魔法の現像ソフト Lightroomがスゴい
写真は撮るだけではなく、撮影後に調整を行うことでさらに素晴らしい作品となるんです。最近のカメラではただシャッターを押したままでもそれなりに美しい写真が仕上がりますが、専用の現像ソフトを使うとさらに細かな所まで自分の思いのままに作品作りができるのです。
しかも、カメラで生成された写真は誤解を恐れずに言えば、メーカーのおすすめ設定で現像された「カメラに撮らされた写真」って考えることもできます(それが悪いことではありませんが)。
お気に入りの写真は撮影後に、自分だけのお気に入りの仕上げをして完成させたいものです。
それを可能にするのはPhotoshopなどの画像編集ソフトなのですが、今回ご紹介するのはPhotoshopと同じくAdobeが開発した「Adobe Lightroom」というアプリケーションです。ここ3年くらいでずいぶん一般の方にも浸透したので聞いたことがある方も多いでしょう。
Lightroomを使うことで、写真をより魅力的に引き立てたり、失敗した写真を蘇らせたりすることも簡単にできてしまいます。DigitalvPhotovProffesional(DPP)やCapture NX-Dなどカメラメーカー純正の現像ソフトもなかなか高機能ですが、さらに上を行きRAW現像界で最も勢いがあるのがLightroomなんです。
そんなわけで、今回はLightroomのスゴい現像機能に絞ってオススメのポイントを1718個ご紹介してみます!
(実はLightroomが真に優れているのは現像より管理機能なんだけどねw)
*本エントリーは2013年に公開した「ここまで出来る!!魔法の現像ソフト Lightroomのスゴイ使い方10選!」を2017年版として全面的に改定した記事です
Lightroomとはなんだ?
冒頭でも述べたとおり、「Lightroom」は世界のクリエイティブ系アプリケーション帝国を築くAdobeが提供する写真の管理および現像ソフトです。同じくAdobeが提供するPhotoshopとの違いは何かというと、”写真”に特化しているのか、”編集”に特化しているのかという違いです。
上記の図は以前の記事でも紹介したLightroomとPhotoshopの違いのイメージ図なのですが、Lightroomはメモリーカードからの写真の取り出しから現像、管理、出力まで「写真」に関することを一貫してサポートしているのが特徴。写真に関する事ならほとんどの事をLightroomだけで効率良く行えます。一気に10枚とか100枚を処理することも余裕です。
一方、Photoshopは一部管理や出力もサポートしていますが、メインの機能は「編集」です。しかも写真に限らず、イラストやデザインなんかも画像処理に関する事ならなんでもできます。ただし、一度に多数の写真を処理するのは苦手。
追記:Lightroomが2つのバージョンに?
2017年10月のメジャーアップデートにより既存のLightroomは「Lightroom Classic CC」と「Lightroom CC」の2つのバージョンに分かれました。従来のLightroomの後継に当たるのはLightroom Classic CCです。
新しいLightroom CCでもほぼ同じ操作が可能ですが、LR Classic CCに対して一部の機能が制限されています。
本ページの項目は旧Lightroom CC 2015(Lightroom6)と、Lightroom Classic CCを前提にしています。新しいLightroom CCでは一部の項目が使えない場合があるのでご注意下さい(今後のバージョンアップで使えるようになる可能性はおおいにある)
2017年10月アップデートの詳細は以下の記事が詳しいです。
https://photo-studio9.com/all-new-lightroom-review-2017/
写真メインならLightroomがいいんじゃない?
実はLightroomとPhotoshopのRAW現像エンジンは同一のものです(CameraRAW)。ですから、RAW現像そのものの品質や実力は全く同じと言えます。(PhotoshopはRAW現像後にさらに高度な編集ができる)。
Lightroomでは写真に特化した強力な管理機能や効率的なワークフローが簡単に使えるので、個人的にはLightroomがオススメです。Photoshopとのシームレスな連携もできるので、Lightroomで現像後に直接Photoshopで高度な編集を続けるといった事も可能になります。
また、Lightroomを使うにしろ、Photoshopを使うにしろ、現状最もお得なのはAdobeのフォトプランというもので、このプランなら月額980円(年契約)でLightroomとPhotoshopのフル機能が使い放題になります。(2017年より単体のパッケージ版は廃止されました)
https://photo-studio9.com/all-new-lightroom-review-2017/
追記:月額980円はアドビのサイトから契約が必要に
最近までAmazonで12ヶ月分のオンラインコードがお得に売られていましたが、今年(2018年)に入って月額980円コードは廃止され、Amazonで買えるのは1TBストレージ付きの月額約2,000円のプランが最安です(2018年6月現在)。
オンラインストレージが不要ならAdobeのサイトから直接フォトプランを契約することで月額980円でLightroom、Photoshopの両方が使えるようになります。安く済ませたいなら本家で直接契約するのがお得です。
どのプランを使うべき?
