先日、チェキが世界中で人気が再燃しているという記事(人気再燃?!今、世界中で大流行しているチェキについてまとめてみた!!)を寄稿させていただきましたが、今回は現行のチェキの中のフラグシップ機とも言える「Instax mini 90 NEO CLASSIC」についてレビューを書かせていただきます。
これまでのチェキとは一線を画した「大人チェキ」と呼ばれている「Instax mini 90」。この記事を読んだら、トイカメラやただのおもちゃと捉えていたチェキの概念を一新することになるかもしれません。
クラシックでシンプルなデザインがどこか懐かしい
今回初めてこのInstax mini 90を手にとって驚いたのは、その外観。
チェキと聞くとパステルカラーのプラスチックというチープな印象のボディが一番最初に頭に浮かんでくると思いますが、このInstax mini90は外観からこれまでのチェキとは一線を画すかのように、非常に大人っぽいデザインとなっています。
名前に「NEO CLASSIC」と冠されているだけあって、ぱっと見の外観はどことなくフィルムカメラのような雰囲気です。シンプルで無駄がないデザインですが、どこか懐かしく、そして高級感もしっかりと持ち合わせています。
また、実際に手にとってファインダーを覗き込んでみるとわかるのですが、縦に構えても横に構えてもきちんと指にボタンがかかるように作られており、機能的な面から見ても、とても優秀なデザインだと感じました。
懐かしく感じるのはあの名機に似ているから?
過去に富士フィルムはGA645という、世界初のオートフォーカス中判カメラを製造していましたが、最初に私がこのInstax mini 90を手にとった時、GA645に近いイメージを感じました。
プラスチックのボディだけれどもしっかりとした存在感。堅牢でスタイリッシュなイメージ。1995年のグッドデザイン賞を受賞したGA645を彷彿とさせるような、懐かしさと高級感を持ち合わせた外観は、まさに「NEO CLASSIC」という名に相応しいと思います。
他のInstaxシリーズは、どちらかというと女子中高生向けのデザインで、可愛らしさを追求しているのは否めませんが、このInstax mini 90は「大人チェキ」と呼ばれるだけあり、カメラ好きなおじさん(私のような)が使っても違和感がないようにデザインされています。
かなり個人的な見解ですが、これまでカメラに興味がなかった人よりも、フィルムカメラの時代からカメラが好きな方の方がグッとくると思います。チェキに全く興味がなかった層にもしっかりとアプローチできるそんなデザインですね。
ちなみに、私が今回レビューするのはブラウンですが、この他にブラックもあります。どちらもシックで落ち着いた色なのが特徴です。
FUJIFILM インスタントカメラ チェキ instax mini 90 ネオクラシック ブラック INS MINI 90 NC
これまでのチェキの概念を覆す新たな機能の追加
Instax mini 90最大の特徴、それはチェキの概念を覆す新しい機能にあります。
これまで搭載されていた機能である、マクロモードや、遠景モード、キッズモードなどはそのままに、今回新たにバルブモードと、二重露光モードが加わりました。
この二つの機能が加わったことにより、これまでチェキでは撮影不可能と考えられていた夜景の撮影や重ね撮りができるようになり、撮影のバリエーションがものすごく広がったといえるでしょう。チェキ独特の雰囲気に加えて、より幻想的でアーティステックな写真も撮影が存分に楽しめます。
今回は簡単な作例とともに、新しい機能についてご紹介していきます。
夜景でもしっかりと撮影できるバルブモード
チェキが最も不得意と言われていたのが、夜景などの暗いところでの撮影。
フラッシュを使えば、暗くても撮影自体は可能です。ただ、どうしてもフラッシュをたいてしまうと、キツめの光が被写体に直接当たってしまい、雰囲気のある夜景を撮影することはできませんでした。
今回、バルブモードが新たに加わったことにより、シャッタースピードが10秒まで伸び、これまで不可能とされていたフラッシュなしでの夜景撮影が可能となりました。
▲ バルブモードで5秒。しっかりと観覧車が映っていますね。
▲バルブで定番?の自動車のライトの写真。こちらは10秒間シャッターを開いて撮影。
チェキで夜景ってどうなの?と思う方も多いかもしれませんが、撮影してみると意外と面白いですね。画質の良いきれいな夜景を撮影するというのではなく、チェキならではの独特な質感が夜景と非常にマッチします。
今回は夜景と光線といった定番の写真を撮影しましたが、バルブモードはもっと応用的な使い方ができると思います。撮影次第ではチェキを使ってものすごく幻想的な写真を作り込めるかもしれませんね。
