一番簡単なフィルムカメラ「写ルンです」
スマホやデジカメが無かった時代、手軽に撮れるカメラといえば「写ルンです」が頭に浮かぶのではないでしょうか。
遠足や修学旅行に行くときは必ずと言っていいほどカバンにしのばせ、友達と撮り合いっこをしたり、記念になりそうな風景をパシャパシャと無駄に撮っていましたよね。学生時代の思い出の写真のほとんどが「写ルンです」という方も多いと思います。
今やスマホで誰でも簡単に写真が撮れる時代となり「写ルンです」を使う機会というのはめっきり減ってしまいました。「最後に使ったのはいつだったか…」記憶を辿っても思い出せなくなってしまうほど、忘れられた存在となってしまいました。
しかしなんと最近、「写ルンです」が若者たちの間で密かにブームになっているというから驚きです。フィルムカメラを使ったことがない世代に「簡単にフィルムで写真が撮れるカメラ」として大いにウケているのだとか。
フィルムカメラで写真を撮ることに興味はあるけれども銀塩カメラを買うほどではない。フィルムで撮った写真をSNSにアップしたい。そんな人にとって、手軽にフィルムで写真が撮れる「写ルンです」はもってこいの代物なのだそうです。
今日はそんな再ブームが到来している「写ルンです」について、現在手に入るラインナップや使い方、撮影後の現像やデジタル化についてご紹介させていただきます。
記事を読んだら、久しぶりにコンビニで手に取ってしまうかもしれませんよ!
本日のコンテンツ
- 実はフルサイズ機の「写ルンです」とは?
- なぜ?若者たちの間でブームになっている理由
- 写ルンですの使い方
- フィルムを使い切ったら現像に出そう
- まとめ
実はフルサイズ機の「写ルンです」とは?
「写ルンです」は1986年に富士フィルムから発売された、いわゆる使い捨てカメラの一つです。デジタルカメラでフルサイズというと高級機種ですが、写ルンですに入っているフィルムは35mm判のフルサイズ。おもちゃみたいですが立派なフルサイズ機です。
持ち運びやすい小さなボディと誰でも使える簡単な操作性。
カメラが高級品で限られた人しか写真が撮れなかった時代を一変させ、写真文化を一気に大衆へと根付かせた富士フィルムの傑作品、それが「写ルンです」です。2014年に未来技術遺産としても登録され、昨年30周年を迎えました。
懐かしいですよね。遠足や修学旅行では一人一個は持っていた、あの「写ルンです」です。ちなみに、これの読み方は「うつるんです」と読みます。初見の方だと「しゃるんです」と読んでしまうこともあります(私の周りにも一人いました…)ので、知らなかった方はここで正しい読み方をマスターしておきましょう。
実はカメラではないという衝撃の事実
さて、この「写ルンです」実はカメラではありません。
「え?使い捨てカメラでしょ?」と驚かれる方も多いと思いますが、実は「写ルンです」はカメラではなくフィルムの一種です、正式にはレンズ付きフィルムと呼ばれています。
ボディの右下に「FILM WITH LENS(レンズ付きフィルム)」と表記されている
なぜカメラではないのかというと、現像に出したときにフィルム以外の本体は回収してしまうため、誤解を防ぐためにフィルムにレンズをつけたものということにしたらしいです。確かにカメラであれば、どういう形であれ本体を返却する必要はありそうですからね。
ちなみに、回収された本体やレンズ、ユニットはリサイクルまたはリユースされ、新たな写ルンですとして店頭へ並びます。「使い捨てカメラ」なんて呼ばれていましたが実はかなりエコな商品なのです。
全部で3種類!撮影状況や被写体に合わせて使おう
現在販売されている「写ルンです」は全部で3種類あります。それぞれに特徴がありますので、場面にあった選択をすると、より綺麗に撮影することができます。
写ルンですシンプルエース
2001年から発売されている、皆さんがご存知の写ルンですの最もスタンダードなモデルです。27枚と39枚撮りがあります。比較的明るい日中の野外などはこちらを使うと良いです。
- フィルム:ISO400 135フィルム
- レンズ:32mm F/10
- シャッタースピード:1/140秒
- 焦点距離:1m~無限遠
写ルンです ハイスピード
こちらは2006年から発売されている、写ルンですの高機能タイプです。フィルム感度が1600と高くなり、シャッタースピードも1/200と早くなりました。そのためブレに強くなっています。感度が高いため少し暗い場所で撮影しても大丈夫。またシャッタースピードも早くなっているので、動きの速いものを撮影する場合にはこちらのタイプを使うのがベターです。
- フィルム:ISO1600 135フィルム
- レンズ:32mm F14
- シャッタースピード:1/200秒
- 焦点距離:0.8m~無限遠
FUJIFILM レンズ付フイルム フジカラー 写ルンです 1600 Hi-Speed (高感度・高速シャッター) 39枚撮り LF 1600HS-N FL 39SH 1
水に強い写ルンです New Waterproof
水深10mまでの水中写真が撮影出来ます。こちらは27枚撮りのみです。海やプールなどで活躍しそうですね。
- フィルム:フジカラー SUPERIA ズームマスター800
- レンズ:32mm F10
- シャッタースピード:1/125秒
- 焦点距離:陸上=1m~無限遠 水中=1m~3m
なぜ?若者たちの間でブームになっている理由
ブームの発信源はあの有名写真家?
