手が届くようになった4Kカラーマネジメントモニター
ここ最近、巷で「4K」というワードを良く耳にします。家電量販店に行くと4Kテレビがメインで、かつて主流だったフルハイビジョン解像度のテレビは端に追いやられている、そんな状況です。パソコン用モニターにも徐々に4Kの波は押し寄せてきており、かつて高嶺の花であった4Kモニターもかなり現実的な値段に落ち着いてきました。
ただし、色表示にこだわった広色域な4Kカラーマネジメントモニターとなると話は別で、安いものでようやく20万円を切ってきたという感じでなかなか普通の人には手を出しにくい世界でした。
そんな中、昨年SW2700PTという27インチWQHD(2560x1440)のカラーマネジメントモニターを6万円台で世に出したベンキューさんがまたも価格破壊的な4Kカラーマネジメントモニターを世に出してくれました!
それがSW2700PTの4KパワーアップバージョンになるSW271。
個人的にデスク作業では最適だと思っている27インチに4K UHD(3840x2040)解像度、AdobeRGBカバー率99%、14bit 3D LUT、ハードウェアキャリブレーション対応、10bitパネル、ターゲット色域設定可能、HDR10対応、モニターフード付属などなど、プロでも使える高い性能を有していて価格は今までの常識を打ち破る13万円台!(執筆時)。
SW2700PTに比べればずっと高価ではありますが、これだけのスペックの4Kカラーマネジメントモニターが13万円台というのはマジで凄いことなんですよ。今まで20万とか30万円が普通だった世界なので。
そんなわけで今回はBenQ SW271を徹底的にレビューしていきます!
*本記事はBenQさん提供のタイアップ記事です
*本レビューで使用しているモニターは発売前のためBenQさんからお借りしているものです
SW271の概要 - 激レアな27インチ4Kという存在
4Kのカラーマネジメントモニターのことを紹介するならば、まずは私がどれだけ27インチ4Kカラーマネジメントモニターを待ちわびていたかを紹介しなければなりません。
ちなみに、私がどうして27インチが好きなの?とか、なんで4Kが良いの?という話は前回の記事にまとめていますのでこちらの記事も一緒にお読み頂ければ幸いです。
冒頭で言ったように、普通の4Kモニターであれば現在は多くの機種が発売されており27インチの選択肢もそれなりにあります。ところが、広色域でハードウェアキャリブレーション対応の27インチ4Kモニターというジャンルは私の知る限り、今年(2017年)の7月までずっと空席のままだったのです(たぶんDellのUP2718Qがはじめてでは?)。
例えば、30~32インチクラスはすでに2014年末ごろからEIZOやNECといったカラマネモニターの大御所から発売されていたのに、使い勝手が良い27インチ4Kはなかなか出なかったのですね。私なんて日々TFT Centralで27インチ4K広色域のパネルをチェックしていたくらいに待っていたのに(笑)
そんな待ちに待った27インチ4KカラーマネジメントモニターがBenQ SW271だったわけです。(そんなに待っていたのになぜUP2718Qを買わなかったのかというと、春からα9をはじめソニーの機材を揃えていたため20万オーバーの価格に躊躇していたから...汗)
SW271の概要
まずはSW271の概要を簡単にご紹介しておきましょう。基本的な性能は私がメインで使用していた昨年発売の神ディスプレイSW2700PTを引き継ぎつつ、さらにパワーアップしているといった感じです。ざっとトピックを上げてみるとこんな感じ。
- 4K UHD解像度(3840x2160)
- AdobeRGBカバー率99%(sRGB100%)
- ハードウェアキャリブレーション対応
- 出荷時キャリブレーション済み
- ターゲット色域を選択してキャリブレーション可能
- ノングレアパネル
- USB-C接続対応
- 14bit 3D LUT
- HDR10対応
- 縦横対応の本格モニターフード付属
- ほぼベゼルレスなすっきりデザイン
- 2つの色域を同時に表示可能なGamutDuo
- 3つのモノクロモード
- OSDコントローラー付属
などなど、かなりの本格派であります。
これだけのスペックで13万円台ならバリュープライスでは?
