残念な花火の写真をPhotoshopで蘇らせる
花火大会シーズン真っ盛りの今日この頃ですが、花火大会の撮影での失敗あるあるの一つに、風下で撮影したら煙しか写らなかった。。と言うのがあります。事前に風向きを考えて撮影するのが大事ですが風向きは当日急に変わったりもするので風を読むのは難しいのです。
そこで今回は煙にまみれて一部しか写らなかった残念な花火をPhotoshopを使ってゴージャスな花火大会に復活させてみようと思います!
ちょっとネタっぽい内容ですが、Photoshop初心者が合成を始めるのに必要なエッセンスがいろいろ含まれていると思いますよ。成功したけどなんとなく寂しいなという写真でも方法を使うと盛大な花火大会になるはずです^^
演習用のサンプル画像も用意したので手元に花火の写真がなくても試せますよ!
どうすんのこれ、煙で半分しか見えない花火。。
先日、花火の音がするなぁと思ってみてみたら遠くで比較的大きな花火大会が見えたので近所から望遠で撮影してみました。
ちなみに、花火の撮り方については下記記事が詳しいですので参考にしてみて下さいね。
で、撮影したはいいものの風向きが最悪でこんな感じになってしまいました。。
オーマイガーw 完全に風下だったようで煙の中に花火が入ってしまいました。こんな感じで半分見えていれば良い方。
これとか2/3くらい煙の中です。。
これをこんな感じ(▼)でPhotoshopを使い、盛大な花火大会にレタッチというか合成してみようと思います!
実際に今回のような流れで写真を仕上げることはほとんど無いのですが、Photoshopを使えばこんなこともできるんだよと言うことでご覧下さい^^;
切り貼りして花火を復活させる
まずは素材になる花火Photoshopで開きましょう。今回は執筆時点で最新のPhotoshop CC 2015.5で解説を進めて行きますが、そんなに高級な機能を使っていないので古いCSやエレメンツでも同様の事ができるかと思います。(操作方法が一部異なるかも)
1.素材となる写真を開く
Lightroomをお使いの方はLightroomで 写真を右クリック > 他のツールで編集 > Photoshop CC 2015.5 で編集と進んでもOKです。
LightroomとPhotoshopは月額980円で使えるフォトグラフィプランでどっちもフル機能を使えるので非常に連携しやすいですね。
もちろん別に書き出して普通にPhotoshopで開いても大丈夫。
今回はこの4枚の素材から花火大会を合成してみようと思います。
右下の写真は煙の下にだったのでキレイですが、他の3枚は残念としか言い様がありません(笑)
このページの最後に同じサンプルをダウンロードできるようにしていますので、演習してみたい方はDLしてお試し下さい(個人での演習目的の使用に限る)
2.ベースにする写真の花火を決める
まずはベースにする写真を決めて、そこの花火を完成させましょう。ちょうど良い所に上がっている花火を選択すればOKですが適当でも大丈夫です^^;
(花火が写っていない真っ暗な空をベースにすることもできます。)
今回はこの写真をベースにしたいと思います。
3.上手く撮れている部分をコピーしてレイヤー化する
上の写真、良く見ると左半分は煙に重ならずキチンと撮れているので、左半分を選択範囲で囲って切り取ってしまいましょう。
選択範囲を作る
今回はざっくり合成すると言うことで、多角形選択ツールでパパッと選択範囲を作ってしまいましょう。なげなわツールやパスを使ったりしてもOK。
煙がかかっていない所だけをクリックしながら囲います。
コピーしてレイヤー化する
選択範囲ができたら囲った部分をコピーしてレイヤー化しましょう。
レイヤー > 新規(N) > 選択範囲をコピーしたレイヤー を選びます。この処理は日常でも非常によく使うのでショートカットを覚えておくと便利。【 Ctrl + J 】です。Macの人は Command + J ね。
すると、元の写真の上にコピーされたレイヤーが重なりました。
この時点では元の写真と同じ場所に重なっているので写真の見た目に変化はありません。このレイヤーを隣にずらしてみると重なっていることが分かります。
移動ツールで「レイヤー1」を右にずらしてみると一目瞭然。
4.まるで魔法!比較(明)でなじませる
花火がコピーできたら、レイヤー1のブレンドモードを通常から「比較(明)」に変更します。これが今回の一番のポイントです。
ちなみに、このレイヤーが重なっている所を「レイヤーパネル」と言います。下から順にフィルターを重ねていっているイメージね。レイヤー同士の順番を入れ替えたりもできます。
するとどうでしょうか。不自然だったコピーした花火の輪郭が空に馴染みました!
