4K、8K時代に適したSSDを使おう
最近のカメラは4Kや8Kといった超高ビットレートの動画を簡単に撮れるようになってきました。例えば20年7月に発売されたキヤノンEOS R5の8K RAW動画は約325MB/s(2600Mbps)でファイルを生成し、10分撮影しただけで約200GBというとんでもないサイズになります。
こういう100GBクラスの動画ファイルや4,000万画素オーバーの大量のRAWデータを扱うならそのストレージは高速な大容量SSD(もしくはRAID構成のHDD、10GbEのNAS)にするのが最適でしょう。普通のHDDで作業したら日が暮れてしまいます。動画の場合は遅くて編集すらできないという事態になる可能性もあります。
そんなわけで今回はPCI Express3.0に対応した超高速SSD、WD_BLACK AN1500 2TBのレビューをしてみます。このSSDの真骨頂はリード6,500MB/s、ライト4,400MB/sというトップスピードとキャッシュ切れでもライト3,000MB/s維持する持久力。ヘビーな処理を日々行うエンスージアスト向けのSSDなのです。
ヘビーな動画編集用作業ドライブとして最適だと思いますよ!
*この記事はWestern Digitalさん提供です
現在のSSDの状況について
まずはSSDを取り巻く状況と動画や写真の保存先をSSDにするメリット、デメリットについて簡単にまとめてみます。PC系のメディアではないので初心者向けにかなりざっくりな内容です。知っている方は次まで飛ばしてくださいね。
SATAとNVMe
これからSSDを選ぼうと考えている人は、パソコンとSSDの接続規格をチェックしておきましょう。普通の人が使うSSDには「SATA(サタ)」と「NVMe(エヌブイエムイー)」の2タイプある事を覚えておく必要があります。
*SATAと対にするならPCI Express、NVMeと対にするならAHCIの方が適当だと思うけど細かいことは気にしないことにする。。
HDDにも使われているSATA
昔からある2.5インチタイプのSSDの接続に使われている規格はほぼSATA(SATA III)です。理論上の最大転送速度が6Gbps(750MB/s)の規格で、実効転送速度は最大500~600MB/sといったところ。数年前までSSDと言えばこの2.5インチタイプのSATA接続SSDの事でしたね。これはHDDにも使われている規格です。
SATA(というかその通信プロトコルのAHCI)はHDDに最適化されているのでHDDの転送速度を考えると十分すぎるスピードを持つ規格なのですが、最近はSSDの性能向上がめざましく、SATAの上限速度がSSDのボトルネックとなってしまいました。。
カメラのメモリーカードで言えばCFastカードは接続規格にSATA IIIを使ってたりします(だから上限速度が存在して負けた)。
超高速なNVMe
そこでSSDの速度を目一杯引き出すために最近よく目にするようになってきたのがNVMeという通信プロトコル。フラッシュメモリに最適化した方式でSSDの性能を引き出しやすくなっているだけでなく、PCI Expressという接続規格を使っているのが特徴。
PCI Expressはグラフィックボードなどむちゃくちゃ大量のデータ通信をする時に使われている規格で、SATAとは異次元の速度を発揮します。現在主流なのはPCI Express3.0(1レーンあたり約1GB/s)で、最新のモデルではPCI Express4.0(1レーンあたり2GB/s)という速さ。通常は4レーン(x4)や8レーン(x8)を束ねて使うのでめちゃんこ速いですよね。
2020年現在、PCI Expressは6.0まで規格が策定されています。PCI Express6.0の1レーンあたりの速度は8GB/sです。ヤバい
PCI Express3.0のx8(8レーン)なら理論上の最大転送速度は8GB/sになります。SATAの10倍以上です。
NVMeは通信プロトコル(データやりとりの約束事)をSSDに最適化させているだけでなく、接続にPCI Expressを使っているので超速いってわけですね。SATAとNVMeのSSDは実際の所どのくらい速度が違うかというと、軽くベンチマーク走らせただけでこんなに違います。
同じSSDでも昔ながらのSATA SSDと最新のNVMe SSDでは性能が10倍以上違うんですね。
なお、カメラの次世代メモリーカードとして採用が進むCFexpressはNVMeのプロトコルを使い、接続インターフェイスはPCI Express3.0です。だから超速いの。ナウい設計のメモリーカードなのです。
