ブラすの大好き欧米人、ボカすの大好き日本人
写真のいい所は目に見えている景色だけでなく、絞りやシャッタースピードを上手く設定して、実際には見えない世界を撮ることができることですよね。
絞りを変えればボケを生かした写真、シャッタースピードを変えればブレを生かした写真が撮れます。我々日本人はボケ表現が大好きな民族で欧米に比べてボカした写真を好むといわれます。(写真に限らずいろんなことをボカしたがりますしね。。^^;)
写真のボケは英語でも"Bokeh"というくらい。
一方の欧米人はボケよりもブレを生かした写真を好むとよく言われます。シャッタースピードの概念が必要な撮り方。
レンズの呼び名にしても大口径レンズのことを日本人は「明るいレンズ」(F値の概念)と呼びますが欧米では「High Speed Lens」(シャッタースピードの概念)と呼ぶくらいです。
ブラした写真を撮れるようになる!
私もボカした写真が大好きですが、表現の引き出しを増やすためにブラした写真を取れるようになっておくことも大事です。そんなわけで、今回はブラした写真をカンタンに撮るためのおススメシャッタースピードとその撮影方法ついて簡単にご紹介したいと思います!
なにより日本人はブラした写真をあまり撮らないですから、スローシャッターで撮るだけで人目を引いたり、お洒落に見える効果がありますよ!
今回は三脚を使わず手持ちで撮影できるちょっぴりスローシャッターです。三脚を使いより長い時間露光する本格スローシャッターはこちらの記事をどうぞ!
おススメシャッタースピードとカメラの設定
ブラして撮る場合、シャッタースピードは被写体の動きやレンズの焦点距離に合わせて適切に設定する必要がありますが、目安となるおススメのシャッタースピードが存在します。
基本は"1/10秒"
だれもが気軽に体感できるブラし写真の基本のシャッタースピードは”1/10秒”。最近のカメラは手振れ補正機能も充実してきているので、1/10秒くらいなら望遠で撮らない限りきちんと構えて撮ればひどい手振れは起きません。よって背景はちゃんと止まって見えます。
一方、動いている被写体は1/10秒くらいで撮ると歩き程度のスピードの被写体でも十分ブラす事が可能です。
手持ちで背景を止めつつ、動いているものをブラすことができるベストなバランスが1/8~1/13秒くらいの間のシャッタースピードです。
*写真は望遠にすればするほど手振れしやすくなるので、手ぶれさせずに撮るには35mm換算で24~50mm程度の焦点距離がおススメです。(APS-C:16-35mm 、フォーサーズ:12-25mm)
冒頭でご紹介したこの写真のシャッタースピードは1/8秒 (35mm)です。
ではカメラの設定はどうしましょう?
Tv(S)モードがおすすめ
普段、Av(A)モードで撮っている方が大半かと思いますが、ブラすためにはシャッタースピードをコントロールしなければいけないため、シャッタースピード優先オート(Tv or S)モードを使うのがおススメ。
Tv(S)モードにしたら1/10sにセットします。いつもはF値を自分で決めて撮っていると思いますが、Tv(S)モードではシャッタースピードを自分で決める代わりに、F値はカメラが自動で設定します。
詳しくはこちらのエントリーをご参照ください!
10秒と1/10秒を間違えないで!
