ノートPCで見ている写真の色は間違っているかも?
カメラやレンズには10万円や20万円といったお金をかけているのに、肝心の撮影した写真は普通のノートPCや古いモニターで編集している。。という方いませんか?
あなたが見ているモニター上の写真、もしかすると本来の正しい色を表示していないかもしれません。実はこういうモニターはとても多いのです。
写真はカメラやレンズなど「入力側」の機器だけでなく、撮影した写真を見るための「出力側」の機器も大事です。「入力」がどんなに素晴らしくても「出力」が中途半端ではカメラの性能を生かし切れません。
写真の出力形式はいろいろありますが最も一般的なのは「モニター(ディスプレイ)への表示」ですよね。撮影した写真をPCに取り込んで、セレクトして、編集するのはすべてモニター上で行いますから、高品位な写真を仕上げるためにはそれに見合ったモニターが必要になるわけです。
そこで今回は市場に溢れる液晶モニターの中で自分に合ったモニターを選ぶためのポイントを10個あげてみたいと思います。これを知っていればきっと自分に合った写真向けモニターが探せると思いますよ!
なぜモニター選びが重要なのか
冒頭でも言いましたが、カメラやレンズといった入力機器がどんなに優れていても、最終的に写真を見るのは人間の目ですから、目に見える形に出力するための機器が中途半端ではすべてが台無しです。
かつて、フィルム写真時代は「出力」の作業はプロ(カメラ屋さん)の仕事だったので普通の人は気にする必要はなかったのですが、デジタルになると「出力」も素人である私たちが行う場面が多くなりました。
必ずしもプロ並みの機器を用意する必要はありませんが、写真を楽しむであれば 写真観賞や編集(現像)に向いた液晶モニターを選ぶことはとても大事なのです。
ノートPCのモニターは正しい色を出さない?
ここでもう一つ誤解を恐れずに言えば、世の中の多くのノートPCのモニター(ディスプレイ)は正しい色を出していないと思っても良いかも知れません。
ここ1~2年でノートPC用モニターの品質もかなり上がってきていますが、写真編集向きと言えるのは一部の上位モデルに限られるのが現状です。(しかも、それが写真向きなのかどうか見分けるのが難しい)
4~5年前の古いノートPCをお使いの方なら、そのモニターはかなりの確率で写真の色を正しく出力できていないと思ってもいいでしょう。
コストの問題や小型化と高品質を両立させるための技術的な問題など様々な要因でノートPCだけでキチンと正しい色を見ながら写真編集できるモデルは非常に限られるのです。例えば、以前(2013年ごろ)私が使っていた標準的(ちょっと安め?)なあるノートPCのモニターが表示できる色はこんなに狭いものでした。画面の傾きで色が変わって見えるし、初期設定では画面がかなり青みかかっており調整しないと正しい編集ができないと言うほどでした。。
2020年現在でも安価なノートPCはsRGB色域(後述)すら満たしていないものがたくさんあります。
もちろんデスクトップPC向けの外付けモニターも4~5年ほど前の古いものの多くは写真向きと言えるものが少ないですし、液晶モニターは経年で色が徐々に変化していくということも忘れてはなりません。
外付けモニターのススメ
そんなわけで、キチンと写真を観賞、編集するならそれなりのスペックを持った外部モニターが必要なわけです。デスクトップPCをお使いの方だけでなく、ノートPCを使っている方もぜひ外付けモニター導入をおすすめします。
ノートPCに外部モニターを付けるのは非常に簡単で、多くの場合HDMIケーブル1本を繋ぐだけです。最近はUSB TypeCケーブル1本で接続できるものも出てきましたね。また、こうすると作業環境が広がるだけでなく、デュアルディスプレイとして使うことも可能で作業効率も大きく向上します。
例えばAdobe Lightroomは公式にデュアルディスプレイ環境での作業に対応していたりするんですよ!
モニター選びで注目すべきポイント 10選!
前置きが長くなってしまいましたが、ここで問題なのは「ではどれを買えば良いの??」って事ですよね。そこでここでは趣味として写真を楽しむ人が世の中に無数にある液晶モニター(ディスプレイ)を選ぶ上で注目すべきポイントを10個ほど挙げてみたいと思います。
多数のメーカーが乱立する液晶モニターもこのポイントを意識すればきっと自分に合ったモニターのスペックが分かってくるはずです!