10万超えるモニターがバリュープライスなんてどうかしてるよ!と思われる方もいるかも知れませんが、このクラスのモニターは今まで20万円オーバーが相場だったわけです。それが13万円台ですよ。
ようやく一般の人でもちょっと背伸びをすれば届く価格帯になってきたのです。
モニターって撮影してきた写真を一番しっかり見る場所であり、作品に仕上げるためのキャンバスです。自分が撮影してきたデータをできるだけ良い状態で見ながら思い通りの仕上がりに近づけたいと考えるのなら十分に検討する価値があるんじゃないかなーと思っています。
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こんな感じがSW271の概要なのですが、なんせ盛りだくさんの機能なのでこれからさらに個別の機能を掘り下げつつ紹介をしていきます。
今回も長いですよ!
SW271のデザイン、外観など
まずは開梱からご紹介していきましょう。
最初に覚悟してて欲しいのはSW271の箱がかなり大きいと言うことw これはモニターだけでなく専用のモニターフードも付いているからなのですが、同サイズのSW2700PTよりさらにデカい気がします。
で、段ボールの上面を開けるとすぐに「Indivisual Calibration Report」という黒い封筒が入ってる。SW2700PTのときより高級感ある感じ。
中を開けると出荷時キャリブレーションしたときのモニターデータシートが。もうここからして、その辺の数万円のモニターとは全然違う気合いの入り方です。
出荷時に6500Kで調整がされているため、高価なキャリブレーターがなくとも正しい色で使い始められます。もちろんメニューから色域や色温度を選択することも可能。(ただし、経年での劣化には対応出来ないためキャリブレーターは将来的にはあった方が良いです)
箱の中身はこんな感じ。一番下が本体のパネルでその他付属品の方がスペースをがっつりとっているw
本体パネルの表面は反射が少なく目が疲れにくいノングレア。左右と上のベゼルはほぼゼロのすっきりしたデザインです。下部ベゼルは約2.3センチ。ベゼルの色は黒ではなく、ナチュラルグレーというのもポイント。Photoshopの背景が真っ黒ではなくグレーのように、写真の見え方を最も邪魔しない色がグレーだということで採用されたようです。こういう所に写真愛を感じます。
背面はこんな感じ。
入力ポートはHDMI2.0x2, DisplayPort1.4x1, USBType Cと豊富です。DVI-D端子はないので注意。

左からOSDコントローラー用USB-mini、HDMI2.0、HDMI2.0、DisplayPort1.4、USB Type-C、USB3.0、ヘッドホンジャック。キャリブレーターを使う場合はここのUSB3.0とPC本体を繋ぐ必要がある(ケーブルは付属)
ケンジントンロックもあります。
側面にはUSB3.0x2とSDカードスロット。キャリブレーターなどもここに繋ぎましょう
組み立ては一人でも十分できる手軽さでした。正面からみたらこんな感じ。ミニマルですっきりした面構えです。かっちょいい。
この辺からの角度なんかもうたまらん感じですね。
裏側には移動時に嬉しい持ち手もついています。(もう片方の手で底面側も支えること)
SW2700PTの時から非常に便利だったOSDコントローラー(ホットキーパック)も健在です。これにモニター設定を登録しておけば1発でモニター設定を変えられます。SW271ではコードが長くなっているのでコントローラーを手元に引き寄せて作業できるというのも地味な改善点。
可動域など
パネルの可動域は高さが上下150mm、ティルトが-5°/20°。左右の角度調整(スウィーベル)は±45°ということで90°ぶんも動かせます。
一番下げたのが左。机面から約10センチくらいまでしか下がらないのが惜しいところ。あと数センチ下げることができたら完璧だった。普通にデスクに置く分には全く問題ないけど、モニター用の台などを使っている場合は高さに注意しましょう。
ティルトさせて並べてみるとこんな感じ。
もちろん縦にもできます。縦にして一番下まで下ろすとモニターっぽくなくなります。これでTwitterのタイムライン見たらめちゃ捗ると思うw
モニターフードを付けてみよう
BenQのカラーマネジメントモニターシリーズの特徴は本格的なモニターフードが付いてくる事です。モニターフードを標準装備しているのはBenQだけじゃないだろうか。
サードパーティーのモニターフードを買うと数千円~2万円くらいするし、安定性もイマイチなので専用設計のフードを付けてくれるというのは非常にありがたいこと。この辺にも写真愛を感じるわけです。だって、このクラスのモニターなら普通使うでしょ、フード。
バラバラのパーツが入っているのですが、フードに貼り合わせ位置など分かりやすく刻印されているので説明書見ればすぐに取り付けられます。SW2700PTのものより取り付け、取り外しがスムーズになっていて良くなってる。
そして、SW2700PTではできなかった縦位置でのフード取り付けにも対応!
