SDカードは消したつもりでも簡単に復活できる
カメラで撮影後のSDカードをそのまま友人やクライアントに渡したことがあるって人結構多いですよね?でもそれって情報管理としてはかなり危険な事だったりします。
「いや、撮影前にフォーマットしたやつを使ってるから大丈夫だよ」と思う人もいるかも知れませんが、普通にフォーマットしただけでは全然意味がありません。カメラでフォーマットしたSDカードはその辺のフリーソフトを使うだけで中身が見えてしまうからです。
そこで今回はSDカードを安全に使うための方法や安全にフォーマットするための方法について紹介していきます。もちろん今回の話はSDカードだけに限りません。コンパクトフラッシュでもCFexpressでも、なんならUSBメモリーやHDD、SSDなど記録ストレージ全体に関する問題です。
写真を渡しただけのつもりがうっかり機密情報を漏らしていた。。とならないように正しい使い方を覚えておきましょう。
フォーマットしてもデータが消えていない問題
まずは「フォーマット = データを消すこと」という認識を改めましょう。フォーマットには様々な種類があり、カメラで行うフォーマット*はSDカードのデータを消しません。「消したことにする」だけなんですね。
*機種にもよる
詳しいことは割愛しますが、カメラでフォーマットをした場合はSDカードに「このカードにはデータはありませんよ!」という目印を付けるだけで、中身は残ったままということになります。。
だから専用のデータ復旧ソフトを使うとあっさりフォーマットしたはずのデータが蘇ってくるのです。誤ってフォーマットしてしまった時は救世主になる復旧ソフトですが、もし撮影済みのカードを他人に渡して復旧ソフトを使われてしまったらどうでしょうか。
その前に撮影していたプライベートな写真や、NDA(秘密保持契約)にサインして撮影したお仕事用のデータが発掘されると結構大変です。
実際にフリーソフトで復旧してみた
では実際にSDカードから昔のフォーマット済みデータが蘇ってくるのか、検証してみましょう。
今回使ってみたのはフリーの復旧ソフトで評判の良い「Recuva」です。英語のソフトですが、日本語化できるので持っておくと何かと助かるかもしれません。SanDiskのExtreamシリーズのSDカードを買っている人なら有償の「Rescue PRO」を使えるシリアル番号を持っている人も多いでしょう。
適当に手元にあった32GBのSDカードをキヤノンのカメラで通常フォーマットしてからRecuvaを使ってデータ内容をサルベージしてみました。その結果、出るわ出るわ。。
以前仕事でメーカー横断比較をしたときの撮影データがドバッと出てきました(詳細お見せ出来ないのでモザイク)。基本的には前回使って今回フォーマットしたものがメインでしたが、中には前々回撮影した形跡のあるデータも出てきました。
なお、Recuva自体は悪いアプリではなく、本来はうっかり消してしまったデータを復元するために使うアプリなので使う事自体に違法性があるわけではありません。
Recuvaの設定
直感的に使えると思うのですが、起動時に立ち上がる簡易ウィザードで「ピクチャ」を選ぶと基本JPEGデータしか出て来ないので注意。RAWや動画などまとめて引き出したいなら、ウィザードをキャンセルした後、オプション > 動作タブから詳細スキャンをチェックして検索ボックスに以下の文字列をコピペするといいです。
*.cr2*|.cr3|*.nef|*.arw|*.rw2|*.orf|*.raf|*.pef|*.dng|*.jpg|*.mov|*.mp4|*.avi|*.crm
安全にSDカードを使うための3つの方法
ここからはSDカードを安全に撮影で使う方法について私が考えた方法を紹介してみます。(データセキュリティの専門家というわけではないのでもっと良い方法あるよ!と言うのがあればぜひ教えてください!)
1.物理フォーマット or ちゃんと消してくれるメーカーのカメラを使う
上で言った「普通のフォーマット」というのは実データは残っているけど消したことに見せかけるというような方式です。これにより素早くフォーマットすることが出来たり、フォーマット時に読み書きを行わない分ストレージ寿命を伸ばせるといったメリットがあります。
キヤノンのカメラで普通にフォーマットした場合やパソコンのクイックフォーマットというのもこれに当たるため復元し放題なんですね。
カメラによっては物理フォーマットが出来る
一方、カメラによっては「物理フォーマット」というチェック項目もあります。技術的に詳しい事は私もあまり理解していないのですが、おそらくカード全体の実データもリセットしてフォーマットする形式になります。これを使えば少なくとも一般的な復元ソフトでは消したデータが復元出来なくなります。(すべてのソフトを試したわけではないけど)
ただし、この物理フォーマットは通常のフォーマットより少し時間がかかるのと、やり過ぎるとカード寿命を縮める恐れがある*というデメリットもあることに注意しておきましょう。
*以前お会いしたカードメーカーの中の人いわく、1日1回程度の物理フォーマットなら全然問題ないと言ってました
特にSDカードをそのまま渡すことが想定されていれば撮影前に物理フォーマットをしておくのも良いでしょう。物理フォーマットをするとカードがリセットされるため書き込み性能も向上する(新品時に近くなる)というメリットもあります。
キヤノンの場合、物理フォーマットを選んでも結構速く終わるので基本は物理フォーマットを使うと決めてしまっても良いかもしれませんね(そのかわり万が一の時に復旧出来なくなるけど
ソニーのカメラは普通のフォーマットが物理フォーマット?