1. モニターのサイズ
最初はモニターのサイズです。
24インチ or 27インチ がおすすめ
現在主流のモニターは24インチ(or 23.8インチ)。選択肢も多く、ほとんどの場合このタイプで問題ないかと思います。もっと効率的に作業したり、迫力ある表示を楽しみたい方なら一回り大きな27インチのものもおすすめです。実際私はこの27インチモニターをずっと愛用しているのですが、一度この快適さを知ってしまうと24インチには戻れないなぁといった感じです。
最近はさらに大きな30インチ級もラインナップされていますが、通常のデスクで作業するならちょっと大きすぎるかなといった印象。より画面に没入したい方や作業スペースが大きい方は検討してみても良いでしょう。←追記:30インチのモニター使ったら止められなくなりました。。
また、最近は横幅が極端に長いウルトラワイドタイプのモニターもありますが、写真は必ずしも横で撮るわけではないので積極的に選択する必要はないと思います。(写真以外の用途には便利な場合も)
逆に24インチよりも小さいもの(21インチとか)は写真を扱うには小さすぎてあまりおすすめ出来ません。
2.モニターの解像度
モニターサイズと並んで重要な指標ですね。
現在主流はFullHD(1920x1080)のタイプです。24インチモニターの多くはこのFullHDですね。通常はこのタイプを選んでおけばまずはOKかと思います。最近は以下に挙げるような高解像度タイプも増えてきました。
写真の多画素化に対応した高解像度モデルも考慮
ただ、最近のカメラは多画素化が進んでおり、例えば2400万画素のカメラで撮影した写真は6000x4000pxです。この写真をFullHDモニターに画面いっぱいに表示させるには写真を1/3以下まで縮小しなければなりません。
また、FullHD(1920x1080)の解像度では画面をよく見るとドットの形状が見えて画面が粗く感じるかもしれません。特に最近のスマホは超高解像度なのでスマホを見慣れた人はフルHDでは満足できないかも。。
もし27インチモニターを選ぶならWQHD(2560x1440)のモニターがおすすめです。画素密度も24インチFullHDより高く、より高精細な画面で編集ができます。また、表示できる情報量が増えるので、たくさんのソフトを画面にたくさん表示させたり、表計算ソフトを使うにも快適で作業効率アップにも繋がりますよ!24インチでも余裕があればWQHD以上を考えたいですね(数は少ないですが)
最近流行の4K(3840x2160)も検討する価値はあると思います。この記事を書いた当初(2016年)は高嶺の花でしたが2020年現在かなり価格も落ち着いてきました。FullHDに比べ、同じ面積に4倍もの情報を表示でき、異次元の高精細さが体感できるはずです。
追記:4Kもかなり身近になってきたのでまとめてみました!
3.液晶のタイプ
単に”液晶モニター”といっても、液晶のタイプ(駆動方式)にも違いがあります。大きく分けてTN, VA, IPSの3タイプが存在します。
IPSタイプがおすすめ
この中で写真向けにおすすめなのがIPS方式の液晶モニターです(メーカーによって AHVA, AH-IPS, ADSとも)。IPS液晶モニターの特徴は斜めから見ても色や明るさが変わりにくいこと(視野角が広い)。ここは非常に大事なポイントです。
例えば、集中して前のめりで編集作業をしていたとしましょう。作業が終わってふぅーっと体を椅子の背もたれにつけて画面を見ると、「あれ??さっき作業していた時に見えていた色が違って見える。。」という現象が起こる場合があります。画面を見る角度が変わってしまったからです。。
こうなると、どの姿勢で見た色が本当に正しいのかよく分からなくなってしまいますよね。でも、IPS方式の液晶モニターなら前のめりでも背もたれに体を預けてリラックスしている時でも同じ色や明るさで観賞や編集することが可能です。
また、今でこそIPS方式も一般的になってきましたが、3つの液晶タイプでは最も高級品なためモニター自身の品質もある程度担保され「ハズレが少ない」と言える安心感もあるでしょう。
IPSの弱点はコントラストが(VA方式に比べて)弱いと言われますが、これも近年良くなってきていますし、最終的にプリントを考えるなら、紙のコントラストはそれほど高くないですのであまり問題にならないのでは?と個人的には思っています(上位機種の大半はこのIPS方式です)。
VAは条件付き可、TNはおすすめしません