幅も広くなって遮光性もアップ
さらにSW271のモニターフードはSW2700PTのものより幅(奥行き)も広くなって遮光性もアップしてます。
モニターの内張は反射の少ない起毛処理がされています。
キャリブレーション用の穴も装備。
USB-Cで繋げる快適さ!
組み立て終わったモニターを撮影台に置いたまま、MacBookPro(Late 2016)を繋げて表示させてみました。ご存じの通り、MacBookProは2016年モデルから外部端子はすべてUSB-Cに統一されてしまったため、普通のモニターだと不格好でお高い変換アダプタを噛ませてHDMI接続するという面倒なことをしなければならなかったのですが、SW271ならUSB-C(Thunderbolt 3)に対応しているためケーブル1本を挿すだけです。超快適。
メインPCがMacBookProで、モニターはしっかりしたものを使いたい!という場合にありがたい機能。
データの転送も同時に行えるが、給電はできない
このUSB-C接続はモニターの出力を行えるだけでなく、データの転送も同時に可能です*。ですから、ノートPCとSW271をUSB-Cケーブル1本繋ぐだけでキャリブレーターをモニター背面に接続してキャリブレーションを行うことが可能になります(普通のPCの場合はHDMI(DisplayPort)とUSB3.0ケーブル2本を繋がないといけない)。ケーブルもHDMIやDisplayPortに比べ細いのでデスクまわりがすっきりしますね。
*4K 60p表示の場合はデータ転送速度はUSB2.0相当になります
ただし、惜しいことに給電までは行ってくれないため、長時間接続するときは別途給電用のUSB-Cケーブルを挿す必要があります。変換アダプタから開放されただけでも御の字ですが。
MacBookProなどUSB-C出力のPCを使っている方は、付属のUSB-Cケーブルを背面に挿しっぱなしにしておくのが良いですね。
複数の色域を設定可能な柔軟な調整機能
外観だけでかなりの量になってしまいましたが、続いては肝心の表示性能を見ていきましょう。SW2700PTは公称でAdobeRGBカバー率99%と謳っている訳ですが、ホントに99%あるかどうかハードウェアキャリブレーションしながらチェックしてみました。
SW271のキャリブレーションはSW2700PTと同じく、BenQオリジナルの「Palette Master Element」で行います。対応キャリブレーターは「X-Rite i1 Display Pro/i1 Pro/i1 Pro 2 と Datacolor Spyder 4、Spyder 5」とのこと。私の手元には i1 Display Proとi1 Pro 2がありますがいずれも正常に使えました。
なお、モニターキャリブレーションの方法はSW2700PTとほぼ同じなので、やり方は下記記事が詳しいです。
早く終わるようになった!
SW2700PTの時はキャリブレーションするのに、 i1 Display Proで約15分、i1 Pro 2だと30分近くかかって結構遅かったのですが、SW271ではだいぶ高速化されてi1 Display Proでは10分を切るくらい、i1 Pro 2でも15分くらいで終わるようになりました!
これまでは計測が遅すぎて高性能なi1 Pro 2はあまり使う気になれなかったのですが、15分くらいなら気軽に行えます。
AdobeRGBカバー率は98.7%
i1 Pro 2で本体キャリブレーションをした際に作成されたICCプロファイルをAdobeRGB、sRGB、DCI-P3、SW2700PTと比較してみた図は下のようになります。
SW271とAdobeRGBの色域を重ね合わせてみたところ、SW271のAdobeRGBカバー率は実測で98.7%と公称の99%とほぼ同じ結果になりました。
見て分かるとおり、SW271ではAdobeRGBよりも赤方向、緑方向に広いためAdobeRGB比(単純な面積比)は110.2%と1割以上も広い色を表示可能です。また、sRGBカバー率は100%、DCI-P3で93.7%という結果でした。
SW2700PTと比較すると、色域の広さはわずかにSW2700PTが勝る結果。ただSW271もAdobeRGBに対しては十分広いですし、SW271とSW2700PTを並べて使用していて発色が違うかというと私には判別不能な違いですので実用的にはほぼ問題ない差かなと思います。どちらのモニターも十分な色域の広さですね。
普通のモニターとこんなに違う
ちなみにsRGB色域のモニターと広色域なSW271の色の見え方はこんなに違います。後述するGamutDuo機能を使い、左にSW271の最大色域、右に同じ写真のsRGB色域の画像を表示させてみました。
紅葉の赤と黄色、葉っぱの緑、肌の色などだいたいどの色もSW271の方がしっかり色が出ていますよね。sRGB色域だとちょっとくすんだ感じになってしまう。
キャリブレーターがなくても調整できるよ!
