光跡を比較明合成して豪華な1枚に仕上げる
このところ夜も暖かくなって夜景撮影をしやすい季節になりました。夜景と言えばスローシャッターで車や船の光跡を表現するのも面白いですよね。
ただ、よほど条件が良くなければ画面いっぱいに光跡が溢れる写真にはなりません。例えばこんな具合に1本では寂しいです。。
Photoshopで比較明合成してみる
ではどうするか。
いくつかの解決策がありますが、最も手軽なのは複数の写真に写った別々の光跡を1枚にまとめることです。光跡を合成(コンポジット)すると1枚の写真に複数の光の筋が現れて華やかなイメージになります。
今回はそんなスローシャッターで撮影した光跡写真をPhotoshopで比較明合成するための方法と応用してさらに光跡の本数を増やすテクニックをご紹介致します。
*今回はPhotoshopで説明していきますが無料のGIMPを使っても同じ事ができます。使い方は文末の花火の記事へのリンクを参考にしてみてください。
Photoshopで光跡を比較明合成する
では実際に合成していきましょう。あっけないくらい簡単です。
まずは合成用の素材を用意せねばならないので光跡の撮り方も簡単に紹介しますが面倒な方は下記のリンクからサンプルデータをダウンロードしてみてください^^;
なお、Photoshopは最新版のPhotoshop CC2015を使用しています。そんなに難しい処理ではないので過去のバージョンやPhotoshop Elementsでも出来るはずです(操作方法は多少異なるかも。特にElements)。
Photoshopはかつてはプロ向けの敷居の高いソフトでしたが現在はLightroomとPhotoshopがセットになった月額980円のフォトグラフィプランもありだいぶお得になりましたよ!
1.光跡写真を用意する
合成用の素材とするために最も重要なのはカメラを固定して複数の写真を撮ることです。「背景の位置は変わらずに、光跡の位置だけが変わっている写真」を用意して下さい。
一番簡単なのは近所の車通りが多い通りで夜撮影することですね^^ クルマの光跡がたくさん撮れます。
僅かでも位置のズレがあると背景が上手く重なりません。しっかりした三脚を使い、できればレリーズを使いカメラに触れずにシャッターを切りましょう。
バルブモードがおすすめ
車の光跡なら1枚あたり10~20秒くらい、船の光跡なら30~180秒くらいが目安。船は進むのが遅いのでバルブモード(B)で30秒を超える撮影をすることが必須ですね。
車の撮影でも任意の時間でシャッタースピードをコントロールできるバルブモードは便利です。バルブモードって何?という方はまずはシャッタースピード優先モード(Tv、S)を使うのもOKです。モードの説明はYouTubeに動画として上げてるのでよかったら見てみてください。
サンプル画像ダウンロードできます
そんな写真手元にないよ。。という方はこちらに今回のものと同じ練習用のサンプル写真を用意しているのでダウンロードして使ってみて下さい。
今回用意したのは船の航跡。いちばん良く撮れたものでもこんな感じで1本だけでした。。悪くはないですがちょっと寂しいですね。。(シャッタースピードは120秒)
2.Photoshopでレイヤーとして開く
合成用の画像が用意できたらPhotoshopで写真を開きましょう。1つの写真に素材となる写真をすべてレイヤーとして重ねます。
写真を開くときにメニューバーの
を選択すると楽ちんです。
「参照」から素材となる写真を複数選択すれば読み込んだ写真が1枚の中にすべてレイヤーとして読み込まれます。
「ソース画像を自動的に配置する(A)」にチェックを入れると、撮影時に微妙にズレてしまった画像をPhotoshop側がズレのないように並べ直してくれます(ただしちょっと時間がかかる)。
Lightroomなら直接開ける!
Lightroomユーザーならいちいち素材を書き出さずとも、素材となる写真を選択した状態で、
とすれば自動でPhotoshopが開きます。さらに、編集後に上書き保存すればLightroom側のカタログに編集結果が自動的に反映されます。めちゃ便利ですね!
*Photoshopをインストールしておく必要あり
この場合、自動整列はしてくれませんがPhotoshopで開いた後、レイヤーをすべて選択して、
とすればPhotoshopから開くのと同じように多少ズレてても自動で直してくれますよ。
3.描画モードを「比較(明)」へ
レイヤーとして読み込むとこんな感じになります。
上の例では4枚の写真を読み込んだのでレイヤーパネルに4枚の写真が並んでいますね。描画モード(上の赤枠)は「通常」なのでこの状態では一番上のレイヤーの写真しか表示されていません。
そこで、一番上の写真の描画モードを「比較(明)」にしてみます。
なんということでしょう!光跡が1本増えました!!