VA方式の液晶は(IPS方式に比べ)視野角が狭く、斜めから見ると色が少し変わるため柔軟な用途には向きません。一方、コントラストを高くしやすい(黒の締まりが強い)方式なため、モニターでの写真観賞や映画の鑑賞などでは有利になります(ただし正面からに限る)。
また、VA方式の中には一部MAVA+というような斜めから見ても色が変わりにくい進化形VAパネルもあります。これならデスクで作業程度なら十分でしょう。もしVAパネルを選ぶ時は注意して選びましょう。
TN方式は初期の液晶に良く見られたタイプで最も低コストですが、斜めから見たときの色の変化が非常に大きいため残念ながら写真編集には向きません。
4.表面の加工(グレア、ノングレア)
続いては表面の加工について。マットな質感のノングレア、ツルツルのグレア(光沢)の2つがあります。
ノングレアが疲れにくい
ここは個人の好みによるところも多いですが、一般的にはマットな質感で周りの映り込みが少ないノングレアタイプが長時間使っていても目に優しくおすすめです。
ディスプレイの見え方も紙にプリントした感じ(用紙にもよるけど)で、プロ向けなど上級モデルの大半はノングレアタイプかと思います。
グレアはキレイに見える
グレア(光沢)液晶はモニターの表面がツルツルしているため“なんだかキレイに“見えます。モニター表面での乱反射が少ないため黒の締まりが強くメリハリのある見え方をするから。Macのモニターはこのグレア液晶であるのが特徴ですね。
ただし、モニター表面が鏡のようにツルツルなので周りにあるもの(暗い部屋だと自分の顔とかも。。w)をいろいろ映し込んでしまい長時間使っていると目が疲れるといった副作用がある場合があります。目が疲れやすい人は注意。
写真をプリントする場合もアンチグレアの方が画面とプリントの色を合わせやすいです。
ただし、最近は反射防止コーティングの性能が上がっているためグレア(光沢)だけど反射を抑えたものもあり、一概に「グレア = 悪」とも言えません。店頭で実際に見てみるのも良いですね。
5.色域(色の表示可能範囲)
色域とはそのモニターが表示できる色の広さです。色域が広ければより色彩豊かな写真を表示できる能力があります。主にsRGBとAdobeRGBのどちらかに対応したモデルになります。最近はMacを中心にDisplay P3(DCI P3)という色域をカバーすると謳うものもありますね。
こんな感じでAdobeRGBはsRGBに比べてより豊富な色を表示できます。
まずは汎用性の高いsRGBでOK
表示できる色の範囲が狭いsRGBなんて選ぶ価値がないと思うかも知れませんがそうとも限りません。
というのも世の中の大半の液晶モニターの色域はsRGB(もしくはそれ以下)を基準にしたものなのです。かつてPCの世界を独占していたマイクロソフトが主導で広めた色域で今でも事実上の世界標準と言って良いかと思います。ほとんどのPCやソフトはsRGBで見ることを前提に作られているのです。
たからsRGB色域のモニターは色の設定(カラーマネジメント)に詳しくない人でも使いやすい(何もしなくてもメチャクチャな色にならない)というメリットがあります。AdobeRGBより色域が狭いといっても一般的な写真を扱うならこのsRGBの色域がしっかり表示できれば十分です。
というか、皆さんが普段モニターで見ている写真の色はsRGBの中にある色ですものね。(普通のモニター使ってるなら)
色にこだわったモデルなら「sRGBカバー率99%」というように具体的な数字をスペックに記載しています。特に記載のないモニター(こっちの方が多い)はsRGBに準拠して作っているけど完全に再現できる訳ではないと思っておいても良いでしょう。
プリントまでしっかりやりたいならAdobeRGBも
通常はsRGBで十分とはいえ、撮影データの中にsRGBを超える色が含まれている場合、その色はsRGBモニターではどう頑張っても表示できません(見えません)。そこで一部のモデルではより豊富な色を扱えるAdobeRGB対応モニターというものもあります。
例えばRAWで撮影したこの写真のRAW現像、プリントを考えてみたいと思います(アップしたのはsRGBのJPEG)。
RAWデータは広大な色情報を持つためLightroomで現像すると特に高彩度のものは一部の色が簡単にsRGBの色域を飛び越えてしまいます。それを表したのがこの図です。
(*LightroomはAdobeRGBより遙かに広いProPhotoRGBで処理を行う)
図のドット一つひとつが写真の色に対応します。大半はsRGB(紫の三角)の中に収まっていますが、青や緑色はsRGBを飛び越えてしまっていますよね。もっと言えばAdobeRGBさえ通り越しているのですが。。
