ローアングルで撮りたいシーンはそれほど多くない
草花などを専門的に撮る人ならローアングル専用の三脚を持っているかもしれません。
でも、花を撮るのはたまにだけ、という人にとっては使用頻度が低いのがわかりきっているローアングル専用の三脚を買うのはためらわれるでしょう。
ワタシ個人もローアングルで撮ることはそう多くないのでローアングル専用の三脚は持っていません。三脚は小さなものでもそれなりにかさばりますし、重さも無視できません。
それこそ、今日はチューリップを撮るぞ、と決めて出かけるときでもなければ、買ったとしても持ち出さない可能性のほうが高いでしょう。
と考えると、普通の三脚でローアングルも兼ねられるほうがありがたいわけです。そこで今回は普通の三脚でも使えるローアングル(ローポジション)撮影の方法について紹介します!
現行三脚のローアングル機能について
さて、一般的なサイズの三脚でローアングルにするには脚を開きますが、そうするだけだとセンターポールが地面につかえてしまいます。
もちろん、そうなっては話になりませんから、なんらかの対策が必要になります。現行の三脚でローアングルにする手法は、おおまかに以下の4タイプに分類できます。
- ローアングル用アダプターに交換するタイプ
- センターポール下部を取り外すタイプ
- 脚を開くだけのセンターポールレスタイプ
- センターポールが倒せる特殊タイプ
このうち、センターポール下部を取り外すタイプは、あまりカメラ位置を低くできないものが多い傾向があります。
ワタシが所有している三脚ではスリック カーボンマスター814 PRO IIがこれに当たりますが、ジッツオのオフセンターボール雲台G1275MとKIRKのアルカスイス互換クランプを組み合わせた状態での最低地上高は32cmほど。
後継となる現行モデルのカーボンマスター834(3ウェイ雲台が標準装備されています)も同じく32cmです。
比較的背の高い菜の花やコスモスなどを撮る分には問題ないかもしれませんが、背の低い花だと見下ろすアングルでしか撮れません。
高さを変えられるかどうかが大事
ほかの3タイプはと言うと、低さの面では有利になる一方、カメラの高さが固定されてしまうのが泣きどころです。
これもワタシが使っているマンフロット190Tのアルミ3段モデルとXPROボール雲台(Q6付き)の組み合わせだとセンターポールを倒して脚を開くと地上13cmの低さにカメラをセットできます。
ただし、高さは固定。動かせません。なので、あと3cmぐらい高くしたい!というときには役に立たないのです。
遠景ならまだしも、近接で花などを取るようなシーンでは、前ボケや後ボケになる要素を画面のどこに配置するか考えながらカメラの位置を決めないといけません。そうすると、13cmでばっちり、なんてことのほうがまれですから、ぶっちゃけ、低けりゃいいってもんじゃない!というわけです。
つまるところ、近接でのローアングル撮影のための三脚には高さ調整ができることが不可欠なのであって、高さを変えられないのではだめなのです。
最低地上高と撮影結果の比較
センターポールを逆向きにしてローアングルにする方法
さて、ここからが本題。
普通の三脚で地上すれすれのローアングル(ローポジション)かつ高さ調整も可能なセッティングを紹介します。
簡単に言うと、センターポールの上下を逆にして、雲台を下側に吊り下げることでローアングル化する手法です。これだと雲台が地面に接触する低さにもセットできますし、センターポールをスライドさせることで高さの調整も可能になります。
センターポールが2分割にできるタイプの場合
ここではスリック カーボンマスター814 PRO IIで説明します。この三脚はセンターポールが2分割式になっていて、下部パイプを取り外すことでローアングルにします。
手順としては、まずセンターポールの下部パイプを外して、
抜いたセンターポールを下から差し込み、
外した下部パイプをつなぎなおす。
という流れです。
あらかじめ脚は開いておくと作業しやすく、センターポールの上部を差し込むときに落とさないようしっかりロックしてください。
センターポールレスタイプの場合
こちらはレオフォト レンジャーLS-255Cで説明します。このシリーズの三脚にはベース部分の下側にウエイトフックなどを吊り下げるためのネジ穴があり、ここに付属の延長ポールをつないで雲台を付け替えることでローアングルにできます。