箱に付いていた検査シートが示すように、出荷時に1台1台キャリブレーションされているため使い始めはとくにキャリブレーションしなくても正しい色で使い始められます。OSDメニューのカラー調整からは手動設定だけでもかなり豊富な色調整が可能。
カラーモード(プリセット)によく使うものがイロイロ入っています。
また、あらかじめ用意されているカラーモード(プリセット)の他にも自分で色域や色温度、ガンマを調整したユーザーモードを2つまで保存可能です(ハードウェアキャリブレーションしたときの設定とは別に)。
でも将来的にはキャリブレーターの導入がおすすめ
ただし、環境に合わせた再現性の高い表示環境を作るなら別途キャリブレーターの導入を強くお勧めします。どんなモニターでも使用していくうちに経年で色が変わってきてしまうためそれを補正するためにも必要です。
複数台のモニターを使っている人もキャリブレーターがあれば高い精度で色を揃えられます。私はSW271とSW2700PT(ともう一つのモニター)を並べて使っていますがキャリブレーションすると2枚の画面の色はほぼ同じに揃い気持ちよく作業が可能です。
キャリブレーターは個人的には定番のi1 Display Proがオススメです。既に4年使ってますが分光式のi1 Pro 2とほぼ結果が変わりません。
このクラスのモニターを使う方ならすでにキャリブレーターを持っていると言う人も多いでしょうが。
ターゲット色域を指定してキャリブレーションできる!
SW271からはキャリブレーション時にターゲット色域を指定できるようになったのもポイントです。(SW2700PTではパネルの最大色域でしかキャリブレーションできなかった)

Palette Master Elementの詳細モードでキャリブレーションすると「RGBプライマリ」という項目が出てきてターゲット色域を選択できる。Panel Nativeはそのモニターの最大色域でキャリブレーションするということ。Customで任意の色域を設定する事も可能。
カラマネ非対応のアプリも多いから...
カラーマネジメントに対応しているアプリケーション(PhotoshopとかLightroomとか)ではパネルの最大色域(パネルネイティブ)でキャリブレーションしておけばアプリ内部で適切にCMS(Color Management System)が働いて適切な色を表示してくれるのですが、特にWindowsではカラーマネジメントに対応していないアプリも多いのです。
例えば有名なものだとMicrosoft Officeとか。Windowsのエクスプローラーのプレビューもカラーマネジメント非対応なので、広色域ディスプレイを使っているとsRGB画像の彩度が極端に上がり色を正しく見ることができません。
写真系のアプリでもソニーのImaging EdgeやペンタックスのPENTAX Digital Camera Utilityなどもキチンとカラーマネジメントに対応しているわけではないためモニターネイティブでキャリブレーションしていては写真を正しい色で見ることはできません…
PENTAX Digital Camera Utilityで色がおかしくなる?設定の注意などメモ(studio9 personal)
キャリブレーション後にWindowsフォトビューアーの色がおかしくなる時の対処法(studio9 personal)
sRGB, AdobeRGB色域に限定したキャリブレーションができる
上記のようなアプリは通常、すべての画像を(iccプロファイルを無視して)強制的にsRGBで表示することが多いため、モニター側の設定をsRGBに一時的に設定しておけばむちゃくちゃな色で作業をするという事態を避けられます。
SW2700PTでもsRGBモードはあったのですが、ハードウェアキャリブレーションでsRGBに設定する事が出来なかったため、キャリブレーション済み設定からモニターの色温度や輝度が変わってしまって違和感が生じたりしていたんですよね。
ターゲット色域を指定できるなら本番のパネルネイティブ設定と同じ条件で、色域だけ変えてキャリブレーションできるため、設定を変えても色温度や輝度が変わるということがなくて便利です。

RGBプライマリでsRGBを指定してキャリブレーションしたときの表示色域。かなり正確にsRGBになっていることが分かる。(Palette Master Elementでキャリブレーションしたあと、i1 Profilerで測定)
キャリブレーション設定は3つまで登録可能