つまり、この写真はsRGBのモニターで編集しているときに空や海の微妙な色合いが確認したくてもできない状態です。。一方、AdobeRGBに対応したモニターならはみ出た部分の大半の色を表示することが出来ますね。
(AdobeRGBの色域も結構飛び出しているように見えますが、ドットが分離して見える程度のはみ出しならあまり気になりません)
また、内側の角が丸い三角はエプソンのPX-7Vというインクジェットプリンターで出力できる色域です(光沢紙)。これを見ると、sRGBのモニターでは見えていない色(特に青~緑)をプリントすることになってしまいますが、AdobeRGBならプリント可能な大部分の色を事前に確認することができ、より正確なプリントができることが分かります。
スマホのディスプレイも広色域化が進んでいる
最近はiPhoneなど高級機種を中心にスマホの画面もsRGBを超える色域を表現できるようになってきているものもあります。iPhoneの色域はDisplay P3(DCI P3)が基準です(100%カバーではないと思うけど)。カメラで撮影した画像(RAW)もsRGBよりずっと広い色域のデータを持ちますのでキチンと写真をやりたいという方はAdobeRGBなど広色域を表示可能なモニターも考えておきましょう。
値段も昔に比べて手頃になってきましたよ。
正しい知識を勉強しよう
ただし、多くの機器やソフトがsRGBに準拠して作られているため、AdobeRGBのモニターを使いこなすには、それなりに色に関する知識(カラーマネジメント)が必要です。
パソコンに繋いでハイ終わり。。と言うわけにはいかず後述するキャリブレーションやソフト側の設定などを正しく行う必要があります(身構えるほど難しい事では無いですが。。)
6.キャリブレーション済みかどうか
液晶モニターはパネルの特性や個体差などでメーカーや機種間で表示される色が微妙に異なる事が多いです(安価なモニターに多い)。PC側の設定をいくら正しく行っても、最終的に出力するモニター側の出力がおかしくては正しい色を見ることは出来ません。
この場合、自分で色を調整する必要が出てくるのですがこれがまた大変なのです。多くの外付けモニターでは本体のメニューボタン(OSDメニュー)からRGBのバランスを変えられますが、色の見え方(感じ方)は個人差や環境にも左右されやすいため目視で行うには限界があるのです。。
(ちなみにノートPCのモニターはモニター側で色を調整する事さえできません。。)
そこで、一部の色にこだわったモデルでは工場出荷時点でsRGBやAdobeRGBといった基準値に1台ずつキャリブレーション(調整)を行っているものもあります。こうしたモニターでは箱を開けた直後から正しい色で見ることが可能で安心感がありますね。
ただし、液晶モニターは経時で色が僅かに変化する可能性があるため長期にわたって正しい色で見られるという保証はありません。。
色温度の落とし穴。。
プリントを考える場合、モニターの白色点の色温度(白を表示したときの色)を部屋の明かりと同じに設定しなければ正しいプリント評価が出来ません。例えば出荷時sRGBにキャリブレーションされた場合、その白色点は6500Kとやや青白いものになっているはず。
よってこのモニターで正しくプリント評価するためには部屋の明かりを6500K(昼光色)にしなければならないのです。部屋の明かりに昼白色(5500K)や電球色(3000K)の蛍光灯を使っていたり窓からの外光に頼っている場合は注意が必要です。(モニターの白色点を変えなければならない。。後述)
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と、ここまでが一般的なモニター選びで最低限注意しなければならないことです。
この下の項目はさらにハイエンドな上級者向けモニターを購入するときにチェックしましょう
7. ハードウェアキャリブレーション
キャリブレーション済みモニターでは既定の表示環境(sRGBとか)でしか正しい調整がなされていませんし、経時で色が変化することもありえます。
そこで、自分の作業環境(部屋の明かりの色など)に合わせてより正しい色を評価できるようにするためには「キャリブレーター」という専用の機器でモニターの色を測定し、調整する必要があります。これをモニターキャリブレーションといいます。
ソフトウェアキャリブレーション vs ハードウェアキャリブレーション
