大きく柔らかなボケの写真を撮りたい!
上手な人の写真をみていると、背景が柔らかくボケた雰囲気のある写真が多いですよね。
写真を始めたばかりとか、これから始めようとしている人から見ると、ボケた写真を撮るには特別なワザが必要なんじゃないか?と思ってしまいがちですが、実はそんなことはありません。
入門用のカメラキットだけでもかなり大きなボケを作ることができちゃうのです。今回は、今すぐできる簡単にボケた写真を撮るコツをご紹介します!
YouTubeでも紹介しているよ
今回の内容はYouTubeにも解説動画をアップしています。初めての人は動画の方が分かりやすいかもしれませんね!
ボケを作る為に準備するもの
準備するものはカメラとレンズ。たったこれだけです。他に特別な道具は必要ありません。カメラ初心者でも問題なしです。
カメラと説明書を手元に置きながら読み進めるといいでしょう。
ただし、どんなカメラでもOKというわけではありません。ボケた写真を撮るためにはミラーレスカメラや一眼レフなどレンズが交換できるカメラが必要。なぜなら写真のボケにはカメラの「イメージセンサー」の大きさがとても重要だからです。
大前提:ミラーレスか一眼レフを用意する!
以前のエントリーでも何度か登場しましたが、イメージセンサー(撮像素子)というのはカメラの中にある写真を記録するための部品のこと。昔のカメラのフィルムに相当するものです。これが大きければ大きいほど、ボケた写真が撮りやすくなるんですね。一眼レフやミラーレスはこれが大きいので使いやすいと言うことです。
イメージセンサーサイズの違いは上の図のイメージ。ミラーレスや一眼レフはそのほとんどがAPS-C、マイクロフォーサーズまたはフルサイズ。ちょっと高級なコンデジだと1インチくらいでしょうか。ボケを楽しむならこのへんまでのカメラを選びましょう。
iPhoneなどのスマホや安いコンデジなんかは非常に小さなセンサーを使っているのでボケにくいのですね。。(ただしスマホの場合はハイエンド機を中心に撮影後にソフトウェアでボカしてしまうという手法をとっているものもあります。今回の話とはちょっと別だけど)
まずは自分の持っているカメラが、このクラスのカメラかどうか確認してみましょう。レンズが交換できるカメラであればほぼ確実にこのクラスなのでご安心を。もしこれからカメラを買うよという方は以下の記事も参考にどうぞ!
とはいえ、下の”作法”をしっかり守ればスマホのカメラでも多少はボケを確認できるかもしれません。諦めずにとりあえずやってみるのがおすすめ!
ボケを作るためのカメラの設定
次はカメラの設定。オートだとまぐれでボケた写真を撮れることはあるけれど、今回は”狙ってボカす”がテーマなので、オートは卒業です。
なにはともあれAvモードで
カメラの設定は絞り優先モード(Av、A)に設定します。Av(A)モードは絞り、シャッタースピード、感度のうち、”絞り”を自分で決めるモードでしたね。”絞り”って何??という人は先にこちらを読んでおくと便利です。
上に挙げたような大きなイメージセンサーを使ってあるカメラならほぼ確実にこの設定が選べるはず。通常はカメラの上のダイヤルで設定できます。
”絞り”は写真の明るさをコントロールする以外に、写真の”ボケ具合”をコントロールできるという特徴があります。だから絞りだけは自分で決められるようにAvモードにするのです。
絞りは”F値(えふち)”とも呼ばれます。レンズやカタログを見ると「1:3.5-5.6」とか「f/4.5-5.6」とか「F-2.8」というような文字が書いてありますが、この「3.5」とか「5.6」とか「2.8」という数字がF値です。なんで、こんなキリの悪い数字ばかりなの??というのはココではひとまず置いておいて、この数字が小さければ小さいほど「明るくて、よくボケる」と覚えておきましょう。テストに良く出ます!
その1:設定はAvモードで。F値はできるだけ小さく!
ちなみに、レンズによって書いてあるF値が違うのは、そのレンズの光を取り入れることのできる性能が違うから。高級なレンズほどF値は小さくなります。また、F値はどのレンズでもF22くらいまでは大きく(暗くてボケにくく)設定することが出来ます。
たくさんボカすにはF値の小さなレンズを使うことが重要ですが、新しくレンズを買うのは大変なので、まずは手持ちのレンズで一番F値が小さくなるところまでダイヤルを回してください。センサーサイズが大きなカメラならまずはコレで十分です!
