フルサイズでもOKのトラベル三脚
撮影に持っていこうかどうかいつも悩んでしまうアイテムの代表格は三脚でしょう。はじめからスローシャッターで撮ろうと決めているなら必須のアイテムですが、持ち歩くと機動性がガクッと落ちてしまうので「もしかしたら使うかも?」程度の撮影だと持ち出すかどうか悩みますよね。
そこで最近流行っているのがコンパクトに畳めて、軽く作られている「トラベル三脚」と呼ばれる三脚です。この数年の間に一気に使う人が増えた印象。トラベル三脚といえばマンフロットの「befree」と今回紹介するバンガードの「VEO」シリーズが特に人気かなと思います(他にも様々な三脚メーカーがトラベル三脚出してますが)。
今回、バンガードさんからカーボン4段のVEO 2 264CBをご提供いただいたのでレビューしてみようと思います。トラベル三脚といいつつ、足の太さは通常の小型三脚と同じ26mmスタートでフルサイズのカメラを載せても大丈夫なかなりしっかりした作り。しかもカーボンなのに3万円を切るコスパも魅力の三脚ですよ。
今までは初代VEOのカーボンを使ってたのでそれとの比較もしてみたいと思います!
VEO 2 264CBの概要
まずはバンガードVEOシリーズの概要とVEO 2 264CBの位置づけについて、そしてbefreeなどのライバル機との関係をざっくり見てみましょう。
VEO二代目のVEO 2
トラベル三脚の世界では比較的早めに参入していたバンガードのVEOですが、2017年にリニューアルしたのが2台目の「VEO 2」シリーズです。
VEO 2シリーズにはアルミ脚タイプ(型番末尾がAB)とカーボン脚タイプ(型番末尾がCB)があり、それぞれ4段と5段のものがラインナップされています。(それに、脚の太さ違いもある)
いろいろ細かく分かれているのですが、足の太さが26mmスタートで、4段、カーボンタイプとVEO 2の中で最もしっかりした造りになっているのがVEO 2 264CBです。公称の耐荷重は8kgとフルサイズ機を使ってもぜんぜんOKな感じのスペックですね。
畳んだときの長さ(縮長)は445mmと同スペックのトラベルタイプじゃない普通の三脚(縮長600mm前後)に比べてかなりコンパクト。リュックのサイドに取り付けたときのバランスも良くなります。伸ばせばエレベーター(センターポール)なしで125cm、最大に伸ばすと155cmまで使えるのでほとんどのシーンに対応出来ちゃう優れものです。
足を伸ばすとこんな感じ。センターポールを伸ばさなくても身長180センチの私の胸の高さくらいまであります。
重量は付属の自由雲台含めて1,300g。同サイズで脚がアルミの264ABは1,600gなので300gの軽量化となります。
トラベル三脚というと、小型化を優先しすぎるあまり、足の太さを細くし、段数を大きくしてしまい安定性が犠牲になっているものが多いのですが(小さなカメラならこれでも十分だけど)、この264CBは従来の普通の三脚を逆に畳んで小型化できるようにしましたというようなコンセプトで、小さくなるけどしっかりしていると言うところが個人的には好きなポイントです。(VEOは足が逆になるのではなく、センターポールが逆になる方式。後述)
追記)▲VEO2 264CBはディスコンとなり後継のVEO2GOシリーズが展開されているみたいです
初代VEOのカーボンと比べると
このVEO2 264CBを使う前は先代のVEO 265CBというカーボン5段三脚を使っていたのですが、デザインが初代の黒+オレンジの配色から、グレー+黄色の配色に変わっています(2017年にバンガードのコーポレートカラーが変わって、三脚以外にバッグなんかもこの配色が多くなってる)
初代VEOにはカーボン4段のモデルがなかったので264CBは新しいポジションに入った感じです。サイズの違いなどは後半の各部詳細で触れていこうと思います。
4段は剛性だけじゃなく、設置、撤収も早い
以前使っていたVEO 265CBは5段なので畳んだときの長さが390mmとめちゃ小さくなるり、旅行用のスーツケースにも入るサイズ感でステキなのですが、いざ使うとなると脚を伸ばす回数が増えてちょっと面倒でした。(もちろん撤収も)
4段だと通常の三脚と同じ感じで使えるので設置、撤収もスムーズ。関節が少なくなるので剛性も5段にくらべてアップしているのもポイントです。旅行でしょっちゅう持ち出す、できるだけコンパクトにしたいと言う場合は5段も良いですが、ふだん使いするなら4段のほうがいろいろ楽ちんです(理想は4段と5段を使い分けることですが)。
マンフロットbefreeと比べると
トラベル三脚人気に火を付けたと個人的に思っているマンフロットのbefreeとも比べてみましょう。今のところVEO 2 264CBとガチンコで勝負するようなスペックのモデルはないので、4段カーボンで軽量を求めたMKBFRC4-BHと脚がアルミだけどスペック的には似ているbefreeアドバンスのMKBFRTA4BK-BHを並べてみました。