比較(明)は自分よりも下のレイヤー(今回はベースになっている写真)と比べて明るい部分のみ合成して、暗い所は無視するという合成方法です。
夜空の花火の合成では合成したいもの(花火)が明るく、無視したいもの(夜空)が暗いので「比較(明)」が上手く使えるのですね。(上手くいかない被写体も多いので比較明が万能というわけではありません)
5.反転して重ね合わせる
あとはコピーしたレイヤー(レイヤー1)を元の花火に重ね合わせて形を復元するだけです。
このままだと都合が悪いので、「レイヤー1」を反転しましょう。
レイヤーパネルでコピーした「レイヤー1」を選択して、編集(E) > 変形(A) > 水平方向に反転(H) で右側の花火を作り出します。
続いて、編集(E) > 自由変形(F) でレイヤー1の位置や角度を変えながらベースの花火に重ね合わせましょう。自由変形も非常によく使うコマンドなのでショートカット覚えるのおすすめ。【 Ctrl + T 】です。Macの人は Command + T ね。
自由変形では四角い枠が出てくるので、枠の中をドラッグすれば場所の移動、枠の外をドラッグすると角度の変更です。花火の中心(爆芯)を重ねるイメージで動かすとやりやすいです。比較(明)にしているので移動しても違和感ないですね!
上手く重なったら上のツールバーの「〇」をクリックするか、Enter を押して確定。
するとどうでしょう、半分しか写っていなかった花火が復活しました!
不足している部分を補う
このままでも良いですが、つなぎ合わせた境目の部分がや薄くなっていて寂しいので、これまでの要領で良く写っている部分の一部を切り取って重ね合わせて上げてもいいでしょう。
▲こんな感じで一部を切り取って重ねる感じ。
注意するのは「レイヤー > 新規(N) > 選択範囲をコピーしたレイヤー」するときに、必ずベースの写真(背景)を選択しておくこと。そうじゃないと上手くコピーされません。また、コピーしたレイヤーはすべて「比較(明)」に変えておくこと。
また、コピーして新しく作ったレイヤーをさらにコピーしたいときは、当該レイヤーを選択して「Ctrl+J」とすると便利です。「レイヤーの複製」でも良いけど。
今回は細かな部分を3つほど足しました。薄毛の植毛をするようなイメージですね(笑)
6.ひとまず完成!
そうやってできたのがこちら。
あら探しをされるとすぐにバレてしまいそうですが、パッと見分かりませんね。
単純な流れでしたが、選択範囲をつくって、コピーしてレイヤー化、ブレンドモードで馴染ませて、反転、位置合わせ と写真の合成に必要なエッセンスがたっぷり詰まった作業です。
複数枚からよりゴージャスな花火大会にする
ただ、この一枚からではあまり”スゴい花火大会”な感じは伝わってこないので、別の写真から花火を持ってきて合成してしまいましょう。
別の写真の花火を完成させる
例えばこの1/3しか写ってなかった写真は上記と同じ流れで3枚ほどレイヤーを重ねて、反転などしながら1つの花火にしました。
元の写真から3つくらいパーツを切り取って、反転したり位置合わせしたり。比較(明)マジ有能。
そうするとこんな感じにキレイな花火が復活しました。
レイヤーを統合する
花火が復活したら、最初の花火にコピペすれば良いのですが、このままでは上手くいきません。
いくつかやり方はありますがここでは一度レイヤーをすべて統合してしまってから別の写真にコピペしようと思います。
レイヤー(L) > 画像を統合(F) を選択して今までのレイヤーを全部合体させます。(レイヤーを複数選択して レイヤーを統合 でもOK)
選択範囲で囲ってコピペ
最初と同じく多角形選択ツールでも良いし、もっと大雑把に長方形選択ツール などで花火を選択してコピーします。Ctrl (Command) + C です。
コピーしたら、元の写真に戻ってペースト。Ctrl (Command) + V ですね。
すると、花火が一個増えました。
これでは違和感ありすぎなので、コピーしたレイヤーのブレンドモードを「比較(明)」に変更します。
するとなんということでしょう!
夜空に花火が1個増えました!
