手持ちで撮るアートな打ち上げ花火
打ち上げ花火の撮影と言えば広角レンズに三脚使用、レリーズ使ってバルブ撮影という「お約束」がありました。studio9でも以前この正当派花火撮影の方法をまとめています。
いわゆる普通の花火の写真は上記の方法で撮るのが一般的、というかそれしか方法はないというくらいスタンダードなものです。
では、「お約束」をすべて破って、望遠レンズに手持ち撮影、レリーズさえも使わない!といった条件で撮影するとどうなるでしょうか?
そこにはとてもワクワクするような「アートな花火」が写っているかもしれません。今回はそんな花火撮影のタブーを活用したオシャレで不思議な花火の写真を撮る方法を紹介します。
望遠に手持ちなので思ったような場所が確保できなかったような緊急事態にも活用できますよ!
アート花火撮影に必要なもの基本のカメラ設定
こんな花火の写真どうやって撮るの??といった感じですが、撮り方はそんなに難しくありません。初めの決まった設定さえしておけばあとはカメラを適当に動かすだけなんです(笑)
普通の打上げ花火を撮るより簡単かもしれません。
撮影に必要なもの
- バルブ撮影が可能なカメラ
今回の撮影ではバルブモード(B)を使います。ほとんどの一眼レフやミラーレスカメラ、一部の高級コンデジにも付いているはずです。
キヤノンのKissシリーズなど入門機ではマニュアル(M) モードに設定後、シャッタースピードを30秒以上にするとBモードになるものもあります。説明書を読んでみましょう。
マニュアル(M) モードでも撮れないことはないですが、バルブモードが圧倒的に使いやすいです。ダイヤルにバルブ(B)が無いカメラはマニュアル(M)にしてシャッタースピードを30秒以上に設定すると出現するはずです。
*Mモードで撮りたいならシャッタースピードは1~3秒へセット
- 望遠レンズ
今回の撮影では花火そのものにフォーカスするため広角レンズよりも望遠レンズが便利です。ダブルズームキットなどについていた普通の望遠レンズでもOK。
35mm換算で100~200mmくらいが使いやすいかと思います。
35mm換算って?という人は下記の記事もおすすめ
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実はこれだけ。手持ち撮影なので三脚もレリーズも必要ありません。
ただし、下記のアイテムがあるともう少し安心かも
- 一脚(できれば)
この撮影ではプログラム中ずっと望遠レンズを振り回すため、一脚があると便利かも。その際、自由雲台が付いているものがいいでしょう。
腕力に自身があれば必要ありません。
カメラの設定
カメラの設定自体は普通の花火撮影と全く同じです。
- バルブモード
- ISO100, F11(F8~16)
- マニュアルフォーカス(MF)
- 手ぶれ補正OFF
といった具合です。
よく分からない場合は下記エントリーを読んでみるのがおすすめ。花火撮影の基本設定について詳しく説明しています。
さらに、いじれる人はピクチャースタイルなど仕上がり系のセッティングを風景やビビッドにし、コントラストを最大まで上げておくとメリハリのある結果になります。
キヤノンの場合ならピクチャースタイル「風景」、コントラスト+4といった具合。
RAWで撮れるならRAW+JPEGなどで撮っておくと安心です。
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設定はたったこれだけです。普通の花火撮影よりもずっとお手軽ですね。
具体的な撮り方の手順
次は具体的な撮り方です。
1.ピントを遠景(花火)に合わせておく
まずはピントを花火に合わせます。ただしマニュアルフォーカス(MF) に設定しているので打ち上がった花火に一瞬でピントを合わせるのはなかなか難しいはず。
この撮影では厳密にピントを合わせておかなくてもOKなので、遠くの建物などわかりやすいものにファインダーを見ながらフォーカスリングをぐりぐりして合わせましょう。"だいたいハッキリ"見えていればOKです^^;
*あとでカメラを動かしたらボカしたりするので厳密にピントを合わせる必要はとりあえずありません。
*フルタイムマニュアルフォーカス(キヤノン)などAF中でもMFでピント合わせが出来るレンズをお使いならAFのままピント合わせしてもOKです。
2.花火をフレーミングする
ピントが合った状態で花火が打ち上がったら画面内に花火が入るようにフレーミングしましょう。慣れないとどこに上がるか分からないと思うので、初めの数発はどの辺に上がるのか慌てず観察します。
望遠にしすぎるとフレーミングするのが難しいため、はじめはそこそこの望遠にして確実に画面内に花火が収まることを狙いましょう。慣れてきたら徐々に望遠にしていきます。
さらに慣れて来たら花火が開く前から目星を付けてカメラを構えて待てると完璧(はじめはここまで出来なくてOK)。打ち上げ中の火の玉を追いながら撮ると成功しやすいです。
3.シャッターボタンを押し込む
花火がフレーミングしたらシャッターボタンを押し込みます。この時は長押し状態でずっと押し込んでおくこと!
バルブモードなのでシャッターボタンを押し込んでいる間ずっとシャッターが開き露光されます。いつものクセでボタンをすぐに離してしまうと上手く撮れません。
時間にして1~3秒くらい。普通のカメラはシャッターを押している間ファインダーはブラックアウトされて何も見えない状態かと思うのでココは勘で(笑)
この撮影で一番難しいとすればこの何も見えない間にカメラを動かすことくらいでしょうか。結果を見ながら10~20発くらい撮れば感覚が掴めるはずです。
後でトリミングしてもいいので適当に動かしましょう。
ボタンを押している数秒間の間にカメラを動かしたり、フォーカスリングを動かすとちょっぴりアートでファンタジックな写真が出来るのです!
