Lightroom CC限定機能が有能すぎる!
サードパーティー製の写真現像ソフトとして絶対的な地位を獲得した感のあるAdobe Lightroomですが、今回はその中でもLightroom CC限定の機能である「かすみの除去」と「ガイド付きUpright」という2つの超便利機能について紹介してみようと思います。
2017年よりLightroomはLightroom Classic CCとLightroom CCに別れました。本記事はLightroom Classic CC(従来バージョン)向けの内容です。
現在(2016年)Lightroomはパッケージ版の「Lightroom 6」とサブスクリプションライセンス(月額課金)の「Lightroom CC」という2つのバージョンが並列販売されています。両者の中身はほぼ同じなのですが、現像機能において少しだけ機能に差がついており、CC版限定の機能とされているのが「かすみの除去」と「ガイド付きUpright」となるわけです。(*Lightroom6はクラウド連携機能も無い)
たった2項目の違いになるわけですが、これら2つの機能が非常に便利なので一度まとめてみたいと思います。人によってはこれだけのためにLightroomCCを契約しても良いんじゃない?って感じです。
*ちなみにLightroomの現像機能はPhotohopのCameraRawと同じものですので、PhotoshopCCに搭載されているCameraRawでも同じ処理ができますよ!(最新版にアップデートしましょう)
追記:Lightroom6でも使える?
Lightroom6でも「かすみの除去」機能を呼び出す非公式プラグインが存在するようなので、最後に追記しました!
*執筆時点で最新版のLightroom CC 2015.6を元に解説していますが、Lightroom Classic CCでも同じですよ。
モヤッと感を消し去る「かすみの除去」
まずは「かすみの除去」から見てみましょう。この機能は文字通り写真の中のモヤッとしたかすみを軽減させる機能です。Lightroom CC 2015.1から搭載されもう1年以上経っているので知ってる人も多いでしょう。
あのガッカリ感を消し去る
よく晴れた日に山に登ったのだけど、山頂から眺める景色がなんだかモヤッとして残念だった。。とか、PM2.5や黄砂などで街の風景が霞んで見える。。とか。
そんな場合、これまでは無理やりコントラストを上げたり、シャープや明瞭度を高めたりしていたのですが、あまり良い結果にはなりませんでした。
ところが、このかすみの除去を使うと、スライダーをちょちょいと動かすだけでスッキリかすみが晴れていくのです(ただし強烈なかすみは難しい)。
例えばこんな写真
山の上でこの景色だったらちょっと微妙ですよね。そこで「かすみの除去」の出番です。
Lightroom CCをお使いの方なら現像パネルの「効果」の欄の一番下に「かすみの除去」があるはずです。ちょっと目立ちにくいところにあるので今まで気づかなかった。。という人もいるかも知れませんね。
このスライダーを右(プラス)方向にちょちょっと動かすだけで画面のかすみがみるみる消えていきます。
+60に設定したらこんな感じになりました。
スッキリしました!かすみの除去スライダーを動かしただけです。
コントラストと明瞭度と彩度が上がる感じ?
かすみの除去の特徴は霞がかかっているモヤッとしている所のコントラストを上げメリハリを出しつつ、明瞭度を上げて解像感をアップさせ、彩度を上げて元の色を復元させているようなイメージです(色温度も変わる)。
単純に基本補正のコントラスト、明瞭度、彩度、色温度を調整しても同じにはならないので、恐らくAdobe秘伝のアルゴリズムがあるのでしょう。
ともあれこれだけのことをスライダー1つでやってくれるのは非常に楽ちんです。
彩度が上がりすぎるので注意
かすみがかかっている所は元の色が薄くなっているので、かすみの除去をかけると彩度が上がるのですが、+50を超える強度でかけるとかなり彩度が高く感じる結果になります。
必要に応じて彩度を別途下げるなど調整すると良いかもしれませんね。
例えば、蒸し暑い夏の東京湾ってこんなモヤモヤした感じになりやすいですよね。離れた場所から望遠レンズで狙っているということもありモヤモヤMAXです。。
背後に夕日があって、できればカッコよくシルエットにしたかったのですが願いは叶いませんでした。。
そこでかすみの除去スライダーを一気に+100にします。
だいぶカッチリしました!
ただ、ちょっと彩度が高すぎるのと霞を除いた建物の部分が緑被りしている感じです。
そこで、彩度を-20と下げ、色被り補正もM(マゼンタ)側に+20ほど補正。さらによりシルエット感を出すため黒レベルを-75と大きく下げるとこんな感じ。
だいぶ良い感じのシルエットになりました^^
まだ補正の余地は残っていますがベースとしては十分でしょう。
かすみの除去を強めにかけるとLightroomが自動で元の色を復元しようとするので彩度や色味を後で調整する必要があるかもしれません。
かすみ以外にも使える「かすみの除去」
この機能の本質はモヤッとした景色をパリッとさせることなので、霞んでいる写真以外にもモヤッとしていればなんでも使えます。さらに強くかければコントラスト、輪郭、色が強調されインパクトのある特殊効果的に応用することも可能です。
水族館や水中写真に使える
水族館では魚との間に分厚いアクリルと水が存在するので普通に撮るとこんな感じでモヤッとします。
そこでかすみの除去の出番です。+70ほどかけてみました。
めっちゃクリアになりましたね!