しかもキャリブレーション済みのモニター内部設定は3つまで登録しておくことが可能です。例えば、「校正1」に5000Kのパネルネイティブ(最大色域)設定、「校正2」に5000KのsRGB設定、「Calibration 3(校正3の訳し忘れ...)」に6500Kのパネルネイティブ設定 といったものを登録しておくことが出来ます。
これら「校正1~3」はホットキーパッド(OSDコントローラー)に登録しておけるため、モニターの設定を変えたいときはボタンをポチッと1回押すだけでOKです。
圧倒的に滑らかな表示性能
色の次は表示の滑らかさについて検証してみましょう。前回の記事で紹介したように4Kになり画面の画素数が増すということは「あらゆる表示が滑らかになる」ということです。画面に表示される写真はもちろんのこと、ブラウザの文字も、エクセルの罫線などすべてです。
例えばこの写真、α7RIIIの4240万画素で撮影したものです。7952x5304ピクセルの非常に大きな画像のためこうやって縮小して画像を見ても本来の解像度を見ることは難しいです。そこで、画面の白枠で囲った部分に着目してみることにします。
この白枠のサイズはPhotoshop上で等倍(100%)表示すると画面上で約36x24mmになるように作りました。Photoshopに等倍表示させたときのスクリーンショットがこちら▼。
この白枠を等倍マクロ撮影してみるとこんな感じです。葉の葉脈一つひとつが完璧に描写されていることがわかりますね!ここまで解像するカメラとレンズも凄いんですが、そのデータをキチンと表示できるモニターもスゴい。
一方で27インチWQHD(2560x1440)のSW2700PTでも同じように画面上の白枠が36x24mmになるように拡大倍率を変えて(66.6%)等倍マクロ撮影したのがこちら。ドットが荒くなって細い葉脈はジャギジャギして見えます。
さらに、参考までに手元にあるの24インチ1980x1200のモニターで同じ事をするとこんな感じで見えます。こうなるともうモザイク画を見ているような感じで細かなディティールが潰れてしまっていますね。
画面内に同じ量の情報を表示させた場合、ここまで見え方が違ってくるのです。
実際には画面から数十センチ離れて使用するため、ここまで明らかな違いは体感出来ないかと思いますが、いままでモニターに感じていたデジタルっぽさがかなり低減されて非常に快適です。一度4Kを使ったらもうそれ以下の解像度のモニターには戻れないと思うw
等倍表示時の見え方も違ってきます
上記は画面内に同じ情報を表示させたときの見え方の違い(写真の倍率を変えている)でしたが、写真の倍率を一定にしたときの見え方も当然異なります。ピントやシャープネスを確認するときに行う等倍表示とかです。
前回の4Kモニターの選び方記事と同じですが、等倍表示させた場合の見え方の違いはこんな感じ。やはり細い線は細くキチンと表示されます。
今まで見えなかったものが見えてくるのが4Kです。
階調性も滑らかです
物理的な滑らかさだけでなく、グラデーションの滑らかさもちゃんとしています。
通常、モニターはパソコンからの画面信号をモニターの特性に合わせて変換して表示するのですが、この変換が大雑把だと階調性崩れてしまい均一なグラデーション表示が出来ません。
SW271ではPCからの8bit信号をモニター内部で14bitに多値化して演算を行うことで滑らかで正確な色やグラデーション表示をすることが可能です。このPCの信号を内部で変換するときに使われるのがLUT(ルックアップテーブル)と言われるもので、SW271では最も高品質な3D LUTを搭載しています。
14bit 3D LUTは高級モニターの証です。
10bit出力も可能
普通のモニターの階調はRGB各8bit(256階調)ですが、SW271は10bit(1024階調)出力に対応しています。PC側のグラフィックボードとPhotoshopやLightroomなど10bit表示に対応したアプリがあれば普通のモニターの4倍の滑らかさで階調表現が可能です。
例えば、下記リンク先の10bit表示サンプルをPhotoshopで見たとき、8bitモニターではグレーの中に同心円状の模様が見え、トーンジャンプを起こしていることが確認出来ますが、同じものを10bitで見るとトーンジャンプのない滑らかな表示を確認出来ます。
*8bitモニターでサンプル画像を表示させて模様が見えない場合はそのモニターの階調性がそもそも怪しいかも
*サンプル画像は2ページ目にあります
高級グラフィックボードが必要