2017年10月アップデートからは従来のデスクトップ版Lightroom CCの機能を引き継いだ「Lightroom Classic CC」とクラウドベースになった「新しいLightroom CC」の2つのLightroomが存在します。
「Lightroom Classic CC」が使えるフォトプラン(月額980円)は引き続きPhotoshop CCも使え、「新しいLightroom CC」も使えるので今後バリバリ現像したい!(オンラインストレージは不要)という方は引き続きフォトプランの利用がおすすめです。
一方、Lightroom Classic CCとPhotoshop CCの機能を省き、「新しいLightroom CC」と1TBのクラウドストレージ付きのプラン(月額980円)も発表されました。JPEGメインの撮影で面倒なファイル管理などせずにライトに使いたいという場合はこちらのプランを選択するのもアリかもしれません(一部機能が制限されている)。
両方を合わせたプラン(月額1,980円)も出ました。
フォトプラン | フォトプラン 1TBストレージ付き | Lightroom CCプラン | コンプリートプラン | |
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Lightroom Classic CC | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 |
新しいLightroom CC | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
Photoshop CC | 〇 | 〇 | ✕ | ◎ (全製品OK) |
ストレージ容量 | 20GB | 1TB | 1TB | 100GB |
価格(月額) | 980円 | 1,980円 | 980円 | 4,980円 |
980円のフォトプランは現在の所Adobe本家サイトから直接契約しないと使えない模様で、Amazonなどの量販店で売られているオンラインコードはPhotoshop+Lightroom+1TBストレージの月額1,980円版のみです(2018年6月現在)。
安く済ませたいなら本家サイトで契約しましょう。簡単に契約できますよ。
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前置きが長くなりましたが、そんなLightroomの現像機能のスゴい所を17個ほど紹介してみます。ここまではLightroom(Lightroom Classic CC)だけでできます。これ以上の編集が必要になったらPhotoshopを使いましょう。
人によっては「Photoshop必要ないじゃん。。」ってなると思いますよw
詳しい使い方を一つずつ紹介していくと果てしなく長くなるので、要点をまとめていきます!(それでもかなり長いけどw)
*今回の写真は作例用にやや強調して強めに効果を掛けています(普通はもう少しマイルドでも良い)
1.暗い失敗写真が蘇る、逆光で真っ黒な写真も蘇る!
写真の失敗で良くあるのが「めっちゃ暗く写った。。」ってやつだと思います。特に曇りの日やあたり一面が黄色い菜の花畑とか、背景の色が明るいシーンでは普通に撮影すると写真が暗くなりがちです。
そんな場合もLightroomなら基本補正にある「露光量」スライダーをちょちょいと動かすだけで高品質に明るさをコントロールできます。元の写真がRAWで白飛びや黒つぶれがないなら1~2EV程度は画質の劣化を(ほとんど)気にせず明るく出来ます。
例えばこんな感じ。左(←)が撮影後そのままの暗い写真。右(→)が露光量を+2EVしただけです。花の白飛びをギリギリ抑えつつ全体が明るくなっています。縦のバーをグリグリドラッグしてみてください。
さらに同じく基本補正のシャドウやハイライトなどを含めて細かく調整するとここまで明るくすることも出来ます(▼)。ほぼ真っ暗な場所が蘇るから!
