カメラはどうやって写真の明るさを判断する?
測光モード。
写真をはじめたばかりの人はこの機能を聞いたことがないという人も少なくないかも知れませんね。聞いたことがあるとしても、「説明書で見かけたような?なんとなく?分かっているつもりだけれど、詳しくは…?」という方も多いかもしれません。
カメラの測光モードとは写真の明るさ(露出)に関わる大事な要素なのです。今回は測光モードの種類や違い、皆さんの撮影スタイルに応じた上手な使いこなし方法を詳しくご紹介します!
これを使いこなせれば撮影時の写真の明るさの悩みを解決出来るようになるかもしれませんよ!
まずは測光について理解しよう!
測光(そっこう)とは、その名の通り“光”を“測(はか)る”こと。
カメラのオートモードで撮影すると、ちょうど良い明るさの写真を撮ることができるのは、カメラが写そうとしているものの適正な明るさを判断してくれているから。
このカメラが明るさの値(露出)を判断する機能のことを測光機能といいます。その判断結果に応じて絞りやシャッタースピード、ISO感度が自動的に調整され、ちょうど良い明るさの写真を撮ることができます。
カメラの露出(絞り、シャッター速度、ISO感度)の関係は以下の記事もどうぞ!
測光機能は万能ではない?
自動でやってくれるのならカメラに任せておけばいいんじゃない?と思うかもしれません。
でも、こんなことありませんか?
白飛び気味になってしまった...
暗い背景で白いお花を撮ってみたら肝心のお花の部分が真っ白に潰れてしまった。。みたいなシーンです。
でも「測光モード」を適切に選択しているとこのようなシーンでも花びらの微妙な陰影をキチンと表現することができるようになります。
顔が暗くなってしまった...
逆光で撮影したらモデルの顔が暗く沈んでしまった。。とか
これも測光モードを上手く使えば自然な見え方にすることが出来ちゃいます。
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あるある!ではないでしょうか?
いずれのパターンも、カメラとして「この明るさが正しい!」と判断した結果です。なぜこうなってしまうのかというと、撮影者とカメラとの間で明るさの判断が異なっているから。
人間の目はとても優れていて、明るいところも暗いところも脳内補正でちょうど良い塩梅で認識することができますが、カメラはそこまで賢くないのです...。
じゃあ、どうすれば?
そこで役立つのが測光モード!
測光機能は写真の明るさを判断してくれる機能ということはお分かりいただけたと思います。
明るすぎたり、暗すぎたりする写真になってしまうのは、撮影者とカメラで明るさの判断基準が違うから。
そこで、「ここを基準に判断しよう!」と明るさの判断基準を撮影者とカメラとの間で意識合わせをするときに役立つのが測光モードです。
測光モードは大きく分けて3種類
測光モードは大きく分けて3種類あります。「評価測光」「中央重点測光」「スポット測光」の3つです。(カメラメーカーによって呼び方が若干異なりますが、どのメーカーにも類似の機能があります)
液晶モニターなどに測光モードを示すマークが表示されているはずです。モードの変更方法はカメラの機種によって異なります。(詳しい設定変更方法は説明書を見てね)
(例)ソニー α7Ⅲの背面モニタ
では、それぞれの特徴を見ていきましょう!