紛らわしいM.2
NVMeのSSDに関連してよく目にするのが「M.2(エムドットツー)」というやつ。「M.2のSSDは速い!」と思っている人がいるかも知れませんがそれはちょっと意味が違います。
M.2というのは接続端子の規格のこと。もっとざっくりいえばあの端子の形状をM.2というので速度とは関係ないんですね。USB TypeCみたいなもんです(速いUSB TypeCもあるし、遅いやつもあるよね)。
M.2にもSATAとNVMeがある
ですからM.2にもSATAタイプとNVMeタイプの2種類があるのはしっかり覚えておきましょう。買う時は「SATA」か「NVMe」かを事前にしっかり確認しておくことが大事(もちろんマザーボード側も確認)。
例えば同じWestern DigitalのBlueシリーズでもSATAタイプとNVMeタイプのM.2 SSDがあります
Western Digital SSD 1TB WD Blue SN550 PC M.2-2280 NVMe WDS100T2B0C-EC 【国内正規代理店品】
昔と比べると価格差は縮まりましたが、SATAタイプの方がちょっとお買い得ですね。
最高性能を体感したいならNVMe一択!
ということで現在、最高のストレージ性能を得たいのなら使うSSDはNVMeタイプを使うのが良いです。性能が圧倒的だから。NVMeタイプのSSDの中でもグレードや性能が大きく分かれていて、TLCとかキャッシュとかいろんな要素が絡んでくるのですが、このあたりをまとめだすと何の記事か分からなくなってしまうのでこのあとのレビュー中に解説を挟んでいこうと思います。
もちろん、SATAタイプのSSDにもメリットはあって、最大のメリットは価格の安さです。遅いといってもHDDに比べれば圧倒的に速いわけで、普段使いなら十分すぎる性能を持っています。行う作業に応じて最適なストレージを組み合わせて使うというのが大事ですね。
WD_BLACK AN1500とは何者なのか
かなり前置きが長くなってしまいましたがここからが本編。WD_BLACK AN1500の詳しいレビューを行っていきましょう。
上で説明したSSDの分類でいうと、WD_BLACK AN1500はPCI Express3.0を利用したNVMeタイプのSSDです。だからめちゃ速い。でも形状がよく見るNVMeのものではなく、グラフィックボードのようにPCのPCIスロットに直接挿すタイプの形状になっているんです。
なぜかというと、WD_BLACK AN1500の中にはM.2のNVMe SSDが2本装着されており、それをRAID0にして並列接続しているのですね。つまり、普通の超速いNVMe SSDの2倍の速度を実現しているというスーパーなストレージです。
*RAID0というのはストレージを2本束ねて速度を2倍にする方式(ザックリ言えば
使用する時は特にドライバなど必要無く、スロットに挿すだけでOK。OSのブートドライブとして使う事もできます。容量は1TB、2TB、4TBをラインナップ中。
PCI Express4.0に迫る性能
2020年現在、AMDのRyzen 3000番や5000番のCPUでは既に次世代のPCI Express4.0(PCIe4.0)に対応しており、NVMe SSDにもPCIe4.0に対応しためちゃ速いやつが登場しています。Intelも2021年の第11世代Coreプロセッサ(Rocket Lake)ではPCIe4.0に対応する予定。
PCIe4.0の帯域はPCIe3.0の2倍になっていますが、WD_BLACK AN1500は2つのPCIe3.0のNVMe SSDを2本並列しているので、最新のPCIe4.0対応SSDに迫る性能を叩き出します。
公称のリード6500MB/s、ライト4100MB/sを上回る結果が出ました。
IntelのPCでも超高速性能を体感出来る
一部の製品を除いて、現在IntelのCPUを使っているPCのマザーボードはPCI Express3.0までしか使えないので、PCIe4.0の最高性能を体感することはできませんが、WD_BLACK AN1500ならIntel PCでもPCIe4.0級のスピードで作業することができるのです。
これはかなり大きなメリットだと思います。
AN1500の最大の特徴は速度が落ちないこと
じゃぁ、すでにRyzenシリーズのCPUを使っていてPCがPCI Express4.0に対応しているのなら、わざわざデカいWD_BLACK AN1500を使わずにPCIe4.0対応のNVMe SSDを使うのがスマートだし良いんじゃない?と思いますよね。私もこのレビューを始める前はそう思ってました。