このキャリブレーターは通常のモニターにも使うことができますがPC側のソフトに依存した形で調整を行うため、モニターの表示能力を生かし切るのがなかなか難しいのがデメリット(ソフトウェアキャリブレーションといいます)
一方、モニター(ハードウェア)とキャリブレーターを直接連携させて色の調整ができるモデルがハードウェアキャリブレーション対応モデルです。このモデルでは自分のオリジナルの色設定にしても、モニターのポテンシャルを簡単に引き出して調整する事が可能。経時の色変化にもすぐに対応できるので、正しく色を見る環境を作ると言う点で理想的なモニターと言えます。
安価なモニターに無理してソフトウェアキャリブレーションするよりも、モニターに繋げばOKのハードウェアキャリブレーションの方が簡単。あまり難しい事を考えなくてもモニターの色を正しく保てるのがポイントです。
8.表現可能な階調
現在ほとんどの液晶モニターは色の階調を8bit(256段階)で表現します。モニターはRGB(赤緑青)の3色で色を表現するためそれぞれ256(R)x256(G)x256(B)= 約1680万色で写真を表現します。通常はこれでも十分なスペックです。
また、同じ8bit出力でも内部で10bitや12bitで処理して滑らかな8bitを出力するといった機構を備えているものもあります。12bit LUTとか14bit 3D LUTといった表記があるものがそれ。このようなモデルではより滑らかで破綻のないグラデーションが期待できます。より高機能なモニターでは16bit LUTが使用されていることもあります。
また、一部の上位機種では10bitの出力に対応したモデルも存在します。10bitは1024階調ですから、1024^3 = 約10億色という途方もない数の色で写真を表現できるためより緻細なグラデーション表現が可能です。
(ただしこれを生かすにはPC側の出力およびアプリケーションが10bit出力に対応している必要がある点に注意。)
色の幅が広がるわけではない
たまに誤解している人がいますが、10bit表示では表現できる色の数は飛躍的に増えますが、色の幅が広がるわけではありません。
例えば白から黒へのグラデーションを表現するのに、8bitでは256段階のグラデーションで表現しますが、10bitなら同じ白から黒を1024段階のなめらかなグラデーションで表現できるということ。10bitだけでより明るい白やより暗い黒を表現できると言うわけではないことに注意しましょう。
9.ユニフォーミティ補正(ムラ補正)
モニターは面ですので、通常は画面の中で僅かに明るさの違いが生じます。よほど厳密な作業をしなければさほど気になることはないと思いますが、より厳密に色を評価するなら画面内のすべてをおなじ明るさや色に統一する必要がありますね。
この機能が付いていると画面全体がシャキッと気持ちよく見えるようになります。
一部高級機種に限られる
一部のプロ向け高級機種では画面内のムラを一定に保つための機能が搭載されているものもあります。最高の環境を作りたい場合は考慮してみましょう。
かつてはプロ向けモニター最上位機種にしかつかないような機能でしたが、最近では少し廉価なモデルにも搭載されつつありかつてより導入のハードルは低くなりました(と言っても数万円クラスのモニターには付きません。。)
10.独自機能
液晶モニターの機能をぜんぶ上げるとキリがないですが、例えばそのメーカーに独自の機能がある場合もあります。
例えばBenQ(ベンキュー)のフリッカーフリー機能とか。液晶モニターはバックライトを高速に点滅させながら画面の輝度を調整しているものが多く、特にバックライトがLEDのモニターで輝度を落として使っていると(バックライトOFF時間が長い)画面のチラツキ(フリッカー)を感じる場合があります。
ところがBenQのフリッカーフリー搭載モデルはバックライトを常時ONの状態で輝度調整ができるためフリッカーが存在せず長時間使っていても目が疲れにくいといった特徴があるんですね。そんな感じで各メーカーで独自の機能がある場合はそれも検討材料の一つにしてみるのも良いかと思います。
11.(追加)USB TypeC対応
画質に直接影響するわけではありませんが、最近はUSB TypeCケーブル1本で映像、データ、給電のすべてを行えるモニターも出ています。Macbookなど最近のノートPCはUSB TypeCで映像出力することが多くなってきていますので、変換ケーブルを使わず直接接続できるとめちゃラクチンです。
モニターからPCへ給電もしてくれるのでACアダプターを繋ぐ必要も無いし。ノートPC使っている人はぜひチェックを!
