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マンネリを解消!「非日常」を演出するスローシャッター撮影の方法とポイント

更新日: by 桜井 恒二

カメラは目の前に見えている世界を撮るだけのものではありません。シャッターを長時間開いてスローシャッターで撮影すると人間の目には見えないなんとも不思議な世界が撮影できるのです。今回はそんなスローシャッター撮影でできることをまとめてみました!

スローシャッターで非日常を楽しむ

「写真ってさ、ありのままを撮るだけの機械なんだよね」と悟りぎみな皆さんに。スローシャッターで日頃と異なる非日常的な写真を楽しみましょう!

ブレや軌跡が生み出す別世界

スローシャッターによる撮影とは、シャッタースピードを遅くして撮ることです。

手持ちでも、おおよそ60分の1秒前後で撮れば被写体は静止した状態で写すことができますが(メーカー・機種による差あり)、それをあえて30分の1秒、10分の1秒、1秒、2秒……と遅くします。遅くすればするほど、写真はブレて失敗と見なされがちですが、今回はそのブレを活用した表現の一部を紹介します。

1枚の写真に軌跡をまとめて見せる

スローシャッターの面白い点は、フレーム内の物体の動きを一枚の写真の中でひとまとめに見せる点。例えば10分の1秒で街中を撮れば、シャッターを開けている時間内のカメラ内に映る歩行者の動き、その軌跡を描くことができます。

スローシャッターの世界では、人や車の動きが追えます。

静止物と動体のメリハリをつけて撮ると、躍動感の感じられる出来栄えになってきます。上の写真では、静止した柵にマニュアルフォーカスでピントを合わせ、動く車の存在が際立たせてみました(三脚を使用しています)。

こちらは横切る赤い車をアップで撮っただけ。シャッタースピードは10分の1秒。

スローシャッターで撮影する際は、シャッタースピードが一番大切です。撮影する際は、シャッタースピードを調節しやすいシャッタースピード優先モード・マニュアルモード・バルブ撮影モード(シャッターを押している間シャッターを開き続けるモード。一般的には「長時間露光」と言います)などを駆使しましょう。

カメラを動かすだけ!絵画的・デザイン的表現を実現

スローシャッター撮影は、ブレを活用して現実のイメージとかけ離れた(大げさな言い方ですが)写真を撮ることも可能です。一見して抽象絵画やデザインのような一枚に仕上げることもできます。

カメラを動かすと見えてくる世界

ではどうやってやるのか。一つは、カメラのレンズ&ボディを強制的に動かす方法です。シャッターを押すと同時にカメラを動かし、写真を恣意的に最大限ブラします。

この方法は本当に簡単です。シャッタースピードを遅くして、目的の被写体にピントを合わせた状態でカメラを動かしてみましょう。動かし方は、一定の規則性があるほうが仕上がりが良い傾向です。色々試してみてください。

それでは以下、撮影の例です。電気屋さんが店頭に並べるカラー電球の前で、シャッターを押すと同時に、カメラを横へ50cmほどブン!と振って撮りました。

次の写真も要領は同じです。電球の前で左から右へカメラを軽くブン!と振っただけです。シャッタースピードは5分の1秒。

単色のものを撮る場合は、光の明暗を活用し、色のコントラストができると味わい深い写りになります。自宅のカーテンなどでも撮れます。

今度は回してみました。道端の生い茂った葉っぱにピントを合わせ、シャッターを押す瞬間にカメラをクルッと一回転。枝や葉っぱがブレて、まるでメリーゴーランドにのって撮影したような写りになりました。

回転させる場合は、中心点をイメージして、それに合わせて回すとキレイな放物線を描けます。他にも2枚目の紅葉を撮った写真のように、カメラを軽く揺らしてちょっとだけ被写体をブラして味わいを出す手もあります。

他にもズームレンズを手動で回したりカメラをジグザグに動かしたりするなど、やり方は様々。とにかく色んな方向に動かすと、人間の目には見えない軌跡が浮かび上がってきて面白いです。

この撮影方法は三脚などを用意する必要がなく手軽ですが、撮影の際はまわりをよ〜く確認してください。人に当てたりカメラを壁へぶつけたりしないように気をつけましょう。

疾走感を表現:カメラ+αを固定して動かす

今度は疾走感を演出する撮り方です。被写体はハッキリ、背景にダイナミックな動きを出します。よくカーレースの撮影などで見かける流し撮りに似ていますが、ピント位置が固定される分、撮り方はこちらのほうが簡単です(だと思います)。ということで例を御覧ください。

シャッタースピードは2分の1秒。50mmレンズ・マニュアルフォーカスで撮影

スーパーの買い物カートにカメラをのせて撮りました。撮影のコツは、静止する被写体(カートの先端)にしっかりピントを合わせ、かつブレないようにカメラをガッシリ固定すること(ここが一番のポイント)。すると動く背景との対比が生まれ、疾走感を出すことができます。同じようにカートを使って撮影をしてみたい方は、お店の方への確認を忘れずに。

定番の夜景撮影!長時間露光で光の軌跡を追う

スローシャッター撮影といえば、定番は長時間露光です。長時間露光では、長時間シャッターを開け続けます。パッと思いつくのが動く光の軌跡、例えば車のライトや星、花火、ホタルの光などです。シャッタースピードは、短いもので1秒〜数分、長いもので30分から1時間も費やすことがあります。

車のライトを撮影。シャッタースピードは主に1〜2秒。夜の高速道路を上から10〜30秒近いシャッタースピードで撮ると、光の軌跡がもっとキレイに浮かび上がります。

今回は1月の寒〜い冬に撮影しました。冬は長時間露光の撮影に適していると言われており、その理由の一つが低い気温。空気の澄み具合もさることながら、デジタルカメラの画像センサーを構成する撮影素子(光を電気信号に変換する物体)との関係がよく議論されます。

