構図の工夫で視線をコントロールできるようになる!
写真を撮るといつも代わり映えのしないマンネリな写真になってしまうんだけど。。とお悩みの方は多いと思います。良い写真の要素はそれぞれですが、意外と多くの人が気付いていない大事な要素が「視線の誘導」です。
上手な人の写真というのは見る人の視線を自然に誘導して、見せたい部分をしっかり見せたり、画面全体を意味のある空間に仕上げている事が多いから。そんな話を前回のエントリーで話題にしてみました。「被写体の向き」を考えて撮ると視線の誘導を作りやすくておすすめだよという話です。見てない方は以下の記事をお先にどうぞ!
上の記事では「被写体の向き」を考えましょう!という超基本的な話しかしませんでしたが、それ以外にも見る人の視線をコントロールするテクニックがあります。そこで今回は誰でも簡単に視線誘導ができる写真の撮り方、考え方を3つ紹介してみます。一眼カメラでもスマホのカメラでも何も準備することなく明日にもできるテクニックですよ!
「線」で流れを作る
3つのテクニックのうち一番簡単なのが「線」で流れを作ると言うことです。前回エントリーの「被写体の向き」と同じような考え方ですね。写真の中に何かしら「線(ライン)」となるものを入れて視線の流れを補助してあげることです。例えばこんな感じ。
夕焼けの砂浜を撮ったのですが、奥にいる二人のシルエットがアクセントの写真です。二人を目立たそうとしてズームしてしまうと風景の広がりが死んでしまうので、手前の波を斜めに配置して「線」を作成。
その延長線上に見せたいアクセントの二人や太陽を配置する事で見る人の目線が自然と対角線上に動くようにしてみました。
街中にある何気ない線に着目する
上の写真は刻々と姿を変える波で線を作ったのでちょっと難しいですが、もっとシンプルに街中の線を使ってみるのもいいです。こんな感じとか。できれば画面をナナメに横断するような大胆な線が良いですね。
ただ歩いている人の足下を撮っただけですが、歩道の模様を使って線を作成。こうなると見る人は無意識にこの線上に視線が動くはず。
もっと簡単に撮りたいなら道路を使うのが良いです。広角レンズで道路脇から奥の方を目指して撮ると必ず線ができます。ついでに周りの建物や街路樹も遠近法(パースペクティブ)によってナナメになって線が出来ますよね。見る人は奥に吸い込まれるように視線が動くはずです。
これは狙って線を作るというよりは、広角レンズで撮れば必ずこうなる。という感じのものですが、こうやって画面の中に強い線を作れば見る人の視線は動きやすいのです。ちなみに、この線の収束する先(消失点)は三分割構図を意識して配置してあげる気持ちよく収まります。
構図の本を見るとよく「放射線構図」とか書いているやつです。「視線を動かすために線を作る」と意識すればたくさんの構図の型を覚える必要はなくなってきます。シンプルな考え方の組み合わせでOKなのです。
広角レンズのパースペクティブについてもっとよく知りたい人は次の記事もおすすめです!
被写体を並べて線を作る
線の意識が出てくれば道路のような普通の線を意識しなくてもOKです。例えば複数並んだ被写体をひとまとめにして「線のようにみせる」というやり方もアリ。
コスモスの花の先を直線に揃うようにアングルを決めて線のようにしてみました。こうすれば写真に奥行きが出てきます。次の写真の様に線が揃ってないとなんだかシックリきません。。
心理的なラインとして考えることもできる
さらに、花の先に線という心理的な障害を作る事でその障害を打ち破るように青空に向かってコスモスが伸びていくというような躍動感みたいな印象を付ける事もできました。
大きな線に対して、直行するようなもう一つの線を作ると写真に持たせられる意味がより大きくなっていきます。
このように画面の中に(ナナメの)線を作ると良いよというのは以前、基本の4構図の中で紹介した対角構図と同じ考えです。画面の中に斜めの線を作ると見る人の視点を動かしやすいのです。
曲がっていてもいいよ!