カメラによっては1/10秒のことを分数を省いて単に「10」と表示するものもあるので注意。ちなみに10秒は「10”」と表示されるので、「10」と「10”」を混同しないようにしましょう。
ISOはオートがおすすめ
ISO感度は慣れないうちはオートで大丈夫。というか、最近発売されたカメラ(2019年現在)なら上級者でもオートで大丈夫でしょう(2019年現在)。
Tv(S)モードは少しクセのあるモードなので、手動で決める場合はカメラの設定限界を超えないように注意しましょう(後述)。
背景を止めて、被写体をブラす撮り方
まずは一番簡単な背景は止まっているけど、被写体は止まっている撮り方。
カメラをしっかり固定させて撮る
基本的には上記の設定をして、走っている車とか、歩いている人を普通に撮ればOK。それだけで動いている人がブレて写ります。シャッタースピードが遅いので手振れさせないようにしっかりと構えて優しくシャッターを押しましょう。
一度「1/10秒」で撮ってみて、ブレの量が少なければシャッタースピードを遅く(1/8秒とか)、多ければ早く(1/13秒とか)にして調整します。
この写真で1/8秒 (24mm)。地面は止まっているけど、歩いているひとの足はブレていますよね。
ピントは被写体が通る位置をあらかじめ予想してピントを合わせておいて待っていても良いですし(置きピン)、どうせ被写体が動いてブレるのだから背景に合わせておいても大丈夫です。
今回の内容とは直接関係ないですが、ストリートでブラした写真は彩度を低めに仕上げるのが個人的には好きです^^ オリンパスアートフィルターのラフモノクロームとか良く合うと思います♪
水の流れも滑らかに
よくある滝や噴水といった水の流れがある写真も1/10秒程度のシャッターで割と滑らかに写ります。(↓ 1/10秒 85mm)
欲を言えば三脚使って1秒近いスローシャッターにしたいですが、三脚がなくてもこの程度であればなんとかなりますね。
被写体を止めて、背景をブラす撮り方(流し撮り)
次は応用編。被写体は止まっているけど、背景はブラして撮る方法。いわゆる”流し撮り”というやつです。
実はこの流し撮りもカメラ側の設定は上記で紹介したものと同じでOK。
シャッタースピードは1/10秒が基本。ただし、撮影の技術的なレベルが高めなので少し練習が必要かと思います。すぐに出来なくてもガッカリしないで、何度か練習してみると良いです。
被写体にあわせてカメラを動かす
流し撮りの場合、カメラを固定して撮るのではなく、動いている被写体のスピードに合わせてカメラを動かしながらシャッターを押します。
被写体のスピードとカメラを動かすスピードがピッタリ合えば、動いているはずの被写体は止まり、止まっているはずの背景はブレる(流れる)ので疾走感のある不思議な写真になるのですね。
望遠で流し撮りする場合はシャッタースピードを早めに
電車や飛行機などを流し撮りするときに望遠レンズ使う場合はシャッタースピードが1/10のままだとかなり難しくなります。100mmを超えてくる場合は1/30や1/60など早めに設定しておき、徐々に遅くしていきましょう。
上の写真は200mm、1/6秒で撮影してみましたがこのくらいになってくると私のレベルだと数十枚に1枚程度しかまともな写真が撮れません(笑)
ピントは置きピン or 追従
動体ブラしの場合はピントは背景に合わせても良かったですが、今回は被写体をしっかり止めて撮ることが目標なのでピントは被写体に合わせなければなりません。
動いている被写体に一瞬でピントを合わせるのは難易度が高いので、被写体が通りそうな場所をあらかじめ予想しておき、そこにピントを合わせて待つ”置きピン”というテクニックを使うのが基本。シャッター半押しで待っていても良いですが、辛いならMF(マニュアルフォーカス)にしてピントが動かないようにしてしまうのもあり。
最近のカメラならAF追従でも
最近の動体に強いAFを搭載したカメラ(2019年現在)であればAFの性能が上がっているため、ピントの追従モード(AI SERVOとかコンティニュアスAFとかAF-Cということも)にしてみるもの良いです。精度は機種によってマチマチなので上手く合わなければ置きピンで頑張りましょう。
水族館のマグロやハマチといった回遊魚は決まったコースを決まったスピードで泳ぐので置きピンがしやすく、流し撮りしやすいです(1/10秒 47mm)
連射がおススメ
流し撮りが得意な人でも、1度のシャッターで止めるのはなかなか難しいです。連射モードでたくさんの枚数を撮るのが良いです。
ただのカラスも流し撮りするとちょっとカッコいいですね。ちょっと追い切れてないですが(汗
なんとこれも1/10秒 (105mm) 。
「1/10秒 万能説」の誕生です(笑)
上手く撮れないときはここを確認
F値はチカチカ点滅していませんか?
