダー方式 | 電子式 (368万ドット) | 光学式 | 光学式 |
ファインダー視野率 | 100% | 100% | 100% |
ファインダー倍率 | 0.78 | 0.71 | 0.75 |
背面モニター | 144万ドット | 161万ドット | 236万ドット |
モニターチルト | 〇 | ✕ | 〇 |
タッチ操作 | 〇 | 〇 | 〇 |
動画(FullHD) | 120p | 60p | 60p |
動画(4K) | 3840x2160 30p | 4096x2160 30p | 3840x2160 30p |
XAVC S | MotionJPEG | MOV, MP4 | |
4K撮影時クロップ | なし(クロップも可) | あり | なし(クロップも可) |
HDMI出力 | 4K UHD | FullHD | 4K UHD |
4:2:2 8bit | 4:2:2 8bit | 4:2:2 8bit | |
Log撮影 | 〇 | △(別途有償) | ✕ |
HDR動画 | 〇 | 〇 | ✕ |
USB | USB 3.1 TypeC(Gen1) | USB 3.0 Micro-B | USB 3.0 Micro-B |
USB給電 | 〇 | ✕ | ✕ |
Wi-Fi | 〇 | 〇 | 〇 |
GPS | ✕ | 〇 | ✕ |
Buluetooth | △ | ✕ | 〇 |
記録メディア | SD UHS-II / UHS-I | CF / SD UHS-I | XQD / SD UHS-II |
撮影可能枚数 | 530枚(650枚) | 900枚(300枚) | 1840枚 |
使用可能温度 | 0~40℃ | 0~40℃ | 0~40℃ |
耐候性 | 防塵防滴に配慮 | 防塵防滴 | 防塵防滴 |
重量 | 657g | 890g | 1005g |
サイズ | 126.9x 95.6x 73.7 | 150.7x 116.4x 75.9 | 146x 124x 78.5 |
価格(税込み) | 360,000円前後 | 305,000円前後 | 360,000円前後 |
*バッテリーグリップ+EN-EL18bは9コマ/秒になる
**位相差を保管する425点のコントラスト式測距点も使用できる
だいぶいい線いっている
スペックを比較すればもはや5D系やD800系に全くひけをとらないどころか、人によってはα7RⅢのほうが魅力的に映るという人も多いのでは?
スペックに現れないような操作系全般もα9からかなり良くなっていることも重要です。今までα7RⅡの高画質は魅力だけど操作系やワークフローに不満があり、でもα9の2,400万画素はちょっと物足りないし50万は高い。。といったユーザーの心も動かしそうな内容です。
ついでにレンズ群も大三元、小三元(それぞれF2.8、F4.0通しの広角、標準、望遠ズーム)が完成し、100-400mmの望遠ズーム、400mmF2.8の開発発表(2018年夏発売)、単焦点も充実とこれまで弱点と言われていたレンズラインナップも怒濤の勢いで整備されました。
当時に発表された24-105mmF4ズーム(FE 24-105mm F4 G OSS)を待っていた人も多いでしょう。
本丸を切り崩しに掛かるカメラ
5D系やD800系は多くのプロカメラマンやハイアマチュアが使う最もボリュームの多い、いわば「本丸」です。数年前まではキヤノンとニコンがこの市場をほぼ独占していた訳ですが、今回のα7RⅢはこの本丸を一気に切り崩しにきている感じがします。
すでにα9の投入で勢いづいているソニーはフルサイズのレンズ交換式市場ではニコンを抜いて第二位(台数、金額)の座まで来ているようです。スマホに押され縮小し続けるカメラ市場の中でほぼ右肩上がりの破竹の勢いです。首位のキヤノンとの差はまだありそうですが、ひょっとすると??という未来がうっすらと見えてきます。
キヤノン、ニコンのカメラに比べて個人的にグッとくるポイントを挙げてみます。
キヤノン、ニコンに比べてここが良い、悪い
まずは良いポイントから!
