三脚と雲台をアルカスイス化したら便利
三脚と雲台は切っても切り離せない関係ですから、いつも付けっぱなしにしている人がほとんどだと思います。中には一度も外したことがなかったり、「えっ?三脚と雲台って切り離せるの?」と思っている人もいることでしょう。
メーカーや機種にもよりますが、激安のものを除く多くの三脚は雲台を取り外して別のものと交換できるんです。
ただ、三脚と雲台の間は通常ネジでガッチリと固定されているため頻繁に脱着させるのはかなり面倒。。そこで雲台とカメラがクイックリリースプレート(クイックシュー)で簡単に脱着できるように、三脚と雲台の間もクイックリリース化したら脱着の手間が大きく省けます。
そこで今回は、三脚と雲台をクイックリリース化(アルカスイス互換で)するとスゴくメリットが大きいよという話をしてみたいと思います。特に三脚を複数持っている人やよく持ち歩く人には超おすすめな方法です。
SmallRigとKIRKの製品のレビューも行いますよ!
三脚と雲台は分けて持ち歩こう
三脚(脚の部分)と雲台部分をクイックリリース化したときのメリットは大きく2つあります。
1.複数台使うときに便利
1つめは複数の三脚や雲台を持っている場合に入れ替えが簡単なこと。いちいちネジを緩めて付け替えて・・・という操作をしなくても良くなります。雲台や三脚のネジは丈夫なものではありますが頻繁に脱着させることは想定していないため、脱着を繰り返して使えばネジが緩くなってガタが出るという可能性もあるかもしれません。
クイックリリース化すれば、カメラと雲台の関係のように脱着が容易になりますし、アルカスイス互換であれば使用していくウチにガタが出てくる確率もかなり低いでしょう。
アルカスイス互換と普通のクイックリリース式の違いは下記エントリーに分かりやすくまとまっていますよ。
2.移動中は雲台を外すと快適だよ
もう一つの理由は移動中(特に徒歩や電車など)は三脚の雲台(ヘッド)を取り外した方が快適だし安全だよということ。ここは結構多くの人が気にしていない点ですが大事なのです。
リュックに取り付けた時の安定感が違う
三脚で最も重いところはどこかというと上部の雲台です。ですから三脚ケースに入れて持ち運ぶ場合には雲台部分を下にすることで安定して持ち運べるのですね。雲台上にしてケースに入れてるよ・・・と言う人はぜひ次は逆さまにして持ち運んでみてください。劇的に楽になると思います。
でもリュックのの脇に三脚を刺す場合は雲台を下にすることはできません(トラベル三脚除く)。原理的にはできるのですが雲台は大きすぎてポケットに入らないんですね・・・
短い三脚であればそれほどバランスは崩しませんが、リュックの全長を超える長さになると結構バランスが悪くなって背負い心地が犠牲になります。
このとき、雲台を外すと全長が短くなるだけでなく、最も重い雲台部分がなくなるので格段にバランスが良くなりリュックでの運搬が非常に快適になるのです。
Endurance Extなど中型のリュックだと快適に持ち運べるのは縮長50cmくらいまでなので小型三脚でも雲台付きで持ち運ぶのは結構大変ですが、雲台外してしまえばトラベル三脚よりも快適に持ち運ぶことができるのです。
縮長70cmを超えるような中~大型三脚も雲台部を外せば60cm程度に収まりますので、Endurance HGクラスの大型リュックでの可搬性も大きく高まります。
安全性も高まるよ
リュックのサイドポケットに三脚を入れる場合電車や混み合う街中で人やモノにぶつけてしまう可能性も高まります。特に雲台部分は金属の塊なので凶器となってしまう場合も・・・(雲台を壊すリスクもある)
そんなとき雲台を外しておけばぶつけてしまうリスクを抑えることができるようになります。雲台を外すだけでいろいろなメリットがあるんですね。
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三脚と雲台をクイックリリース化しよう!