確かに、2020年12月現在の最高性能をもつPCIe4.0対応のNVMe SSDはベンチマーク的にWD_BLACK AN1500の性能を上回っているワケですが、これがよくある落とし穴。利用シーンによってはPCI Express3.0のWD_BLACK AN1500の方が優れた性能を発揮することがあるのです。
ポイントはSLCキャッシュです。
SSDの転送速度をブーストさせるヒミツ
NVMe SSDはリード3,000MB/s、ライト2,000MB/sを超えるものが普通に存在しますが、その数値の多くはSLCキャッシュという技術を使って速度をブーストさせている結果で、内部のフラッシュメモリの潜在的な速度はその半分以下になる場合が割とよくあるのです。
TLCメモリーはあまり速くない
現在のフラッシュメモリの主流になっているのは1つのセルにデータを3つ格納するTLC(Triple Level Cell)という方式です。1カ所にデータを3つ入れられるので少ないメモリで大量のデータを保管できるのでコスパが良いのですね。
一方で、1カ所にたくさんのデータを詰め込んでいるので特に書込み(write)速度が犠牲になってしまいます。TLCメモリーも世代が進むにつれ性能は向上していますが、その書込み速度は1,000MB/s程度。最新ものもでも2,000MB/s程度なんですね。
その遅いTLCメモリーを高速化させるのがSLC(Single Level Cell)メモリーによるキャッシュです。1つのセルに1つしかデータを入れないSLCはコスパは悪いですが、書込み速度はめちゃくちゃ速いので、SSDの多くはTLCメモリーの一部をSLCとして使い、入ってきたデータは一旦めちゃ速いSLCに格納して、あとでTLC部分に再配置するという運用をしてブーストさせているのです。
勘の良い方ならお気づきかと思いますが、どんなに速いSSDでもこのSLCキャッシュの容量を超えてしまうようなデータを扱う場合はメモリーの性能がガクッと落ちてしまうんですね。廉価版SSDに使われるQLC(quad Level Cell、1つのセルに4つのデータ)の場合はさらにキャッシュ切れの影響が顕著で、書込み速度がHDDより遅い50MB/sなどに急激に落ち込んでしまう場合もあるのです。
RAID0のAN1500ならキャッシュ切れでも安心
2本のSSDを並列で繋ぐWD_BLACK AN1500の場合も例外ではなく、あらかじめ用意されているキャッシュを使い果たすと速度が落ちてしまうのですが、速度が低下したとしても2倍の速度になりますのでスゴく速いのです。
後のベンチマークの所で詳しく紹介しますが、一般的なNVMe SSDではキャッシュ切れの後は書き込み1,000MB/s程度、最新のPCIe4.0対応フラッグシップモデルでも2,000MB/s程度に低下する中、WD_BLACK AN1500は3,000MB/sを維持するのだからすごい。
SLCキャッシュの量は残り容量に応じて可変するタイプのSSDが多いため、はじめは速くても、使ってるうちにだんだん遅くなる。。という現象が起きたりしますがWD_BLACK AN1500なら大丈夫なのです。
WD_BLACK AN1500のベンチマーク
WD_BLACK AN1500の概要を紹介したところで、ここからはもう少し詳しいベンチマーク結果と実際の使用感について紹介してみようと思います。
測定条件
WD_BLACK AN1500のほか、比較対象として現在M.2 NVMe SSDで最速クラスのWestern Digital WD_BLACK SN850、Samsung 980PRO(いずれもPCIe4.0対応)の2つを使いました。使用するPCは私が普段作業用に使っているマシンを使っています。ベンチマーク用のクリーンな環境ではなく、普段使っている常駐アプリなんかも動いているPCなのでより現実に近い値が出ていると思います(笑)
PCの構成
- CPU:Ryzen9 3900X
- MB:ASUS ROG Strix X570-E Gaming
- メモリー:G.Skill F4-3600C18D-32GTZN(16GBx4)
- グラフィックボード:ASUS ROG-STRIX-RTX2070S-O8G-GAMING
また、今回はスロットによる性能差が生じることを防ぐため、M.2変換アダプタを使いすべて同じPCI Expressスロットにて比較を行いました。変換アダプタはAquacomputer kryoM.2 PCIe 3.0 x4 Adapter for M.2を使用。
CrystalDiscMark
