本当に世界最速なのか?
先日デジカメWatchさんのニュースを見ていたら興味深いニュースがありまして、どうやらCorelから世界最速を謳う現像ソフトが発売されたということでした。
- 世界最速を謳うRAW現像ソフト「Corel AfterShot Pro 2」(デジカメWatch)
私が普段使っているAbobe Lightroomも現像スピード(RAW⇒JPEGへの書き出し)は業界でもかなり速いといわれておりキヤノンの純正現像ソフトDigitalPhotoProfessionalと比べても圧倒的に速いです。
下記エントリーの11.を参照
- Lightroomで実現する!写真管理を超高速化させる15のポイント!
そのLightroomの現像速度を果たして超えられるのか?? ちょうど気になっていたところにAfterShot Pro 2の中の人からも声をかけて頂いたので比較してみました!
比較に使ったのは、AfterShot Pro 2、Lightroom5.6、ついでに先日64bit化したDigitalPhotoProfessional4.0(DPP4.0)の3本です。
RAW現像速度比較環境
今回RAW現像を比較したPCの環境は以下の通りです。
作業環境
- OS : Windows 7 Home Premium 64bit
- CPU : core i7 2600K (4.2GHzまでOC)
- Memory : 16GB (DDR3-1600)
- M/B : P8Z68 DELUX
- 作業ドライブ : SanDisk SSD UltraPlus 256GB
使用ソフト
- AfterShot Pro 2 (Ver.2.0.3.25)
- Lightoom 5.6
- DigitalPhotoProfessional 4.0.0.1(DPP4.0)
比較条件
Canon EOS 5D MarkIIIのRAWファイル(5760×3840px, 約2200万画素)を52枚を長辺1,200px、画質80 でJPEGに書き出し。
調整項目は 露出+2/3EV, 角度補正+1.5度、コントラストやや強めにかける、シャープ標準、レンズ補正(あり/なし)
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とこんな感じです。現像の調整項目はソフトによっても違うので全く同じ条件ではないですが、だいたい同じ感じになるようにしました。レンズ補正は普通の補正(歪曲)のみでDPPのデジタルレンズオプティマイザは使ってません。
比較結果
AfterShot Pro 2は確かに速い!
まずはレンズ補正なしの条件で比較してみました。レンズ補正は通常かなり遅い処理なので。。シンプルな条件から
結果、 AfterShot Pro 2 (ASP2)が明らかにトップの性能。Lightroomより2~3割速いです。これには驚きました。
レンズ補正なしで現像
現像ソフト | 1回目(秒) | 2回目(秒) | 平均(秒) | 1枚あたり(秒) |
---|---|---|---|---|
ASP2 | 61 | 62 | 62 | 1.2 |
LR5.6 | 80 | 81 | 81 | 1.5 |
DPP4.0 | 127/10枚 | ー | ー | 12.7 |
AfterShot Pro 2 がトップで速度番長だったLightroomよりもさらに2割ほど速い結果。1枚ほぼ1秒で書き出されて非常にサクサク。
数百とか数千枚の現像をするならこの差は無視できない大きな差ですね。
かなり現像エンジンが優秀なのでしょうが、この速度の秘密はさらにもうひとつありました。現像中のCPUの使用率に注目。AfterShot Pro 2は8つのコアをすべてフルで使い切ってます。非常に潔いw ガテン系です。
一方、Lightroomは現像中でもCPUには余裕があります。増減はありますがだいたい50~70%くらい。Lightroomさんもっと本気出して下さいw
AfterShot Pro 2はCPUの性能をフルに使い切っているので速いという側面もあるのかもしれませんね。
キヤノンDPPはなんなんでしょうか。。メジャーバーションアップして64bit化されたので楽しみに現像してみましたが、全然速くなってないじゃないか! ASP2の10倍も遅い。。条件はちょっとちがうけど、DPP3.x時代より遅くなってるよ?
あまりに遅くて10枚現像が済んだ時点で測定を中止してしまいました。ハードとの相性とかあるのかな?