「比較(明)」というのは下のレイヤーと比べて両者の明るい部分を表示するモードです。上から2番目のレイヤーには右側の光跡が写っていて、他の部分は一番上のレイヤーと同じ明るさなので右側の明るい光跡だけが追加で浮き出てきたのです。
2番目、3番目も「比較(明)」にする
この要領で上から2番目、3番目のレイヤーの描画モードも「通常」から「比較(明)」とすることで下の写真の光跡だけが浮き出てきます。(一番下のレイヤーはその下に何もないので「通常」のままでもOK)
一番下を除く上の3つのレイヤーを「比較(明)」としたのがこちら。
写真4枚ぶんの光跡が表示されました!(光跡のバランスが悪いのはスルーで。。w)
このことから三脚をつかってズレないように撮影しなければならない理由が分かったでしょう。背景がズレてしまうと「比較(明)」としたときに背景のビルなども2重、3重に見えてしまうのです。。
比較明合成は背景を固定して動くものだけを場所を変えて撮っておくというのが重要です。
4.完成!
あとはそのまま書き出しても良かったのですが、今回は右側の光跡のイメージが弱かったので思い切って縦構図にし、左側をメインで見せるよう大きくトリミングしてみました^^
だいぶ迫力が出ましたね!
おまけ:さらに豪華にしてみる
4枚のレイヤーのうちいくつかをコピーして光跡のみを切り出し、変形させてペタペタ貼り付けて遊ぶとこんな感じになります。
この写真に写っている光跡はすべて元の4枚の光跡。超適当に切り貼りしましたがPhotoshop使うとこんな合成も朝飯前なわけです。やり過ぎだぞ!とどっからか怒られそうですが(笑)
この辺の方法は比較明合成とはまた別のテーマになるのでまた今度ということで。。
Photoshopは基本操作を覚えるのが大変ですが、慣れればなんでもできるようになりますよ。写真の補正、加工やるならこの本は実践的でおすすめ(始めたばかりの人には少し難しいかも)。
Photoshopプロフェッショナルの教科書 現場で役立つ写真加工と補正の技術 CC 2014/CC/CS6対応版
光跡コンポジットの作例と撮影のポイント
これを使うとどんな感じのものができるのかいくつか作例を紹介してみましょう。
トラックの通る国道がおすすめ
一番身近なものは道路を通るクルマの光跡ですね。10秒くらいの露出で10~20枚くらい撮影しておき、後でPhotoshop上で合成するもの、しないものに分けて厳選して比較明合成をすると良いでしょう。
一番撮りやすいのはトラックが多く通る国道です。なぜならトラックって荷台の上の方にもライトが付いていたり、たまにカラフルなデコトラが通ってきたりバリエーションが出やすいのです。乗用車だけでは同じ位置、同じ色の光跡しか出ませんが、高さのあるクルマなら縦方向にカラフルな光跡を重ねることができます。
上の写真は国道23号線です(三重県)。なお、撮影するときは絶対に車道に出ないこと。三脚の脚を車道側に出すのも厳禁です。
街ならタクシーとバスが狙い目
都会ではあまり大きなトラックが通らないので狙いはタクシーとバスです(笑)
タクシーなら天井にライトが付いているし色も豊富。バスも高い所にライトが付いているので光跡に厚みが出ます。低めの位置から狙うのもポイントです。
橋の上からも面白い
橋の上などから狙ってみるのも面白いです。上から撮影するなら乗用車でもトラックでも同じ事です。かなりオーバーに重ねて色も強くしてみました。
こういう写真を撮るようになると、昼間道を歩いているだけで「ここは良い光跡が撮れそうだ!」と閃くようになりますw
橋の上から撮るときも通行人の邪魔になるような三脚の立て方をしたり、間違ってもフェンスによじ登るようなアホなことはしないようお願いします。。
まとめ
ということで光跡をPhotoshopを使って合成(コンポジット)する方法をご紹介しました。
きちんとした素材を撮っておけばPhotoshopでやる操作は驚くほど簡単なのです。カメラ内で一発で仕上げる方法もありますが、これだと途中で思うような光跡が入らないと失敗します(超上級者向き)。
後で重ねる光跡を吟味できる今回の方法では初心者の方でもよりハイレベルな光跡写真を作りやすいのです。
ちなみに、星の光跡や花火の写真もまったく同じ原理で合成を行います。過去に特集をしているので良かったらこちらの記事も見てみて下さいね。
特に花火の記事はPhotoshop以外に無料のGIMPを使った方法も紹介していますよ(今回の合成もGIMPでできる)。