アートに魅せるための3つのテクニック
他とはひと味違うアートな花火を撮るためには2つの基本的なテクニックを使います。また、2つを複合させて撮るとさらに複雑な面白い形になります。
A.カメラを動かす
最も簡単なのはこれ。
花火をフレーミングしてシャッターを押し込んだら適当にカメラを動かしてみましょう。わざと「手ぶれ」させるわけです。
適当にグチャグチャ動かしただけなのにこんな不思議な写真になります。
↑赤い花火が開いた瞬間にシャッターを押し込み適当にカメラを動かしてからシャッターボタンを放しました。シャッタースピード:0.8秒
レンズで小さな円を描くようにクルクル動かしたらこんな感じになりました。シャッタースピード:1.5秒
素早く動かすのが大事
ポイントは素早く動かすこと。このほうが線に躍動感が出ます。ゆっくり動かすと線が不自然にプルプルしちゃうし、そもそも花火が開き終わって消えてしまいます。。
これは花火が開く前からシャッターを押し込んで待ち構えていたので、花火の中心が写りましたね。シャッタースピード:3.4秒
手ぶれ補正はOFFで!
わざとカメラを動かすので手ぶれ補正はOFFにしておきます。ONにしたままだと光跡が不自然にガタガタになってしまうことがあります。。
上下左右逆に写る点に注意
カメラを動かすときは初めは特に向きなど意識せず適当に動かせば良いですが狙って動かすなら、光跡が伸びる方向はカメラの動きとは上下左右逆になることを覚えておきましょう。
カメラを右に動かせば光跡は左に伸びます。
シャッタースピード:0.7秒
B.ピントを動かす
次はちょっと難易度が上がります。シャッターを押し込んだらフォーカスリングをグリッと回して露光中にピンぼけさせましょう。露光間フォーカス(露光間フォーカシング)というテクニックですね。
分かりやすい様にカメラを動かさず(三脚に据えて)、フォーカスだけ動かしました。最初はピントが合っていて、火花の広がりに応じて徐々にピンぼけするのでティアドロップ状の花火になります。シャッタースピード:1.8秒
完全にカメラを止めてピントを動かすというのは三脚が必要で意外と難易度が高いですが上記のような写真を撮りたいなら試してみてください。シャッタースピード:2.2秒
フォーカスを動かした後は次の撮影に備えてピント合わせをしておきます。(ピンぼけ状態から撮影して、途中でピントを合わせるという上級ワザもあります)
C.カメラとピントを両方動かす
次はカメラとピントを両方動かしてみます。AとBの合わせ技です。一見難しそうですが、カメラを止めて撮るBよりも簡単です。手ぶれしてもOKなので(笑)
開き始めにシャッターを押し込みゆらゆらとカメラを動かし、フォーカスリングをピンぼけ方向に動かしました。シャッタースピード:2.9秒
なんとも幻想的な雰囲気になりましたね。
こちらはシャッタースピード:1.3秒
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玉ぼけは閃光系の花火で
花火の中にはパチパチと閃光を発しながら開くものもありますよね。一つ一つの閃光は点光源ですから、ボカせば玉ぼけに。このような宝石箱をひっくり返したようなキラキラの花火になります。
シャッタースピード:3.5秒
ちょっとグチャグチャすぎるでしょうかね。。あんまり欲張りすぎるのも良くありません。シンプルに激しく切り取るのがいいです。この辺は撮りながら体感しなければなりませんが。。シャッタースピード:1.8秒
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慣れてきたら時間差を付けて回す
慣れてきたら、カメラを動かすのとフォーカスリングを回すタイミングをズラしてみるのもいいでしょう。例えばはじめの1秒は動かすだけ、残りの1秒はボカすとか。逆でもいいですね。こうすることでバリエーションが増やせます。
パチパチ系の和火を撮りました。初めは和火特有の細い線を写し、後で一気にデフォーカス。和火は暗いのでF8あたりで撮るのがいいでしょう。シャッタースピード:2.8秒
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カメラを動かす、ピントを動かすだけで普段とは全く違う花火になるのがこの撮影の面白い所です^^
作例ギャラリー
この撮影のさらに良いところは1枚で完結する(コンポジットしなくていい)ので手数が増やせることです。実はここに載せている写真はすべて1度の花火大会で撮影したもの。一度にこんなにたくさんの種類の写真が撮れるんです。
いくつか面白い形になったのがあるのでざざーっと並べてみますね。
カメラを右に降りながらデフォーカス(ピント外し)した感じ。
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どんな花火を撮ったのかすら覚えてないけど(笑)、線の細さを見る感じとても粒子の細かな花火だった模様。。
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これはカメラを下にゆらゆら振りながら撮影したので光跡が上に伸びていますね。
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地味だけどシンプルな仕上がりでお気に入り。これは露光間ズームも入れてるかな?忘れました。。^^;
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大きな花火の後にヒュルヒュルと飛び回るあれね。花火撮影は低感度で撮るのでRAWで撮っておけばあとで増感しても破綻しにくいです。元が暗いのにうっかりF16で撮ってしまったのでこれは3EVほど現像時に増感しています。
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カメラで四角を描くように動かしてみました。
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非常に細かな火花が散る和火。このサイズではなかなか分かりませんがずべて細かな光跡の集まりで構成されています。プリントしても面白そうですね。
まとめ
ということでちょっと変わった花火撮影の方法を紹介してみました。
大きな花火大会の場合、途中で場所移動するのはほぼ不可能ですし、狙った構図であらかた撮影が済んだら残った時間はこういう撮影に当ててみるのも良いかもしれません。
花火の写真がマンネリしてきたなぁという人にもおすすめです。
どこで撮ったのか?という情報は消えてしまいますが単純に花火を楽しむのであれば面白い撮影方法だと思いますよ。
ぜひお試しあれ!
・普通の花火の撮り方はこちらです