今までは直線ばかり紹介しましたが線っぽいものなら曲がっていてもOKです。こんな感じでC字とか。
くねくねのS字を使うのもおすすめです。
道路や川の流れはキレイな曲線も多いので結構使えます。
それぞれ「C字構図」とか「S字構図」なんて言われますがこれも「線を視線誘導の補助に使う」と考えればOK。たくさんの型を暗記する必要はありません。
線は日常の至る所に見ることができるので、カメラを持っていないときでも日々の生活の中で「線」を意識してみると構図力がアップするはずです。
「壁」でブロックする
続いては「壁」です。上のコスモスの写真で線を「心理的なライン」と紹介しましたが、壁というのはこれをより強力にしたものだと思えばOKです。こんなイメージです。
車窓から見える人々を撮る時、あえて電車がしっかり入るように入れてみました。電車自体は圧縮されていて情報量はあまりないので一見スペースの無駄遣いのようにも感じますが、この無機質で重厚な電車で画面右側を塞ぐことで、右方向への視線を強力にブロック。視線は強制的に左側の人々に集めることが出来ます。
画面の広さを確保しながら見せる範囲を限定する
視線をブロックするくらいなら画面に壁を入れずにアップで撮ったり、ずらして撮ったりした方が良いのでは?と思う人もいると思いますが、そうすると広がりがなく窮屈に感じたり、逆に間延びしてしまうこともあるのですね(もちろんそれで成立することもあるけど)。視線をブロックする壁を作れば写真に広がりや何かしらの意味を持たせつつ、見せる範囲を限定することが出来ます。
例えば上の写真の人物部分をアップで撮るとこんな感じになります(トリミングしただけ)。とってもイマイチですよね。
また、カメラを横にずらして壁がない状態で撮るとこんな感じでやや間延びした感じに見えてしまいます。左側のスペースをなにか工夫しないとイマイチです。
影を壁に使うのもおすすめ
乗り物や建物、自然の大木や岩などあからさまな壁を使うのが一番簡単ですが、影を使うのも良いです。影は暗いので画面の明暗差で視線をブロックできます。
ブロックされる視線方向と人が歩く方向も一致しています。前回紹介した「視線の先に大きなスペースを空ける」のセオリーでいうと人物はもっと左に配置した方が良いシーンですが、左側に重厚な「影の壁」があるので違和感がありません。
なんともない街中の1シーンも、影を使って画面を大きく分断すると視線のブロック効果でメリハリが出せます。
前ボケで視線を押し出す
続いては前ボケを使った例。奥にピントを合わせて手前を大きくボカす前ボケを使って、強制的に視線を奥に追いやります。前ボケを使う場合はブロックするというよりは「追い出す」というイメージが強いです(次のパートにも関係する)。
上の写真は手前に大きな前ボケの壁を作って、奥にある赤い花に視線を集めます。「ボケとシャープ」という対比だけでなく、緑と赤という「色の対比」と「明暗差」も使って壁を強化しています。
前ボケの場合は物理的な壁や影よりもブロック力が弱いので、色の対比や明暗差も活用してあげるのがいいですね。
このチューリップの写真も「ボケとシャープ」「色の対比」「明暗差」を使って壁を作っていますが、視線的には完全に跳ね返されるというよりは手前から奥に視線が流れていったあとに釘付けになって帰って来られないというようなイメージでしょうか。
「囲い」で追い出す
最後は被写体の周りを囲ってしまって視線を強制的に追い出してしまう方法。「額縁構図」と言ったりもします。壁を使った視線誘導の応用版という感じですね。ブロックではなく、強制的に視線を押し出して1点に釘付けにします。例えばこんな感じ。
画面の上下左右にガッチリと壁を作る事で視線を中央に強制します。全集中の写真です(笑)
これは上下左右を囲ってしまうことから大抵は日の丸構図の写真になります。日の丸構図は中央に視点に集めるのが意外と難しく、それが「日の丸写真は避けた方が良い」と言われる理由の一つなのですが、囲って視線を強制誘導させることで日の丸構図との相性が良くなります。
花壇で写真を撮るならこんな感じで前ボケから覗くようなポイントを探してみるのもいいでしょう。これは四隅をブロックしているパターン。
シーンによっては3方を囲うというやり方もアリです。
この場合は下が地面で視線の逃げ場がないので三方でも中央に追い出されますね。
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4辺を囲うというのはこの条件を見つけるのが大変ではありますが、見つけることさえ出来れば強烈なインパクトを残せる写真になるのでぜひ挑戦してみて下さい!
まとめ:写真の中に視線を動かす仕掛けを入れ込むのだ!
ということで写真を見る人の視線を動かすための3つのテクニックについて紹介してみました。おさらいすると写真に動きを出すには、
- 1.「線」で流れを作る
- 2.「壁」でブロックする
- 3.「囲い」で追い出す
の3つの仕掛けを写真に入れ込むこと。
視線を動かす方法はこれだけではありませんし、動かせばかならず良い写真になるというわけではないのですが、マンネリした写真に悩んでいる人には良いスパイスになるのは間違いありません。
これはテクニックとして覚えるよりも、こういう工夫の仕方があるんだなぁという「考え方」として身につけられると良いかと思います。この考え方が身につけばたとえカメラを持っていない時でも、街を歩きながら日常生活の中で線や壁や囲いが脳内に浮かんでくるはずです。
さぁ、明日から目の前の世界が違って見えてくるはずですよ!
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