そんなわけで、三脚と雲台の間もクイックリリース化してしまえば超便利になるのではないか?ということになるのです(別に私が思いついた訳ではないんですがね)。
最も簡単にクイックリリース化するなら、雲台とカメラ用のアルカスイス互換クランプとプレートを使う事ですが、特にプレートは円形の物がないので雲台にフィットしないですし、安定性にも不安が残ります。三脚-雲台間は太ネジ(3/8インチ)が多いですが、雲台-カメラ間は細ネジ(1/4インチ)が普通なので変換アダプターをたくさん噛ませる必要があるのもネック。
SmallRig、KIRKの専用品を手に入れてみた!
そんな中でSmallRigとKIRKというブランドでは三脚-雲台間をアルカスイス化する専用クランプとプレートが発売されているんですね。さっそく2製品を手に入れてみましたのでレビューを交えて紹介していきたいと思います。
確かRRSにも雲台用のプレートのラインナップがあった気がします(高いw
SmallRig 雲台用クイックリリースプレート&クランプセットレビュー
まずはSmallRigの雲台用クイックリリースプレート&クランプセットから見ていきましょう。
実はSmallRigのものは先月くらいに製品化されたできたてホヤホヤのものです。
クランプ部分が直径65mmのアルカスイス互換タイプになっていて、プレート部分は直径60mmの2406と50mmの2469の2タイプが販売されています。
重さは実測で60mmのものはクランプとセットで153g、50mmが147gでした。
従来よりもずっと安い高コスパ製品
これまでもこの手の製品は後述するKIRKなど老舗メーカーで取り扱いがあったのですが10,000円以上するなかなか高価なパーツでした。SmallRigのものは4,499円(執筆時)と従来品の半額くらいの値段でかなり手に入れやすくなっているのが特徴。
実際に付けて見るとこんな感じです。GITZO(ジッツォ) 3型ロングにP0 hybridを付けてみました。
ジッツォ 3型のベース部は直径60mmなので65mmのクランプだと若干はみ出るのですがこのくらいなら許容範囲でしょう。
アルカスイス互換は面で固定するから丈夫
直結に比べれば剛性面ではやや不利ではありますが、アルカスイス互換クランプはプレートを面で固定するので、点で固定する一般的なメーカー独自のクイックリリース機構よりもしっかり固定できます。この辺り詳しくは下記記事をどうぞ。
SmallRigでは耐荷重6Kgと言っていますがかなり耐えられる気がします。こんな感じで使っても全然OK。
まだ使い始めなので激しく使っている訳ではありませんが、今のところ剛性面での不安はありません。もし気付いたことがあれば追記しておきますね。
パーツの細部
パーツの中身はクランプ、プレートとネジ類を締める六角レンチです。プレート側には脱落防止ピンが2カ所(緑のマーク)付いているので、万が一撮影中に誤って緩めてしまっても事故に繋がりにくくなっています。おすすめはしませんがピンを外すこともできます。
クランプ側の脱落防止ピン用の溝は外側までしっかり掘ってあり、他社製プレートとの干渉が起きにくいようになっているのもポイント。よく考えられて作られています。
ネジ穴はクランプ、プレート共に太ネジ(3/8インチ)。これだけでもしっかり止まりますが、確実に固定するためにイモネジが計4カ所付いています(50mmプレートは1カ所)。これを締めておけばかなり強力に固定できるはず。イモネジの先端は平らなタイプです。ただ、このイモネジ、私の個体のはかなりユルユルなので使用中に緩んできそうな雰囲気もします・・・
ちなみに、1/4インチ変換アダプターは付いていませんので必要な方は事前に用意しておきましょう。
小さなクランプがないのが惜しい・・・
今までの半額以下のお値段でこの品質ならかなり満足度高い製品だと思います。
一番惜しいのは今のところクランプの径が65mmしかないこと。中~大型三脚なら65mmでも良いですが、小型三脚にはちょっと大きすぎます。50mmくらいのクランプが出てくれると最高かと。SmallRigは少量多品種を得意としているので、みんなで要望出して販売数が増えれば実現するかもしれません(他力本願。
