10GbEの時代がやってきた!
今年のCP+2019ではNASメーカーのSynologyさんのブースでNASの10GbE化はいいぞ!という話をさせていただきました。NASの欠点だった転送速度のリミットが外れるため写真や映像など大容量データを扱う人にとっては10GbE化はメリットしかありません。
現在売られている大半のNASは1GbE(1000Mbps)の転送速度で実効速度は110MB/s程度ですが、10GbEなら理論上はをの10倍。実効速度でも4~5倍の速さが実現できます。
ただし、NASの10G環境を手に入れるにはPCも含めたネットワーク環境も10G対応させなければならず、多くの場合追加のコストも発生してきます。(最近のハイスペックPCは標準で10GbE対応しているものも出てきた)
そこで今回は10G環境を構築するにあたって、準備する物やセッティングについて2つの方法をご紹介してみます。設定次第ではまだ高価な10G対応スイッチ(スイッチングハブ)を使わずにNASをセットアップすることもできますよ!
*私はネットワーク技術に関しては詳しくないので細かな質問にはお答えできません。私の環境でこうやったらできたよという内容です(内容が誤っていればご指摘下さい)。
スイッチを使った一般的な接続方法
はじめにスイッチ(スイッチングハブ)を使った一般的な方法についてざっくり説明してみます。
スイッチという通信を交通整理してくれる機器のコストは掛かってしまいますがこの方法は通常の1GbE対応NASと同じくただLANケーブルを挿すだけなので設定自体は非常に簡単です。普段私が使っている環境はこちら。
スイッチを使うなら2台目のNASを繋げるのも簡単です。
必要なものは以下の4つです。
- 10GbEポートのあるPC(もしくはアダプター)
- 10GbE対応NAS
- 10GbE対応スイッチ
- Cat6A以上のLANケーブル
10GbEポートを用意するには?
NASの10GbEポートを用意するには、NASそのものが10GbEに対応している必要があるのでこれから買う人はそれを意識しておきましょう。標準で10GbEポートを備えるものの他に、私のDS1517+のように後付けの拡張カードで10GbE対応させるものもあります。
例えばSynologyならE10G18-T1という拡張カードが公式から用意されています。私の場合はまだ公式カードが出ていなかった時期だったのでIntelのX540-T2を使用して問題なく動いています。
普及してきたとはいえ現段階では対応しているのは一部の中~上級機(今後もっと普及してくるでしょう)。NASは毎年買い換えるようなものでもないのでガッツリデータ管理に使う予定がある人ならはじめから「10GbE対応」をポイントにNAS選びをしてみても良いでしょう。
デスクトップPCなら安価に10Gポートを増設できる
PC側もごく一部のハイスペックPCなら標準で10Gポートを備えるものもあります。ない場合、デスクトップ型なら10GbEの拡張カードをPCI Expressのスロットに差すだけでOK。10,000円程度から選択肢があります。
NASのPCI Expressスロットにこれを挿しても動けば問題ないのですが、NASの場合は結構相性があるので純正(またはIntel)のカードを使うの推奨。
PCの場合は安いのでも大邸の場合は問題ないです。自作派ならマザーボードにはじめから10GbE搭載されているものもあるのでチェック。後から増設するくらいならはじめから付いてた方が何かと便利です。
ノートPCやMacの場合はThunderbolt / USBアダプターを使おう
Macの場合、例えばMac miniには10Gオプションがあるのではじめから追加できるなら追加しておきましょう。追加オプションを使えない場合はThunderboltの10GbEアダプターというのがあるのでそれを使いましょう(ちょっと高い。。)
WindowsのノートPCでもThunderboltが付いてれば使えると思う(未検証)。
【国内正規品】OWC Thunderbolt 3 10G Ethernet Adapter (OWC サンダーボルト3 10G イーサネット アダプタ)
追記:2.5GbEまでの対応ですが、安価なUSB-CアダプターがClub3Dから発売されました。2.5GbEなら250~300MB/sくらいの速度が期待できそうですね(私は未検証)。
Club3D USB 3.2 Gen1 Type C to RJ45 2.5Gb 高速イーサネット アダプタ (CAC-1520)
サブのノートPC用に使ってみようかしら。。
スイッチがあるなら繋ぐだけ
線を繋ぐとこんな感じになります(CP+で使った資料を基に作成)。
ご覧の通り、すべてのネットワーク機器を中央のスイッチにブスブス刺していくだけです。アンマネージの普通のスイッチを使うなら各機器での設定も特にいじる必要はありません。簡単ですね。