ただし、10bit表示させるにはPCからの出力も10bitにしなければなりません。現在10bit出力に対応しているのはNVIDIA QuadroやAMD FireProなどプロ向け高級グラフィックボードに限られ、CPU内蔵グラフィックやNVIDIA GeForce, AMD Radeonなどはすべて8bit出力にしか対応していない事に注意。
また、アプリケーション側も10bitに対応している必要があります。Photoshopなら設定から10bit(RGBで30bit)を有効化させないとグラボを対応させても8bitのままです。
Lightroomは特に何もしなくても10bitとなりますが、ライブラリーモジュールの表示は8bitに制限されています。10bitの恩恵を受けられるのは現像モジュールのみ。実は見えているものが違うというのも10bitモニターを使うと分かってきます。
私はSW2700PTを使い始めてから10bit出力できるNVIDIA Quadro M4000を使っています。ただ、確かに上記サンプルのような特定条件では8bitと10bitで明らかな違いはあるものの、通常のカラー画像を扱っている限り8bitと10bitの差を感じることはほとんどないので無理して10bit表示させる必要はないかも知れません。10bit対応のグラフィックボードは高価ですし。
256階調でも14bit 3D-LUTでキチンと階調が出ているので大丈夫です。無理して高価なグラボを買うよりはまずはキャリブレーターや作業用の照明などに優先して投資した方が良いと思います。
・ 1つのPCにGeForceとQuadro の2枚を差して10bit出力を実現した話。(studio9 personal)
さらに便利になったモノクロモード
SW271でさらに便利になった機能と言えばモノクロモードでしょうか。これは画面表示をモニター側で強制的にモノクロにしてしまう変わりダネ機能なのですが、結構使えるんですよこれ。
例えばカラーで撮影した写真をモノクロに仕上げたいとき、モノクロに慣れていないとカラーを見ただけではモノクロ化したときのイメージが掴みづらい事が良くあります。
そういうモノクロ化する前のセレクト段階で画面を強制的にモノクロにしてしまうと、元画像にいっさい手を加えずに最終イメージに近い状態でセレクト作業を行えます。で、セレクトが終わったらまた元のカラー表示にして個別に現像を追い込んでいくイメージです。便利でしょ?
コントラストを3パターンから選べる!
モノクロモード自体はSW2700PTの頃からありましたが、SW271ではコントラストを3段階から選べます。レベル1は軟調、レベル3が硬調なイメージ。
画面に表示させて撮影したものを並べると以下のような感じになります(モニター側でモノクロにしているのでPCでスクリーンショットを撮ってもカラーになる)。
レベル1と2の違いは僅かですが(元画像の色によっても違うかも?)レベル3はしっかり締まりのあるモノクロになっています。
モノクロをよく使う人はホットキーパックにモノクロモードを割り当てておくのがオススメです。
圧倒的解像度を生かしたPIP、PBP機能
SW271には1つの画面の中に2台のPC入力を同時に表示させるPIP(ピクチャーインピクチャー)やPBP(ピクチャーバイピクチャー)機能も有します。1台ぶんの画面を2カ所に表示(ミラーリング)させることも可能です。
使い方は人それぞれですが、工夫次第では結構面白い使い方が出来るかも知れません。
画面の一部に表示させるPIP
まずは画面の任意の一部分に別の画面を表示させるPIP機能です。使うとこんな感じになります。
メインの画面の一部に別のPCの画面を入力することが可能。枠の位置は画面内好きな場所に移動できるし、枠のサイズは大、中、小の3つから選べます(写真は中)。
作業をしながら別のPCの作業状況を監視したり、メイン画面でゲームしながらサブ画面にPCの表示をさせたりとか使い方いろいろです。
横並びのPBP
全く同じ画面を横並びにできるPBP機能も付いています。上と同じ画面をPBPモードにするとこんな感じです。
16:9の領域が2つ並ぶため1つあたりの画面は小さくなり上下が暗くなってしまいますが、13.5インチの画面が2つ並ぶ感じですので作業は可能です。デスクトップとノートで同時に作業をしたいと言うときには使えそうです。
別々の色域を表示できるGamut Duo
PIP、PBPのいずれもサブ画面の色域や色温度を指定することが出来るのも特徴。
PBPモードにして1台のPCからの入力をミラーリングして横並びに表示させた後、サブ画面の色域を別のものに変えると、同じ写真で色域の異なる2枚を横並びに表示させることも可能です。色域の異なる2枚を横並びで表示させたいときに役立ちますね!