あと、基本セット売りしかないのでバラ売り(特にプレート側)も対応してくれたら嬉しいな。
ノブが大きすぎるかも
他細かなところを挙げると、クランプのノブがデカすぎることもやや気になるポイント。現状ノブの持ち手が20mmあるのですが結構な存在感で邪魔ですw あと5~7mmくらい短くなるとコンパクト感が出て最高な気がします。デザイン的にも洗練されそう。
あと、脱着時にノブを3回転以上回さないといけないのもややイマイチかも。後述するKIRKのものは1回転未満でしっかり止まるので頻繁に脱着する場合はストレスになる場合があるかもしれません。
価格と希少性を考えるなら受け入れられるレベルではありますが。
KIRK TQR-3Sレビュー
性能的にはSmallRigのものでも良かったのですが、私はGITZO1型のような小型三脚を持ち歩く機会の方が多いのでクランプが大きすぎるのはキツい。でもクイックリリース化したら便利だし・・・ということで、KIRKからTQR-3Sの小型のクイックリリース化キットも買ってみることにしました(沼
KIRK製品もAmazonで買うのは難しく、国内だとスタジオjinさんから購入するのが良さそう。税込み13,200円(執筆時)
それかB&Hなど海外から個人輸入という感じですね。私はB&Hから購入しました(他にも欲しいものがあったし)。セットで$80(約8,640円)。送料など含めると1.1~1.2万円くらいになり、1つだけならスタジオjinさんで買うのとそれほど大きな差はなくなる感じです。B&Hから買うのも超簡単ですけどね。以下のページも参考にどうぞ。
高いけどこれを選ぶしかない
お値段的にはSmallRigの倍以上するKIRKのクイックリリースキットですが、このサイズはKIRKしかないのでしょうがないです(泣)ただ、高品質な老舗メーカー(米国)だけあって使い勝手はなかなか良い感じです。
GITZO マウンテニア1型に取り付けたらこんな感じ。
もう専用品ですか?ってくらいピッタリです。最高。シルバーのプレートも良いアクセントになっていてかっちょええ。
雲台側のプレート(Φ51mm)はRRSのBH-30(Φ40mm)にはまだ大きい感じ。こちらもアルカスイスタイプなので剛性面の心配も無さそうです。
細部を詳しく
パッケージはクランプのTQR-3Sと単品売りもされているプレートのTQR-MPSが別々に送られてくるだけw クランプ、プレート共にイモネジや六角レンチなど必要なものが揃っています。重さはクランプ+プレートで107g。
ネジ穴はいずれも太ネジ(3/8インチ)で1/4インチ変換アダプターは付いていません。
KIRKに付いてくるイモネジは先端が尖っているので確実に固定できそうですが、三脚や雲台へのダメージは大きそうです。心配な人は先端削るか平らな他のネジを使うといいでしょうか。私は今のところイモネジ無しで運用中。緩んでくるようなら対策考えようと思います。
脱落防止用突起は取り外せない
プレートには脱落防止機構がありますが、突起はピンでなく一体成形されているため取り外すことは不可能です。。(初期のものはネジ式だったみたいだけど。参考)
後述しますがアルカスイス互換のものはこの脱落防止機構が結構くせ者なんですよね。
SmallRigでは実現されていないプレート単体販売もされているのでとりあえず2サイズ(51mm、65mm)買っておきました。
雲台側の面はゴムなど貼っていないので、しっかりネジ止めすればかなり剛性が出ると思います。
大きいプレートは付かないので注意
KIRKのクランプの特徴は少ないノブの回転で締め付けられる点で、このクランプもだいたい3/4回転くらいで確実に止められます。もちろん取り外しもすぐ。SmallRigが3回転以上要していたことを考えるとかなり快適。
ただ、ひとつ注意しておきたいのはこの小さいクランプにKIRKの大きいプレートを取り付けようとするとノブが干渉して使えないこと。。同じメーカーなのにそこ互換性ないのは結構キツいです。
SmallRigとの互換性はこのあと紹介しますね。
あとは中央位置合わせ用のメモリが付いていないこともやや気になります(SmallRigにはある)。上に雲台とカメラが来るのでここは確実にセンターで固定しておきたいところなんですが。