私が「写ルンです」の再ブームを知ったのは、写真家の奥山由之さんのインタビューを読んだことがきっかけでした。決して鮮明ではない写真にどこか強烈な懐かしさを感じてしまった私は、その写真が「写ルンです」を使って撮影されたことを知り、妙に納得してしまったのを覚えています。
「あー、これは自分の青春時代の写真だ」と、そんな懐かしい感覚ですね。なんでも奥山さんは「自分が世界で一番『写ルンです』を使っている写真家だ」と公言しているのだとか。もちろん販売されている写真集や雑誌などでも「写ルンです」で撮影した写真がたくさん載っています。
奥山さんといえば、アーティストのくるりのCDジャケットやサカナクションのPVの映像製作でも有名です。主に流行に敏感な20代の若者を中心に、熱烈なファンが多い写真家でもあります。その影響もあってか「写ルンです」が若者たちの間で少しずつ認知され始め、InstagramやツイッターなどのSNSでも「写ルンです」を使って撮影された写真がオシャレだと話題になるように…。
インスタグラムでも流行ってる
2017年2月28日時点でInstagramのハッシュタグ「#写ルンです」を検索してみると、投稿数は129,015件とかなりのボリュームになっています。
また、奥山さんの他にもAKB48の横山由依さんやクリエイティブディレクターの箭内道彦さんなども写ルンですユーザーのようです。有名人がSNSで写ルンですで撮った写真を発信し、ブームに拍車がかかったのかもしれないですね。
デジタルとは一味違う、フィルムならではの面白さが人気
デジタルカメラとフィルムカメラの大きな違いは、現像するまでどんな写真が出来上がるかはわからないという点です。撮った写真がすぐに確認できるのはデジタルのメリットではありますが、それゆえに面白みが足りないと感じる場合もあります。
フィルムは現像するまで写真の出来がわからないので不便ではあるのですが、それは決してデメリットではありません。現像されるドキドキ感を楽しむことができるという意味では、メリットとして捉えても良いかと個人的には思っています。
また、撮影できる枚数も決まっているため、撮影した写真がどんな感じで撮れているのかわからない中、限りあるフィルムを気にしながらシャッターを切っていく緊張感はフィルムでしか味わえません。こうした撮影自体の楽しみを見出せるのが、フィルムならではの魅力と言えるのではないでしょうか。
フィルムの質感が際立った写り
二子玉川 Rise 写ルンですシンプルエースにて撮影
フィルムカメラ全般に言えることですが、フィルムで撮影した写真はデジタルカメラとはどこか違う味わいや質感が出てきます。もちろんデジタルカメラで撮影した写真であっても、加工すれば似たような質感に持っていくことは可能でしょうが、未加工でそういった味のある写真が出来上がるのはフィルム写真の魅力だと思います。
箱根 写ルンですシンプルエースにて撮影
「鮮明さ」「画質の良さ」とはまた異なる、フィルムならではの色調やコントラスト。フィルムカメラで撮影することが少なくなった現代において「写ルンです」のような、ある意味フィルムらしさが際立った写真は若者たちにとって逆に新鮮と捉えられているのかもしれません。
写ルンですの使い方
写ルンですの操作は非常にシンプルです。
フィルムを巻いて、ファインダーを覗き、シャッターを押す、たったそれだけ。ただし、シンプルな操作性ゆえ、注意しなければならないポイントを外してしまうとすべての写真が失敗してしまうことも…。ちょっと気をつければ対応できることばかりですので、しっかりと覚えておきましょう。
しっかりと離れて撮影する
写ルンですのレンズは32mmと広角で、F値が10(ハイスピードは14)とかなり絞り込まれたものです。どういうことかというと、かなり乱暴な言い方ではありますが、一定距離離れたところから撮影すると全てにピントが合う(パンフォーカスになる)ように設計されているということ。