違和感なく合成できましたね。緑の花火は移動ツールなどで好きな位置に移動できます。サイズの変更も可能。
ここまで来るともう何でもありですね(笑)
別の写真からも持ってくる
のこり2枚の写真からも持ってきましょう。
赤い花火は同じように花火を完成させてからコピペ。
地上から打ち上がっている比較的良く写っている花火はそのまま花火の部分だけ選択してコピペ。必要があればレイヤーの並び順はレイヤーパネル内 ドラッグ&ドロップで変更可能です。
どちらも「比較(明)」に変更して、位置を調整したのがこちら。
だいぶ豪華になりました!
細かい所ですが、一番最初のベースの写真の下の花火に爆芯(花火の中心)も足しています。これがあるのと無いので花火の写真のイメージがグッと変わりますね。
もうこれでほぼ完成ですが、もう少し調整してみましょう。
花火を個別に調整する
複数のレイヤーを重ねて合成すると、特定のレイヤーだけ色や明るさを調整したいって場合があるかも知れません。そんなときは「調整レイヤー」を使いましょう。
「調整レイヤー」もPhotoshopでは必ず覚えなければいけない必須機能です。
今回は緑の花火がちょっと薄いなぁと思ったので、これだけ鮮やかにしてみます。
緑の花火のレイヤーを選択した状態で、下の半月のようなマークの中から「色相・彩度」を選びます。
すると、「色相・彩度」があたかも写真を重ねたようにレイヤーとして重なりました。これが調整レイヤー。めちゃ便利です。
クリッピングマスクでレイヤーに固定する
ただ、このままだと「色相・彩度」で行った調整はその下すべてのレイヤーに対して効果がかかってしまいます。この例では「緑の花火」レイヤーの他に「レイヤー7」にも効果がかかってしまうのですね。
そこで、「緑の花火」レイヤーだけに効果を反映させるため、「色相・彩度」レイヤーを選択した状態で レイヤー(L) > クリッピングマスクを作成(C) を選択します。
すると、「色相・彩度」レイヤーに矢印が出現します。
こうなると、すぐ直下のレイヤーだけに効果がかかりますよ! という意味です。クリッピングマスクを作成 も頻出なので覚えておきましょう。ショートカットは【 Ctrl + Alt + G 】 (Comamnd + Option +G)です。
こんな感じで色を濃くしました。
完成!
これで完成。
いかがでしょう?もう最初の残念な花火を思い出せないほど、豪華で鮮やかな大花火大会になりました。
花火詐欺といって良いレベルです(笑)
ちなみに最初の写真はこれね。。
まとめ
ということで、花火を例にベーシックな比較明合成の手順をご紹介してみました。
以前、単純に花火だけを合成するという話で比較明合成の例を紹介しましたが、このようにコピーしてレイヤー化することでより積極的な合成が可能です。
Photoshopで写真の合成やコラージュをするときは、選択範囲を作って、コピーしてレイヤーを重ね、個別に詳細調整して馴染ませる という流れが基本になります。
今回の流れはその基本作業がすべてが入った流れですので演習としてはなかなか良い題材かと思います。もちろん、これらの内容はPhotoshopを使った合成の最もベーシックな作業になりますので、詳細に合成する場合はもっとたくさんのテクニックが必要になりますがね^^;
フォトグラフィプランなどに加入していてPhotoshopを使える環境にあるのに、Photoshopを使えないのはとてももったいないので、Photoshopの使い方もぜひ覚えてみましょう。
家に帰ってからもPCの中で写真を楽しめますよ。
使いどころには注意しよう!
ただし、このような元の場所に無かったものを後から追加するような合成(コラージュ)の場合、写真のコンテストによっては認められない事も多いです。その辺は注意しておきましょう。報道目的など真実を伝えるための写真としても向きません。
ここまで来ると写真という枠を超えて、デジタルアートといった方が良いのかもしれませんね。写真として外部に発表する場合は複数枚からの合成である事を一言添えることが大事かと思います。(バレなければ良いって問題でも無いからね。。)
この手の合成は黙って行ったが故に過去にもいくつも問題が起きていますので注意しましょう。
・巨匠、スティーブ・マッカリーのフォトショップ写真の炎上から、報道写真におけるphotoshopについて考える(Japancamera)
・ニコンアプリのフォトコンテストで合成写真が受賞 炎上して合成写真の大喜利状態へ (ねとらぼ)
・National Geographic disqualifies contest winner because he removed a bag from the picture! (Fuji RUMORS)
ちなみに、studio9の写真コンテストではこのような合成をして頂いても全然OKです^^
コメントにどんな合成をしたのか詳しく書いて頂けると嬉しいです。
サンプル写真ダウンロード
・サンプル写真ダウンロード(約1MB)
---
比較(明)合成は過去にもいくつか特集しましたよ!