クランプとしてはさすがKIRKといった感じですが、細部の作り込みがちょっと甘い感じですね。
SmallRigとKIRKの互換性
アルカスイス互換同士なんだから互換性あるでしょ?と思っているかも知れませんが実はアルカスイス互換には互換性はありませんw(何言ってるか分からない人はこちらの記事をどうぞ)
SmallRigクランプはすべてOK
SmallRigのクランプ(65mm)にはSmallRigの大小それぞれのプレートはもちろん、KIRKのプレートも大小ともに問題なく取り付け可能です。脱落防止機構もキチンと機能します。優秀。
KIRKクランプは問題ありすぎ
KIRKクランプ(TQR-3S、小さいやつ)の場合、前述のとおり同じKIRKでも大きなプレートはノブが干渉して取り付け不可能。
さらに、SmallRigの大きなプレートではノブは干渉しないものの、脱落防止ピンが干渉して正常に取り付けできません。中央から大きくずらせば干渉しなくなるので最悪の事態になることはなさそうです。
KIRKのクランプは脱落防止ピン用の溝が外側まで貫通していないので干渉するんですね。。ちょっとくせ者です。リスクを承知して脱落防止ピンを取り去ってしまえばKIRKでも使えます。
SmallRigの小さいやつは使えるよ
SmallRigの50mmプレートは問題なく使えました。こんな感じ。
大きいプレートは使えないと思った方が良いかも
ということでKIRKの小さいクランプには大きなプレートはまともに使えないと思っておいた方が良さそうです。特にKIRK製の大きなプレート(60mm)はどうやったって取り付けられないので使わない方が良いかも(買っちゃったけどw)。事故の元です。
SmallRigの60mmプレートはずらせば最悪取り付け可能なのでなんとかなりますが。
SmallRigさん、50mmくらいのクランプなんとかなりませんかね?チャンスですよー
カメラと直結も可能だよ
雲台を簡単に脱着できると言うことは、現場に着いたら雲台忘れてた。。という悲劇が起こる可能性もゼロではないのですが、カメラ側のプレート(クイックシュー)もアルカスイス互換にしておけば三脚に直接取り付けることも可能です。
脚の長さである程度角度調整もできるので、真上や真俯瞰でなければ雲台を忘れてもなんとか撮影を続行することができるというのもアルカスイス互換の強みですね(プレートに脱落防止ピンが付いている場合は要注意)。
雲台に雲台を取り付ける変態的な遊びをすることも出来ますw
まとめ
ということで、レビューを中心に三脚と雲台間をクイックリリース化すると便利だよという話をしてきました。
三脚や雲台の交換がしやすくなるほか、リュック利用時の持ち歩きにも便利です。
一方でデメリットもいくつかあり、これを取り付けることで縮長が長くなります。SmallRigのものなら雲台取り付け時で+25mm、取り外したときでも+18mm長くなるんですね。
飛行機の手荷物持ち込みに注意
重心が高くなるので若干不安定になるかもという問題の他に、飛行機での機内持ち込み制限に引っかかる可能性も出てきます。
例えば、ジッツォ マウンテニア1型4段にRRSのBH-30の組み合わせだと縮長59cmとなり、雲台取り付けたまま機内持ち込み可能*ですが、これを付けると長さオーバーになります。雲台取り外せばOKですが。
*大抵60cmまでOKですが、持ち込む際は事前に調べておくことをおすすめします
また、ジッツォ マウンテニア3型4段ロングは雲台付けない縮長が59cmなんですが、これもクランプ付けるとアウト。この場合はセンターポール引き抜いて検査に持ち込む必要があります。
どちらも工具不要で現場で対策できるのですが、空港でテンパらないようにあらかじめ長さなどチェックしておくと良さそうですね。
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剛性面では今のところ特に不安は感じていないので引き続きこのシステムで使っていこうかなと思っているところです。なにか問題を感じたときはこちらに追記していこうかと思います。
「三脚と雲台はいつでもセット」という思い込みをなくし、被写体に合わせてレンズを交換するように雲台や三脚も状況に合わせて気軽に取り替えられるようになると素敵ですね!