アーティスティックな一枚を…二重露光モードの使い方
チェキの新しいもう一つの機能が、二重露光モードです。
二重露光とは1枚のフィルムに対し2回シャッターを切って撮影し、像を重ねて撮影するという方法です。多少のコツは必要ですが、二重露光モードで撮影すると、自分では全くイメージできなかった想定外の写真が出来上がるので非常に面白いです。
▲駅前の広場に街路樹と空の写真を重ねて撮影したもの
▲自分の腕を逆光で撮影し、そこにお面の写真を重ねて撮影したもの
二重露光モードは黒いものの中に写るイメージ
ちなみに、この二重露光モードの撮影ですが、コツがあります。
1枚目に撮影した写真の影になる部分(黒っぽい部分)に、2枚目の写真の像がはっきりと写るという仕組みになっています。
上のお面の写真などがわかりやすいと思いますが、太陽に向かって手を伸ばして、逆光で撮影すると影になる手の部分に2枚目の像が写るということです。ですので意図的に影や黒い部分を作り出せば、ある程度仕上がりはコントロールできます。(といっても、かなりチャレンジして、それでもなかなか思ったように撮影できなかったですが…)
二重露光の撮影は非常に奥が深いので、はまってしまうと時間を忘れてしまいますね。何気なく撮影した一枚が、ハッと驚くような写真になることも多いです。
これまでデジタルにしか興味がなかった方も、自分が想定できない写真が出てくるドキドキ感を一度味わってみると病みつきになってしまうかもしれません。
地味だけど嬉しい機能ストロボオフ
これは撮影モードとは違うのですが、地味に嬉しい機能が追加されているのでこちらでご紹介します。
Instax mini 90では、これまでのチェキにはなかった嬉しい機能の追加がされています。
それは、ストロボオフ機能です。
これまでは常時発光、もしくは自動発光しかありませんでした。そのためフラッシュを光らせたくないシーンでもフラッシュが自動的に発光してしまい、思ったような撮影ができないということもしばしばあったのです。
しかし今回、バルブモードが新たに追加されたことにより、暗い場所であってもストロボを発光させずに撮影することが可能となったため、ストロボオフ機能がついたのだと思われます。
もちろんストロボオフ機能だけでなく、これまで通り強制発光も選択できますし、赤目軽減モードも新しく追加されたので、フラッシュの選択肢はかなり増えたと言えるでしょう。シーンに合わせて、自分の思い通りにストロボを発光させることができるようになったのは、とても嬉しいですね。
少し地味な印象がありますが、ストロボオフ機能の追加は撮影の自由度を考えるとかなり大きな仕様変更と考えて良いと思います。
新機能ではないけれど使える便利モード
これから紹介する2つの機能は、今回初めて搭載された機能ではありませんが、撮影の幅を広げるためには是非とも覚えておきたい機能です。
被写体にグーっと寄れるマクロモード
Instax mini 90は3つの撮影距離に分かれています。「0.3〜0.6mの接写モード」、「0.6〜3mの基本モード」、「3m〜∞の遠景モード」の3つです。
マクロモードは0.3mという至近距離から撮影できるため、撮影したい被写体だけを大きく写すことが可能です。特に花や植物、食べ物などを撮影するのにオススメの撮影モードだと思います。
ちなみに、最短で0.3mまで寄れますが、0.4〜0.6mの撮影距離の方がシャープに写るようです。また、暗い場所では発色が悪くなってしまうので、ハイキーモード(Lモード)で撮影すると発色がよくなり、きれいに撮影することができます。
濃淡を自由にコントロールできるハイキー、ローキーモード
Instax mini90では「L+」、「L」、「D」の3つのモードで写真の濃淡を調整することができます。ハイキー(LとL+)で撮影すると淡い写真になり、ローキー(D)で撮影すると濃い写真が出来上がります。
個人的にはハイキーモードはかなり頻繁に使いました。
ハイキーモードで撮影することにより、淡いふんわりとした明るい写真になりやすく、チェキ独特の雰囲気に拍車がかかります。
また、ハイキーモードで人物撮影を行うと、肌の質感がきれいに写り、写真全体も明るくなるのでオススメです。美肌に写るので、撮影の手法によってはかなり盛れます(笑)特に女性には嬉しい機能ですね。
「これはカメラである!」というこだわりを感じる操作性
Instax mini 90はシンプルなデザインながら、操作性にもしっかりとこだわっています。実際に撮影して感じた点についてレビューさせていただきます。
アナログカメラのような操作感を楽しめる
撮影のモードを変更する場合、二通りのやり方があります。
一つは裏蓋からボタンを押してボタンを押してモードを選択するという方法です。Modeボタンを続けて押しながら、自分が撮影したいモードを選択します。
