飛行機撮影の魅力
空港へ行けば沢山の飛行機が飛んでいます。どこかへ離陸していく飛行機もいれば、どこかから着陸してくる飛行機もいます。そんな飛行機に魅力を感じる方も多いかと思います。
そして近年では、飛行機の写真を撮る人が急増しています。カメラがより身近な存在になり、飛行機を乗る物から被写体として捉える方が増えてきた様です。
飛行機にも様々な種類があり、ジャンボジェットのような大きな機体から100席未満の小型機まで、空港に行けばバリエーションの多さも楽しむことができます。
そして飛行機撮影は天候に最も左右される撮影といっても良いほど、天候が大切になってきます。晴れの日もあれば雨の日もある。そこでどのような作品を残せるか、飛行機撮影の世界は奥が深いのです。
今回は、これから飛行機撮影を始めたいと思う方向けにおすすめアイテムや便利なアプリをご紹介していきます。
飛行機撮影は他の撮影と何が違うの?
飛行機撮影のメインとなるのは、300km/hほどで飛行する機体を撮影することです。
とはいえ、飛行機までの距離は遠い場合がほとんどで、300km/hほど早く動いているようには見えません。
しかしポートレートや風景写真と違い、カメラを大きく動かして撮影することになります。日中は三脚を使用することが滅多にないため、軽量かつ小型のカメラ、レンズが負担も少なく、効果的な撮影をすることができます。
これからご紹介するのは、カメラをはじめたばかりの初心者でも動きものに対応しやすい、小型軽量のモデルを中心に取り上げていきます。
撮影のコツやテクニックについてはこちらの記事が詳しいです!
飛行機撮影に使えるカメラボディ
飛行機を撮影するにあたって重要になってくる性能は、”AF精度”と”連写性能”です。
”AF精度”というのは、”オートフォーカス”すなわち自動ピント合わせ機能の精度です。動体撮影に適したAFモードを搭載しているかどうか、動くものにAFがどれだけ早く食いつくか、という性能になります。この性能が高ければ高いほど、飛行機の動きに追いつきやすく、ピンボケのない撮影を実現することができます。
"AF精度"の効果例として2つの写真を並べます。
私がよく訪れる撮影ポイントでは、滑走路が見えない場合がほとんどで、林やフェンスから突然飛行機が飛び出てくるパターンが多いです。
その場合、機体に素早くピントを合わせられるかどうかが重要で、AFが精度が悪いと下記のようにピントが合わずにピンボケ写真になってしまいます。カメラの設定によってはピントが合わないとシャッターが切れないこともありシャッターチャンスを逃す原因にもなってしまいます。
逆にAF精度が良く、AFの食いつきが良いと下記のようにくっきりとした写真になります。
”連写性能”では、離着陸時約300km/hで飛行する機体の一瞬を逃さないための性能です。連写の少ないカメラモデルで3コマ/秒。連写機能が優れているカメラモデルで10コマ/秒が平均的です。
私の友人には飛行機の真横にこだわる「スポッティングショット」というスタイルを意識している人もいます。
真横を狙う上で連写性能は非常に大きな役目を果たし、真横を確実に捉える手段となります。
飛行機を撮影する場所は障害物も多いため、ベストなタイミングを1発で決めるのは高い技術力が必要です。ただ機体が収まれば良いというなら別ですが、良いタイミングをおさえるためにも連写性能もある程度高いものがあると良いでしょう。
図鑑に載るような飛行機の形式写真。真横・高度が低い・夕暮れなどで機体に色が付かないなど様々な定義がある撮影スタイル。
では、これらの条件に合致した、これからはじめての飛行機撮影をするために適したエントリーモデルをご紹介していきます。
Canon EOS 9000D
キヤノンのエントリーモデルとして有名なのは、”EOS Kiss シリーズ”がありますが、今回ご紹介するのは”EOS 9000D”です。
AFが中級機と同じ性能
2017年7月発売の”EOS Kiss X9”は、大変優秀なエントリーモデルとして期待されていますが、「なぜ”EOS 9000D”なのか?」それは先ほどご紹介した、”AF精度”に大きな違いがあります。”EOS Kiss X9”が「中央クロス9点センサー」なのに対して、”EOS 9000D”は、”EOS 80D”などの中級機にも搭載されている「オールクロス45点AFセンサー」を搭載しています。
より入門機のEOS Kiss X9ではAF測距点が中央クロス19点なので大きな違いです。
簡単に言えば、オートフォーカスのポイントが多いのでピントの判断が早いということです。動く機体をメインに撮る飛行機撮影は、この性能の差でチャンスをものにできるかが問われます。