例えばキヤノンの5D MarkIVは私も実際使っていて、スペックには現れない使用時の圧倒的な信頼感というか安心感があったり、先日発表されたニコンのD850はフルサイズでは世界最高の画質を誇るなどそれぞれのメーカーに良い点はありますので自分に合ったカメラは人それぞれです。
まずはα7RⅢのスペックと触ってみた感想からがキヤノン、ニコンに比べてここが良さそうという点を挙げてみようと思います。
圧倒的な瞳AF
上でも動画付きで紹介した瞳AF。やっぱこれすごいのよ。
各社のカメラでは顔認識は当たり前になってきており、メーカーによっては顔の中でも瞳を検出してピンポイントにフォーカスを合わせるという所まで技術が進歩しています。
ソニーのカメラにも以前から瞳AFは搭載されていましたが、α9で一気に実用レベルになりました。α7RⅢでもかなり精度が高いです。一度これ使ってしまうともう止められないくらい快適。普通のポートレート撮影ではもう瞳AF以外使わなくてもいいくらいです。
APS-Cクロップが実用レベル
APS-Cクロップ自体は昔からある機能ですが、ようやく実用レベルになったと感じています。
通常、フルサイズをメインで使うユーザーがサブでAPS-Cセンサーのカメラを使うときは連写や望遠が欲しいからだと思うんですよね。
α7RⅢならクロップしても18MP程度と普通に使える解像度になりますし、連写は10コマそのままつかえ、AFポイントに至ってはほぼ全面で位相差AFが使用可能になります。もちろんRAW記録が可能です。
ニコンでもクロップ出来るんですが、ファインダー撮影ではクロップしても像が拡大されないので不便。α7RⅢならEVFなのでファインダー撮影でも像がAPS-C用に拡大され使い勝手が通常時と変わりません。しかも、ボタンをカスタマイズするとFnボタン一発でAPS-Cクロップモードに切り替わる機能も実装。
サブのAPS-C機がいらなくなるレベルです。α7RⅢ1台で高速連写タイプのAPS-C機としても使えます。(α7RⅡはAFイマイチだし、α9だとクロップ後の解像度が不足)
やってることはフルサイズ画像のトリミングなので後で切り抜けば良いじゃんという話でもあるのですが、構図の決定が簡単になるメリットは無視できません。また、α7RⅢに軽量で安価なAPS-C用レンズを付けて撮影に出かけても快適になるんですよね。
やっぱEVFは便利
まだEVF(電子式ファインダー)は受け入れられないという人もいるでしょうが、α9になってからEVFの見え方もかなり良くなりました。α7RⅢもおなじEVFが採用されています。
好き嫌いや慣れの問題もありますが、このレベルのEVFなら個人的にはもうOVF(光学式ファインダー)でなくても良いのかなといった感じがします。一度使い慣れると便利でしょうがない。
もちろんOVFの良さは否定しませんし、OVFを使う撮影も好きですが。どっちが便利で楽かというと圧倒的にEVF。
いろいろなレンズが使える
ミラーレスであるα7RⅢはマウント面からセンサーまでの距離(フランジバック)が短いというキヤノン、ニコンの一眼レフには絶対に超えられない物理的な特徴があります。短いものはスペーサーを噛ませれば長くなりますので、α7RⅢはマウントアダプターを介することで、キヤノンのレンズもニコンのレンズも使えます(純正と同じように使える訳では無く、いくつかの制約はある)。
例えばシグマのMC-11はシグマ製EFマウントだけでなく、純正EFレンズも使えるので便利(AFも使えるけど速度は純正に劣る)。キヤノンのユーザーでレンズはアダプター経由で使えるのだからお試し的にα7、α9シリーズを使ってみて帰ってこられなくなった人の話も良く聞きますw
古いフィルム時代のオールドレンズを使って楽しむことも可能。しかも手ブレ補正がボディ内のセンサーシフト式なのでオールドレンズも手ブレ補正付きで使えちゃったりするわけです。良かったらオールドレンズの過去記事もどうぞ(ソニーでは無く富士フイルムのボディだけど)。
ここでもAPS-Cクロップが生きてくる(使えるレンズのバリエーションが増える)。
仕事の本気撮影から趣味の撮影まで1台で何でもこなせる万能感があります。
小さくて軽い
始めに言っておくとこれはメリットでもありデメリットにもなる特徴です。まずはメリットから。
α7RⅢに限らず、α7、α9ファミリーは従来の一眼レフに比べて圧倒的に軽く、小さいです。軽くて小さいと言うことは行動が制約されにくいですから撮影の幅が広がる可能性が大きくなります。
特にこの軽さは小さめの単焦点やF4くらいまでのズームレンズと組み合わせるとかなりバランスが良くステキです。
例えば、ソニー、キヤノン、ニコン、それぞれの小三元レンズと組み合わせたときのトータル重量を比較してみるとこんな感じ。
α7RⅢ | 5D MarkIV | D850 | |
---|---|---|---|
ボディ | 657g | 890g | 1005g |
広角 | FE 16-35mm F4 ZA OSS 518g | EF16-35mm F4L IS USM 615g | AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 680g |
標準 | FE 24-105mm F4 G OSS 663g | EF24-105mm F4L IS II USM 795g | AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR 710g |
望遠 | FE 70-200mm F4 G OSS 840g | EF70-200mm F4L IS USM 760g | AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR 850g |
合計 | 2678g | 3060g | 3245g |
- | +382g | +567g |
システム全体でも3kg以内。ソニーのF4通しレンズは結構軽いのが多いのでボディの重量差以上にキヤノン、ニコンとの差が開いています。
α7RⅢがイマイチな(であろう)ところ
褒めすぎてもアレなんで、良くないところも挙げておきます。
小さいこと
これはα7RⅢの長所でありながら最大の短所でもあると思っています。
上述のように小さめ(軽め)なレンズとの組み合わせであればとても快適に使えるα7RⅢですが、大三元級の重いレンズと組み合わせるとフロントヘビーになり非常にホールド性が悪く疲れます。
手が大きめな方ならグリップ時に小指がはみ出て遊んでしまう「小指あまり」状態になるので事態は一層深刻です。私がα9を使い始めてから一番イマイチだと思っているポイント。F4の小三元レンズはキヤノン、ニコンに比べて軽いこともありまだバランスがとれますが、F2.8の大三元レンズ(GMシリーズ)は特段軽いわけではないのでバランスが悪いです。クリップオンストロボを装着したときのアンバランスも結構キツい。
手の大きさにもよりますが、ホールド感はボディサイズが大きいキヤノン、ニコンの一眼レフが圧倒的に優れていると思います。個人的には別売のグリップエクステンションやバッテリーグリップ、他社製プレートなどを付けてグリップ部分を拡張しないと使いたくないなと思うほど。詳しくは以下のエントリーへどうぞ。
追記)α7RIIIにもα9用のRRSプレートが問題なく装着可能でした!