本来はこの延長ポール、下の写真のように三脚と雲台のあいだにはさんで高さをかせぐために使います。
延長ポールを逆付けすればOK(要アダプター)
これを逆に接続すれば低い位置にカメラをセットできるのですが、レオフォトLS-255Cの場合残念ながら直接接続することは出来ません。ただし、ネジの変換アダプターを別に用意すれば接続できるようになります。ワタシはライトスタンドのダボというアダプターのパーツを流用しました。
必要な部品は1/4-3/8インチ オス-オスの変換ネジ部分です。未検証ですが下の商品でも大丈夫だと思います。
レオフォト純正でCF-6という大小ネジ変換アダプターがありますが、こちらはストラップホール部が三脚側に干渉するためそのままでは使えませんので注意してください。
レオフォトLS-255Cセンターポール逆付け方法
LS-255Cの延長ポールを逆付けする方法は以下の通りです
1.脚を開いた状態で裏返す
2.三脚の下側に変換アダプターをネジ込む
3.延長ポールを接続する
4.雲台を延長ポールに付け替える
やはり脚は開いて、必要に応じて少し伸ばしておくと作業しやすいです。
なお、強くネジ込んでしまうと、変換アダプターが外せなくなる可能性があります。と言うか、ワタシのは延長ポールから外せなくなりました。なので、自己責任でお試しください
こうして延長ポールの伸縮幅を利用すれば地面スレスレの高さから撮影ができます。
延長ポールの長さを変えれば高さを変えられます。脚を伸ばせばさらに高くもできます。
それ以外のタイプの場合
前記以外のタイプでも、ジッツオ トラベラーシリーズやマウンテニアシリーズ、レオフォト アーバンシリーズのようなセンターポールが引き抜けるタイプはセンターポール2分割タイプと同様に上下逆挿しにできます。
また、ベルボン プロフェッショナル・ジオV、同Nシリーズなどのギア式エレベーターを搭載したタイプは雲台をセンターポール下端に付け替えるだけでOKです。
センターポール逆挿しのメリットとデメリット
いちばんのメリットは前述したとおり、地面すれすれの低い位置にカメラをセットできること。かつ、高さの調整が可能なことです。
また、脚を広げなくていいので設置面積が狭くなるほか、被写体との距離も短くしやすいメリットもあります。
反面、脚パイプがカメラの操作の妨げになるのが面倒なのは難点です。また、強度や剛性が落ちるせいでブレやすいので、シャッターを切る際には慎重にならないといけません。センターポールのロックをゆるめたときにカメラや雲台が地面に激突する怖れがある点にも注意が必要です。三脚使用時のブレはこちらの記事も参考にしてみてください。
また、横位置でカメラの上下が逆さまになるのも厄介です。撮影自体は可能ですが、カメラの操作はかなりやりづらくなります。
カメラを上向きに取り付けられるようにすると楽
ただし、ジッツオのオフセンターボール雲台やLプレートを使用すれば横位置でも上下逆さまになりません。快適なローアングル撮影のためにもこれらの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
写真は旧型のG1275M。現行品はGH2750です。ジッツオのオフセンターボール雲台については以下の記事もどうぞ。
カメラにL字プレートを装着し側面を掴むことでも正位置でカメラを固定できるようになります。
作例
レオフォトLS-255Cの標準のローアングル状態を横から見るとこのような感じです。低いですがテーブルに置いた花に対してはまだ高い状態。もっと下げたいこともあるでしょう。
延長ポール逆付けで地面スレスレから狙えるようになりました。
普通の使い方と比べると見える世界がまったく違ってくるということが分かります。
ポールを縮めれば標準の最低地上高と同じくらいの高さに調整する事も可能です。
まとめ
繰り返しになりますが、三脚のローアングルセッティングで大事なのは、
- 高さをなるべく低くできること
- 高さの調整ができること
という2つの要素です。
ローアングルが得意と言われている三脚でもこの両方を満たすものはほとんどないのが実情です。しかし、普通の三脚でも部品を組み替えたり、アクセサリーなどを併用することで地面すれすれのローアングルを実現でき、なおかつ高さの調整も容易に行なえるのです。
すべてのタイプの三脚に当てはまるわけではありませんが、お使いの三脚が該当するタイプであれば、やり方を覚えておいて損はないと思います。