プロも使うライティングが1000円で!
写真を撮るとき(特に商品撮影、ブツ撮り)に最も大事なことの一つはライティングです。書く方じゃありません、光を当てる方(照明)です。
カメラは光を記録する機械ですから、被写体に良い感じに光が当たっていない場合はどう頑張ったって上手な写真にはなりません。そこで、撮影者が被写体に当てる光を適切にコントロールしなければならないわけです。それがライティング。(風景などは人の手でライティング出来ないので、上手く撮ろうとするなら太陽がちょうど良い場所に来るのを我慢強く待つわけですね)
通常、ライティングにはストロボ(フラッシュ)など専門の照明器具を使うのですが、もっと身近に最高の光源があるじゃないですか、そう「太陽」です。なんせ太陽の使用料はタダだし、光の質も最高級です。
そこで今回は太陽光(自然光)と1000円程度で買える”あるアイテム”で上質なライティング環境を作ってみようと思います。たかが太陽と侮るなかれ。このライティングの形はプロが仕事で使うこともあるくらい上等なものなんですよ。
ミラーレスや一眼レフだけでなく、スマホのカメラで撮影するときも今回の方法がとても役に立つはずです。
ポイントは光の硬さのコントロール
太陽の光はただそのまま使うのは商品撮影やブツ撮りにはあまり向きません。なぜなら光が「硬い」から。太陽の光を直接浴びるとクッキリとした影が出ますよね。この影がブツ撮りにとってはクセモノなわけです(上手く使いこなしたらめちゃカッコよくなるけどね)。
そこで、柔らかくほわっとした影が出るように太陽の光を「柔らかく」してあげる必要があります。専門用語では”ディフューズする”とか言います。その光をディフューズする(柔らかくする)アイテムが今回のポイントです。
シーツを使ってみよう
光を柔らかくするアイテムは「ディフューザー」といって撮影専門のものがいくつも売られていますが、お家で手軽に撮るならそんなのいりません。白いシーツが一枚あれば十分です!すでにお持ちの方も多いでしょうし、買っても1枚1000円くらいなもんですよね。
どこにでもあるシーツたった1枚でまるで魔法がかかったようなライティング環境が完成するわけです。
私事ながら先日我が家に新しい仲間が加わりまして、記念に撮影してみました。うちの子はブツじゃないですが、基本的には人物もモノもライティングの考え方は一緒です。
なんだかスタジオで撮ったの?って感じですが、使った機材はカメラとシーツと机だけですw
太陽は「点」の光源ですが、シーツを間に噛ますことで「面」の光源になり様々な角度から被写体をつつみ込むように照らす柔らかな光になったのですね。
ブツ撮りのポイントはここにもまとめています
3つの要素の中の一つがライティング。ブツ撮りの最重要ポイントです。
ライティング(照明)環境を作る
作るっていってもやることは簡単。光の良く入る窓際にシーツを1枚張るだけ。上の写真を撮った時の状況を引きで見るとこんな感じです。
幸い我が家のリビングの窓にはクリップで留められる出っ張りがあったので強力クリップで留めてみました。カーテンレールに引っかけるなり画鋲で留めるなり好きな方法で構いません。
直射日光が入らない時間帯や方角の窓ならレースのカーテンだけでもOK。被写体に強い影が出なければ良いのです。
ちなみに、ここで使っている強力クリップはスタジオ撮影でよく使うとても便利なものです。1つ持ってるといろんな場所で使えます。
5個で1000円以下という驚きのコスパ。
キーボードスタンド+板が便利
机もダイニングテーブルとかでOK。ただ窓際まで動かさないといけないので良く撮る人は写真のように簡単な撮影台を作るのもアリです。
ここで使っているのはキーボードスタンドに天板を置いただけ。ニトリとかイケア行けばテーブル用の板だけ売ってます。なんならベニア板でもOK。このX型のキーボードスタンドはすぐ畳めるし、高さも調整出来るのでめちゃ便利です(板を載せてるだけなので赤ちゃんとか重いモノ載せるときは注意!)
