商品撮影を上手にするためのポイントは?
カフェのランチを撮ったり、お気に入りの雑貨やアクセサリーを撮ったり、オークション出品用の写真を撮ったり。。こういう撮影のジャンルを写真の世界では「ブツ撮り」とか「商品撮影」と言ったりします。
写真を撮るという行為自体は変わりないのですが、普段多くの方が撮っている風景やスナップとはまた違った考え方が必要になったりもするので今回はその辺のことについて撮影以外の大事な要素を3つに分けてご紹介します。
例えば上の写真、左右どちらも元は同じ写真です。左の写真を現像・レタッチすることで右になりました。
上手く撮れない原因はカメラじゃないかも?
ここ数年、カメラの性能がものすごく上がり、かつてはプロが使っていたような性能の一眼レフカメラが誰でも買えちゃう時代になりました。
そう、あなたの使っているその入門用の一眼レフカメラやミラーレスカメラ、10年ほど前にトッププロが使っていた数十万円のカメラに匹敵する(もしくはそれ以上)性能を持っているのです。だから、写真が上手く撮れない原因は実はカメラの性能ではないのです。
特にブツ撮りの場合は、被写体が動いたりしないですから、ある一定の条件さえ満たしたカメラであれば、写真の質にカメラの性能はあまり関係ありません。
大事なのはシャッターを押す前。商品をどのように配置し、どうやってライティングし、どのアングルから撮るか。商品撮影の写真の質はカメラを構える前に6~7割は決まってしまいまうくらい。
さらに撮影後にひと手間加えるだけで、より良い写真になるのです☆
どちらが買いたくなりますか?
まずは次の2枚の写真を見てみましょう。
たまたま自宅にあったバーニャカウダのビンを撮ってみました。どっちが買いたくなりますか?どっちのほうがおいしそうに見えますか?
感じ方は人それぞれかと思いますが、私は後者の方がおいしそうに見えます。
後者の写真は特別な撮り方をしたわけではありません。撮り方(カメラやカメラの設定)は2枚とも同じ。変えたのは光の当て方だけです。しかも、電球合わせても2000円くらいの家庭用のデスクライトを使って光を当てただけ。プロ用の照明機材なんて使ってません。
カメラのシャッターを押す前の、光の当て方(ライティング)だけでこれほどの差が生じるのが商品撮影なんですね。
1.ライティング:カメラが記録するのは光
写真を撮るにはカメラが必要なわけですが、そのカメラは何を記録しているのでしょう?
「バカにするなよ!そりゃ被写体を記録しているに決まってるだろ!」と言われそうですが、じゃぁ、あなたが見ている あるいは カメラが記録したその被写体の正体はなんでしょう?
だんだん禅問答のようになってきましたが、答えは「光」。たとえば、ケーキの写真を撮るのなら、あなたの目に入ってくるケーキやカメラが記録するケーキは、ケーキそのものではなく、ケーキに反射した光を見たり、記録したりしてるのです。
そう、ケーキを上手に撮りたいなら、カメラを上手に設定する以前にケーキに上手に光を当ててあげればよいのです。
このような商品への光の当て方を写真の世界では「ライティング」といいます。
ブツ撮りと普通の撮影との違い
ところで、ブツ撮り(商品撮影)と普通の撮影(風景だとか、街中をスナップしたり)の違いってなんだか考えたことはありますか?
両者には決定的な違いがあります。誤解を恐れずに言えば、商品撮影は決まった場所に商品を配置し、ライティングして撮影者自らが環境を作る「能動的な撮影」。一方、風景やスナップといった撮影は被写体はすでにそこにあり、光も決まっている「受動的な撮影」です。
普通の撮影は”与えられた環境をどう切り取るか”が重要ですが、商品撮影は”自分のイメージどおりの環境をどう作り出すか”が重要なわけです。
結構この違いを理解しておくのは大事です。ブツ撮りは真っ白なキャンパスにお絵かきしていく感覚に似ています。
2.スタイリング:周りの環境でお膳立て!
ココまで読み進めてきた方なら、商品撮影において光の当て方(ライティング)がいかに重要かがお分かりになったかと思いますが、イメージどおりの環境を作るにはそれだけではまだ足りません。
例えば次の2つの写真。光の当て方はほぼ同じです。
被写体のイメージがぜんぜん違いますよね。後者の方が高級そうです。
背景を白にするのか、黒にするのかで写真を見たときの印象がまったく異なる結果になりました。ここからリボンの位置を変えてみたり、箱を斜めに傾けてみてもまた印象が異なるはずです。
このように、背景を変えたり、商品の置き方を変えたり、小物を使って雰囲気を出したりということをブツ撮りの世界では「スタイリング」といいます。このスタイリングというのも大変重要な要素のひとつですね。
3.撮った後が勝負(現像・レタッチ)
最後の要素は撮った後です。
デジタルカメラは撮った後にフィルム現像を行わなくても、パソコンに取り込めば写真が見れちゃいます。これはすごく便利なことなのですが、ここが落とし穴。ここで完成した気になってしまうのです。でも、あなたの写真、その後手を加えればさらに良くなるんです。
あるいは、ライティングをそこまで追い込まなくても撮った後に手を加えたほうが、効率良く作業が進むという場面もあります。
例えば冒頭にも紹介したこの写真。
これも家庭用のデスクライトだけで撮ってみました。この2つの写真はどちらも同じ写真です。機材が限られていたこともあって、ライティングを十分に追い込めなかったのですが(左)、撮った後に手を加えることで、メリハリのあるシュワッときそうなコーラになりましたね(右)。これを「現像」といいます。
現像というと昔のフィルム現像を連想してしまう人も多いと思いますが、デジタルになっても、撮影後に写真を調整して完成させることを「(デジタル)現像」といいます。
ちなみに、フィルム現像をする部屋を「暗室(darkroom)」と呼びますが、私が大好きなデジタル現像ソフトのAdobe Lightroomはそこをもじったネーミングにしたのでしょうね^^
さらに、キャップと黒い液体の間の透明な部分に着目してみてください。左は透明なペットボトルの部分が背景と同化してしまっています。。そこで右の完成写真では、この透明な部分だけは、同化しないようにライティングした別の写真から切り抜いて合成しています。
このように、現像も含めて、写真を合成をしたり部分的に強調させたりすることをまとめて「レタッチ」と呼んだりもします。きちんとした後処理をしてはじめて写真は完成するのです。
まとめ
ということで、ブツ撮り、商品撮影をするうえで、写真を撮るという行為以外で大事な要素を3つにまとめてみました。
ちなみに、トッププロの世界では、ライティング専門の技術者(ライトマン)、写真専門の技術者(フォトグラファー)、スタイリング専門の技術者(スタイリスト)、レタッチ専門の技術者(レタッチャー)と細分化されて仕事があるほど、各要素はどれも重要なテーマですなのです。