12.(追加)HDR対応
写真編集を考えるなら現状ほぼ必要無いですが、映像編集では一部HDR動画の編集が始まっています。しっかりHDR編集したければ2020年現在でも数十万レベルの超高級モニターが必要になりますが、観賞用としてHDR対応したものを持っておくと良いかも知れません。
HDRを理由にモニターを選ぶ必要はまだ無いと思いますが(写真編集用途として)、無いよりはあった方が楽しいですよ。
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というわけで、写真を楽しむために必要な液晶モニター選びのポイントを10(+2)個ピックアップしてみました。
後半の機能は上級者向けモニターに限られるもの多いですがぜひこの辺りを念頭にモニター選びをしてみましょう。
レベル別オススメスペック
これまでモニターの「機能」に絞ってポイントを紹介してみましたが、「じゃぁ具体的なモニターは?」ってなりますよね。
そこでここではあなたのレベルに応じたおすすめのモニターのスペックや機種をいくつか紹介してみようと思います。
エントリー向け
そこまで厳密に色にはこだわらないけど、今使っているノートPCの色がどうもおかしいとか、使っているモニターが5年や10年選手で買い換えたいとかそんな方におすすめなスペックはこちら。
- 24インチ / FullHD(1920x1080)
- IPS液晶
- ノングレア
10個もポイントがあったのに「えっ、これだけ?」って感じもしますが、最低限ここを抑えておけば大外しはしません(笑)
これだけでも一般的なノートPCのモニターよりもずっと高機能なはずです。予算的には1~2万円と言ったところで様々なメーカーから類似スペックのものが多数出ているはずです。このクラスなら価格とデザインで決めてしまっても良いでしょう。
例えばAmazonをざっと見渡してみるとこんなのとか。数年前と比べてIPSパネルのモニターはずいぶんと安くなりましたね。。
【Amazon.co.jp限定】ASUS フレームレス モニター 23.8インチ IPS 薄さ7mmのウルトラスリム ブルーライト軽...
BenQ モニター ディスプレイ GW2480 23.8インチ/フルHD/IPS/輝度自動調整(B.I.)搭載/ウルトラスリムベゼル/...
まぁ、この辺の価格帯は上記スペックを満たしていればあまりこだわらなくても大丈夫です^^
中級者向け
写真を趣味にしていて、PCで写真編集したりプリントもたまにするけど、そんなにモニターにお金はかけられないなぁという方向けのスペックです。
- 24インチ / FullHD(1920x1080)
- または、27インチ / WQHD(2560x1440)
- IPS液晶
- ノングレア
- 出荷時キャリブレーション済み
ポイントは出荷時にキャリブレーションされているかどうか。他はエントリー向けと同じです。もう少し背伸びをするなら27インチ / WQHD(2560x1440)を選択しても良いでしょう。とても快適になりますよ!
予算的には3~4万円くらい(24インチの場合)です。このあたりの価格帯だとsRGBをほぼほぼカバーして、一部超えてくるような良いモニターになってきます。
最低限、出荷時にキャリブレーションされていればそのモードを選択するかかぎり、まったく違う色を見ていた。。という事故を防げます。プリントまで考えると部屋の明かりを6500Kにしなければならないといった問題もありますが(プリントしないならあまり関係ない)、日本の蛍光灯の標準は6500Kの昼光色なので対応も楽です。
将来キャリブレーターを買ったとして、ソフトウェアキャリブレーションであればこのモデルでも大丈夫です。また、この価格帯なら出入力端子も豊富に付いていることも多いですね。
ハイアマチュア~プロ向け
自分でしっかりとRAW現像して、モニターとプリントの色合わせ(カラーマッチング)まで行いたい場合はプリンターの色域に近いところまで表示可能でかつ、モニターキャリブレーションが必須となります。そんなモデルのスペックはこんな感じです。
- 24インチ / FullHD(1920x1080)
- または、27インチ / WQHD(2560x1440)
- IPS液晶
- ノングレア
- AdobeRGB対応
- ハードウェアキャリブレーション対応
モニターをキャリブレーションしながら使うのであればやはりハードウェアキャリブレーションに対応したモデルが圧倒的に便利(別途 i1 DisplayProなど専用キャリブレーターが必要)。
モニターそのものがキャリブレーターと協調して色を調整してくれますから、モニターのパフォーマンスを引き出しやすく、運用も楽ちんです。予算的には7~12万円くらいとちょっと高め(昔と比べると考えられないくらい安いけど)
このクラスになると対象製品はグッと限られて探すのが大変ですが、例えばBenQのSW2700PTはこの条件にがっつり当てはまっています。SW240だと5万円で手に入りますね!