中~上位機と似た操作性
AF精度だけであればKissシリーズにもオールクロス45点のEOS Kiss X9i("i"がつく)という機種もありますが、エントリーのKissシリーズのため、上位のカメラと外観や操作性が異なります。
9000Dの外観や操作性は上位機と同じで”EOS Kiss シリーズ”を大きく上回ります。外観の変化は大きく、サプパネル(カメラ上部の設定が表示される液晶)が付くエントリーモデルは”EOS 9000D”のみです。サブパネルが付くことで、現在の撮影設定をすぐ確認することができます。
カメラ性能上ほとんど差がないEOS Kiss X9iの方がわずかに安価(執筆時点Amazonではレンズキットは9000Dの方が安い)ですが、このような操作性も大切にすることがカメラ選びの大事なポイントとなってきます。
その他の機能についても6コマ/秒の連写性能、暗いところにも強い常用ISO感度100~25600など、飛行機撮影にも十分対応できるエントリーモデルとなっています。
Nikon D5600
Nikonからは”D5600”をご紹介します。
こちらのモデルは、AF性能は”39点AFシステム”と、45点である”Canon EOS 9000D”よりは劣りますが、”EOS 9000D”よりも小型軽量モデルとして人気を集めています。
軽量コンパクトで安価
日中の飛行機撮影の場合、三脚を立てて撮影することはほとんど無く、手持ちでの撮影が多くなるため、カメラ重量というのは非常に大切な観点となってきます。”EOS 9000D”が、約540gなのに対して、”D5600”は、約465gと違いがはっきりと分かります。長時間での撮影は、この差が大きな影響をもたらします。
基本性能も”EOS 9000D”よりは高性能でないものの、連写は5コマ/秒、常用ISO感度も100~25600と平均的な性能を保有しています。
価格に関しても”EOS 9000D”のより大幅に安価で、性能は少し劣るものの安価で安定のモデルを購入されたい方におすすめモデルです。
(念のため書いておきますが、キヤノンとニコンの間にレンズの互換性はないため、最初にニコンを買った場合は基本的にこのあとずっとニコンを使うことになります)
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今回は定番の2機種を紹介しましたが最近性能向上が著しいミラーレス一眼を使うのも良いでしょう。この場合も選ぶ時は”AF精度”と”連写性能”をポイントにしてみると良いかと思います。
ステップアップモデル - Canon EOS 7D mark II
カメラは性能がどんどん進化する世界です。撮影しているうちにどんどん性能の良いモデルを欲しくなるのは必然的です。
今回は、ステップアップで使いたいカメラのご紹介です。”Canon EOS 7D mark II”は、まさに飛行機撮影のためにあるモデルといって良いでしょう。
キヤノン製品のAPS-Cモデルの中では最上位機種であるのにも関わらず、現在の値段は比較的安価です。AF性能は「オールクロス65点AFセンサー」を搭載。65点の測距点をファインダー内の広範囲に配列することで、AFに迷いを無くしました。そして連写性能は10コマ/秒を実現し、決定的瞬間を逃しません。
先代EOS 7Dから動体撮影には定評がありましたが、更にAF精度と連写性能がパワーアップしたため、キヤノン派の飛行機写真界では定番モデルとなっています。私自身も先代EOS 7Dを使っていますが、mark IIは更にオススメすることができるモデルです。
”EOS 7D mark II”は、動体撮影に最も適したモデルとして既に評価されており、markIIIの噂も出始めた今、価格もさらに下がってきてボディだけなら9000Dからちょっと背伸びをすると届く12万円程度(執筆時)と狙い目です。
(ただしボディは大きく重くなるので注意)
飛行機撮影のおすすめカメラレンズ
比較的遠い距離の被写体となる飛行機撮影では、望遠レンズが必須となってきます。
標準ズームなどでも撮影は可能ですが、私がこれまで訪れてきた空港で望遠レンズを使わなかった空港はありません。飛行機までの距離がよほど近くない限り標準ズーム以下のレンズは使えないと言えるでしょう。今回は、飛行機撮影で必要となってくる300mm以上望遠が可能なレンズをご紹介していきます。
はじめはキットレンズでもOKだけど
エントリーモデルにはダブルズームキットなどで望遠ズームレンズがキットで付いてくるものもあります。(キヤノンEF-S55-250mm F4-5.6 IS STM、ニコンAF-S DX NIKKOR 55-200mm f/4-5.6G ED VR IIなど)