10GbE対応スイッチのスイッチは2~3年前は10万越えの超高級品でしたが現在は3万円以下から手に入ります。私が使っているのはNETGEARのGS110MX-100JPSです。今だと27,000円くらい。(市販の多くのスイッチは1GbE用なので必ず10GbE(RJ-45)用を用意すること)
10Gポートが2個ついているので個人で使うなら十分ですね(PC2台で使うなら10Gポートは3個必要)。使ってるとめっちゃ熱くなるけど1年以上全く問題なく動いてます。
10G必要ないものに関しては1Gのポートにブスブス刺していけばOKです。
ジャンボフレーム設定もしておこう
10Gポートを使って接続するだけでかなり高速になることが実感できますが、より速度を出したいならジャンボフレームの設定もしておきましょう。この設定に関してはこの下の「セットアップの手順 4.」で紹介しているのでそちらを参考に。
これでベンチマークしてみたのがこちら。めっちゃ速いでしょ。(なぜかシーケンシャルリードの値は900~1200くらいでバラツキある)
ベンチマークだとこのくらいでめっちゃいい数字が出るんですが、実際にファイル転送時の実効速度を測定してみるともう少し遅めです。それでも4GBのファイルコピー時でPC→NAS、NAS→PCともに400MB/s程度の速度が出る感じです。
1GbEではUSB3接続の外付けHDDよりも速度で劣っていたNASも10GbEで繋げば外付けHDDなんて目じゃないくらい速いですね。RAWや動画など大きなファイルの転送ならSSDとも良い勝負出来ると思います。
仕事などでがっつりデータを使う人ならこれだけの速度アップは十分投資する価値があるんじゃないかと思います。
スイッチを使わない接続方法
続いてスイッチを使わない接続方法についてです。接続はやや煩雑になりますが比較的高価な10G対応スイッチを使わなくて良いので初期投資が抑えられます。
- 10GbEポートのあるPC(もしくはアダプター)
- 10GbE対応NAS
- Cat6A以上のLANケーブル
これは下の図を見れば分かるようにPCとNASを直接LANケーブルで繋いでしまうというだけですw
ただ、これだとPCやNASがインターネットに繋がりません。そこで、PC-NAS間のデータ通信専用経路とは別に、PCとWi-Fiルーター、NASとWi-Fiルーターをそれぞれ別に繋げてあげるのです。
PC側に2ポート or 無線が必要
この場合、パソコン側はNASと繋ぐ10Gポートとは別にインターネット接続用の1Gのポート(10G 2ポートでも良いけど)が必要です。あるいは無線LANで繋ぐというのもアリでしょう。
例えばMac miniはオプションで10GbEポートを付けられるので、内蔵の無線LANと共に10Gを使えばOKですね。
私が今回検証した環境はWindowsの自作PCで標準で10Gポートが付いているASRock Z370 Professional Gaming i7というマザーボードを使い、インターネット接続は無線で繋いでみました。
セットアップの手順
NAS側が10GbEに対応していればどのメーカのものでも問題ないと思いますが、今回はSynologyのNASを元に紹介してみます。
1.Synology Assistantをインストール
SynologyのNASの場合、PCとNASの接続を簡単にサポートしてくれるSynology AssistantというアプリケーションがあるのであらかじめPCにインストールしておくと便利です。Win/Mac両方対応しています。
SynologyのダウンロードセンターからDLしておきましょう。
Synology Assistantを使わなくてもブラウザに「find.synology.com」と打ち込んで検索してもOKかと。
2.PCとNASを10G対応ケーブルで繋ぐ
NASの10GポートとPCの10GポートをLANケーブルで繋ぎます。10Gのスピードを得るにはCat 6A以上のケーブルが必要になります。Cat7でも今は結構安いのでこれから買うならCat7で良いと思う。
NASのDHCPを有効にしておくといいかも
ブラウザでNASにアクセスし、コントロールパネル > ネットワーク > ネットワークインターフェイス で「DHCPサーバー」が「いいえ」になっているとSynology AssistantでNASを検出できなかったので、うまくNASを検出出来ない場合は「DHCPを使う」を「はい」にしておくといいかも。理由はわからんw(ネットワーク初心者
デフォルトではNASのDHCPが有効になっているはず。
「いいえ」になってたら「編集」でDHCPを有効化しておくと良さそう。
他の接続はオフにしておく
上手くいかなかったときに切り分け大変なのでNASと初回接続するときは他のネットワーク(Wi-Fiや1Gポート)は一時的にオフにしておく方が良さそうです。
今回はWindowsで検証しましたが、Synologyの中の人いわくMacの場合はWi-Fiオフにして繋がないと10GbE用のIPが見つからないことがあるみたい。