一般的に撮影素子は、露光時間(シャッターを開けている時間)が長くなると熱を帯び始めます。するとセンサー全体が熱をもち、写真に赤や白のノイズ、画像の荒れとなって現れることが多々あります。「長時間露光は冬のほうが良い」という意見は、この撮影素子の熱上昇を抑える効果を述べてのことです。

以下、簡単ですがそんな超スローの長時間露光で撮影する際のポイントを6つだけご紹介します。

三脚でカメラを固定する

長時間露光の定番アイテムといえば三脚です。ブレの防止に一番役立ちます。

また三脚を使うときはレリーズというアクセサリが便利。これはいわゆるリモートのシャッタースイッチです。カメラとコントローラーをケーブルでつなぎ、カメラに一切触れずに撮影できるため、シャッターを押して発生するブレの防止につながります。一度使うと非常にやみつき。

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S(Tv)またはBモードで撮影する

シャッタースピードを伸ばせればどんなモードでも良いのですが、はじめてチャレンジするならシャッタースピード優先AE(S、Tv)モードがオススメです。これなら自分の好きな露光時間を自由に決めることができます。

シャッター速度優先AEの基本は以下の動画が詳しいです

ただし、シャッタースピード優先AEでは最長時間が30秒までです。もし30秒を超えるような超スローシャッターを使いたいならバルブモード(B)を使ってみましょう。

バルブモードにチャレンジしたい方はこちらの動画をどうぞ

手ブレ補正を切る

三脚を使う際は手ブレ補正機能(特に振動ジャイロセンサー式のもの)を切りましょう。

この手ブレ補正は、手持ち撮影の際に、手や腕から生じるブレなどの影響を補正する機能です。カメラボディ内蔵のものやレンズに搭載されたものなど色んな種類のものが展開されています。この機能を使うと、手ブレが生じてもジャイロセンサーなどが作動してその画像のブレを補正し、できるだけシャープな写りにしてくれる優れた機能です。

ただしこの機能は、手ブレが生じる前提のもとで活躍します。言うなれば、耐震構造マンションが、揺れの衝撃を緩和するためにあえて揺れやすくしているようなものです。ブレに対してブレで対応しようというわけです。ブレた画像を揺らして、キュッとブレのない画像に調整していきます。

そのため三脚などでカメラをガッチリ固定して手ブレが起きない状態にすると、画像を揺らす手ブレ補正がかえって仇となり、ボンヤリした写りになるケースがあるのです(注: 手ブレ補正機能はメーカーや機種によって働き・構造が異なるため一概には言えません。説明書を読んだり実際に撮影したりして確認しましょう)。

ISOオートを使わない!

上記でお伝えしたとおり、長時間露光はノイズが出やすいため低感度がオススメです。ところが普通のデジカメのISO感度はオート設定になっているため、夜間に使うと自動的に感度が高く設定されてしまいます。

露出はシャッタースピードを遅くして調整できるので、皆さんの持つデジタルカメラの一番低いISO感度(ISO100~200)に設定して撮影するのがおすすめです。

ノイズ低減機能を試す

ノイズ低減機能(またはノイズリダクション機能)は、その名のとおりノイズを軽減する働きをもつ機能で、今日のデジタルカメラの多くに搭載されています。ザラつきの強い高感度で試すとその効果が実感できると思います。

ただし、ノイズ低減機能は写真の画質を落とす可能性も指摘されています。一長一短があるため、機能をON/OFFにして撮り比べてみましょう。

撮影時はRAWデータも確保

普段行わない長時間露光は慣れないと結果が読みにくく、露出不足や露出オーバーになってしまうこともあります。JPEGデータでも一向に問題ありませんが、念のためRAWデータでも撮影しておきたいところ。

迷ったらJPEG+RAWの両方で撮影する設定などに切り替えましょう。RAWデータは、後日画像処理ソフトでノイズを除去したり明暗を調整したりするとき有効です。

ノイズ除去に関する方法は、こちらの記事をご参照ください。

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オマケ:多重露光撮影でモチーフを重ねる

露光の話が出たのでオマケ。スローシャッターとは一味違う写真を撮りたい方にオススメの「多重露光」についてです。

一眼カメラの多くには、この多重露光の機能が搭載されています(使い方はカメラの説明書をご確認ください)。スマートフォンのカメラアプリもたくさんありますね。この機能を使うと、複数のカットを1枚の写真に収める重ね撮りができます。

この撮影方法は、通常の撮影以上に撮影者のセンスが問われます。その分、モチーフを重ねることに成功すれば、日常の風景からアーティスティックなオシャレ写真を作り出すこともできます。

いざ挑戦してみると、モチーフを重ねて撮るのはなかなか難しいです。写真と写真がうまく噛み合わず、グチャグチャした絵になりがちです。

そこでオススメは、白壁などすごくシンプルなものと組み合わせる撮り方。メインテーマに副テーマ(白壁)を添えるので結果をイメージしやすいです。上で紹介した3枚も、白壁を探して撮りました。

慣れてきたら複雑なモチーフを重ねることにチャレンジしてみましょう。また何十枚でも何百枚でも撮れるのがデジタルカメラのメリットです。気になったら深く考えずドンドン撮って重ねてみましょう。

モチーフを重ねると意味ありげな、アバンギャルドな感じの仕上がりに。「これは!」と思うものを見つけたら多重露光をバシバシ試したいところ。

今回の話は以上です。スローシャッター(長時間露光)や多重露光は、工夫次第で日常とは異なる絵を映し出せます。ぜひ皆さんも色々試してみてください。

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この記事を書いた人
桜井 恒二 / 専門ライター
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