左(←)が撮影ママの写真、右(→)が調整後の明るい写真。奥の明るい景色を白飛びさせないようにわざと暗く撮影しましたが、画面右側は黒つぶれしてるんじゃない?ってくらい真っ黒です。普通ここまで暗いと諦めますよねw
細かくといってもLightroomの最も基本の「基本補正」の項目だけでここまで調整可能です。ただし、Lightroomといえどもここまで激しく明るくするとシャドウ部にノイズが現れやすいので、撮影後に大幅に調整を掛けたいなら出来るだけ低感度(ISO100〜200)で撮影(もちろんRAWで)しておくことも大事です。
2.コントラスト調整で写真の印象を大きく変化させる
写真の印象はコントラストによって大きく変わります。個人的には現像の最も重要なポイントはコントラストの調整だと思っているほど。ちなみに、コントラストとは画像の中の「明るい所と暗い所の差」のことです。つまり明るい所と暗い所を別々に考えてコントロールするのが大事。
カメラ内で撮影時に設定できるのは「コントラスト」の1項目だけだったり、ちょっと気が利いたアプリなら「シャドウ」「ハイライト」を個別調整できるものもありますが、Lightroomなら「コントラスト」「ハイライト」「シャドウ」「白レベル」「黒レベル」の5つの項目で調整出来ます。さらにトーンカーブをつかって微調整することも可能。白飛び、黒つぶれを抑制しながら厳密にコントロールできます。
例えばお花畑をユルく表現したらこんな感じ。(←)左がコントラストそのままの写真、(→)右がコントラストを低くした後のフワフワ写真。中央のスライダーをグリグリしてみてね。
赤い枠で囲った部分しか変更していません(元の写真は設定値ゼロ)。コントラストいじるだけでもかなり印象違いますよね。後述する明瞭度と組み合わせるとさらに効果的。
もちこん、コントラストを上げてカチカチの仕上げにしても面白いです。左(←)がコントラストそのままの写真、右(→)がコントラストを上げてカッチリさせた工場。
ある程度カッチリ見せたい場合はカメラで撮影したままでは特にシャドウ部が浮いてしまい締まりのない写真になってしまいます。コントラストが上がると写真に力強さが出ますね。
3.C-PLフィルタを使わずに空を青くする
晴れた日は青空をいっぱいに入れて写真を入れたいところですが、普通に撮ると思ったほど青くならないといったこともあります。青空を青く写すにはC-PLフィルターという特殊なフィルターを使って撮影するのが定石ですが、Lightroomなら「自然な彩度」スライダーをプラスにするだけでOKです!
これも基本補正の中に入っています。一番上の基本補正を使うだけで大抵の写真は7~8割の完成度まで高められます。基本補正マジで大事。
例えば、左(←)が撮ったママ、右(→)が「自然な彩度」を上げた写真。スライダー一つでこんなに空が青くなるんです。
自然な彩度は写真の明るい緑~青色を中心に彩度を上げてくれます(他の色もつられて上がるけど)。だから晴れた日に使うと空の色が鮮やかになるんですね。海の色や背景の山の新緑が鮮やかになっている点にも注目。C-PLフィルターを使った上でさらに色を調整するのがベストではありますが、特殊フィルターなしでもかなりコントロールできます。
鮮やかにしようと普通の「彩度」を使うと全体の色が濃くなってしまいかなりコッテリしてしまいます。普段はあっさり色が濃くなる「自然な彩度」がオススメです。
4.特定の色だけ補正できる
自然な彩度では緑~青色の彩度を中心上げるという縛りがありましたが、「HSL」を使うと、特定の色(8色)に対して「色相」「彩度」「輝度」の項目を自由に調整出来ます。
写真の中のオレンジ色だけ濃くするとか、緑の色を変える(シフトする)とか、いろんな工夫が出来ます。特定の色を変えられるというのは大きなメリットです。
例えば青い紫陽花を赤くしてみましょう。左(←)の写真は撮ったママの青い紫陽花。右(→)がブルーの色相をプラスにシフトさせたものです。
触ったスライダーはブルーの一カ所だけ!元の青色が紫(マゼンタ)に変わりました。マスクなどは使っていません。スライダー動かしただけ。
HSLの主な用途は肌の色だけちょっと補正したいとか、花火を撮影してこの色だけちょっと変えたい といった特定の色を少しだけ変えるといった補正ですが、このように元の色がハッキリしている写真ならこのくらい劇的に変えられます。
また、青空の色も先ほど紹介した「自然な彩度」を使わずに「HSL」を使うという方法もあります。雲がない快晴時なんかはHSLの方がキレイに決まることも多いです。
5.写真の輪郭コントロールがめちゃ簡単
写真の印象を大きく変える要素としてコントラストと並んで大事だと思っているのが輪郭の印象です。被写体の輪郭(ディティール)が硬いか、柔らかいかで同じ写真でも感じ方が違うんですね。