VEO 2 264CB | Befree MKBFRC4-BH | Befree アドバンス KBFRLA4BK-BH | |
---|---|---|---|
縮長 | 445mm | 400mm | 400mm |
重さ | 1300g | 1100g | 1490g |
脚の材質 | カーボン | カーボン | アルミ |
全伸高 | 1550mm | 1420mm | 1500mm |
全伸高 (センターポールなし) | 1250mm | 1230mm | 1270mm |
最低高 | 193mm | 370mm | 400mm |
段数 | 4 | 4 | 4 |
脚径(1段目) | 26mm | 22.5mm | 22.5mm |
耐荷重 | 8kg | 4kg | 8kg |
雲台(パン) | 〇 | ✕ | 〇 |
雲台(フリクション) | 〇 | ✕ | 〇 |
雲台(プレート) | アルカスイス互換 | 200LT-PL | 200PL PRO |
価格* | 26,555円 | 28,979円 | 25,928円 |
*執筆時価格(Amazon)
スペックを見比べてみるとVEO 2 264CBはトラベル三脚に求められる軽量、コンパクト要素はbefreeに劣っているものの、足の太さや耐荷重、伸ばしたときの高さなんかのアドバンテージがあります。しかも、お値段がbefreeアドバンスのアルミ脚と同じくらいという高コスパ。
私の場合、普段フルサイズ機を中心に使っているので極限のコンパクトさはいらないから、そこそこ小さくたためて、しっかり機材を支えられる剛性を持っているトラベル三脚というのは結構理想的だったりします。
体力があって少々重くてもOKならアルミ脚でも良いのでしょうが、体力の衰えてきたおっさん的には少しでも軽いカーボン脚というのは有り難く、まさに俺得といった感じのモデルですw
マンフロットの場合、同グループにジッツォ トラベラーシリーズがあるのでbefreeでは軽さを優先しているのかもしれませんね。私の用途だとジッツォ トラベラーGT1545Tなんかがピッタリでもありますが気軽に買えるお値段でもないので。。^^;
アルカスイス互換なのがかなりいい
あと、個人的には雲台がアルカスイス互換になっているのが非常に大きなポイント。複数のカメラや三脚を併用しているとプレート(クイックシュー)の規格は1つにまとめたいんですよね。しかも最近使っているソニーα7R IIIやα9にはアルカスイス互換のL字プレートを付けているので非常に使い勝手が良いのです。最近よく見かけるPeak Designのプレートもアルカスイス互換(私も使ってる)。
VEOだとノーマル状態でL字プレートやPeak Designのプレートを取り付けられるのがステキです。(後述するけどちょっとキツいものもある)
befreeはマンフロットの独自規格の雲台を使っているので、L字プレートを使っていたり、複数社の三脚を使っている場合にいちいちプレートを交換するという面倒な手間が発生するのが微妙です。(全部マンフロットに揃えるという手はありますが)
ちなみにbefreeアドバンスについている200PL PROというプレートは他社のアルカスイス互換雲台にも取り付けられるようになっているらしく、互換性は向上しています。ただし、L字プレートや他社のアルカスイス互換プレートをbeefreeアドバンスの雲台に取り付けることはできない模様。完全互換ではない事に注意しましょう。
befreeも雲台まるごとやクランプ部分を交換することでアルカスイス化できるようですが、追加で数千円~1万円くらいのコストがかかってしまいます。
もちろん、これだけでVEO 2 264CBが一番優れているとは言いませんが、私の用途にはピッタリのトラベル三脚なのです。(コレ使う前もアルカスイス使えて便利だったので初代VEO使ってた)
各部詳細
さて、では実際のVEO 2 264CBを写真をたくさん使いながら細かい所まで見てみましょう。写真多めで行きますよ。
外観
こんな感じの箱に入ってます。
取り出すとこんな感じ。専用の収納ケースのほか、ローアングル用のアタッチメント、アルカスイス互換プレート、説明書などです。
袋は巾着タイプで上からスポッっと入れる感じ。そこまで高級感はないけれどそれなりに厚みのある生地なのでペラッペラで安っぽいという印象はありません。クッション性はほぼありませんがスレやキズ程度なら十分守ってくれそう。
雲台部分が脚の中に仕舞えるので普通の三脚よりも10センチくらい畳んだときのサイズを小さくできるのですね。(脚が逆になるのではなく、VEOはセンターポール部分が逆になる構造)