Tv(S)モードを使うと、どんな環境でもカメラで設定できる全てのシャッタースピード(通常は30秒~1/4000秒)が指定できます。しかし、当然暗い環境で1/4000秒なんて超高速シャッターを使えば(光が十分入ってこないので)写真が真っ暗になってしまいます。。
つまり、カメラで設定できるからといって適当に撮っていては、真っ白や真っ黒な失敗写真を気づかないうちに量産してしまう恐れがあります。。
カメラの設定限界を超えている場合は通常、ファインダー内や背面液晶のF値の値がチカチカ点滅したり赤く表示されているはずです。ISO感度を変えたりしてチカチカしないように設定しましょう。環境によってはハード的な限界でそれでも無理なことがあります。。(後述)
**Tv(S)とAv(A)の設定限界**
入門~中級クラスのカメラを使う場合、カメラで設定できるシャッタースピード(SS)は30~1/4000秒と120,000倍(約17段)の光をコントロールできます。一方、F値はレンズの性能で決まり、キットレンズだとF4.0~22くらいの5段分(32倍)の光量しかコントロールできません。
Av(A)モードを使う場合は、5段分(32倍)の幅で撮影者がF値を決めて、それに最適となるようカメラが17段分(120,000倍)の余裕があるSSを自動で決めるため、設定限界になることは余りありません。(ISO固定とする)
一方、Tv(S)モードはシャッタースピードを撮影者が決め、それに合わせるようにカメラが余裕の少ないF値を自動で設定するため、設定限界となる場面が飛躍的に高まります。
そのため、Tv(S)モードで撮るときはISO感度の助けも借りてF値を補助することが不可欠なのですが、初心者はそれが難しいためISOオートにしておくのがおススメなわけです。
*”段”って何よ??という方はこちらのエントリーがおススメです。
- カメラの”○○段”、”××EV”を簡単解説!始めから丁寧に。
シャッタースピードがどうしても遅くならない
良く晴れた日中の場合は周囲が明るすぎて、カメラの設定をどう頑張っても1/10秒にならない事があります。そんなときはNDフィルタ(減光フィルタ)という便利アイテムを使うと良いです。
このフィルタを使うことでレンズに入る光を減光してくれるので、さらにシャッタースピードを遅く出来ます。ND4(1/4減光)、ND8(1/8減光)、ND16(1/16減光)などさまざまな種類が売られていますが、シャッタースピード1/10で使うならND8あたりがおすすめです。ND8を使えばさらに8倍シャッタースピードを遅く出来ます。
1枚2,000~3,000円程度とフィルターの中では比較的お手ごろなものです。
流し撮りが上手くならない。。
よほど筋が良い人でない限りすぐに上手にはなりません。たくさん練習しましょう(水族館でマグロ撮り続けるとかw)
被写体を上手に追うコツは手でカメラを動かすのではなく、手と顔は動かさず腰でカメラを動かすこと。これだけでもだいぶ安定します。
また、はじめは構図のことは忘れて、被写体をカメラの中心で追う練習をしましょう。ちょっと広めに撮っておいて後でトリミングして構図を整えるというのもアリです。
流し撮りすると変なブレが出る
高性能な手振れ補正搭載カメラの場合、流し撮りで動いているカメラを補正しようと誤作動を起こすことがあります。普通は大丈夫ですが、気になるなら手振れ補正をオフにしてトライしてみると良いです。
まとめ
ということで、今回はシャッタースピードをコントロールして写真を撮る方法をご紹介しました。ちょっとテクニカルな撮り方ではありますが、うまく使えると撮影の幅も広がりますし、カッコいい写真もたくさん撮れると思うのでぜひトライしてみてください。
肉眼では捕らえることのできないカメラならではの表現をすることができますよ。
合い言葉は1/10秒です!!