よく、描写の柔らかいレンズとカリカリに解像するレンズの違いみたいな話がありますがそれに似た効果を得られるといっても良いかも知れません(全く同じではないけど)。輪郭の硬さはカメラ内の設定で調整する事は難しく、後処理で行うことが大半です。
Lightroomなら「明瞭度」スライダーがめちゃ便利。このスライダーだけで輪郭の硬軟を使い分けられます。
左(←)の写真は明瞭度0です。右(→)が明瞭度-30にして柔らかくしたもの。中央のバーを左右にドラッグしながら違いを見てね。
肌の質感がかなり滑らかになりましたね。赤ちゃんや女性の肌は明瞭度をマイナスにするだけで綺麗になります(やり過ぎ注意)。お花などにも有効。
逆に明瞭度をプラスにすればカリカリの力強い印象になります。
左(←)の写真は明瞭度0の撮ったママの状態。右(→)は明瞭度+90にして東京タワーの鉄骨感を前面に押し出しました。
建物など無機的な被写体には明瞭度プラス側が効くことが多いです。明瞭度はコントラストと合わせて使うと相乗効果を得られますね。
6.かすみの除去がヤバい
輪郭コントロール系の機能としてはもう一つ、ワリと最近追加された「かすみの除去」がめちゃ有能です。LightroomCC 2015.1から搭載されたCC版限定の機能で、残念ながらパッケージ版のLightroom6では使えません。。(LightroomCC2015はLightroom6と同じ世代)
これは霞んだ景色のディティールをハッキリさせつつ、色も復元するという便利機能。例えば、晴れたに日に山に登って景色を見渡したらめちゃ霞んでてガッカリだった。。みたいな時に使えますw
黄砂や夏の湿気でモヤモヤした景色、曇りの日なんかにも有効ですね。例えば、左(←)の写真は撮ったママの霞んで残念な景色。右(→)がかすみの除去を+50して奥までハッキリさせた写真です。
かすみの除去スライダーをいじるだけで、全体のコントラスト、輪郭、色がバランス良くハッキリします。風景を良く撮る人にはめちゃ有用だと思います。
マイナスに設定すれば逆にクリアな景色を霞ませることも可能です。水中写真や水族館の写真をハッキリさせるのにも有効。いろいろ使い道がありますよ!
詳しくはこちらの記事もどうぞ!
7.部分フィルターで特定部分だけ修正できる
今まで説明してきた機能はすべて”写真全体”に対して効果を掛けるものでしたが、写真によっては画面の上半分だけ色を変えたいとか、顔の部分だけ明るくしたい といった場合もありますよね。Lightroomならそれも簡単です。Photoshopのようにマスクを作ってトーンカーブかけて。。というような難しい手順を踏まなくても大丈夫。
特定部分のみ編集するには「段階フィルター」「円形フィルター」「補正ブラシ」の3つの機能が使えます。
使い方は簡単。段階フィルター、円形フィルターは画面内でドラッグをして、補正ブラシは任意の場所をブラシで塗ることで効果を掛けたい範囲を指定して、通常の補正と同じように露光量やコントラスト、ホワイトバランスなどを変えるだけです。
例えばこのような強烈な夕日の逆光で地上部分が黒く沈んでしまった場合、地平線の下だけ範囲を指定して明るさなどを調整可能。
左(←)の写真は段階フィルターなしの状態。右(→)が地平線より下だけに段階フィルターを掛け、明るさやコントラスト、ホワイトバランスなどを調整したもの。
右の天文台などがよく見えるようになり現場で目視したイメージに近くなりました。空の部分は全く変わっていない事にも注目。
補正ブラシならなんでもアリ
段階フィルターや円形ブラシなら線や円状のものでないと範囲指定できませんが、補正ブラシなら自分の好きなところをブラシで塗ればどんな複雑な部分でも補正可能です。気合いと根性があればねw
例えば、レインボーブリッジを下から撮ったこの写真とか。左(←)の写真は撮ったママ。右(→)は空の部分と橋の部分をそれぞれ別々に塗って補正を掛けました。
劇的に変わっていますが2枚の写真の違いは橋と空にかけた補正ブラシの有無だけです。空の部分は白飛びしかけていたので暗くし、雲のディティールを出しました。橋の部分は色温度を変えつつ明るく力強い線にする感じで補正。海の部分は2枚とも同じなことにも注目。
ここまでやるならPhotoshop使った方が効率が良いですが(使える人なら)、Lightroom内でマウスを使ってグリグリするだけでもできる手軽さが良いですね。作例は結構手抜きしたので塗りむらなどありますが。。(汗
ここまで大規模にやらなくても、覆い焼きや焼き込みといった古来からある手法として使うことも出来ます。
なお、LightroomCC2015/Lightroom6以降であれば、段階フィルター、円形フィルターをかけ、後からブラシを使って不要部分を細かく削ったり範囲を足したりすることも可能です。詳しくは下記まとめ記事をどうぞ!