ちなみに撮影モードは全部で5つ。パーティモード、キッズモード、遠景モード、二重露光モード、バルブモードです。フラッシュやハイキー、マクロ撮影などはModeボタンではなく専用のボタンで操作します。
また、Modeボタン以外の操作として、Modeダイヤルを使って選択するという方法もあります。
ダイヤル操作でのモード変更は、アナログカメラのような操作感があり格好良いですね。液晶を見ながらボタンをポチポチ押すよりも、ダイヤルを回してモード変更した方が使い勝手も良いかなというのが個人的な感想です。
縦撮り、横撮りどちらも撮影しやすいシャッターボタン
Instax mini 90にはフロントとボディ上部の二つにシャッターボタンがあります。
ボディフロントにあるボタンは電源スイッチと一体化されており、撮影する際に電源を入れそのままシャッターを押すことができるように工夫されています。ファインダーを覗きながらカメラを構えると、人差し指がピッタリとシャッターボタンの位置に来ます。こういう細かい部分までしっかりと考えられているのは嬉しいですね。
▲主に縦撮りする際にフロントのシャッターボタンを使用する
▲軍艦部のシャッターボタンは横撮りの際に使用する
これまでのInstaxシリーズでは横撮影用のシャッターボタンはなかったと思います。そのため、フロント部のシャッターボタンで縦撮りで撮影するというのが基本の撮影スタイルでした。
今回、横撮り用のシャッターボタンを作ったことは、「大人チェキ」を謳う上では非常に大きいと個人的には思いました。ここにシャッターボタンがあるだけで、ものすごくカメラらしくなったという印象があるからです。
私がこのInstax mini 90を使い始めた当初、撮影した写真のほとんどが横撮りでした。
横撮りは普段一眼レフで撮影するのと同じようにファインダーを覗き、同じ位置にあるシャッターボタンを押すため、普段の撮影のスタイルに慣れていると、横撮りの方が圧倒的に操作しやすいからです。
Instax mini 90は普段一眼レフカメラを利用している層もターゲットとしていることもあり、「カメラらしさ」という点をしっかりと意識しているのだと感じましたね。
バルブモードでは絶対に必要!三脚について
三脚穴は実はInstax mini 70の頃からありました。
これは、セルフタイマーを利用した記念撮影などを想定されたものだと思います。もちろんInstax mini 90でも三脚穴はしっかりとあります。なんといってもバルブモードが新たに追加されていますので、三脚を使って撮影する機会はInstax mini70よりはるかに多くなると考えてよいでしょう。
バルブモードは最長で10秒です。手で持ちながら撮影すると確実に手ブレの問題が出てきます。夜景などの撮影では三脚を使うことをお勧めします。
ちなみに、操作性とは関係ない話ですが…
操作性とは関係のない話ですが、今回のInstax mini 90の中で最も大きな変化の一つがあります。
それは「充電式バッテリーの採用」です。
これまでのチェキは全て電池式でした。
一つ前のモデルであるInstax mini 70はCR2というリチウム電池を使っています(一つあたり3〜400円くらいするので結構高い…)。
そのためヘビーユーザーには電池代というランニングコストが気になる部分でもありました。しかし、今回充電式バッテリーに変わったことにより、電池を気にせずに撮影を楽しむことができるようになったので、この仕様変更は非常に喜ばしいですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回、実際に色々と撮影に使ってみて感じたのは、良い意味で使いこなすのが難しいということです。
何度も撮影し、色んな計算をしてようやく念願の一枚が撮れたりすることもありましたし、なんとなくテスト撮影で撮った一枚がものすごく印象的な写真になったりするなど、自分の思い通りの写真が出来上がらないところに面白さを見いだすことができました。
また、今回新たに搭載されたバルブモードや二重露光モードなどは、先にも述べたように、もっと応用をきかせて撮影してみると、非常に面白い写真が撮れるような気がします。今回の撮影を通して、チェキというカメラに対して大きなポテンシャルを感じました。
チェキと聞くと「どうせ、トイカメラでしょ」と感じている方も多いと思いますが、侮るなかれ、Instax mini 90は基本的なカメラの機能を有した立派なカメラと言ってよいと思います。
「どうも最近カメラで撮影しても面白くないんだよな〜」とデジタルにマンネリを感じている方は是非このInstax mini 90を手にとってみてはいかがでしょうか。写真が出来上がるまでどんな写真が出来上がるかわからない、ワクワク感を味わうことができますよ。