① 評価測光モード(マルチパターン測光モード、マルチ測光モード、多分割測光)
このモードは画面全体をブロックのように細かく分割して、それぞれの明るさや色の情報などを組み合わせて総合的に明るさ判断します。設定変更していなければデフォルトでこのモードが選択されているはずです。
画面を何分割するか、どのポイントを重視するかはメーカーや機種によって異なります。
デフォルトで設定されているということからも分かる通り、幅広い被写体に対応できるモード。
ただし、全体の明るさのバランスで判断するので、明るい領域が多いと明るい方向につられてしまう傾向があります。背景が明るいと肝心の部分が暗くなってしまいがち(アンダーになる)。逆光で顔が暗くなるのもこれが原因であることが多いです。
逆に暗い部分が多いとオーバー傾向(明るくなる)になります。冒頭のスイレンの写真で花びらが白く飛んでしまったのはこれが原因でしょう。
・光が万遍なく当たっているシーンが得意。
・全体が極端に明るいシーンでは暗めの露出になる。
・逆に暗いシーンでは明るめの露出になる。
② 中央重点測光モード(中央部重点平均測光モード、中央重点測光モード)
画面の中央部分の明るさを基準に判断するモードです。
画面中央に被写体がある場合や、画面の大部分を被写体が占めている場合に有効。
ちなみにフィルム時代の一眼レフの多くに採用されていた測光モードです。
人物や花など主題がハッキリしていて、日の丸構図のように画面の中央部分に配置する場合に使いやすい。
③ スポット測光モード
画面のごく狭い範囲(1~2%)の明るさを基準に判断するモードです。
指定したポイント以外の領域を無視して明るさを判断する点が、他の測光モードとの大きな違いです。例えば、こんなシーンでの撮影で有効です。
ちょっと分かりづらいですが、花嫁さんの顔にスポットを設定しています。
・逆光など明暗差が大きいシーンでもピンポイントで測光できるので、狙い通りの露出を得やすい。
・測光範囲が狭いので、測光する場所がズレると露出変化が大きくなりやすい。
同じシーンで測光モードを変えて撮り比べ!
各モードの違いをわかりやすくするために、同じシーンで測光モードを変えて撮影してみました。
絞り優先モード(A、Av)でF値とISO値を固定し、測光モードのみ変えて撮影しています。なお、ピント位置(フォーカスポイント)は外の木の幹部分に固定しています。(使用カメラ:SONY α7Ⅲ)
① 評価測光モードで撮影
暗い部分が多いので、外の明るい部分がもっとオーバー気味になるかと思いきや、なかなかバランスが良い露出です。
② 中央重点測光モードで撮影
測光エリアはちょうど中央部分の暗い壁あたり。
①評価測光モードと比べて壁やシャドー部分の木目がハッキリ見えますが、外の木や緑は露出オーバー傾向。
一部白飛びも発生しています。
③ スポット測光
今回、スポット測光を行うポイントはフォーカスポイントに連動する設定にしてあります。よって、木や緑は狙った通りの露出になりました。
②中央重点測光と比べると露出差は一目瞭然ですね。一方で内側の壁はアンダーになりました。
連動する機種なら、ピントを合わせた場所=測光ポイントになります。
フォーカス連動出来ないときは露出ロックを使う
なお、フォーカス連動型でなく測光ポイントが中央固定のカメラの場合は一旦カメラを動かし、測光したい部分(この場合は窓の外の木)を画面中央に据えて露出ロック(AEロック)をしてから構図を整えて撮影するという流れになります。カメラに「AEL」と書かれたボタンがあるかも知れません。それが露出ロックをするためのボタンです。詳しくは説明書を読んでみましょう。
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今回は明暗差が大きい意地悪なシーンでの撮り比べでしたが、各モード毎の明るさの判断基準の違いによる露出の違いがハッキリとお分かりいただけたと思います。
測光モードを変えるか、露出補正をするか
上の写真はそれぞれシャッタースピードが違うことに気が付きましたか?上から順に1/3秒、1秒、1/6秒と測光モードによって最大で3倍もの差が出ています。
今回はF値とISO感度を固定しているので光の量の調整はシャッタースピードのみで行われています。当然のことながら、明るい写真はカメラに取り込む光が多く(シャッタースピードが遅い)、暗い写真は光が少ない(シャッタースピードが早い)ということ。
これって露出補正をしているのと同じことです。
測光モードを変えずに露出補正をするのもアリ
+や−の露出補正ダイヤルで写真を明るくしたり暗くしたりする露出補正機能は普段から使い慣れている方も多いと思います。
つまり、どの測光モードを使ったとしても露出補正で調整すればイメージした明るさの写真にすることができます。
結局、測光モードは何を使うのが正解なの??