8.範囲マスクツールなら1分で複雑なマスクを作成
Lightroom Classic CC(2017年10月アップデート)からの新機能です。ヤバいです。
7.で紹介した「段階フィルター」「円形フィルター」「補正ブラシ」は手動で効果をかける範囲を指定していました。何でもありの補正ブラシなら複雑な形のマスク(選択範囲)を作ることができますが、それを高度にやるには熟練のワザと気合いと根性が必要です。
ところが、Lightroom Classic CCから搭載された「範囲マスク」を使うと驚くほど簡単にマスクが作れます。
例えば、次の写真は空の青い部分だけ効果がかかるようなマスクを1分で仕上げました。雲の白いところにはほとんど影響が無い所がポイントです。左(←)の写真は補正前。右(→)は空の青い部分だけ強調しました。
これ、段階フィルターで空の部分(上3/4)をざっくり囲って、範囲マスクの「カラー」を選択。左上の青い部分をスポイトで抽出して、スライダーを動かすだけで空のマスクが作れます。
こんな複雑なマスクが1分もかからずに作れます。慣れれば30秒。
範囲マスクは写真の色を基準にする「カラー」と明るさを基準にする「輝度」の2つが使えます。2つのマスクを別々に合わせ技で使うことも可能。たとえばスカイツリーの複雑な骨組みも自動でしっかりマスキングしてくれます。
左(←)の写真は補正前。右(→)は「輝度」で逆光で暗くなったスカイツリーの骨組みだけ選択して明るくし、「カラー」で空だけ選択して強調しました。全部オートマスクです。すごい。
範囲マスクツールの詳細はこちらの記事もどうぞ!
https://photo-studio9.com/all-new-lightroom-review-2017/
9.伝家の宝刀修正ブラシで不要物を除去
Adobeの得意技といえば、写真の中から”モノを消す”機能です。本家のPhotohopにも様々な不要物除去機能が搭載されており、年々その精度は上がっていますが、Lightroomでも「スポット修正」で実現可能です。
このスポット修正は不要なものをブラシでざっくり塗るだけでOK。主な用途はイメージセンサーに付いてしまったゴミやうっかり画面端に映り込んでしまった小さなモノを消すことですが、条件が良ければかなり大胆に消すことも可能。
例えばこの写真。以前のエントリーでも紹介しましたが衝撃的だったのでまた使いますw 2組のカップルが並んだ写真ですが、右のカップルの男性だけを消してみましょう(悪意はないです)。
右の男性をブラシでぬりぬり。マウスでざっくり塗るだけでOK。ぼかしは小さく、流量を大きくした固めのブラシで塗るのがポイント。あとはLightroomがよしなにやってくれます。
塗り終わったらマウスを離します。
すると何ということでしょう!
…
…
男性が消えました!
良く見ると怪しい点はいろいろあるのですが、パッとみただけではそんなに違和感がないんでは?
これだけ大きな被写体が消せるので、センサーダストのような小さなゴミを消すのは余裕です。ちなみに、この写真でなぜ一発で上手く消えたかというと、真ん中に誰もいない柵があったから。ここの情報を元に男性の上を塗りつぶしています。もし、隙間なくカップルが並んでいるような状況では参考にする部分がないので上手くいかないかと思います(たぶん他の誰かに入れ替わると思うw)。
10.輝度差が激しい被写体はRAWのままHDR可能
カメラが記録できる明るさの範囲(ダイナミックレンジ)はその個体によって決まっていますが、輝度差の激しい逆光や室内の窓から見た外の景色といったシーンではすべての明るさを記録できずに白飛びしてしまったり黒つぶれしてしまうことがあります。
それを防止する有効な手段が「HDR」です。HDRでは露出の異なった複数枚の写真を合成し”明るさのいいとこ取り”をすることでダイナミックレンジを拡張し、白飛びや黒つぶれがない写真を得ることが可能になります。
このような複数枚の写真を合成する手段は以前のLightroomには不可能でしたが、LightroomCC2015 /Lightroom6でHDRがサポートされ圧倒的に便利になりました。
使い方は簡単で、露出の異なる複数枚(通常3枚)を選択して右クリック > 写真を結合 > HDR と進むだけ。手持ち撮影などで3枚が微妙にズレていても自動でズレを修正して合成してくれます。
例えば、こんなシーン。輝度差が大きな逆光のシーンなので1枚で目の前の景色の明暗をすべて抑えるのは厳しい状況です。そこでカメラのAEブラケット機能を使って±1.7EVで撮影しておきました。手持ち撮影です。
