チューリップを上手に撮りたい!
桜の季節が終わると各地で様々な花たちが一斉に咲き始めます。その中でもよく見かける花の一つがチューリップ。でも撮影してみてなんだか上手く撮れない...と思ったことがある人も多いのでは?
緑の葉っぱに色とりどりの鮮やかなお花。お花の形も可愛らしいためチューリップは写真映えもしやすいお花ですが、撮ってみると意外と難しい場合が多いのですよね。その原因はチューリップそのものの形とチューチップ畑によるものです。
そこで今回は色とりどりのチューリップ畑を誰でも上手に撮影するためのテクニックを7つにまとめて紹介してみますよ!
チューリップ撮影が難しいわけ
目で見ているととても美しいチューリップ畑ですが、いざ撮影してみると「あれ?こんなんじゃなかった...」ということになってしまう場合があります。
チューリップの撮影が難しく感じる原因は次のようなものです。
チューリップ自身がひょろ長い
チューリップはお花の部分に目が行きがちですが、長い茎の上に花を咲かせるためサイズで言えば花よりも茎の方が大きく(長く)、写真に収めようとすると意外とバランスをとるのが難しいです。
チューリップ全体のサイズや花壇に植えられた状態を良く見ながら撮影する必要があります。構図が結構大事。
地面の低い位置に咲いている
チューリップは花壇に植えられることが殆どですので通常は地面に咲いています。つまり人間の目線からはずっと下になるわけです。
普段の高い目線から撮影してしまうと、客観的な印象が強まってしまいただの記録写真になってしまい面白くない仕上がりになりがちです。こんな感じで上からただ撮っただけだと印象の薄い残念な写真になります(▼)。
チューリップ畑は意外とスカスカに植えられている
遠くから見るとチューリップ畑はとてもカラフルでフォトジェニックですが、近くに寄って撮影しようと思うと意外とスカスカに植えられていて、花の密度が低くなったり、土が写ってしまい印象が弱まってしまいます。
カラフルな花の密度を高める工夫も必要ですね。
花壇に植えられた花のためバリエーションが出しにくい
殆どのチューリップは人の手によって植えられたもので、その多くが花壇やプランターの中で咲いています。野生の花と違って咲いている場所自体が単調な事が多いのです。ですから普通に撮影してしまうとどれも同じような仕上がり。。となってしまいます。
チューリップ畑を良く観察してバリエーションを作って行くことも大事です。
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これらのポイントを解消していけばきっと良いチューリップの写真が撮れるはず。ここからは具体的に上記ポイントを解消するためのテクニックを7つに分けて紹介していきます!
1.チューリップ目線で仲間はずれを見つける
まず大事なのはチューリップ目線になること。先ほど指摘したようにチューリップは地面(花壇)に咲いていることが多いので普段の目線よりもずっと低いところに咲いています。
まずは低い位置から観察する
横着せずしゃがんでチューリップの目線になって観察してみることが一番大事です。ポイントはまず観察すること。いきなりファインダーをのぞいてはいけません。
例えば下の写真。ちょっと低い位置から撮影してみましたがよく見てみると花がゴチャゴチャしてしまってどこに着目していいか分かりません。色は綺麗なので良く観察しないとここで満足して終わってしまうかも。
もう少しお花を目立たせたいなぁとさらに低い位置から見てみるとこうなります。
背景に明るい空も入り、花の重なりも少なくなったので全体的にスッキリし、どこに着目していいか分かりやすくなりました!これをファインダーの中だけでやるのは大変です。まずは目視で高さや場所を変えながらよく観察しましょう。
仲間はずれを探す
さらに印象的なシーンにするにはどうすればいいでしょうか?おすすめは一見すると単調に植えられているチューリップ畑を良く観察して、変化を探すことです。同じように見える畑の中にもよーく見ると変化があるポイントが見つかるはず。そこを起点に構図を作ると上手にまとめられます。
「変化」の中で最も簡単なのが「仲間はずれ」を見つける方法です。綺麗に咲きそろっている花壇の中にもいくつかピョンと背が高いチューリップや1つだけ別の品種が混ざってしまっているといった個性のあるお花がいるはずです。これをポイントにすると面白いですよ。
▲例えばこんな感じで一人だけヒョロッと背が高いお花が出ていたりします。漠然と花壇を撮影するのではなくこうした変化のあるところを狙って撮影してみましょう。お花に近い目線で撮影しているため手前のお花が重なりうまく前ボケになってくれました。
時期が早いとこんなせっかちなお花に出くわすこともありますね。これも変化の一つ。
やや上級者向けですが、さらに目線を下げてよーく観察すると、手前のお花の隙間からひょっこり顔を出すようなシーンを探すことも出来ます。
いきなりファインダーを覗くとこのような変化を見つけることが難しいのです。
2.横よりも縦構図がしっくりくる
チューリップは縦に長い植物ですので、単体(or 少数)で撮影しようとするなら縦構図のほうがまとめやすい場合がよくあります。
カメラは横に構えやすく出来ているため、無意識に横構図ばかり使ってしまう人も多いですが、ぜひ縦構図を意識して撮影してみましょう。
例えばチューリップを横構図で普通に撮影すると、緑の茎の部分の情報量が上の花の部分に負けてなんとなく収まりが悪い感じになってしまいます...