上でも紹介しましたがこんなことができるのです。
HDR10に対応
SW271はHDR動画の再生にも対応しています。写真をやっている人ならHDRと聞くとコッテリした写真のHDRとかiPhoneのHDR撮影を思い浮かべてしまいますが写真のHDRとは全く違うものです。
写真のHDRというのはカメラの白飛びや黒潰れによって階調性が失われる事を防ぐもので、画面内のすべての輝度情報が256階調に収まるように(8bitの場合)輝度情報を圧縮したものと考えられます。つまり写真のHDR合成は輝度差が大きなシーンでも階調は繋がっているけど、実際に目に見えるダイナミックレンジは広がっていないのです。
動画のHDRはハードウェア的にダイナミックレンジを拡張する
一方で動画のHDRは写真のHDRのように輝度情報を圧縮するのではなく*、(ざっくりいえば)モニターの最大輝度を上げることでハードウェア的にダイナミックレンジを拡張する手法です。そのためキラキラとした太陽の光は実際に屋外で目にするものに近い臨場感をもってモニター上に表示されます。
*写真に比べて圧縮されていないだけでHDR動画でも実際の輝度情報をすべて表現できるわけではない
HDR動画ではモニターの最大輝度を上げる必要があるため、ハードウェア的にも高いレベルが要求されるものになるのです(最大輝度が1000 cd/m2以上)。
動画HDRの技術的な背景は下記リンクなどが詳しいです
HDMI2.0a以上が必要
ただし、パソコンでHDR動画を楽しむにはHDR10に対応したコンテンツとHDMI2.0a以上に対応したグラフィックボードが必要になることに注意。
例えば私が使ってるNVIDIA Quadro M400だと出力がDisplayPort1.2のためHDRには対応していませんでした。。これから数年かかって徐々に盛り上がっていく規格だと思います。
HDRモードならどんなPCでも可能
ホンモノのHDR10を見るにはモニターだけでなく、グラフィックボードやコンテンツにも投資が必要ですが、普通のPC、普通の動画でもカラーモード「HDR」にすればHDR動画をエミュレートしてくれます。
試しに私の環境でもHDRモードでYouTubeを見てみました。普通の動画をHDRっぽくエミュレートしているためホンモノのHDRとは見え方が違うんでしょうが、白の輝度が上がっていて普通に見るより臨場感があるように感じました。見た動画はこちら。4K HDRに対応している動画です。
ただし、HDRモードは白がめっちゃ明るく見えるためウェブブラウジングや文章作成など白背景が多い普通の作業時は目が痛くなると思いますw あくまで動画視聴用のモードです。
4KやSW271のデメリットなど
個人的にはSW271を1ヶ月以上使ってきて、非常に満足しているのですがディスプレイを4Kにすることのデメリットなどもお伝えしておきます。
Photoshopの文字サイズがしっくりこないかも
4K環境にするとモニター解像度が上がるため文字が小さく見えるようになります(FullHDの1/4サイズ)。
この場合はOSのスケーリング機能を使って文字を大きくすれば良いので問題は無いのですが、PhotoshopではOSのスケーリングとは独立した表示になっており、環境設定からUIスケーリングを設定する事になります。
ここで問題になるのがPhotshopではUIスケーリングが100%か200%しか選べないこと(Windowsの場合。Macは大丈夫)。特にSW2700PTのようなWQHD(2560x1440)から移行すると画面のサイズ感を同じに出来ません。100%にするとメニューなどの文字がめちゃ小さくなるし、200%だと大きすぎて作業領域が圧迫されます。150%を選べるとWQHDモニターと同じ感じになるのですがPhotoshopでは選べないのです。
WQHDから移行する場合は文字サイズを今までより大きくするか、小さくして使うかを選択しなければなりません。SW271に限らずすべての4Kモニターに言えることです。

私の環境のPhotoshop。スケーリング100%なので文字やアイコンがめちゃ小さい。私の場合はショートカットをよく使うしメニュー内容もほぼ覚えてしまっているので作業空間が広がる100%表示はありがたいのだけど。
Lightroomでは文字サイズ150%が選べるためWQHDから移行しても同じような感覚で使うことが可能です。
周辺の輝度落ちが少しある
今回試用している個体でユニフォーミティをチェックしてみたところ、優秀だったSW2700PTに比べると周辺の輝度落ちやや大きい感じです。i1 Profilerで測定しました。