これをHDRしてみました。左(←)の写真はHDRなしの中央の一枚(±0EV)。右(→)がHDR後の写真。2枚とも現像パラメータは一緒。違いはHDRの有無のみ。中央の矢印を左右にドラッグしてみるとよく分かります。
HDRすることで3枚の写真から”明るさのいいとこ取り”をし、白飛びを抑えつつ、雲のシャドウ部もマイルドになりより現場で見た景色に近づきました。一般にHDRすると肉眼で見たイメージに近づく事が多いです(人間の目はダイナミックレンジめちゃ広い)。
今回は中央の写真の露出が比較的上手く決まったため、中央一枚から無理やり調整する事も出来なくはないですが一部白飛びは避けられないですし、シャドウを大きく持ち上げると画質の劣化も気になります。また、難しい逆光のシーンでは露出のちょっとしたミスが命取りになりますが、前後の露出を撮影しておけば中央で多少失敗してもHDRでカバーできます。
HDRしてもRAWのまま
また、LightroomではRAWをHDRすると、HDR後の写真もRAWのままなので処理後の大胆な調整も可能。カメラ内でHDRできる機種も増えていますが、カメラでやってしまうと処理後のデータはJPEGになることが多いです。しかも詳細なパラメーター調整できないしね。
露出に困ったらとりあえず3枚露出をバラして撮っておきましょうw
11.手持ち撮影でもパノラマが楽しめる
HDRと並んで追加された機能が「パノラマ」。こちらも以前はPhotoshopで処理する必要がありましたが最新版ならLightroom内で完結できます。
横に広がる大きな景色も一発でパノラマ合成可能。こちらも手持ちで微妙に場所を変えた複数枚を撮影しておけばあとはLightroomがうまく合成してくれます(できるだけ水平にカメラを動かす。理想は三脚使用)。
例えばこんなシーン。レインボーブリッジの中央から豊洲方面(北)を向いて、芝浦ふ頭側(西)からお台場側(東)まで連続して小分けで9枚撮影しました。つまり、目の前の景色を180度ぶん撮影したわけです。マニュアルで露出を固定して撮影するのがポイント。
この9枚をLightroomで選択して、右クリック > 写真を結合 > パノラマ とすることで自動で合成してくれます。
結果はこちら!
結構綺麗に繋がっていると思います。これも手持ち撮影です。写真の左右で180度ぶんの情報が入っています(U字の橋に見えるけど、1本の直線の橋です)。これだけ広い範囲は超広角レンズでも無理ですね。ちなみに、パノラマも処理後もRAWのままです!
また、広角レンズがない現場でもこうして撮っておけば後で擬似的に広角の写真が作れるのも便利。
HDR、パノラマの使い方はこちらの記事(▼)にくわしくまとめているので参考にどうぞ!
12.カメラキャリブレーションでメーカーの色を再現
写真にはピクチャースタイル(キヤノン)、ピクチャーコントロール(ニコン)、クリエイティブスタイル(ソニー)などメーカーごとに画作りの基本となる設定(プロファイル)があります。これもRAWで撮影しておけば撮影後にLightroom内で変更が可能*です。
*Lightroomがサポートしている機種に限る。主要メーカーの機種はだいたいサポート
LightroomでRAWを読み込むと、どんなカメラで撮影したデータでもプロファイルはカメラで設定したモード(風景とかスタンダードとか)ではなく、「Adobe Standard」というモードになります(カメラで見た色やJPEGとは異なる)。
通常はここから好みの色合いに調整していくわけですが、カメラメーカーの画作りや色の出し方が好きなら、あらかじめメーカーの画作りをシミュレートするプロファイルを当てることが可能なのです。
「Adobe Standard」では後で補正しやすいよう比較的抑えめな色が初期状態ですが、普段からカメラ内で風景やビビッドといった派手な色で撮影している人にはくすんで見えて物足りないかもしれません。そんなときはカメラキャリブレーションの項目(一番下)でカメラ独自のプロファイルを当てればほぼ同じ色合いになります。
例えば青空のシーンでは「風景」で撮ると青が綺麗に出ますよね。左(←)の写真はAdobe Standard。右(→)がキヤノンのピクチャースタイル風景を再現したCamera Landscape。プロファイルを変えるだけで鮮やかな青が再現できました。
プロファイルを変えただけでもこんなに印象が変わります(特に風景は顕著)。ただ注意して欲しいのはデフォルトのAdobe Standardの色がくすんでいて悪いというわけではないということです。ここから希望の色に補正すれば良いわけですから。