できたらレフ板も作っておこう
このライティングは片側から光が差し込むので、反対側には陰やうすい影(影と陰は違うモノです)が出来ます。これを抑制するのが「レフ板」と呼ばれる白い板。白い板状のものなら何でも良いです。段ボールに白い画用紙貼るとか。
オススメはホームセンターに売ってる白いスチレンボードを2枚繋げて自作すること。白のガムテープで貼るだけで自立するレフ板が数百円で作れます。多くのブツ撮りのプロが使っているレフ板はこれ。A42枚のものとA32枚のちょっと大きめのものを用意しておくと良いですね。
具体的な使い方はこの後紹介します。
5mmくらいの厚みは欲しいところ。
最強のライティングの使い方
まず大前提として、明るい日中に撮影すること。これがこの撮影の一番の弱点なわけですが無料の光源なので贅沢は言えません。。
窓を背景にして撮ってみる
まずは窓(シーツ)を背景にして撮ってみましょう。
普通に撮影するとこんな感じで真っ暗になるはずです(最近のカメラはここまで真っ暗になることはないと思うけど)。
背景の明るさや白色に引っ張られて暗くなってしまいました。この辺りの原理が知りたい方は過去記事を読んでみるとスッキリすると思います。ビデオ会議で顔が暗く写ってしまうのもこれが原因ですね。
暗さはカメラ側で補正する
そこでカメラの露出補正を使い、おもいきりプラス補正して撮ってみます。上の写真(±0)から+4EVプラス補正してみました。スマホでも画面グリグリすれば明るさ変えられます(機種によって様々。。iPhoneなら上下にスライドしましょう)
一気に雰囲気が変わりましたね!カメラでプラス補正しただけです。
シーツの部分は真っ白に飛んでしまっていますがこの場合は問題ありません。この撮影は業界では「白バック飛ばし」といってプロも良くやるテクニックの一つです。
ちなみにプラス補正の度合いは外の明るさやカメラ、被写体によってもマチマチです。+2~4EVくらいを目安にしましょう。(マニュアルモード使えるひとはそっちの方がやりやすいです)
プラス補正とかEVがよく分からんと言う人はこちらの記事がオススメ
部屋の電気は消しておく
ここで注意して欲しいのは部屋の電気は消しておくこと。太陽光と部屋の蛍光灯の色は結構違います(蛍光灯の種類による)。
色の違う2つの光を当ててしまうと「ミックス光」という状態になり色がおかしくなる可能性が高くなるため、特に最初は太陽の光だけで撮ることを考えた方が無難です。
窓に対して斜めに構えてみる
窓に向かって逆光状態で撮影すると被写体が暗くなりがちで実は結構難しい撮影だったりします。もっと簡単なのは斜めから撮ってみること。
窓に対して斜めに構えて撮影すれば「半逆光」の状態となり、商品撮影では定番の光になります。適度に光が回り込み、商品のディティールも良く伝わるライティングです。
料理の撮影では半逆光のライティングが基本なので、食べ物の撮影にも非常に相性が良いライティングになります。
実は先日のマンフロットのカメラリュックのレビュー記事に載せてた写真もすべて今回と全く同じ窓際でシーツ1枚で撮影しているんですよ(上の写真と全く同じセット)。
この写真も窓に対して斜めに構えた「半逆光」で撮ってます。左奥が窓ですね。
手前が暗い場合はレフ板を使おう
この撮影では基本逆光気味の撮影となるため、手前側が暗くなりがちです。手前を明るくしたい場合は先ほど紹介したレフ板を被写体の前に立てて、窓からの光を反射させます。
例えばこんな感じで使います。
窓からの光がレフ板で反射してカメラの前面に当たります。レフ板からの光も「面」の光なので柔らかな光ですね。
レフ板の置き方にもよりますがかなり大きな効果がありますよ。
レフ板立てた右の写真はカメラの前面がよく見えるようになりました!カメラの設定は両者全く同じなのにここまで違うんです。レフ板は大きいほど効果があるので大は小を兼ねると考えておいた方が良いです。
だいたい被写体の2倍くらいのサイズ感は欲しいです。
ふんわり系の写真との相性が良いです
全体に柔らかく光が回るライティングなのでF値を小さくしてフワッと撮ってあげるのもいいですね。
先日出たばかりのタムロン SP 45mmF1.8 の開放(F1.8)で撮影してみました。優しい光と柔らかなボケがマッチしていますね。
ニューボーンフォトの記事もまとめました!
一般の方が赤ちゃんを撮るのはストロボより窓からの自然光の方が扱いやすいと思います。今回のライティングを使って撮影する方法をまとめたので良かったら見てみてね。
まとめ:柔らかい光は万能です
ということでお家で簡単にできる非常に便利なライティングを紹介してみました!シーツ1枚で写真がここまで変わるのだからスゴイですよね。
ぜひチャレンジしてみて下さい^^
ただし、この撮影が出来るのは晴れた日中の数時間のみ。。チャンスが限られるのがネックです。
正直なところ私は仕事でこうやって撮ることはあまりありません。なぜなら条件が安定しないから。天気による所もあるし、その日の時間でも太陽の光の色は微妙に変化していくんですよね。
ですから私は普段このライティングと同じような環境を窓のない部屋でストロボを使って作り出して撮影しています。ストロボならいつでも同じ条件が得られるので。でもストロボを使うには撮影とは別の技術と資金が必要になるわけなので、一般の方はまずは無料の太陽光を使ってみるのが良いかと思います
ストロボもかなり安いのが出回ってきましたのでチャレンジしたい人は以下の記事をぜひ読んでみて下さいね!