BenQ カラーマネジメントモニター ディスプレイ SW240 24.1インチ/1920 x1200/IPS/16:10/AdobeRGB 99%/DCI-...
プロ向け
最後はプロ向けということで、さらに上を目指すなら上記に16bit LUT、ユニフォーミティ補正を付けるくらいしか無い感じです。全部付けモニターを買うしかありません。
プロ御用達ということであればやはりEIZOのCGシリーズが鉄板ですが、最近はBenQのSW270Cなど比較的手の届きやすいモデルに16bitLUTやユニフォーミティ補正がついているモデルもあります。
ベンキュージャパン BenQ27型カラーマネジメントモニターSW270C(WQHD/IPS/AdobeRGB99%/DisplayP397%/HDR/US...
まとめ:studio9がおすすめしたいモニターはこれ!
ということで、かなり長くモニターの選び方について紹介してみました。今回この記事をまとめていて改めて感じたのは、様々な機種や機能が乱立していて普通のPCに詳しくない人は自分に合ったモニターを選ぶのが大変だね。。ということ。
今回の内容を読みながらご自分の撮影スタイルに合ったモニターを選んでみて下さいね。
で、今回の記事はモニターメーカーのBenQ(ベンキュー)さんにスポンサード頂いているわけですが、その中で私のイチオシとしてオススメしたいのはこれ!
SW2700PTです。上のハイアマチュア~プロ向けでも紹介しましたが、執筆現在Amazonで実売約7万円なのに、27インチWQHD、AdobeRGB、ハードウェアキャリブレーション、10bit対応、ついでにモニターフード(買うと1~2万する)まで付いてるんですよ。コスパいいってもんじゃありません。
追記:この記事を書いた2016年時点でSW2700PTかなりイケてるカラーマネジメントモニターでしたが、現在(2019年)はより進化したカラーマネジメントモニターがBenQから登場していますよ!(後述)
SW2700PTはアマチュアの救世主になるんじゃないか?
SW2700PTをオススメしたい理由はこれなんです。アマチュアの救世主になるんじゃないかと。(よほど厳しい環境で使わない限りプロでも十分なスペックだと思うけど)
今まで5~6万円のモニターとプロ向けの20万円クラスとの間を繋ぐこのクラスのモニターってこれと言った決定版がなかったんですよね。我慢してソフトウェアキャリブレーションであれこれいじるか、清水の舞台から降りる覚悟で20万のモニター買うかっていう選択肢しかなかったわけです。
そこで出たのが今回のSW2700PTでありまして、高画素写真も余裕で扱える27インチWQHD(2560x1440)ノングレアパネルでAdobeRGB99%カバー。滑らかな階調が出せる14bit 3D LUTがあり、信頼性が高く管理も楽なハードウェアキャリブレーション対応とアマチュアが必要な機能のほぼすべてが入っているんです。グラフィックボードが対応していれば10bit出力も可能。他メーカー含めて唯一無二的なポジションです。
買ったら1~2万するガチのモニターフードも標準で付いているあたり、写真編集やデザインするためのモニターをしっかり意識して作っているという心意気も感じます。それで実売7万円くらいですからね(執筆時)。
コスパヤバいです。
BenQ カラーマネージメントモニター ディスプレイ SW2700PT 27インチ/WQHD/IPS/DisplayPort,HDMI,DVI搭載/遮光フード付/AdobeRGB/写真編集用
SW2700PTのレビューはこちらです!
追記:BenQのモニター、どんどん進化しています
この記事を書いた2016年時点ではSW2700PTがかなり最高なカラーマネジメントモニターだったのですが、2019年現在、BenQのカラーマネジメントモニターは色々ラインナップが増えて進化しています。
SW2700PTを全方位で進化させたSW270Cなんかはもう全部入りという感じに仕上がり、10万円を切るコスパですごいです。ザッと機能を挙げると以下のような感じ。
SW270Cの詳細レビューも行っておりますので興味ある方はこちらもどうぞ!
また、貴重な27インチ、4KディスプレイのカラーマネジメントモニターSW271も使い勝手が良い感じです。
提供、取材協力:ベンキュージャパン株式会社(http://www.benq.co.jp/)