上の写真からかすみの除去スライダーを動かしただけです!
ラッセン風の効果にする
パリッとさせると水中感がなくなってくるので、ラッセンっぽい効果が出ることもあります。例えばこんなシーン。
沖縄の美ら海水族館の有名な黒潮の海ですが、これにかすみの除去をかけて、アクリルの継ぎ目を消したり細かなディティールなどを調整するとこんな感じになります。
ジンベエザメが空を飛んでいる感じですよね。すべてLightroomで調整をかけました。
天の川をハッキリさせる
星景写真にも効果があります。夜空を撮ると空の闇の部分が明るくなり締まりがなくなりやすいため、天の川と一緒に撮影したりするとぼんやりした感じになってしまうんですよね。。
ここからかすみの除去だけを+60するとどうでしょう。。
空の部分にメリハリが出て天の川も目立つようになりました。ここからさらに調整をかければもう少しよい結果になりそうですね。
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既存の機能では代替することが難しいですし、なんせスライダー1つでここまで変化を出せるお手軽感がすごいです。
マイナス側に設定すれば逆にかすみを増やす事もできます。わざとモヤッとさせたり、ふわっととドリーミィな仕上げにするときに使えそうです。
本来の形を復活させる「ガイド付きUpright」
いままでLightroomCC限定の現像機能はかすみの除去くらいでしたが、先日(2016年6月)にアップデートされたLightroom CC 2015.6 にもう一つ新機能が加わりました。
これまでレンズ補正の項目に存在していた「Upright」が独立して「変形」という項目に移り、新機能として「ガイド付きUpright」が追加されました。
LR CC 2015.6から新たに追加された「変形」
レンズのパースを効果的に補正する
UprightとはLightroomに搭載されているパースの補正機能です。例えば、建物を下からあおって撮影した場合に、空に向かってすぼまるようなパースが付きますが、Uprightならそれを補正してまっすぐにすることが可能です。
極端な例で学ぶ「ガイド付きUpright」
まずはちょっと極端な例を使いながらガイド付きUprightの機能を見てみましょう。実践的な使い方は後半で。
この写真を例にしてみます。
タイルが規則的に並んだ地面を少し高い所から撮りました。こういうシーンでは当然奥に向かってパースが付きますよね。これを真上から俯瞰で撮影したように補正したいと思います。
(参考)パースって何?って方は下記エントリーが詳しいです
2本以上のガイドを引く
まずは奥行き方向のパースを補正します。
ガイド付きUprightを選択するとポインタが変わって写真の中にガイドを引けるようになります。まずは縦方向に垂直に補正したい部分に2本(以上)ガイドを引きます(4本まで)。
「変形」の項目の左上にある「井」っぽいマーク(丸で囲ってある部分)をクリックしてもOK。
厳密に補正するならルーペを見ながらきっちり線を引くのが大事。
2本目のガイドを引き終わると、そのガイドが垂直になります!
終わるときは左上にある「井」っぽいマークを再びクリックするか、写真の右下にある「完了」をクリック。
奥へ向かうパースが消え、一気に俯瞰からみているようなイメージになりました。
パースががっつり付いているとこんな感じで余白がたくさん生まれてしまいますが。。(通常、ここまで極端なものには使わない)
建物などは縦方向だけでOKな場合が大半です。
横にもガイドが引ける
つづいて横方向も整えましょう。(縦に2本引いたならやらなくてもOK)
横方向にガイドを引くとそのガイドが水平になります。上下2本引いた結果がこれ。
なんということでしょう。
各タイルが正方形になってパースが完全に消失しました。斜め上から撮影したのに、真俯瞰から撮影した形になりました!