でも縦で撮影すると緑の部分が大きくなり、強い花とのバランスが結構とりやすいのです。
横に入れる場合は前ボケを上手く使おう
横構図で見せたい場合は手前に前ボケになるようなアクセントを持ってくるとバランスをとりやすいです。
そのためにも低い位置から前の花が重なるポジションで撮影するのが大事。大きなボケを作るには望遠レンズで撮影するのも有効です。この写真は約280mmで撮影しています。Av(A)モードにしてF値を一番小さくして撮影してみましょう。
3.望遠レンズで圧縮効果を狙う
難しい理由に挙げた、チューリップ畑、実はスカスカ問題。これを解決する方法の1つは望遠レンズを使って圧縮効果を得ることです。
圧縮効果って何?と思った方は以前詳しく説明した記事があるのでこちらもご覧下さい。
ざっくり言えば、望遠レンズの圧縮効果を使うことにより、被写体の前後が密に詰まって見えるようになります。近くから見るとスカスカだった花壇も遠くから望遠レンズを使うことで密に見えるのです。
例えばこれは35mm換算で200mmのレンズで撮影しました(APS-Cセンサーなら約135mm、マイクロフォーサーズなら約100mmくらい。詳しくはこちらの記事もどうぞ!)
200mmの望遠を使うことで後ろにあるお花がグッと手前に寄ってくるように密になります。標準レンズだとこうは行きません。望遠で切り取ると窮屈に感じる場合もあるのでちょっと傾けて動きも出してみました。
さらにこちらは400mm。手前に写っている花と真ん中当たりの花の大きさがそんなに変わらない点にも注目してみて下さい。これが望遠レンズの効果です。
普通のレンズで撮影すると手前は大きく写り、奥は豆粒みたいなサイズになってしまいますよね。
全体を入れる場合も望遠寄りを意識してみる
花畑全体を撮影したい場合、広く撮りたいので広角をチョイスしがちですが、意外とまとめずらく大変な事が多いです(広角を使うのが間違いではない)。手前のお花がスカスカに写ってしまうし、なによりシーズン中は混むのでいろんな人が映り込んでしまいます。
広い範囲を撮影したい場合もちょっと離れた場所から70~100mmくらいの中望遠で狙うと収まりがいいと思いますよ。
例えばこれで100mm。このくらいなら公園(花畑)全体の雰囲気も分かるし花の密度も高く、人を避けやすいです。(実はこれでも人物がちょっと入ってしまい消した跡がありますw)
70ー300mmくらいのレンズがベストチョイスかな?
当然場所にもよりますが上記のような公園や植物園のチューリップ畑を撮影するなら標準レンズではなく70-300mmくらいの望遠レンズが個人的にはベストチョイスかと思います。Wズームキットに付いていた望遠レンズ(55-250mmくらい)でも十分でしょう。オリンパスやパナソニックのマクロフォーサーズなら40-150mmくらいが使いやすいかな。
圧縮効果もしっかり楽しめるし、ロープが張ってあって近づけない場所も狙いやすいです。
Canon 望遠ズームレンズ EFレンズ EF70-300mm F4-5.6 IS II USMフルサイズ対応 EF70-300IS2U
4.超広角レンズで意外性のある視点を
今望遠がおすすめといったばかりで恐縮ですが、望遠ばかりを多用していると写真にバリエーションがなくなってくるので、超広角の強烈なインパクトを取り入れるのも面白いです。結構クセのあるレンズですが使いこなせると非常に楽しいレンズですよ。
超広角の一般的な使いこなし方法は下記記事が詳しいです
超ローポジション、ローアングルで狙う
一番おすすめなのがこれ。地面スレスレから超ローポジション、ローアングルで空を見上げて撮影する方法。アリになった視点でかなりインパクトを出せます。
16mmで撮影しました。空を見上げて撮影することでチューリップが太陽に向かってグングン伸びていくような活力を出すことができました。
これも16mm。強いパースが入ることで写真に動きが出るし、地面に咲いている花を撮っているのに空がいっぱい入ると意外性も生まれます。
思いっきり寄って撮影してみる
超広角を使ったもう一つのテクニックはお花ギリギリまでカメラを近づけて撮影してみることです。広角レンズは最短撮影距離(ピントが合う距離)が短いためレンズギリギリまで寄れて、パースの効いたダイナミックな広がりを出せます。
ポイントは手前のお花を大きく入れること。花畑に近づいて上から撮影してしまうと特に手前側は土が見えてスカスカな印象になってしまいます、こうして密度の低い部分に花を入れてあげれば全体が華やかになりますね!