まずは定番のCrystalDiscMarkから。執筆時最新の8.0.0aを使っています。
テストサイズ8GBの結果です。左からWD_BLACK AN1500、WD_BLACK SN850、980PRO。
SN850、980PROは最新のPCIe4.0対応SSDですが、PCI3.0対応のWD_BLACK AN1500もかなり良い勝負していることがおわかり頂けると思います。RAID0の効果が出ていますね。ここでのトップはWD_BLACK SN850。リード7,000越えはスゴい。。
つづいてテストサイズ64GB。
若干数値が低下しているようにも思いますがほとんど変わらないと言って良いでしょう。WD_BLACK AN1500は唯一、一番下のRND4K Q1T1の項目がほかの半分になっています。RND4K Q1T1というのはランダムな領域に小さなファイルをシングルスレッドで読み書きする性能ですので、RAIDコントローラーの振り分け速度が律速になっているのかもしれません。
ただ、動画や写真で扱うファイルは非常に大きなサイズなのでこの数値はあまり気にしなくても良いでしょう。ランダムアクセスが頻発するシステムドライブ用として使うならある程度重要だとは思います。
HD Tune Pro
つづいて大容量のファイルを連続して読み書きしたときにキャッシュの影響がどの程度出るのかHD Tune Proを使って調べてみます。使用したバージョンは5.75です。
未使用のとき(残量100%)
上でも紹介したように最近のSSDはSLCキャッシュによって速度をブーストさせており、そのキャッシュ容量をストレージ残量によって可変させているモデルが多いです。これが結構顕著だったので残り容量別に3パターン測定してみました。
WD_BLACK AN1500(2TB)
50GBのファイルを書き込んだ場合(オレンジの線)、はじめの25GBまではCrystalDiscMarkのベンチマークと同じくらの速度で書き込めていますが、ここから一段下がって3,000MB/s程度になっています。おそらくこのタイミングでキャッシュが切れてTLCメモリーにダイレクトに書き込んでいるのかと思われます。
WD_BLACK SN850(1TB)
こちらはなんと200GBのデータを書き込んでもトップスピードを維持したまま。すごい。残量がたっぷりあるとキャッシュの容量もたくさん用意されているのでしょう。書き込み速度は5,000MB/sを維持。
980PRO(1TB)の場合
980PROは搭載されているSLCキャッシュのサイズは最大114GBであると公表されています。実際に200GBのデータを書き込むと115GBくらいから急激に落ち込んで2,000MB/sを下回る結果に。公表値通りの結果となりました。初期の書き込み速度は上の二つより若干遅い4,000MB/sとなっています。
残量56%の場合
続いてストレージ残量が56%*の場合の場合についてみてみましょう。ちなみに56%に深い意味はありません。後述するファイル転送テストで使用した動画サイズがたまたま44%ぶんのサイズだったというだけです。
*テスト中はHD Tune Proが内部にテストデータ(50GBとか100GBとか)を生成しているようでしたので、実際のストレージ使用量は44%+テストデータサイズになっているのかも知れません
WD_BLACK AN1500(2TB)
結果は残量100%の時と変わりません。キャッシュ切れになった後でも3,000MB/sのライト性能を維持しています。
WD_BLACK SN850(1TB)
残量100%では200GB書き込んでも速度が落ちなかったSN850ですが、この残量だと50GB書き込み時に37GBくらいでキャッシュ切れを起こし1,000〜2,000MB/sを行ったり来たりしています。。
980PRO(1TB)
こちらは100GB書き込んでもキャッシュ切れを起こしていません。200GBのスクショを忘れてしまったのでないのですが、まだ公表されている最大キャッシュサイズに近い量が維持されている感じです。
残量16%の場合
かなり使い込んで残量が減ってきた場合の性能をみてみましょう。
WD_BLACK AN1500(2TB)
今までより若干早く速度が低下しはじめていますが、やはりキャッシュ切れの後もライト3000MB/sを維持したままです。めちゃ安定しています。
WD_BLACK SN850(1TB)
キャッシュ切れのタイミングが37GB→26GBくらいに早まりました。その後は2,000〜1,000MB/sを行ったり来たり。
980PRO(1TB)