3.Synology AssistantでNASを繋ぐ
PCとNASを繋いだらSynology AssistantでNASを検出し、接続します。Windowsの場合はSynology Assistantでマウントもできるのでやっておきましょう。(エクスプローラーでNASを外付けHDDのように使える)
MacでNASをマウントする場合はこちらをどうぞ
4.IPアドレスを固定してジャンボフレームを有効化しておく
接続できたらブラウザからNASにログインして、コントロールパネル > ネットワーク > ネットワークインターフェイスで10GbEポートを選択し「編集」へ
今回、Windows環境ではDHCPを有効化したままでも問題なかったですが、途中でIPアドレスが変わってしまうと厄介なので、「手動で設定する」に変えておいた方が良いでしょう。
ジャンボフレームも有効化しておく
これだけでも10GbE環境で繋がりますが、このままだとフルパワーを発揮できないことがあるので「MTUを手動で設定する」にチェックを入れて、MTU値を9000に設定しておくと良いです。これにより転送に用いるパケットのデータサイズが大きくなり大容量ファイル転送時にスピードが出やすくなります。
イーサネットを高速化するジャンボ・フレーム技術 (1/3):PCハードウェア強化ラボ - @IT
PC側のMTU値も変更しておく
NAS側だけでなくPC側でもMTU値を変更しておくこと。Windowsの場合は画面左下のWindowsマークを右クリックして、デバイスマネージャー > ネットワークアダプター で10GbEに使っている項目を右クリック > プロパティ > 詳細設定 > Jumbo Packet で9000くらいのを選択すればOKかと。
Macでジャンボフレーム使いたい場合はこちらを参考にするといいかも。
5.速度をチェック
3.でPCにマウントしていれば、エクスプローラーやFinderでNASが見えていると思うのでベンチマークソフトなどで速度をチェックしてみましょう。
私のDS1517+(NICはX540-T2)で試したところこんな感じの数字が出ました。速い!!
シーケンシャルでリード約800MB/sと10GbEの恩恵を多いに受けています。ベンチマークだとスイッチ使った接続ほど速度は出ていない感じですが、十分な数値だと思います。
6.1GbEのポートでルーターに接続
この状態ではNASには繋がっているけどインターネットには繋がっていないので、10Gで繋がったことを確認できたら、Wi-FiをONにしてPCとWi-Fiルータを接続したり、別の1GbEポートでルーターと繋いでインターネットに繋ぎます。
基本は特別なことは必要無くただLANケーブルを繋げるなり、いつも通りWi-Fiに繋げばOK。うまく繋がらない場合はNASのDHCPが有効になっているか確認してみましょう。
今回私が検証した環境ではNASの1GbEポートとWi-FiルーターをLANケーブルで繋ぎ、PCは無線LANでWi-Fiルーターに接続しています。(挿すだけで使えた)
これでPC、NAS共にインターネットに接続できました。NAS側が正しくインターネットに接続しているのか確認するのにAmazon Driveへの写真自動アップデートが働くか見てみましたが問題なく動いているようでした。
2台目のNASを繋げる場合は?
検証していませんが、この環境で2台目のNASを繋げる場合は、Wi-Fiルーターの1Gポートと2台目のNASを繋げればOKかと思います。たぶん。
まとめ
ということでNASの10GbE化の概要について紹介してみました。
通常の1GbE NASでは転送速度が頑張っても120MB/sいかないくらいでしたが、10GbEを導入すれば簡単にその限界を突破出来ちゃいます。データ転送はもちろん、最近はSD UHS-IIやXQDなど200MB/sを超えるようなメディアがカメラで使われることも多いですので、データの吸い出し速度も外付けHDDよりも速くなります。
4Kなど高ビットレートの動画編集なんかも10GならNASに入れたままでも編集出来ちゃうのが良いところですね。
でも写真だけの用途であれば現状の1GbEと比べてLightroomでの編集時などに劇的に差が出てくるかというと、体感はそんなに差を感じませんw トータルのコストも考慮すればまだすべての人が使うべき!というほどではないので、もう少し10G環境を安く導入できるまで待ってみるのもアリでしょうか。
仕事で使うのならば速いは正義ですのでたくさんのデータを使うなら10GbE化は十分ありだと思います。
今回は私が普段使用しているSynologyのNASを元に紹介してみましたが、QNAPなども10GbE対応NASを結構な数出していたりするので、好きなものを使えば良いと思います。(NASの場合はメーカーによって中身が大きく異なるので使い勝手のあたりも考慮しましょう)
SynologyのNASについては過去記事もどうぞ!
参考)上級者向きですがよりコストをかけずに高速化する場合はこちらの記事もどうぞ!