キヤノンの場合はフォーマット時に「物理フォーマット」を選ぶオプションがあるのですが、ソニーのカメラには普通のフォーマットだけしか存在しません。ただ、手元にあるα7R IVでSDカードをフォーマットしたところ、復元ソフトではデータを復旧することが出来なかったため、デフォルトで物理フォーマットを行っているのかも知れません。
使用する機種やカードの種類によって挙動が異なる可能性もありますが、ソニーのSDカードフォーマットはめちゃくちゃ遅いのでその分しっかりデータを消しているのかも知れませんね。
カメラによるフォーマットはメーカーによりやり方がマチマチのようなので、実際に自分のカメラでフォーマットした後に復旧ソフトでデータ復元できるかどうか確かめてみるのが良いと思います。
あと、復旧出来なかったというのはあくまで私の環境においてなので、特別なツールを使うことで復旧出来る可能性はあるかもしれません。物理フォーマットをしたからといって100%安全である保証はできません。。
2.カードはむやみに人に渡さない、共有しない
安全なフォーマットをしてしまえばそれが一番手っ取り早いのですが、専門家が本気出したらデータサルベージされるかもしれませんよね。カメラによっては物理フォーマット出来ないかも知れません。
ということで、万全を期すならSDカードはむやみに人に渡さないことも大事。もし現場でデータの引き渡しが必要ならキチンと立ち会ってその場でデータコピーすること。時間に余裕があるなら別途オンラインでデータの受け渡しをしましょう。また、チーム作業の時もカードは共有しない方が安全ですね。
うっかり物理フォーマットし忘れるという人為ミスも起こる可能性があるのでここも忘れずにやっておきましょう。
NDA下の継続したお仕事がある人ならそのクライアント専用のメモリーカードを決めておくというのも良いかもしれないですね。
3.捨てるときは物理的に壊す
古いSDカードやかつて使っていたコンパクトフラッシュなどを廃棄する場合も注意が必要です。一般人がゴミ袋を漁られるという事はまず無いと思いますが、メモリーカードを捨てるときは物理的に破壊してから捨てるのが安心。
クレジットカードにハサミを入れて捨てるのと同じですね。SDカードなら金づちで一発叩けば簡単に破壊出来ると思います。金づちがなければその辺で拾った石で壊しても良いでしょうw
売却、譲渡時も気をつけて
カメラを売るときにメモリーカードもオマケで付けるとか、カードそのものを売ったり、誰かにあげたりすることもあると思いますが、そんなときもしっかり物理フォーマットするなどしてデータを消してからにしましょう。
よくリサイクルショップにメモリーカードが入ったままのカメラが売られてますが、たぶんあのカードの中身は復旧ソフトを使えばかなりの確率で何か出てくると思います。。(よい子は試しちゃダメですよ
まとめ:正しく使ってデータ漏洩に気をつけよう
ということでカメラのメモリーカードの正しい運用方法について紹介しました。
理由さえ知っていれば対策することは簡単です。基本的にはキチンとデータが消える方式でフォーマットすることを心掛ければOK。カメラでちゃんと消せない機種の人はメモリーカードは他人に渡さないということを守っておけば安全な運用ができると思います。
物理フォーマットが出来るカメラを使う人でも、個人的には撮影後のカードの受け渡しはあまりおすすめしません。撮影前にフォーマットし忘れて継ぎ足し撮影しているという場合もありますし、人為的なミスによる情報漏洩の可能性が高くなるから。
また、冒頭でも言ったとおりこれはSDカードに限った話ではなく、すべての記録ストレージで同じ事が言えますのでご注意を。最新のCFexpressでも普通のフォーマットしただけではデータは消えないはずです。
私もうっかり継ぎ足し撮影することがちょくちょくあるので、自分への戒めとしても適切なデータ運用をしていきたいなと思った次第です。