レンズ補正ありでLightroomが一矢報いる
ではレンズ補正あり。レンズ補正はかなり重い処理なので一般的に現像速度は遅くなります。
レンズ補正ありで現像
現像ソフト | 1回目(秒) | 2回目(秒) | 平均(秒) | 1枚あたり(秒) |
---|---|---|---|---|
ASP2 | 114 | 113 | 114 | 2.2 |
LR5.6 | 91 | 86 | 89 | 1.7 |
DPP4.0 | 140/10枚 | ー | ー | 14.0 |
レンズ補正を入れると、順位が入れ替わってLightroomが最速の座を奪取しました。CPUの余力を残しながらレンズ補正入れてもほとんど変わらない速度で現像するあたりマジLightroom流石ですわ。
ASP2はレンズ補正入れると倍くらい遅くなってしまいました。。単純な現像に最適化したアルゴリズムなのかな? とはいえ1枚2.2秒はそこそこ優秀ですがね。
DPPさんはもうなんというか。。これで大量に現像するとかちょっと考えられないですね。まぁ良いんです、DPPには唯一無二のデジタルレンズオプティマイザ(DLO)があるので。
用途によって使い分けるのが良さそうです。
AfterShot Pro 2のOpenCLは不発。。
AfterShot Pro 2のもう一つ期待していたポイントはOpenCLに対応しているので、グラフィックカードのGPUと連携して現像が出来るらしいのですが、私の環境ではうまく機能しませんでした。。
使用したグラフィックカードはGeForce GTX470、ドライバのバージョンは337.88。
OpenCL使用をチェックすると途中で現像が止まってしまいました。。この辺もドライバとの相性があるのかな?期待していただけにちょっとガッカリです。。(上記の比較はOpenCLをオフにして計測しています)
まとめ
ということで3つの現像ソフトの書き出しスピードを比較してみました!
手持ちの3つのソフトでしか比較していませんが、レンズ補正を入れずに比較的単純な書き出しであればAfterShot Pro 2 は世界最速と言える気がします。下記に引用させてもらったブログだとLR4との比較ですが、LRの方がCaptureOneProよりも速いようですし、SLIKYPIXもそんなに現像速度は速くないので。
現像速度は34コマのNEFファイルで計測。
JPEGでサイズはフル、画質を82に揃えた。
(中略)
現像終了まで、Lightroomなら2分56秒。
C1 Proは5分17秒。34コマでこれだけの違いが出るのだから、300コマなら30分、600コマあれば1時間も違うことになる。
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- Lightroom 4 導入 - 2(旅するフォトグラファー 有賀正博)
早けりゃいいってもんでもないですが、日頃から大量にRAWを書き出す方はちょっと参考にしてみても良いかも知れません。
AfterShot Pro 2の現像項目、品質に関してはあんまり精査していませんが、基本機能としては十分な機能かと思います。HDRもできます。ただ、ソフトの作りがかなり荒削りなのが惜しいところ。本家が米国のソフトだと思うのですが、所々明らかにおかしい日本語訳になって混乱してしまいます。。
書き出しが「輸出」って訳されてたり。。もともと「Export」だったところを自動翻訳したとしか思えない詰めの甘さ。せっかく良いポテンシャルを持っているだけにもったいない。。
その他、カタログ管理とフォルダ管理の両方で管理できるハイブリットシステムなので、カタログ管理のみのLightroomに比べると比較的導入は楽かも。ライトなユーザーには使いやすいかもしれません(ライトユーザーにそこまでの現像スピードが必要か?というツッコミはありますが^^;)
RAW現像ソフトとしての総合力はLightroomが2歩くらい先を行っている感じではありますが、現像スピードはクッソ遅いけど唯一無二のデジタルレンズオプティマイザが使えるDPPのように、現像速度なら誰にも負けないっ!みたいなガテン系のソフトとしてAfterShot Proにはこの先も頑張ってもらえればと思います。