また、プロファイルを変更するときはなるべく一番最初にやりましょう。最後にやると全体の色やコントラストが変わって振り出しに戻りますw
13.ノイズ除去で高感度撮影も余裕
最近のカメラは高感度に強くなったとはいえ、ISO6400や12800で撮影するとノイズ発生は避けられません。そこで活躍するのがノイズリダクション(ノイズ軽減)。カメラ内で調整もノイズ軽減はできますがLightroomなら細かくパラメータを調整しながら行えます。
例えばこのような暗い室内で撮影した猫の写真。ISO12800で撮影しました(@EOS5DMarkIII)。フルサイズのカメラとはいえISO12800ともなるとノイズがかなり気になります。
デジタル写真のノイズは「輝度ノイズ」と「カラーノイズ」の2つに分類できますが、Lightroomなら別々に処理可能。上記写真の中央部分を拡大して、ノイズ軽減ありなしの比較をしてみるとこんな感じです。
左(←)の写真はノイズ軽減ゼロ(輝度、カラーともにゼロ)。右(→)が輝度50、ディティール100、カラー25に調整したもの。
Lightroomではデフォルトで輝度ノイズ0、カラーノイズは25で設定されていますが、分かりやすいように両者を0にしたものと比較するとノイズがかなり軽減されていることがよく分かりますね。
輝度ノイズは全体にザラザラしたノイズ、カラーノイズは緑や赤のまだら模様のノイズです。カラーノイズはデフォルトの25でほとんど除去可能なのですが、輝度ノイズは効果をかけると徐々にディティールが失われてくるので妥協点を探しましょう。ディティールスライダーを強めに掛けるのも良いです。輝度ノイズ軽減の強さは通常は30~50くらいの間でOKです。
14.豊富なレンズ補正データ付き
Lightroomではレンズ光学補正にも対応しています。純正現像ソフトでは純正レンズしか対応しませんが、Lightroomならシグマやタムロンなどサードパーティー製レンズの補正も行えます。
Lightroomで行える補正は、「歪曲」「周辺光量」「色収差」の3つ。基本的にチェックを入れるだけで自動で行ってくれます。
例えばTamron SP 24-70mm F2.8 Di VC USDで撮影した夜景の写真(24mm F2.8)。レンズ補正ありなしで比較すると周辺光量落ち、歪曲が結構大きいことが分かります(ズームの広角側は大抵こんなもんです)。色収差は通常拡大しないと分からないくらいなのでWEBで使うくらいなら無視しても良いです。
左(←)の写真はレンズ補正なし。右(→)がレンズ補正あり(歪曲、周辺光量、色収差)。
自然風景なんかは多少歪んでいても気にならない事が多いですが、形がしっかりしたものが写っている場合は結構歪曲は気になりますよね。周辺光量落ちも開放で撮影すると大きくなります。
純正レンズはチェック入れるだけでほぼ確実に正しいレンズプロファイルを当ててくれますが、サードパーティ製レンズはたまに違うメーカーのものが入ったりするので異なる場合は手動でリストから選びましょう。
最新レンズやマニアックなレンズはプロファイルがない場合もあり、その場合は手動で補正することも可能。また、マイクロフォーサーズのレンズはRAWデータに補正値が入っているのでここは関係ありません。
15.自動歪み補正がマジで使える
写真の歪みといえば上記で紹介した歪曲のほかに、広角レンズのパースによる歪みも存在します。こちらの歪みは広角レンズらしいダイナミックさを出してくれるので悪い歪みとは言い切れませんが、建築写真などきっちり形を見せたい場合はなるべく除去したいものです。
Lightroomでは「Upright」という機能でこの歪みにも対応します。基本は「自動」をチェックするだけでOK。超広角レンズで撮影したパースの歪みを自動検出して補正してくれます。
左(←)の写真はUprightなし。右(→)がUpright自動補正後。
補正後の写真はすべての柱が垂直になって歪みが解消されています。カメラだけで撮影しようとするとティルトシフトレンズや専門技能が必要な撮影ですが、これを使えばボタン一発でOK。
ただし、Uprightを使うと写真の一部が切り取られるので余裕をもって撮影しておくことが大事。写真によってはうまく行かないこともあり、その場合はLightroomCC2015.6からの新機能(CC版限定)のガイド付きUprightを試してみると良いでしょう。下記リンクを参考にしてみて下さい。
16.いろいろ合わせ技が使える!