これらは純正レンズだけあって写りが良く、信頼性のあるレンズですので、まずはこのレンズで撮影に挑戦してみても良いかと思います。
ただし、焦点距離が本格的な望遠レンズと比べて物足りなかったり、AFの駆動速度が遅い(ボディのAF性能を生かし切れない)といった弱点もあります。より本格的に撮影してみたい場合は下に挙げるレンズがおすすめです。
メーカー純正の望遠レンズは非常に高価なものがおおいですが、シグマやタムロンなどサードパーティー製の望遠レンズは非常にコストパフォーマンスに優れるため、今回は入手のハードルが低いサードパーティー製を中心に紹介します。
SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM
シグマから最近発売となった”ライトバズーカ”の名を持つ”100-400mm F5-6.3 DG OS HSM”。
望遠端が400mmなので上で紹介したAPS-Cモデルのカメラなら35mm判換算で約150~600mm相当の超望遠撮影が楽しめます。フルサイズ対応のレンズなので将来カメラのステップアップをしても使用可能。
焦点距離は、飛行機撮影の王道と言われている”Canon EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM”と同じです。キヤノン純正と比較して約1/3の価格で、高速AF駆動を実現する超音波モーターや手ブレ補正も搭載。はじめて飛行機撮影をされる方にはもちろん、
絞り値は、400mm側開放でF6.3と純正に劣りますが、日中の撮影ではほとんど影響はないと思われます。
そしてこのレンズの最大の特徴は小型軽量です。基本的に400mmクラスのレンズは、大型かつ重いレンズが多いのですが、こちらのレンズは約1160g(キヤノンEF100-400mmは1570g)と、他を圧倒する軽さを誇ります。
SIGMA 望遠ズームレンズ Contemporary 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM キヤノン用 フルサイズ対応
SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM
ここ数年でベストセラーとなったシグマの” 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM”。
このレンズのポイントは使い勝手の良さです。広角側18mmから望遠側300mm(35mm判換算で約27~450mm)と、広範囲に渡る撮影に対応しています。この焦点距離の広さは、飛行機撮影でも大きな効果をもたらしてくれます。機体が近くなったときも対応でき、遠くなってからも対応できるので、1本で様々な画角を残すことができます。
APS-Cモデル専用の設計のためレンズサイズも小さく重量はわずか585gなので持ち運びも楽です。
私もCanon EOS Kiss X5使用時代にキットレンズからのステップアップでこのレンズを使用していました。特に初のヨーロッパ海外旅行時には、飛行機写真はもちろん、空港のスナップ写真撮影にも小型軽量で大活躍しました。
SIGMA 高倍率ズームレンズ Contemporary 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM キヤノン用 APS-C専用 886547
ステップアップモデル - SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary
カメラボディは、進化が止まりませんが、レンズは一生モノと考えて頂くのが良いと思います。もちろん新しいレンズは登場し続けますが、ボディほど大きな変化はありません。そして写真の差はこのレンズによって生まれることも少なくはありません。
今回ステップアップ用としてご紹介するのは、シグマから”150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary”です。
こちらのレンズは最大焦点距離600mm(APS-Cモデル装着時は35mm判換算で約900mm、フルサイズ対応)と、ズームレンズではなかなか届かなかった領域を実現させました。そして単純に遠くを写せるだけでなく、画質も非常に好評です。レンズは画質を決める上で大きな役目を果たします。いかにくっきり写るか(解像するか)が評価のポイントになります。