「都度、露出補正するのなら、やっぱり測光モードって意識しなくていいじゃん!」
それは正解でもあり不正解でもあります。
なぜなら、撮影する被写体やシーンによってベターなモード選択が変わるからです。
例えばこんなシーン。
このように、主題と周囲の明暗差が大きいシーンの場合はスポット測光モードで撮影した方が狙い通りの露出で撮れる打率が上がります。
自分の撮影スタイルに合った測光モードを見つけよう
上のスポットライトが当たるようなシーンで評価測光モードを使っても良いのですが、頻繁に露出補正をしなければならず、目まぐるしく変化するスポットライトの影響で白飛びしてしまったり、調整に手間取ってシャッターチャンスを逃してしまうこともあるかもしれません。
また、どの測光モードを選んだとしても100%理想の露出を得られないこともよくあります。
私の測光モードを選ぶ考え方としては、シーンに応じた適切な測光モード選択をして
となるようなモードを選ぶようにしています。
これが逆だと露出補正の幅が大きくなり、場合によっては調整の範囲を超えた調整が必要になったり、露出補正で目一杯プラスにしているのに明るさが足りない!ということも。(逆もしかり)
初心者にいきなりこれを考えなさいと言ってもなかなか難しいかもしれませんが、露出決定プロセスのスタート地点をどこに置くか?ということを意識して撮影していると自分なりの露出の決め方が決まってくるかも知れません。
とはいえまずは「評価測光+露出補正」がおすすめ
そんなこと言われても良く分からないよという人はまずはデフォルトで設定されている「評価測光」を使うのが良いと思います。
最近のカメラは測光性能が向上し「カメラが自働で決めた露出(明るさ)≒人間がちょうど良いと感じる明るさ」にかなり近くなって来ているから。画面内の明るさだけでなく、被写体の色や形、顔の有無などを検出して露出を決めるものもあります。
さらに、ミラーレスカメラの場合、露出補正の結果がファインダー(EVF)にリアルタイムに表示されるため初心者でも露出補正の値を直感的に決められるようになっているから。
まずは「評価測光+露出補正」で撮影してみて、撮影中に露出補正を頻繁に行っているようであれば他の測光モードを使ってより快適な撮影ができないかどうか考えてみると良いでしょう。
補足:ハイライト重点測光モード
最近のカメラでは「ハイライト重点測光」というモードが搭載されているモデルがあります。
これは画面内の最も明るい領域を自動検出し、そこに重点を置いて測光することでハイライト部の白飛びを防ぐというモードです。
③スポット測光モードで撮影したときよりも更にアンダーになりました。
白飛び防止最優先!ですね。
基本的に常に暗めの写真になるので、初めて見たときは不安になりますが(笑)RAW現像・レタッチ前提で撮影する際はとても便利なモードです(後で暗い部分だけ明るくして全体を整えることができる)。撮影に白飛びしてしまった部分はデータとして記録されない部分なので、後でしっかり手を入れて編集する場合に有効なモードなのです。
なお、白飛び=悪ではありません。
一般的にデジタルカメラは白飛びに弱く、上手く撮れたと思ってパソコンの画面で見てみたら真っ白だった...という残念な経験をお持ちの方も少なくないと思います。もちろん、意図的に白飛びさせることもあるでしょうし、そのような場合はOKです。
ハイライト重点測光モードは、RAW現像・レタッチする前提で、白飛びをさせたくない場合に安心して撮影できる測光モードと言えるでしょう。
こちらの記事もご参考に。
まとめ
主な測光モードについてご紹介してきました。
絶対にこの測光モードでなければならない!というものではなく、重要なことは各測光モードの特徴・特性を理解し、自分が撮影する被写体やシーン、スタイルにおいて、どのモードが適切なのかを知っておくこと。
普段は評価測光モード、明暗差の変動が大きいシーンを撮影するときだけスポット測光にする、といったスタイルもアリです。(私もそうしています)
また、カメラのメーカーや機種によって各モードの特性が異なるので、各モードで露出がどのように変化するのか、まずはお使いのカメラで試してみることをおすすめします!