デジタルフォトアルバムとは?
皆さんはデジタルフォトアルバムをご存知でしょうか。これを使えばデジタル写真が自動で整理され、テレビやスマートフォン、パソコンなど様々な画面で写真を見ることができます。
使い方は簡単で、テレビやパソコンモニターにHDMIケーブルでつなぎ、電源をコンセントにつなぐだけです。あとは専用リモコンで操作すれば家族や友達みんなで写真を見ることができます。紙の写真アルバムでは大人数で見るには窮屈ですが、大画面テレビならそんな心配はありません。
デジタルフォトアルバムはデジタル写真、もしくはデジタル化した写真をハードディスクやメモリに保存します。それらは外付ハードディスクやクラウドストレージなどに自動でバックアップができるので、写真を誤って消してしまう危険性も少なくなります。
また、すべてのデジタルフォトアルバムにスマホやタブレット用の専用アプリがあります。各社ごとに特色がありますが、これを使うことでスマートフォンやタブレットでも写真を見ることができます。
この専用アプリを使えば、別々の人が同じ写真や同じアルバムを別々の場所で同時に見ることができます。これはデジタルならではのメリットです。
最近のデジタルカメラでは当然のように動画が撮影できますが、この動画にも対応している(一部機種は限定フォーマットのみ)ので、写真と同じように保存・表示させることができます。これもデジタルならではの利点でしょう。
前回の記事作成時点で計4社から4製品が発表されていましたが、記事発表以降にすべての製品で機能強化を含めたアップデートが行われました。そこで以降では、そんなアップデートによる変更点を踏まえつつデジタルフォトアルバムを発売日順に紹介していきます。
本記事は昨年公開した「最近話題のデジタルフォトアルバムをまとめて全部比較してみた!」の2016年改訂版です。興味ある機種が見つかった方は過去記事もご覧下さい。
バッファロー おもいでばこ
ここからは各社デジタルフォトアルバムの特徴、比較を行っていきましょう。
一番最初に紹介するのは現在発売されているデジタルフォトアルバムで最古参となるバッファロー社のおもいでばこから紹介します。
SDカードやUSB、スマートフォンから簡単に写真を取り込み、自動で整理し、それをテレビやスマートフォン、タブレットで様々な形で表示する。出来ることを挙げるとデジタル写真を取り扱うためにはごく当たり前に感じられる事ばかりですが、これらを「当たり前」にしたのがこの製品です。
おもいでばこと、後述で紹介するバックアップキットの組み合わせ
ユーザーファーストを徹底した製品づくり
この製品の長所は、ユーザーにできる限りストレスなくデジタル写真を楽しんでもらえるように設計されていることです。その象徴ともいえるのが付属のリモコンです。
携帯電話やテレビのらくらくリモコンを模したリモコンは多くの方が抵抗なく使えるように設計されているので、多くの方がほとんど説明書を読まずに使い始められます。テレビ操作の機能も最低限のものなので悩むことはありません。
写真の自動整理も「カレンダー(日付順)」「タイムライン(時間順)」「アルバム(選んだ写真)」とシンプルにわかりやすい分類となっています。
カレンダー表示画面は月表示が標準。最後に撮影した写真が初期表示される(変更可)。
タイムライン表示画面は年・月・日に時間が加わる。時間表示では、まるで写真日記のよう。
そして年数回の頻度で行われ続けているアップデートでは、ユーザーの意見を取り入れて言われなければ気が付かないような細かな改良も追加されます。このようなユーザーファーストの姿勢は先日始まったばかりの「おもいでばこアンバサダープログラム(仮)」という、ユーザーとの交流を重視したサービスにも表れています。
多機能を簡単にする様々な工夫
機能的にも、ハードディスクや無線LANルーターなど各種データ保存機器やネットワーク機器を作ってきた自社のノウハウが十分に生かされています。
他社には無い2TBの大容量モデルでは最大40万枚の写真やビデオが保存可能です(※保存枚数は写真のデータサイズによります)。無線LANルーター機能を備えているので、スマートフォンやタブレットとおもいでばこを無線LANルーターを使わず直接つないで写真やビデオを見ることができます。