必要に応じて切り抜く
もし、余白をカットしたいなら自分でトリミングするか、「切り抜きを制限」にチェックを入れます。
「切り抜きを制限」を使うと自動で余白カットしてくれます。
大きなパースが付いているものは余白がたくさん生まれるので、最終的なサイズはかなり小さくなってしまうので注意。(普通はこんな激しい補正はやらないと思うけど)
Uprightを使うときは余裕を持って広めに撮影しておくことも大事です。どうしても余白ができてしまうときはPhotoshopの「コンテンツに応じる」系の機能で余白を埋めても良いと思います。
LightroomCCユーザー(フォトグラフィプラン)ならPhotoshopも無料で使えますよね。
余白は「コンじる」で潰せるかも
試しに今回生じた余白の部分をPhotoshopの「コンテンツに応じる(通称:コンじる)」で塗りつぶしてみました。私がやったのは選択範囲作って塗りつぶしただけ。
そしたらこんな感じになりました。(赤い線は後から付けたもとの境界線)
マジかよw ぜったいPhotoshopの中に妖精住んでる。。
点線が元の写真。右下と左下がPhotoshopが考えて自動で塗りつぶしてくれた部分。良く見ると怪しいところもありますが、自動でこれをやってのけるとは。。
コンじるも万能ではないので上手くいく保証はないですが、空とか単純な背景なら十分補正可能ですね。
ちなみにもう一度出しますが、元写真はこれですからね▼
Uprightすごい。
本命の使い方は建築、ブツ撮り
最初に極端な例を出しましたが、本命の使い方は建築写真やブツ撮りといった写真に形の正確性が求められるものでしょう。
例えばビルを地面から見上げて撮影するとこんな感じでパースが付いてビルが斜めになってしまうのですが、ガイド付きUprightを使って、左のビルの中央のラインと、右のビルの左のラインにガイドを引くとこうなります。
ビルがまっすぐになりましたね!
ただし、この写真は撮影時に余裕をもって撮影していなかったので、余白ができてしまいました。。
ここでPhotoshopの塗りつぶし(コンテンツに応じる)で左右の余白を塗りつぶすとどうでしょうか。
なんと、
継ぎ目がほぼ分かりませんね!
職人技で直したわけでなくボタン一発でこの精度で修正してくれるとは。。Lightroomの記事なのにPhotoshopすごい。。みたいになってしまいましたね(笑)
超広角で撮影した室内写真にも有効です。
本来の形をしっかり出す
建築以外で有効だとすれば、たとえば商品撮影などのブツ撮り。特にきちんとした形を出したい箱ものなんかには使えるかと思います。
ブツ撮りの場合は商品にパースが付かないように望遠気味に撮影するのが基本ですが、とれでも微妙にずれた角度から撮影すると多少歪みが出てしまうんですよね。
そんなときは「ガイド付きUpright」を使ってみるのもいいでしょう。
斜めから撮影した看板やスライドにも効果的
あと有効だとしたら、斜めから撮影した看板とかプロジェクターで映したスライドとか。
例えばこんなシーン。
昨年「おもいでばこ」という写真のストレージの新製品発表会で撮影した写真。(関連記事はこちら⇒写真が楽しくなる?パワフルで小さくなった新おもいでばこレビュー![PD-1000-L])
こういうシーンではスライドの正面から撮影できることは稀なので、斜めから撮影することになりスライドが必ず歪んでしまうんですよね。
ところがガイド付きUprightでスライドの4面にガイドを引くとキレイな長方形になります。
こっちの方が見やすくて親切ですよね。
私も今回やってみて驚いたのですが、隣で喋っている人(おもいでばこを愛して止まないBuffaloの根本さん)の形にはあまり影響がないのです。
取材が多い人にはなかなか使える機能だと思います。
自動で上手くいくことも多いけど
ちなみに「Upright」という機能は今回の「ガイド付きUpright」が搭載する前にも「自動」、「垂直」、「水平」、「フル」という機能がありました。これはLightroom5や6でも使用可能です。
とくに「自動」はボタン一発で歪みを整えてくれるため非常に便利なのですが、Lightroom側で垂線や水平線を決めるので被写体によっては不自然な結果になることもあったのですね。
今回の「ガイド付きUpright」で初めて撮影者が任意で垂直や水平にするポイントを決められるようになったのです。
自分で線を引くという手間はありますが、「自動」で上手くいかない場合は積極的に「ガイド付きUpright」を使ってみましょう。
まとめ
ということで、LightroomCC版限定の現像機能として「かすみの除去」、「ガイド付きUpright」の2つを紹介してみました。
どちらも現像をする上で必須というわけではありませんが、撮影のジャンルによっては「他の機能で代替しにくいあると嬉しい機能」になると思います。
CC版(フォトグラフィプラン)の方はもれなくPhotoshop CCも付いてきますから、最新の便利な機能を使いこなしてもらえればなと思います。
まぁ、本音を言えばLightroom6にもマイナーアップデートでこの機能を入れなかったアドビのケチー!って感じではありますがね。。^^;
発売時に同じ機能でここまで差を付けているということは、いよいよ次期Lightroomは7は用意されず、Lightroom CCに統合される様な気がします。
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Lightroom6でもかすみの除去が使えるかも?
非公式のプラグインながらLightroom6でもかすみの除去を呼び出す非公式プラグインが海外で公開されているようです。恐らくLightroomCC2015とLightroom6の中身は同じものなので、機能制限されているものを呼びだすといった事なのだと思います。
非公式でいつ制限がかかるかも分からないため、studio9ではどんな保証もできませんが気になる方は試してみるのも良いでしょう。紹介しているサイトがあったのでリンクを付けておきますね。