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超広角レンズを持っている人は試してみましょう。標準ズームの広角端を使っても近いイメージになると思いますよ。魚眼レンズを使うのも面白いと思います。
Canon 超広角ズームレンズ EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM APS-C対応 EF-S10-18ISSTM
バリアングル搭載のカメラが圧倒的に有利
地面スレスレからの撮影なのでファインダーを見ながらの撮影はかなり厳しいのでライブビューでの撮影になります。それでも地面スレスレから画面を見るのは大変なのでモニター可変のカメラが使いやすいです。
ただ、チューリップ撮影は縦位置が有利なのに普通のチルト液晶では横位置でしか使用できないためちょっと使いづらい。縦横方向に自在にモニターを傾けられるバリアングル液晶かFUJIFILM X-T2やPENTAX K-1のような3Dチルト液晶を搭載したカメラが圧倒的に使いやすいです。さらにタッチフォーカスに対応していればなおよし(最近のはだいたい対応している)。
そこまで腰をかがめなくても撮影が可能です。キヤノンのカメラだと80Dとかかなり使いやすい。
5.マクロレンズで局所を狙う
さらにバリエーションを増やすならマクロで局所を狙いましょう。チューリップの自分が気になった部分だけに着目すると様々な角度から切り取れます。
例えばお花だけにアップで着目してみるとか。
はみ出るくらい大胆に寄って撮影するのがポイントです。基本はしべにピントを合わせますが、自分がキレイだと感じたなら他の場所にピントを合わせてもOK。
花びらの先にピントを合わせてあえて花心をボカしてしまうというのもアリだと思います。とろけるボケがマクロっぽいですよね。
いろいろな角度から観察してみる
普通の人が撮らないような所も撮影しておくとアクセントとしても使えます。お花っていろいろ観察してみるとキレイなポイントがたくさんあるんです。
お花は上から見るのが普通ですが、チューリップは花の付け根部分も可愛らしいですよね。
がっつり真俯瞰で狙ってみるのも面白いです^^
マクロ一度も使った事がないという方は誰かに借りるとかでもいいので一度体験してみることをおすすめします。今までとは別世界が見えてくるはずです。屋外で使うことが多いなら35mm換算で90~100mm程度、室内が多いなら60mm程度の焦点距離が最初の一本におすすめです。
6.ボケや背景の色で印象をコントロール
望遠やマクロを使って撮影する場合、写真にボケを出しやすいですのでこれを上手く使いましょう。
例えばこんなシーン、背後に小さな川が流れていてちょっとしたキラキラポイントを見つけました。そう、これは玉ボケの素です。
このキラキラポイントをボカすために手前にピントを持ってくると...
...
ただの水の流れがキレイな玉ボケに変わりました!
望遠などで背景のボケが強くなるシーンでは漠然とボカすのではなく、「ボカしたらキレイになるもの」を狙ってボカせるようになるとステキです。
玉ボケの作り方は下記記事が詳しいです。
背景の印象が違うと印象がガラッと変わる
もう一つ着目したいのが背景の印象。単純にボカす花の色を変えるというのも当然OKですがここでは、「背景の明るさ」に着目してみましょう。
背景の抜けが良い場合はこんな感じで明るく爽やかな印象になります。
でも、ちょっと角度を変えて背景を暗い日陰部分にしてみるとどうでしょう?
全然印象が変わりましたね。主題のチューリップの明るさはほとんど変わっていませんが背景の明るさが違うだけでこんなに印象が変わります。
特に望遠レンズを使用している場合は写る背景の範囲が限定されるため、ちょっと立ち位置を変えただけで背景のイメージがガラッと変わります。撮りたいものの後の風景にも着目しながら撮ってみましょう。
7.暗く撮影して大人っぽい印象に
今まで紹介してきた作例は明るめの印象でした。チューリップは明るい印象にとても良くマッチしますが、暗い雰囲気にしてみても合うんです。
チューリップ畑がある場所は林の中というシーンって結構多いのですが、こういう場合一部の場所にスポットライトのように光が降り注いでいることもあります。撮影時にアンダー目で撮ってみると印象がガラッと変わり大人なイメージになります。
日陰の中に日光が差し込んでいるシーンを撮影してみました。マイナス補正気味(-0.7~-1.3EV)に撮影するのがポイント。背景も暗い場所を選びましょう。
こういうスポットライトが上から当たっているようなシーンではあえてレンズの周辺光量落ちを残しておくとより印象的になります。JPEG撮影の人はメニューからレンズ補正の項目で周辺光量補正をOFFにしてみましょう。
撮影後にヴィネット効果(四隅を暗くする効果)を加えてあげても面白いと思います。Lightroomなら「切り抜き後の周辺光量補正」という項目ですね。
大人っぽいシックなチューリップのイメージになりましたね。被写体のコントラストが大事なので日光が差し込む晴れた日が撮りやすいです。
まとめ
ということで作例を多めに7項目ほど紹介してみました。この項目を意識しながら撮影してみると様々なバリエーションのチューリップの写真を得られると思います。実はここにある写真の大半は先日1時間程度でザーッと撮影してきたものだったりします。バリエーションを出す方法を事前にイメージしていれば短時間でもこのくらいの写真が撮れてしまうのです。
また、これらはチューチップ以外にも彼岸花とか花壇に群生するようなお花でも使えるテクニックなので覚えておいて損はないはずです。
ぜひ活用してみて下さい^^