データ保護にも万全の対策がされています。USB接続のハードディスクを接続しておけば電源オフ時に自動でバックアップも取得してくれますし、製品を買い替えてもバックアップしたハードディスクから各種設定をそのまま復元することができます。さらにこのバックアップについては「おもいでばこ安心バックアップキット」という専用バックアップキットまで販売しています。
最近のデジカメでは当たり前についている動画撮影についての対応も、60フレームのフルHD動画から古い形式の動画フォーマットまで幅広くカバーして多くのカメラに対応しています(※この製品を含め、全てのデジタルフォトアルバムで4K動画は非対応です)。
さらに最近ではRICOH THETAに代表される360度撮影可能なカメラの全天球写真にも対応しました。ぐるぐると写真を回して鑑賞できるなど、デジタル写真の進化に併せて進化を続けています。
写真の鑑賞は家の中のみである点に注意
このように自宅内では私の知る限り最強のデジタルフォトアルバムですが、欠点もあります。
それは写真を見られるのは家の中だけであることです。他の製品はインターネット経由で外出先から写真をスマートフォンやタブレットで見ることができるものもありますが、この製品ではフォト蔵という別会社のサービスにまず連携させて、さらにそのサービスに登録した写真しか見ることができません。
とはいえ、豊富な自動整理機能と表示機能、快適な操作性、最大40万枚という保存枚数で、写真撮影を楽しむ多くの方にまず最初にお勧めできる製品です。
トレンドマイクロ ジュエリーボックス
次に紹介するのが、2013年に発売されたトレンドマイクロ社のジュエリーボックスです。こちらの製品も商品をお借りして利用させていただいていますが、クラウド利用で家の外でも写真を見ることができる製品となっています。
ある意味、おもいでばこと対極にあるのがこの製品です。おもいでばこで出来ないことはほとんど出来ますが、逆におもいでばこでできることがかなり出来ません。
クラウド保存に特化したストレージ
この製品の最大の特徴は写真をすべてクラウドに保存して活用できることです。
保存された写真は「おもいでバックアップサービス」でインターネット上のクラウドに自動的に保存されます。このクラウドは同社が運営する有料クラウドサービス「オンラインストレージ SafeSync」と同等のものですが、これを無料で使うことができます。
クラウドに保存された写真は、スマートフォンやタブレットの専用アプリでいつでもどこでも見ることができます。しかも写真を圧縮して保存していれば通信量も抑えることができます。
カカクヤスク、簡単に
他の製品と異なり写真の保存をハードディスクではなくメモリにするため価格が安くなっています。その分容量も16GBと非常に少ないのですが、保存する写真を標準ではフルHD画質(1920×1080pixel, 約192万画素)に大きく圧縮することで最大4万枚の写真が保存できるようになっています。
また、昨年末のアップデートでオリジナル画質の保存も可能になりました。ただしオリジナルで保存した場合、私のデジタル一眼カメラ(2400万画素)の最高画質では約1000枚しか保存できません。16GBのSDカードと保存容量が同じなので当然といえば当然なのですが。
しかし、この製品はとにかく「かんたん」です。
リモコンは電源や上下左右の矢印とOKも含めてボタンはわずか7つしかありません。できる事も限られていますが、憶える手間もかからないため「かんたん」に使い始めることができます。
写真表示もタイムライン表示に限定されているため、操作を覚える必要はほとんどありません。
アプリで写真を見るためにはジュエリーボックスと直接認証を行わなければならないため、見も知らない他人に写真を見られてしまう心配もほとんどありません。クラウドはなんとなく怖いとか、セキュリティはわからない、という方にも「かんたん」に対策出来るようになっています。
写真もフルHD画質に圧縮されているため、通信量が少なく表示も速くなっています。これはスマホやテレビで見ることに割り切っているためのメリットでもあります。