通常望遠側では、くっきり決まらないことが多いズームレンズですが、150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporaryでは、600mmの望遠側もしっかり解像するレンズと評価されています。
価格も10万円前後と、手の届きやすい価格です。純正レンズでも600mmの世界はなかなか体験できないので、あえてこちらを選ぶ方も多いくらいです。
私の友人にも気軽に安く超望遠を楽しめる人気のレンズで、キヤノン・ニコンのマウントに対応しているため飛行機撮影の有名ポイントに行くと使用者を多く見かけます。
SIGMA 望遠ズームレンズ Contemporary 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM キヤノン用 745547
空を青くするC-PLフィルター
飛行機撮影で背景となるのは、自然や建物のような景色よりも空が多くなります。そのため青を綺麗に出せるかが、写真の善し悪しのポイントになります。そこで活躍するのがPLフィルターです。
青空は、薄い色ほど人への印象が残りにくいと言われています。PLフィルターを使用することによって、空の色を濃くし、コントラストを自然なまま上げて作品を美しくすることができます。
PLフィルターが効果的なのは、「夏空」です。夏は積乱雲などの雲も発達し、美しい空が広がります。飛行機と絡めるときにPLフィルターを使えば、コントラストが上がることで、雲の輪郭がハッキリとし、立体感の増す作品に仕上がります。また、太陽を背にした順光での撮影でより効果が大きくなります(逆光では効果が薄い)。
PLフィルターの欠点は、レンズに入る光を減少させるためシャッタースピードが通常より落ちてしまうことです。そのため、動きの速い飛行機を狙う際は、ISO感度を上げるなどの対応をしなければなりません。
そしてPLフィルターは寿命もあり、年数を重ねる毎に効果が落ちてきます。定期的にチェックし、買い換えるようにしましょう。
購入する場合はサーキュラーPL(C-PL)タイプのものを購入します。現在ほとんどがC-PLタイプですが、稀に安価なPLタイプのものが売られていることも。「C-」の付かない通常のPLフィルターではAFが効かないため必ずC-PLタイプを購入しましょう。
おすすめアプリ - Flightradar24
最後に、スマートフォンに入れておくことで飛行機撮影を効率的にすすめられる便利なアプリをご紹介します。
飛行機の情報がリアルタイムで分かる!
”Flightradar24”では、飛行中の機体をリアルタイムで見ることができるアプリです。かつて飛行機撮影では、航空無線を聞く”エアバンド”という無線機が主流でした。航空無線を聞くことで、次の飛行機を判断していました。もちろん2017年現在も航空無線を聞くことで航空機の情報を得ることができますが、”Flightradar24”のすごいところは、遠くの機体の情報まで分かることです。
長距離国際線などの場合、フライト時間が12時間を超えることがあります。航空無線であれば、空港に近づかなければ、いつ来るのか分かりませんでしたが、”Flightradar24”を使うことによって、出発地を離陸した時点で機体が情報アプリに反映され、位置情報を知ることができます。
また、航空無線では機種やレジ番号(機体を判別する番号)は知ることができませんでしたが、”Flightradar24”では、機体情報まで視覚的に見ることができます。これにより特別塗装機などを効率的に撮影することができるようになりました。
”Flightradar24”は最新版もリリースされ、飛行機の位置や機体の情報は無料で使い続けられます。また、カスタムアラートやより詳細な情報が必要な場合は月額課金(180円/月~)で得られます。飛行機撮影には欠かせないアイテムといって良いでしょう。iOS, Andoroid両対応です。
▼iOS版
▼Android版
・Flightradar24 Flight Tracker - Google Play の Android アプリ
まとめ
これまで飛行機撮影をはじめるにあたって機材を選定するポイントとおすすめモデルをご紹介してきました。
ポートレートや風景写真と違って、動くものを撮影するスタイルのため、最初は難しく感じることはあるかと思います。しかし、気象条件と撮りたい機体が合わさった瞬間は、他の写真ジャンルにはない気持ちよさを体感できると思います。
最近注目の飛行機撮影をはじめてみませんか?
飛行機撮影のコツやテクニックについてはこちらの記事がおすすめです!