もし、複数のレンズを持っている人なら、レンズに書いてある数字を見て、一番F値の小さなレンズを使うのがいいでしょう。ズームが出来ない単焦点レンズはF値を小さく出来ます。
Avモードを選んだ場合は、ちゃんとした明るさになるようにカメラが自動でシャッタースピードを選んでくれます。感度は自分で選べますが、もし面倒なら感度もオートにしちゃいましょう。カメラに慣れるまでは感度はオートがおススメです。
感度は”ISO(あいえすおー、いそ)”とか”ISO感度”とかと呼ばれます。カメラの設定で”ISO”と書いてあるところからオートに設定しておきます。
これで設定は完璧です!
長々と書いてしまいましたが、やることはシンプルです。Avモードにして、F値が一番小さくなるところまでダイヤルを回す。ISO感度はオート です!
ボカしたければズームせよ!
上の二つは初めての人にはちょっと大変だったかもしれませんが、あとの二つは超簡単!難しい言葉は出てきません。
ボケの3つ目の特徴は、「ズームで撮れば撮るほど良くボケる」です。ズームできるレンズを持っている人は、出来るだけズームしてみましょう。
その2:できるだけズームして撮る!
ズームしたらF値が大きくなってしまったんだけど。。となるかもしれませんが、あわてなくても大丈夫です。普通のズームレンズはズームするとF値が大きくなってしまうので故障ではありません。入門キットのレンズだとズームしただけでF値が3.5から5.6くらいまで大きくなってしまいます。大丈夫。
もしズームできないレンズ(単焦点レンズといいます)しか持ってない人は、そのままでOK。単焦点レンズはズームできない代わりに、F値が小さいはずなので、そのままでもよくボケます。
ズームレンズと単焦点レンズ
ズームレンズはズームができるという便利な機能の代わりに、F値を犠牲にしています。一方、単焦点レンズはズームできない分、構造が単純なのでF値を小さく(明るく、ボケやすく)することができます。しかもコンパクト。
もし、将来レンズを買う時は、F値を犠牲にしてでも便利なズームレンズを選ぶか、ズームはできないけれど、コンパクトで明るくボケやすい単焦点レンズを選ぶかで悩んでしまうでしょう。それまでに、手持ちのレンズで自分にはどんなレンズが向いてるのかな?と少し考えておくといいかもしれません。
ちなみに、F値も小さくて、ズームもできるすごいレンズ(大口径ズームレンズといいます)もありますが、一個10万~20万円もする高級品です。。しかもとっても大きいです。
レンズの種類についてはこちらの記事も参考にしてみてください
被写体に近づいたものが勝利を掴み取る!
いよいよ最後のポイントですね。いくらセンサーサイズが大きくて、F値が小さくて、ズームしたカメラで撮っても、撮り方が良くないと、効果を実感できません。最後は被写体との距離感です。
その3:被写体にできるだけ近づく
まず、カメラと被写体の間の距離は短いほど背景が良くボケます。だから大きくボカしたい場合はできるだけ被写体に近づいて撮りましょう。遠くの山をいくらF値を小さくして撮影してもボケないのはこのためです。
ただし、レンズによってはこれ以上近づくとピントが合わないよという距離(最短撮影距離)が存在しますので、ピントが合うギリギリが最も良くボケるポイントになります。
実際には近づきすぎると被写体のサイズが大きすぎたりするので”できるだけ近づく”という意識が大事。
その4:背景はできるだけ遠く
結構忘れがちなのが、背景を遠くに設置すること。写真でボケる部分は背景なので、これが被写体の近くにあるとなかなかボケません。ボカしたい要素を被写体(ピントが合った部分)より遠くにすることが大事です。
たとえば花壇のお花を撮る場合、上から撮影すると背景が近くの地面になってしまうためほとんどボケませんが、低い位置で横から撮影すれば背景は遠くになりますので同じ設定でも驚くほど良くボケるようになります。
写真をボカす方法は4つしかない
上の4つの作法を知っておけば、ボケを作るのは超簡単!初心者でもすぐできちゃいます。
最もよくボカす方法は、上の4つを全部組み合わせた時。つまり、
- (手持ちのカメラで一番イメージセンサーの大きなカメラを使う)
- 1.出来るだけF値の小さなレンズを使って、Avモードで一番小さく設定する
- 2.ズームできるなら目いっぱいズームする
- 3.被写体にできるだけ近づく
- 4.背景はできるだけ遠く
ということですね。図にするとこんな感じ。
ただ、被写体によってはズームしちゃうとはみ出ちゃう。。とか言うこともあるので、その辺は今日覚えた4つの作法を念頭に置きつつ、適宜調節しましょう。
これで今日からボケを自在にコントロールできるようになるはずです!