セキュリティもサービスとして提供しているクラウドと同等のものであることと、セキュリティ対策の会社のサービスなので安心感があります。これは写真畑とは異なる会社だからこその利点ともいえるでしょう。
割り切りに注意すれば良い選択かも
価格も安く簡単ということでデジタルフォトアルバム初心者には魅力的に見える製品ですが、注意すべき点はあります。
まずは容量が少ない点です。保存時に圧縮しているとはいえ、写真メタボの現在では4万枚という数字は心ともないものがあります。また、圧縮しているためテレビやスマートフォンで見るのにはそれほど気になりませんが、拡大やトリミングをしたり、大きく印刷すると粗さが目立ちます。
それでも手ごろな価格でクラウドやセキュリティなど本来なら難しい機能も含めて「かんたん」に使えるため、デジタルフォトアルバムの世界を体験できる入門用デジタルフォトアルバムと言えるでしょう。
富士フィルム ワンダーフォトボックス
昨年7月に発売された富士フィルム社のワンダーフォトボックスは、おもいでばことジュエリーボックス、さらに同社のwebサービスと店頭にあるプリント機の機能を全部取りしたようなよくばりな製品となっています。
左が初期、右が現在発売されているパッケージ。中身は変わらず、ネット経由で最新版にできる。
あれもこれも全部入り
機能の多彩さではデジタルフォトアルバムの中でこの製品がナンバーワンです。
保存した写真は被写体・人物・フォルダ画面で「Image Organizer」によって人物や風景などの項目に自動的に分類されます。自分でもアルバムを用意して、自分なりに写真を分類することもできます。
googleマップを利用した地図画面では、ジオタグと呼ばれる位置情報の付いた写真を世界地図のその場所に表示してくれます。
そして他社との最大の違いが、同社のプリントサービスとの連携でしょう。写真の印刷はもちろん、使う写真やレイアウトを仮想で何パターンも試してから注文できるフォトブックなどを直接注文することができます。パソコンなどから注文したことのある人なら、申し込みのしやすさにびっくりするでしょう。
このような仮想フォトブックが簡単に作れ、そのまま注文もできる(要設定)。
写真もしっかり保存
保存についても問題ありません。1TBのハードディスクを内蔵し、写真を最大15万枚保存できます。この保存枚数についてはおもいでばこの1TBモデルと同等ですし、「安心バックアップサービス」(一部有料)でジュエリーボックスと同じように同社のクラウドサービスに写真が定期的に保存されます。USBハードディスクにバックアップを取ることもできます。
多機能だからこその問題も?
このように出来ることや性能を見ると死角が見あたらない製品ですが、気になる点があります。
まず、たくさんの機能があるということはそれだけ操作で覚えることも増えることになります。実際に使ってみると、機能ごとにメニューでまとめられていてもそもそもメニューが多すぎたり階層が深かったりするため、それを憶えるのが大変です。
リモコンは過去に発売していたフォトフレームのものに似たものですが、十字キーとOK・戻るボタンはAndroidをベースにした機能の操作は難しいものがあります。
その対策として有線マウスも付属していますが、ケーブル長が1mしか無いのでテレビからの距離が取れないので、せっかく大画面に写真を写しても快適に見られないのです。
今年4月の大規模アップデートで挙動も大幅に改善されましたが、頻繁に行われるアップデートでのチューニングやハード変更がされた前の2機種と比べるとまだまだ改善の余地があります。引き続きアップデートの予定はあるようなので、今後も継続して改善を望みたいところです。
クラウドについても無料で利用できるのは2GBと全体の保存容量の2%なので厳選して保存するか、有料のサービスを申し込む必要があるでしょう。ただし~50GBで月額400、完全バックアップができる1TBでは月額3,500とかなり高額になっています。
それでもパソコンいらずで多彩な機能が使えるこの製品は、写真の印刷やフォトブックを楽しむ方にはお勧めできる一台です。
Canon コネクトステーション CS100
最後に、昨年8月発売されたCanon コネクトステーション CS100です。
Canon愛好家におすすめ?