ロック機構は先代のレバー式ではなく、ツイストロック式に変わっています。ここは好みが分かれるところでしょうが、ツイストロックの方が突起がなくコンパクトになりますね。以前は個人的にレバー式のほうが好みだったのですがツイストロックの三脚をよく使ううちにどっちでも良くなりましたw ここは慣れですねー。
設置したらこんな感じ。三脚は黒が基調になっているデザインが多いですが、VEO2(というか2017年以降のバンガード三脚)はグレーが基調なのでやや軽やかなイメージ。個人的には先代VEOよりも好みのデザインです。
石突き(脚の先端部)はゴム製の設置面積が広いタイプになり安定感が増したように思います(初代VEOはねじると金属ピンが出るタイプ)。VEOで金属ピンほとんど使ってなかったので良い進化かなと。
岩場などでピンが必要な人には別売りでピン付きのものも用意されています。
細かな所
細かい所も見ていきましょう。
雲台部分
雲台はVEO 2専用のBH-50で、メインのノブの他に、パン(水平回転)用とフリクションコントロール用のノブ(かっくん防止)もあります。アルカスイス互換プレートに対応したクランプで、抜け落ち防止用ピンもあります。ただし、プレートによってはこのピンと干渉するものがあります(対策は後半にまとめます)。
パン用ノブは先代にもありましたが、フリクションコントロール用のノブば新搭載。よくあるメインのノブに付属するちっこいやつではなく、独立のノブなので操作しやすいです(ただし慣れないとノブがいっぱいあってどれを触って良いのか一瞬悩むかも)。
ボールの滑らかさは高級雲台に比べればもちろん劣るのですが、普通に使ってて違和感ないレベルでこのクラスの三脚に付属する雲台としては十分かと思います(止まりは良いのですが、200mm以上の望遠使うと締め付け時に多少画面がズレると思うのでクセを掴む必要あり。標準画角ではさほど気になりません)。
締め付け力はEOS 5D MarkIV+バッテリーグリップ+24-70mmF2.8の状態でやや下向ける厳しい状況でも余裕で止まるので超望遠など使わなければぜんぜんOKかとおもいます。
ノブは半回転ほどでしっかり止まる感じ。
ローポジション用アタッチメント
VEO2は超ローポジション撮影にも対応しています。使用する場合はセンターポールを引き抜いて専用アタッチメントを付ければOK。脚をがっつり開いてあげるとかなり低い位置から撮影可能です。
専用アタッチメントには雲台は付いていないので直接カメラ底のネジ穴に取り付けます。ただし、プレート(クイックシュー)外して、アタッチメントに付けて、終わったらまたプレート付け直して。。という感じでやや不便ではあります。
私はAmazonで安く売ってるアルカスイス互換クランプをアタッチメントに取り付けて使ってます。こうしておけばプレートの交換の手間が省けますね。1,000円くらいで買えますよ。
ここに別途自由雲台を付ければアングルの自由度も増しますが、最低高が高くなってしまってローポジションの旨味が減ったり、かさばるのでアングル変更は脚の開閉で対応するのが良いでしょうか。
プレートの注意点
264CBの雲台はアルカスイス互換となっていますが、脱落防止の安全ピンが付いているため他社のプレートと底が干渉する恐れがあります。
例えばPeak Designのプレート(写真は旧型のPL-S1。新型は不明)の場合、ピンとプレート底部(写真の赤丸)が干渉してしまいます。
干渉しないようにずらせば付けられるのですが、こんな感じでちょっと不安定な感じに。。しっかり閉めればカメラが脱落するような事はありませんが、現場の応急措置として使う程度にしておきたいです。
雲台の互換性を向上したい場合はピンを引っ込めてしまいましょう。脱落防止ピン自体はイモネジになっているのでクランプの裏側から調整が可能です。
細いマイナスドライバーがあれば簡単に調整可能。ピンを下げておけばピンとプレートが干渉する恐れはありません。これによりクランプの閉め忘れでカメラが落下するリスクは増しますが、RRSなど脱落防止機構のないクランプはたくさんあるので注意しておけば大丈夫かと思います。
ただし、プレート底部に出っ張りがあるアルカスイス互換プレートとは干渉するかも(試したことない)
プレートの幅にも注意
本三脚に付属するクイックリリースプレートは幅38mmのものなのですが、他社プレートの場合幅が39mm程度のものも売られています。手持ちのものだとRRS、Peak Designのプレートは約38mmでしたが、シルイのものは39mm、SmallRigのL字プレートは幅39.7mmもありましたw
38mm幅は問題なく入りますが、39mmだとネジを全開まで広げてギリギリといった感じで、SmallRigのL字プレートは上から挿入するのは不可能でした。(ピンを下げておけば横から挿入することで問題なく使える)