残量56%まではかなり優秀な980PROでしたがここに来て急ブレーキ。公表されている最低キャッシュサイズの6GBで速度が急に落ちてしまいました。以後2,000MB/sを行ったり来たり。TLCで2,000MB/s維持しているのもすごいですけどね。
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ということで通常のSSDが残り容量によって大きく書き込み性能が変わるのに対し、WD_BLACK AN1500は一定のスピードを高いレベルで安定して維持していることが分かりました。
8K動画ファイルを転送したときの速度
最後に、実際のファイルを転送したときの速度について検証してみましょう。今回はEOS R5の8K RAWで撮影した実際の動画ファイルを使っています。使用したのは約2分30秒撮影した約46GBのファイルと、約20分撮影した約364GBのファイルです。デカすぎるだろ。。
これをWindowsのエクスプローラーでドラッグ&ドロップしてファイルコピーしています。コピー元の速度が律速にならないよう、元ストレージはPCIe4.0対応のNVMe SSD PG3VNFを利用しています。
46GBのファイル書き込み
まずは46GBの8K RAWファイルを転送したときのスピードを計測。このくらいのサイズだと4K 10bit記録でもあっさり突破してしまうサイズ感ですね。FullHDの10bit長回ししてもこのくらいになるでしょうか。
いずれもストレージが空っぽ(0%)の時にコピーした速度です。
AN1500 | SN850 | 980PRO | |
---|---|---|---|
46GB書き込み 0%→ | 24.7秒 | 23.4秒 | 23.6秒 |
結果としてはPCIe4.0勢が若干速いもののほぼ同じと言って良いレベル。46GBならPCIe4.0勢のSLCキャッシュ容量内に収まっていたので若干速かったのでしょう。なお、WIndowsのエクスプローラーを使ったファイルコピーの上限は2GB/sだそうで、ここが律速になってしまいました。
364GBのファイルコピー
続いて364GBの8K動画ファイルをコピーしてみました。先ほどの46GBを書き込んだ後に続けて書き込んでいくスタイルで時間を計測しています。
364GBというのは今回のすべてのSSDのキャッシュを食い尽くす容量です。使用量5%の時と44%の時からファイルコピーした時の時間を計測しています(WD_BLACK AN1500は64%からも計測)
その結果は以下のようになりました。
AN1500 | SN850 | 980PRO | |
---|---|---|---|
1回目 5%→ | 199秒 | 245秒 | 214秒 |
2回目 44%→ | 195秒 | 270秒 | 234秒 |
3回目 64%→83% | 192秒 | ー | ー |
キャッシュよりも大きなサイズのファイルを扱う場合はPCIe4.0勢を抑えてWD_BLACK AN1500が勝利。かなりの差を付けています。キャッシュが切れてしまったとしてもWindowsエクスプローラーの上限速度を上回る3,000MB/sの速度を維持しているからと言うことでしょう。
PCIe4.0勢が残り容量が少なくなる2回目に速度を落としているのに対し、WD_BLACK AN1500は残量にかかわらず一定の速度で書き込めている点も注目です。実際のファイルコピー時の様子がこちら。
序盤に若干の変動はあったものの、中盤以降はWindowsの上限いっぱいの速度を安定して維持してコピーを続けているのが分かります。残り容量にかかわらず、3回のコピーすべてで同じような結果になりました。
普通のSSDはキャッシュ切れ後に速度が低下する
SN850、980PROのファイルコピー時の様子は以下の通りです。序盤は調子がよいものの、キャッシュが切れる後半は速度が低下したり安定しない結果となりました。HD Tune Proで得られた結果と同じ傾向です。
こちらはSN850の2回目の様子です。矢印の所でキャッシュが切れてしまった様子が分かります。
980PROも同じような傾向。こちらも2回目のコピーの様子。キャッシュ切れ後もそれなりに速度を維持していますが、WD_BLACK AN1500には及びません。
---
ということで、ストレージのトップスピードを計測するCrystalDiscMarkのようなベンチマークでは最新のPCI Express4.0対応NVMe SSDがよく見えますが、大容量ファイルを頻繁に扱うような極限の用途にはPCIe3.0でもRAID構成のWD_BLACK AN1500のほうが良いパフォーマンスを発揮できる可能性が明らかになりました!