この製品は写真関連機器を幅広く揃えるCanonならではの製品となっています、
自社製品のデジタルカメラやビデオだけでなく、プリンタとも連携してWi-Fi経由で接続して写真を取り込んだり、印刷して楽しむことができます。さらにRAWと呼ばれる未加工の写真データにも唯一対応しています。
動作速度は当初からかなりスムーズでしたが、今年のアップデートでほとんどストレスを感じなくなりました。
真っ黒だった背景も透かしで画像を表示することが出来るようになり、味気なかった印象が大きく改善されています。
先進機能も積極的に採用
先進機能の採用という点ではこの製品が一歩リードしています。
お財布ケータイやSuicaに使われているNFCという機能を使い、2015年以降に発売された同社製のNFCとWi-Fiを搭載したカメラからは、本体の上にカメラを置くだけでNFCとWi-Fiを使って無線で写真を取り込むことができます。
大きな制限があったスマホ連携も、アップデートと同時にスマホアプリが提供され写真を見たり取り込みをすることが出来るようになりました。
これによりママのデジカメやスマホ、パパのデジイチ、ビデオまでケーブルレスですべて取り込み出来るようになりました。
コンパクトフラッシュが使える
かつてのCanon製カメラや現在でも上級機に用いられているコンパクトフラッシュ(CF)にも唯一対応している点はキヤノンのカメラを使っている人にとって嬉しいポイントです。
制約の多さには注意が必要
先進機能や自社製品の幅広さは、長所でもあり短所でもあります。
まず、機能を全て活用するためには2015年以降に発売されたCanon製の対応機器をそろえる必要があります。
例えばNFCとWi-Fiを使った無線での写真取り込みは機種が限定されていますし、プリンタもCanon製のものにしか対応していません。
最新の、しかもNFC+Wi-Fi対応のカメラしか対応していない。(画像はPowerShot SX620 HS)
RAWデータもCanonのカメラ限定(※)の対応です。
(※RAWデータの拡張子が「CR2」となるカメラ)
カメラ以外からの写真取り込みが難しい
USB接続やSDカードからではデジタルカメラの写真保存フォルダの写真しか読み込まないためパソコンに元々ある写真を移動させるのは難しくなっています。これは強く改善を望む点です。
様々な制約がありますが、Canon製のカメラやプリンタで揃えている方、もしくはこれから揃える予定がある方なら購入候補に挙がる一台でしょう。
タイプ別おすすめ機種
最後に、それぞれの機種についてどんな方にお勧めできるのかをまとめました。
誰にでもおすすめ出来る一台
まず、今年も全ての方に最初にお勧めするのはおもいでばこです。デジタルフォトアルバムとしての基礎を磨き続けたこの製品の使い勝手の良さは、相変わらず業界の王者と言えるでしょう。
ただし屋外では見ることができないので、ジュエリーボックスやGoogleフォトなどのクラウドを利用したものと併用することをお勧めします。
いつでも手軽に写真を見たい人向け
家の中だけでなく外出先でも写真をみたり、遠く離れた両親や親族と写真を共有する方には条件付きでジュエリーボックスをお勧めします。
パソコンに詳しい方にはgoogleフォトのほうが便利ではないか?と言われそうですが、面倒な設定をせずに誰でも簡単・安全に写真共有の設定できるこの製品は、たとえ小さなお子さんでもすぐに取り込みと表示ができる点に着目すべきです。
ちなみに条件とは、オリジナルの写真を別途保存することです。おもいでばこと組み合わせることで、現段階で私が考える最強のデジタルフォトアルバム体制となります。
プリントやフォトブックを良く造る人向け
デジタル写真をお店プリントして写真立てに入れて飾ったり、フォトブックにして楽しむ事が多い方にはワンダーフォトボックスがお勧めです。
写真を保存してそのままネット経由で写真プリントやフォトブックの注文ができるこの製品は、パソコンで四苦八苦しながら注文していた人ならば快適に作成・注文できることに驚くでしょう。
この製品はパソコン用のUSB無線マウスを使えば操作性が飛躍的に向上します。こちらの製品を使う際にはぜひ併せてお使いください。
最新のCanon製製品で揃えている方
カメラやプリンタを最新のCanon製品で揃えている方ならCS100がお勧めです。
今年のバージョンアップでスマホアプリも提供され、スマホで撮影した日常写真の保存も簡単に行えるようになりましたし、普段RAW形式で写真を撮影する方ならCS100一択となります(※CanonのRAW形式のみ対応)。
なお、Canon製の古いカメラでも私の手元にあった2006年製のCanon IXY 900ISを認識しましたので、非公式ながら自社製品はできる限り動作検証しているようです(※ただし動画はAVCHD形式ではないため取込みできませんでした)。
まとめ
以上、現在発売されている4社4機種のデジタルフォトアルバムの比較と検証をしてみました。
写真を見るだけなら手元のスマートフォンでも十分キレイに表示できる時代になりましたが、大勢で観賞する、大画面で見る、大量の写真を快適に管理する、バックアップをとって安全に管理する という点ではスマホ、タブレットよりデジタルフォトアルバムが優れている点が多いですね。
各社それぞれに得意分野やターゲットにしているユーザーが微妙に異なるため、自分にあったアルバムを選ぶうえでの参考になれば幸いです。