今まで現像に関する便利な項目を14個紹介してきました(これでも一部の機能)。違いが分かりやすいように比較画像は1つの項目しか変えていませんでしたが、これらを自由に合わせて使うことももちろん可能です。
組み合わせる順番は関係ないので好きなモノからやっていけばOKですし、気に入らなければ効果をあとでOFFにしてもOK。流れとしてはまずは基本補正で全体を整えつつ、部分補正系の飛び技で仕上げていく感じが良いかと思います。
左(←)の写真は撮影したママ。右(→)がLightroomでごにょごにょ効果を足していったもの。露出を失敗したのではなく、太陽の光条を潰さないギリギリの露出を狙ってアンダーで撮影しておきました(後でRAW現像を想定するならこういう撮り方もOK)
レンズフレアやセンサーダストを消しつつ、草原の下を段階フィルターで明るく。自然な彩度やHSLで空の色を調整したり… という感じ。
いろいろ使えるようになるとLightroomだけでこんな効果さえ作れます(▼)。
左(←)の写真は撮影したママ(トリミングだけした)。右(→)がLightroomでごにょごにょ効果を足していったもの。
以前はPhotoshop案件だったこんな特殊効果もLigtroomだけで作れます。スポットライト効果は円形フィルターを重ね掛けしながら、周囲を暗くしました。
いくらでも応用が利くのがLightroomの良いところです。
17.現像設定をコピペできます
ここまでは現像機能そのものを紹介してきましたが、Lightroomには現像をサポートする便利機能もいっぱいあります。最もよく使うのが現像のコピペ。これを使うとめちゃ作業効率が上がります。
現像モジュールの左下に「コピー」「ペースト」ボタンがあります。現在調整している画像のパラメータの値を細かく限定してコピーすることも可能。
色(ホワイトバランス)とトリミング(切り抜き)だけは個別に調整したいからチェックを外すとか、フィルター機能と組み合わせて、ISO3200以上の写真だけノイズ軽減をかけるとか、様々な使い方ができます。
ショートカットもあるのでよく使う方は覚えておきましょう。普通のコピペに「Shift」を足すだけ。「Ctrl + Shift + c」が現像のコピー、「Ctrl + Shift + v」が現像のペーストです。
複数枚一気に同じ設定を流したい場合は、写真を複数枚選んで「同期」を使うと良いです。同期ボタンは現像モジュールの右下にあります(複数枚選択しないと出現しない)。
これを使えるだけで現像の効率が格段にアップします。
ちなみに、隣にある「初期化」を押すと現像前の状態に戻ります。どんなにぐちゃぐちゃな現像をしたり、コピペを重ねてもこのボタンで一発で元に戻れるのです。しかも、左カラムの「ヒストリー」に初期化したことも記録されるので、やっぱり初期化やめたーなんてこともできます。この初期化はカジュアルに押して大丈夫w
18.RAWもJPEGも同じように現像できる!
ようやく最後です!
LightroomはRAW現像ソフトとして世の中に認知されていますが、JPEGも扱えます。しかもほぼすべての機能がRAWに対してもJPEGに対しても同じように使えます。
RAW現像ソフトによっては、RAWとJPEGで調整出来る機能に大きな違いがあったりしますがLightroomは大丈夫。今までずっとJPEGで撮影してきて、RAWに挑戦しようかな?という人でも1つ覚えるだけで昔撮影したJPEGもこれから撮影するRAWもどちらも扱えます。
JPEGを扱えると言うことはスマホで撮影した写真もLightroomで処理できると言うこと。身の回りにあるすべての写真をLightroomで処理できるのですね。
もちろん、元画像のデータ量や品質が違うのでRAWから現像した方が良い結果になりますがJPEGからでも結構いろんな事が出来ますよ。
カメラキャリブレーションだけは使えない
ただし、1つだけカメラキャリブレーションの「プロファイル」という項目だけはJPEGの写真には使えません。「11.カメラキャリブレーションでメーカーの色を再現」で紹介したところです。
プロファイルはRAWデータをどのような仕上がりで写真に復元するかという項目なので、すでに色が決まっているJPEGには適用できない(「埋め込み」になっている)点には注意しましょう。
この辺の話は下記の記事(▼)なんかも参考にどうぞ!
その他の機能はすべて使い放題ですから、ここで紹介しきれなかった機能なども自由にいじってみて下さいね。
まとめ
ということでかなり長くなってしまったLightroomの現像機能紹介ですが、これでもほんの一部を紹介したに過ぎません。全部をきちんと網羅しようと思ったら10万字でも足りないかもしれないw
さらにLightroomには現像のほかにも写真管理機能もあるので、かなりの高機能です。
一番最初は特に管理の所で取っつきづらいところもありますが、使えば使うほどに写真管理→現像への流れを息をするように自然とできるようになるかと思います。
ぜひ一度試してみてくださいね(アドビの記事広告ではありませんw)。
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ちなみにLightroomは2017年10月のアップデートで大きなプラン変更(価格や買い方など)がありました。最新の事情は下記記事にまとめましたので導入を検討される方はこちらもどうぞ!
https://photo-studio9.com/all-new-lightroom-review-2017/