ここはVEOが悪いと言うわけではありませんが、他社プレートを使う場合は事前に良くチェックしてから使う事が大事です。アルカスイス互換だからといって気を抜いて、現場でやべぇ入らない。。ってなったら悲しいですから(経験者は語るw
サイズ比較
VEO 2 264CBの畳んだときのサイズ比較をしてみましょう。次の写真は上から初代VEO 265CB、VEO 2 264CB、ALTA+ 264(TBH-100)です。
VEO 2 264CBとトラベル三脚ではないALTA+ 264(TBH-100)はスペック的には同じような三脚ですがこれだけ長さが違います。また、ALTA+ 264(TBH-100)はアルミなので雲台入れて約2kgですが、264CBは1.3kg。
ただし、5段三脚(VEO 265CB)に比べれば結構長いですね。
脚を広げたらこんな感じ。VEO 2 264CBとALTA+ 264(TBH-100)です。だいぶ差が縮まりました。脚とセンターポール全開まで伸ばすとほとんど同じ高さになります。
Endurance Extとのバランスも非常に良いよ
だいたいこの三脚を持ち出すときは機材も軽めなことが多いので、カメラバッグはEndurance Extと合わせる事が多いのですが、畳んだときの高さなど非常にバランスが良いです。
ロールアップ部分を伸ばさないノーマル状態でもバッグの高さとマッチします。
さらに、ニッシンのウルトラライトスタンドと組み合わせて持ち運ぶことも可能。
この場合は流石に重量が片方に偏るのでパッキングに工夫がいりますが、長距離歩くのでなければこれでも問題ないでしょう。Endurance Extの詳細は下記エントリーでどうぞ!
おまけ:ストーンバッグも付けられるよ
今回、バンガードさんに新しくなった三脚用ストーンバッグALTA SBMも一緒にご提供いただきました。三脚に取り付けることでより安定するやつね。
これまでもバンガードから三脚用ストーンバッグは出ていましたが、デザイン一新により新しくなっています。従来は黒とオレンジの色で、明らかにバンガード色で他社三脚に取り付けると違和感がありましたが、今回から黒とグレーのシンプルな配色に。また、底部にフックが付いているので地面とコードを張ってテンションかけるといった使い方をするのも良いでしょうか。
もちろんVEO 2 264CBにも取り付け可能ですし、例えば、手持ちのジッツォGT1542につけてみても違和感のないデザインです。また、ストーンバッグ取り付けたままでも折りたたみ可能。264CB付属のバッグに収納することも可能です。
ちなみに、センターポールのフックに重りぶら下げると(重りが接地していない状態で)センタ-ポール自体が揺れるので返ってブレが大きくなります。脚の部分に重り乗せた方が安定させやすいです。
バンガードのストーンバッグはMとLがありますが、264CBもジッツォGT154も、Mのアジャスター一番縮めた状態が良かったのでよっぽど大きな三脚でない限りMサイズでOKだと思います。
イマイチな点は?
かなり俺得なスペックで良い感じのバンガード254CBですが、使っていてひとつ気になる点がありました。
それは4段目の脚(一番細い脚)の剛性です。すべての脚を伸ばそうとして4段目の脚を伸ばしきると3段目と4段目の連結部分が明らかに脚がちょっとグラつくんですよね。。(加重をかけない状態で)
安めの三脚にはよくあることで、加重を書ければある程度安定するので致命的とまでは言いませんが、やや心配なグラつき具合ではあります。最高長をできるだけ稼ぐためにギリギリまで脚を伸ばせるようになっているのではと思います。
このグラつきへの対策は、4段目の脚を全部伸ばしきらず、2〜3センチ余して伸ばすことでかなり安定するようになります。脚の長さをMAXまで伸ばして使う場合は最後の脚だけ伸ばしきらないで使うとしておけば大丈夫でしょう。
この辺は高級な三脚に比べるとやや見劣りするポイントかなと思います。
まとめ:実際に使ってみて
ということでバンガードVEO 2 264CBのレビューをしてみました。かれこれ既に数ヶ月使っていますが、雲台(クランプ)のピンとの干渉と、4段目のグラつきにさえ注意しておけばかなり使えるコスパの良い三脚なのではないかなと思っています。
若くて体力のある頃は、カーボンなんて甘え。アルミで十分やん!って思っていた三脚も、おっさんになってきて一度カーボンを使うと、例え数百グラムの違いとはいえ手放せない快適さがありますw
アルミとカーボンで撮れる絵に違いが出るかというと、重箱の隅をつつくような見方をしなければほとんど同じな訳ですが、「重いから持っていかない」と「軽いから持っていくか」の違いは撮影結果にも大きな影響を及ぼすはず。
そういう意味ではカーボンのトラベル三脚というのはなかなか良いモノだと思いますよー。