シンプルエースの最短撮影距離は1m、ハイスピードは0.8mm。これら距離をしっかりと意識し、それよりも離れて撮影すれば、基本的にピントは合います。しかし、最短撮影距離よりも近づいて撮影してしまうと確実にピンボケした写真になってしまうので注意が必要です。
花に寄りすぎてピンボケになった作例
1m離れて撮影することを意識しよう
現像してからでないと写真は確認できないので、しっかりとピントが合った写真を撮りたいと考えるのであれば被写体から1m近く離れたところでシャッターを切るという意識を撮影時に持っておく必要がありますね。
ただ、ピンボケした写真も場合によってはいい味を出すことがあるので、いろんな焦点距離で撮影してみるのもありなのかもしれません。
明るいところで撮影する
先に挙げたように、写ルンですのレンズのF値は10(ハイスピードは14)です。ピントを合わせるために、かなり絞り込んで作られてますので非常に暗いレンズと言えます。
晴れの日の屋外であれば全く問題なくきれいでシャープに撮影することができますが、曇天の日や夕方頃に撮影するのであればフラッシュ設定で撮影したほうが安心できます。また、屋内の撮影は屋外に比べて圧倒的に光量が足りません。黒く潰れた質感を避けたいのであればフラッシュは使ったほうが懸命です。自分では明るいと思って撮影しても、実際現像してみるとかなり暗い写真になってしまうので心配であればフラッシュは使いましょう。
晴天時に撮影 全体的にくっきりと写っている
地下鉄の駅構内を撮影 屋内だったので光が足りず黒く潰れたような写真に…
曇り時に撮影、明るさ的にはギリギリ許容範囲
黒く潰れた質感はフィルムならではのレトロな雰囲気を演出することもあります。鮮明な写真がその時の臨場感を必ずしも表現するものではありませんので、その場の明るさや雰囲気を見て、うまくコントロールしながら撮影できると楽しいかもしれませんね。
ちなみに、上記の写真は全てフラッシュなしで撮影しています。
写ルンですのフラッシュ設定
フラッシュを使う場合には、レンズの右側にあるフラッシュレバーを上に切り替えれば良いだけです。レバーを切り替えると、ファインダーの上からパイロットランプが飛び出し赤く光ります。この状態でシャッターを押せば、フラッシュを使って撮影できます。
ぴょこっと飛び出す赤いパイロットランプが可愛らしい
フィルムを使い切ったら現像に出そう
現像はどこに出したら良いの?
フィルムを使い切ったら現像に出します。
有名なところですとカメラのキタムラやビックカメラなどで現像はしてもらえます。また、地元に写真屋さんがある方はそういったところに持ち込めば現像してもらえます。
http://www-print.com/nega_print/
ビックカメラ
http://www.biccamera.co.jp/shopguide/service/photo/film_print/index.html
最近ではネット現像サービスという、ネット上で現像の注文を出し、フィルム(今回の場合であれば写ルンです本体)を郵送して現像してもらえるサービスもありますので、近くに現像できるお店がない方はこのようなサービスを使うと良いかと思います。
ちなみに今回私は地元の駅前にある写真屋さんで現像してもらいました(普段のフィルム現像はトイラボさんにお願いしています)。昔は大手のコンビニでも現像に出すことができたのですが、最近は一部店舗しか扱っていないので注意が必要です。
注文の仕方について
現像というのは簡単に説明すると、撮影したフィルムを写真としてプリントできる状態のフィルムにすることです。「ネガ」と聞いたらピンとくる方も多いですかね?すごく懐かしい単語ですが、あの状態にすることを現像と言います。
そして、現像したフィルムを写真にすること、それがプリントです。
つまり写真にしたいのであれば現像とプリントの二つの工程をお願いしなければならないということは覚えていきましょう。現像とプリントは別料金ですので、そこも注意してください。
SNSに写真をアップしたい場合はデータ化がオススメ!