レンズが高価なこと
ソニーEマウントの純正レンズはキヤノン、ニコンの純正に比べても結構割高なものが多い印象(発売間もないレンズが多いというのもある)。
さらにキヤノンEF、ニコンFマウント対応のレンズは歴史も長いので中古も豊富だし、シグマやタムロンといったお得なサードパーティーのレンズの選択肢も多いのがメリット。
シグマ、タムロンともにまだフルサイズ用Eマウントのレンズは用意していません。流石に今後FEレンズもラインナップしてくるでしょうが、少なくとも後数年は選択肢が限られることでしょう。
マウントアダプターを使えばいろいろなレンズが使える事がメリットですが、アダプターを介さずカメラの性能をフルに引き出して快適に使いたいということであれば現状は高価なレンズを使うしか手がありません。
また、アクセサリー類も純正はやや割高ですし、サードパーティー性のものもキヤノン、ニコンに比べると限られます。
メニューなどUIまわりがイマイチなこと
操作系などはα9から劇的に良くなったと感じているけれど、まだメニューの遷移や細かなメニュー内容など使っていくウチに、もう少しなんとかならんもんか。。という問題に直面します。
ここは昨年までキヤノン機をメインに使っていたため、単純に慣れていないということもあるのでしょうが、やはり使い勝手という点ではキヤノン、ニコンにアドバンテージがあると思います。
例えば一つ例を挙げてみると、カードをフォーマットするときのUIの違い。α9をもう半年近く使っていますが未だにフォーマットが怖いです。これ。
画面に出てる順番と実際のスロットの位置関係が逆なの。こういうの本当に止めて欲しい。どうしてこんなことになってしまったのか。。(α7RⅢで同様のメニューになっているかどうかは時間の都合で確認出来なかったけど。写真はα9のもの)
キヤノン 5D MarkIVの場合も位置関係は逆になっているのだけど、アイコンを使い今自分がフォーマットしようとしているのがどっちなのかが分かるようになっている。
で、次のスロット選択時の最終画面もキヤノンはとても親切。
カメラマンは自分のメモリーカードならどのくらいの使用量かということはなんとなく分かっていることが多いので、5D4は2段階でうっかりミスを抑制するUIなのだけど、α9は最終画面でどのカードを選んでて、そのカードの使用量がどの程度なのかも分からないので非常に怖かったりするんです。
カードのフォーマットミスはカメラマンにとって最もやってはいけないことなので、キヤノンはそのへんよく分かってるUIになってるのよね。
こんな感じで、所々、このカメラって写真を実際に撮る人の意見取り入れてんの?みたいな細かなモヤモヤがあったりします。だいたい慣れてしまえばどうってことはないですし今後少しずつ改善されていくのだろうけど(希望)。
細かな所を挙げるとたくさんあるのでそのうちどこかでまとめたいなと思います。
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ということでα7RⅢはかなり完成度は高いものの他社のカメラと比べると最高というわけではないというのは覚えておきましょう。
私はこの辺差し引いてもα9すげー!と思って手に入れたし、α7RⅢも購入する予定ですがw
まとめ
後半ややダラダラしてしまいましたが、ソニー内のα7RⅢの立ち位置と、キヤノン、ニコン、ソニーの3社での立ち位置についてまとめてみました。
ファーストインプレッションでは本当にバランスの良い完成度の高いカメラだと思いました。ライトに使いたいときもヘビーに使いたいときもどちらも1台でこなせるのがステキです。個人的にはα9よりもα7RⅢに魅力を感じます。
一方で、競争があるからこそ良いカメラが生まれてくるわけで、キヤノン、ニコンからもソニーの快進撃を止めるようなスゴいカメラが出てくることも期待しています。私はまだキヤノンの資産一つも手放していないから!w
また、今回はフルサイズ中心の三社の話でしたが、撮影スタイルによってはフルサイズ機がベストだとは限りません。APS-Cクラスやマイクロフォーサーズでもスーパーカメラや個性的なカメラがどんどん発売されていますから自分に必要なカメラはよく考えて選ぶのも大事ですよ!