ボケ写真の作例
最後に、いくつか作例を挙げて見ますね!
マイクロフォーサーズでもボケる
オリンパスのE620というフォーサーズ規格のイメージセンサーのカメラで撮りました。雨の日にミニストップの駐車場にて。
一番F値を小さくして、最大までズームした状態でフロントガラスの水滴にめいっぱい近づきました。セオリーどおりの設定です。奥にあるミニストップの看板がボケボケになって虹のようになりましたね!
イメージセンサーの大きさがちょっと小さな(マイクロ)フォーサーズですが、ココまでやればちゃんとボケますね。
*フォーサーズとマイクロフォーサーズのセンサーサイズは一緒
フルサイズのカメラは簡単にボケる
キヤノンのEOS Rというフルサイズセンサーのカメラで、F値の小さな大口径のズームレンズを使って一杯にズームして、F値も一番小さく。フルコースです。ここまですると、奥のスプーンまでの距離はそれほど離れていないのにボケボケになります。使ったのはズームレンズなのにF2.0まで小さく出来るすごいレンズ(RF28-70mm F2L USM)。
スプーンのキラキラしたボケがキレイに写りました!
望遠で撮るとボケやすいね
これもF値を小さくして、ピントを手前のグラスに。背景は遠くのシャンデリアです。明かりの一つ一つがキレイにボケました!ちょっとブレてますけど。。イメージセンサーはAPS-Cサイズです。
これは望遠レンズという遠くを写すことに特化したレンズで撮りました。レンズに書いてある**mmの数字が大きければ大きいほど、遠くのものを大きく写せます。APS-Cサイズのカメラですが望遠レンズならフルサイズに負けないくらい大きなボケを作れます。
キラキラ、フワフワ感がスゴいです。
広角でも近づけばボケる!
広い範囲を写したかったので、この写真はぜんぜんズームしていません。ズームしていないということは、”ボケにくい”ということですが、それでもボカしたかったので、F値をできるだけ小さくして、手前の桜の花に出来るだけ近づきました。後の東京タワーが上手くボケてくれました!
フルサイズのセンサーのカメラを使えば広角側でもこのくらいぼかすことも可能です!
手前にボケを作ることも出来る(前ボケ)
この写真はちょっと応用編。手前に被写体を持ってくるのではなくて、奥に被写体を持っていって、ボカしたいものを手前に置きました。基本の逆パターンです。手前をボカすと写真に奥行きが出ますね!
はじめは出来なくてもOKですが、こういうのを「写真に前ボケを入れる」って言います。前ボケが使えるようになると写真のバリエーションがグッと高まります!
まとめ:ボケをコントロールするのは簡単
ということで写真を狙ってボカしてみる方法を紹介してみました!途中でもまとめましたが、写真のボケを作るためには
- 1.できるだけF値を小さくする
- 2.できるだけズームして
- 3.被写体にできるだけ近づき
- 4.背景はできるだけ遠く
して撮ればOKということ。
つまりこれらの要素を調整して、F値を大きくしてみたり、被写体から離れてみるとボケは小さくコントロールできます。この4つの要素を組み合わせるだけでボケは自由自在に操れるようになるのです。
まずは自分の持っているレンズで最も大きなボケを作る練習をしてみて、慣れてきたらボケのサイズを変えて表現の幅を広げていきましょう!
YouTubeでも紹介しているよ
今回の内容はYouTubeにも解説動画をアップしています。初めての人は動画の方が分かりやすいかもしれませんね!
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