こんな感じで画面に白を表示させた場合、中心輝度117cd/m2に対して右上が97cd/m2となり、20cd/m2ほど落ち込んでいる感じです。一方、同条件でSW2700PTを測定するとこんな感じ。
中心118cd/m2に対して一番低いところで110cd/m2。
私のSW2700PTが当たり個体だった可能性も
この問題に関してBenQさんに問い合わせてみましたが、設計上の想定範囲内には収まっており、SW2700PTもSW271と同程度の輝度落ちは考えられるとの見解でした。よって、SW271の周辺輝度落ちは存在するが、SW2700PTと比べて特段悪いわけではないという感じです。(パネルの均一性(ユニフォーミティ)は他メーカー含めて結構個体差が大きいので私のSW2700PTが当たり個体だったのかもしれません)
一応、輝度落ちにいままで気付いたことがない人向けに説明しておくと、すべてのモニターは設計上必ず輝度落ちは存在します。これをゼロに近づけたい場合はユニフォーミティ補正機能のあるEIZOやNECの上位機を2~3倍のお値段で買うしか方法はないのが現状です。
普通に使うなら問題ないけどシビアな環境では注意
パネルの輝度落ちへの気になり具合は個人差も大きいのでなんとも言えませんが、一般的なモニターと比べればほ特段悪い訳ではなく、私には使用していて特に不都合はないレベルです。(レンズの周辺光量落ちとか、部屋を明るくしているときの机面の映り込みなんかの影響のほうが大きい)
グレー(RGB:127)表示だとSW271でも中心と周辺との差が5cd/m2以内まで落ち着くので、通常作業であればあまり問題にならないかと思います。
ただし、業務用印刷の確認用などシビアな作業をする場合は注意が必要かも知れません。
USBポートへのアクセスがしづらくなった
外観の所でも少し紹介しましたが、キャリブレーターなどを接続するUSBポートが背面側にあるため、アクセスがしづらい感じです。
スイベル角が45°あるためグイッとモニターを回せばかなりアクセスしやすくなるのですが、モニターを壁ギリギリに設置していたりすると左右方向の回転が限定されるためキャリブレーターを接続しにくい可能性があります。SW2700PTはモニター側面にポートがあってアクセスしやすかったので惜しい所です。
SW271はほぼベゼルレス化したためポートを側面に設置することが難しくなったようで、デザイン性とのトレードオフですね。ちなみに他社のモニターも狭ベゼル化されているものはほとんど背面にポートを持ちます。
300円の延長でめちゃ快適になるよ
壁ギリギリに設置するなど背面へのアクセスがしにくい場合は短めの延長USBケーブルを付けておくのがおすすめです。
試しに上記の15センチのUSB延長ケーブル買って試してみましたが、写真のようにちょうどモニターとモニターフードの出っ張りの所に収まってくれるので使っていないときは外から見えず、使うときはちょっと手を伸ばすだけでケーブルが出てきます。これなら側面にポートがあるタイプよりもずっと使いやすいですね!
キャリブレーターだけ使うなら安いUSB2.0のもので十分です。カードリーダーや外付けHDDなど高速転送が必要ならUSB3.0対応の延長にしましょう。
まとめ
ということでSW271についてがっつりレビューしてみました。
始めにも言ったように何といってもこのクラスの4Kモニターが13万円台で手に入るというのはかなり大きなインパクトがあります。そして27インチで4K作ってくれてありがとう、BenQさん。
色の表示や階調性についてはほとんど問題はなく、快適に使えております。写真の編集だけでなく、普通にネットしたり執筆をしたり、YouTubeで動画見たりする時も4Kの滑らかな表示は非常に快適なものがあります。
写真の事ばかり書いてきましたが、4Kの動画は写真以上に精細感を強く感じる事ができ、4Kすげー!って思うと思います。
唯一、周辺の輝度落ちが思っていたよりも大きかったかな。。というのが気になる点でですが、個人的な感覚としては「ちょっと落ちているかもしれないな、、測定してみるか。→やっぱり落ちてたか」くらいの感じです。
上を見れば切りがありませんが、コストパフォーマンスまで含めれば4Kカラーマネジメントモニターとしては最強クラス。私の目の前にあるこのモニター、返したくないというのが正直な感想でございます。
提供、取材協力:ベンキュージャパン株式会社(http://www.benq.co.jp/)