ちなみに発売は11/25。予約は10/31から開始しています。初値はAmazonで税込み359,523円。
追記:実際に使って見ての感想など
早速発売日にFE 24-105mm F4G OSSと合わせて手に入れることが出来ましたので簡単にレビューしてみたいと思います!
とにかく良く写る!
α7RIIとほぼ同じセンサーを積んでいるということで、良く写ることは想定していたのですが、実際に撮ってみても良く写ります。非常に優秀なセンサーですね。
笑ってしまったのはこの写真。カメラを受け取ってから試し撮りをしていて、かえってみたらなんか黒いゴミっぽいものが?と思って拡大して見たら清掃のおじさんでしたw
DXO MARKでもフルサイズセンサートップの性能
カメラのセンサー性能を測るDXO MARKでの総合スコアも先日公表され、ニコンD850と並ぶ100点(満点という意味ではない)。キヤノン 5D MarkIVは91点です。
フルサイズセンサーのカメラとしては現状(画質は)世界最高レベルのカメラの一つと言えそうです。
鬼のような解像感
手に入れた翌日に京都に行ってきたのですが、もうねヤバいですね。この解像感は。手ブレ補正も良く効くので夜間の手持ちでもぜんぜんいけます。これら全部手持ち。
高感度もいける
手ブレ補正が効くんでまだあまりがっつり高感度撮影はしていないのですが、撮影後に大きな補正をしないのならISO3200とかISO6400でも余裕です。
ちなみにこれ常用最高感度のISO32000の撮って出し。3200じゃないです、32000。
AF速度もほぼ問題なし
AFもほとんど問題ないです。比べてみれば確かにα9の方がキビキビ動く感じはするのですが。
ただ、使って見た感じ位相差エリアを外れた外周のコントラストエリアを使ってAF-Cするとピントが定まりにくいことが何度かありました(フラフラする感じ。AF-Sなら決まる)。
また、花など小さな被写体で背景に抜け感があるシーンだと結構ピントが抜けやすいかも。この辺はDMFなどを上手く使う必要がありそうです。
クロップ機能が超快適
4,200万画素もあるとAPS-Cクロップモードにしても1,800万画素残るので十分実用的です。しかもα7RIIIではカスタムボタンにクロップ機能が割り当てできるようになったため、事前に割り当てておけばボタン一発で焦点距離1.5倍になって超便利。
中央をトリミングして保存しているだけではあるのですが、ファインダー内も拡大されるし結構便利。あと、意外な使い方としてはファインダーが拡大されるのでMF時のピント確認も容易になります。
電池も持つよ!
バッテリーの持ちもα7RⅡ系と比べれば格段に持ちます。京都で朝から6時間ほど700ショット程度撮影してまだバッテリーが20%くらい残ってるとかそんな感じ。
一日撮影するならバッテリー2個あれば普通は十分だと思います。緊急時はモバイルバッテリーで充電も出来るしね(充電速度は遅いけど)。
モアレに注意
ただし、ローパスレスセンサーの宿命であるモアレは生地によって結構盛大に出たりします。
先日アパレル系の撮影をしたのですが、生地によってはこの程度出ることも。
枚数が少ないなら消せる範囲ですが、アパレル系のお仕事カメラマンで大量に撮影が必要な人はちょっと避けた方が良いでしょうか。後処理大変。
こういう撮影はまだEOS 5D MarkIVなどローパスありのカメラの方が安定すると思います。
耐久性もなかなかですよ
そんな感じでルンルンで使ってたα7RIIIですが、先日FE 24-70mm F2.8 GMを付けた状態で不注意で落下させてしまいレンズの根本がポッキリ折れるアクシデントがありました。。
レンズは見ての通り即入院となったわけですが、ボディもマウント精度や見えないところでの破損が起きていないか点検して貰いました。
その結果、ボディ側は無傷ということで、レンズが根本から折れる程度の衝撃があってもマウントには影響ない程度の強度はあるようですw さすがマウントネジを6本に増しただけのことはある。サンプル数1ですが(汗
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カメラの好き嫌い的な部分を差し引いて単純な性能だけ見るなら、とりあえずα7RIIIで撮れないシーンはほぼ無いんじゃないでしょうか。高解像度、高感度、動体、ポートレートなど何でもござれ的な万能なカメラです。
これは良いカメラだと思います。マジで。