WD_BLACK AN1500を使うときの注意点など
WD_BLACK AN1500は大容量ファイルに強い!と言うことが分かったわけですが1つ注意点もあります。それはMAXスピードを得るためにはPCI Express3.0のx8で接続する必要があるということ。
x4で接続しても十分強いけど
今回私が検証したマシンではスロットに挿しただけでPCI Express3.0 x8として認識されましたが、使用するCPUやマザーボードにとっては帯域不足でx4で使わなければならない事態になる可能性があります。この辺りは事前によく調べておきましょう。
マザーボードのx4用スロットに挿入した場合は最大転送速度が約4,000MB/sに制限されます。ただし、WD_BLACK AN1500の書込み性能(Write)は最大で4,400MB/s、キャッシュ切れ後で3,000MB/sと考えればx4で接続しても大きなデメリットにはなりません。
最高性能を得たい人に撮ってはやや残念ではありますが、実用的にはWD_BLACK AN1500をPCIe3.0のx4として運用するのも十分アリかなと考えられます。
専用ユーティリティも付いてくるよ
WD_BLACK AN1500には専用の管理アプリ「WD_BLACK DASHBOARD」も用意されています。Western DigitalのWEBサイトからDLすることで、SSDの健康状態やファームウェアの更新などを行うことができます。
初期設定ではRGBイルミネーションが設定されているWD_BLACK AN1500ですが、イルミネーションなど不要だという硬派なユーザーはここからOFFにすることも可能。
このアプリではWestern Digitalと同じグループのSanDiskのSSDも管理出来るようです。普段使っているSanDiskのSATA SSDも認識されました。
まとめ:大容量ファイルを扱うなら最強のSSD
ということでWD_BLACK AN1500のレビューを行いました。
実際の動画編集をする場合であればPCの処理速度が律速となってしまい、2,000MB/sと3,000MB/sの違いは体感出来ないかも知れませんが、日々大容量ファイルを扱うエンスージアストにとってはデータの移動やコピーの負担が減るだけでも大きなメリットといえるでしょう。
また、IntelPCなどPCI Express3.0しか使えない環境では通常のNVMe SSDの性能を大きく引き離す超高速SSDとなります。
価格的にもPCI Express4.0対応のフラッグシップ級SSDと比較すると同じレベルか、2TBの大容量だとWD_BLACK AN1500の方が若干安いくらいですのでこれもメリット。4TBとなると記事執筆時点ではSN850や980PROにはラインナップされていないので唯一の選択肢となりそうです。
RAID0だと故障が心配という人もいるかも知れませんが、通常のSSDでも故障すれば復旧は困難になりますし、製品保証が5年となっている事を考えるとかなりの耐久性があるのだと思います。このあたりは上手くバックアップ体制を整えて使っていきましょう。
最高性能を求める人はぜひ検討してみると良いですよ!
Western Digital WD Black 内蔵SSD AN1500 WDS200T1X0L-EC NVMe PCIe Gen 3 x 8接続 ゲームPC 2TB 5年保証...
提供、取材協力:Western Digital