撮影した写真をInstagramなどのSNSにアップしたいという方は、現像と同時にデータ化してもらうのがオススメです。現像をお願いする際にデータ化もお願いすればCDに焼いてもらえます。
データ化はどのくらいの価格なの?
カメラのキタムラでは現像料金が600円、プリントは1枚29円、データ化してCDにすると500円かかります。
例えば39枚撮りの写ルンですを現像に出し、全てのネガを写真とデータ化した場合
現像料金 600円 + プリント37円 x 39枚 + データ化 500円 = 2543円 (税抜)
となります(2017/03/04現在)。
追記)ちなみにキタムラの場合、現像(600円)→データ化(500円)を行い、このデータでネットからプリント注文するとプリントは1枚29円(税抜)となるようです(読者の方から教えて頂きました)。
「意外と高いなー」と感じる方も多いかもしれないですね。スマホやデジカメであればそもそもがデータですし、現像代もかかりませんからね。しかしフィルムと付き合うのであればランニングコストは避けては通れません。その分「シャッターを押す重みが変わってくる」と割り切って考えましょう(私は自分で勝手にそう考えています)。
写真をSNSにアップするだけの人は?
「SNSにアップするだけだからプリントは必要ないよ」という方もいるかと思います。そのような方は現像の際にプリントせずにデータ化だけお願いすることもできます。実際、私もプリントせずに現像とデータ化だけお願いすることが多いです。どんな写真が入っているかわからないので、データの中身を確認して、気に入った写真だけを指定してプリントするという注文もできますので、自分の写真の使用用途に合わせて現像に出してみてください。
また「これからフィルムでガンガン写真を撮るんだ!」という方は、フィルムスキャナーがあると便利かもしれません。ネガフィルムやモノクロ、ポジフィルムなどをスキャンして、自分でデータ化することができます。フィルムスキャナーを持っていれば、現像したフィルムを自分でスキャンするためデータ化のコストも抑えられます。
上の写真で使ってるのはナカバヤシのフォトレコWI-FI(PRN-400WIFI)。ネガのスキャンだけでなくA4までのプリントもスキャンできて便利です。ネガの取り込みは600dpi(755x566px程度)までなのでプリントに使うには物足りないですが、SNSに使う程度なら十分なサイズ。
ネガに特化して高画質に取り込みたいなら専用のスキャナも比較的安価に手に入ります。例えばAmazonで一番売れてるサンワダイレクトの400-SCN024なら1400万画素(3200dpi)まで対応。これならA4プリントでも十分なスペック。
まとめ
「写ルンです」この言葉自体、久しぶりに聞いたという人もいたのではないでしょうか?中には「まだ売っていたのか‥」なんて思った方もいたかもしれませんね。
過去に当たり前のように「写ルンです」を使ってきた私たちにとっては「何でいまさら使い捨てカメラなの?」「スマホの方が絶対に綺麗に撮れるのに…」と写ルンですがブームになっていることに首を傾げる方も多いはず。しかし、知らなかった世代にとってみれば「こんな簡単にフィルムで写真が撮れるなんて、すごく面白い!」という、私たちにはない全く新しい感覚で「写ルンです」を受け入れることができたのだと思います。
私自身も10数年ぶりに写ルンですを使ってみましたが、スマホやデジカメの写真とは違うフィルムならではの写りに、奇しくも面白さを感じてしまいました。パシャパシャ撮りながら「昔あれほど使ってたのになぁ」と、写ルンですにハマってしまっている自分の姿がなんだかちょっと情けないですね笑。
様々なものがデジタル化された環境で育ってきた若者たちが、アナログの新しい魅力を掘り起こすことができるのは、そこに「新鮮さ」があるからなのかもしれません。知っている人にとってみれば「懐かしい」「古い」という感覚ですが、知らなければそれは「面白い」や「新しい」に取って代わるのです。
「写ルンです」でおしゃれな写真を撮って、それをSNSにアップして発信する。
「写ルンです=おしゃれ」なんて図式が成立する日が来るなんて全く思いもよらなかったですが、こうやって廃れていったアナログが新しい感性で再生していくのを見るのはとても喜ばしいなと個人的には思っています。
皆さんも久しぶりに写ルンです、手にとってみてはいかがでしょうか?