コスパ抜群の本格的カラーマネジメント対応広色域モニター
カメラの性能がどんなに良くてもそれを画面出力するモニター(ディスプレイ)がおかしなものであれば正しく編集することが出来ませんし、プリントを追い込むことも困難です。
そこで前回の記事(写真編集向け液晶モニターを失敗せず選ぶためのポイント10選【レベル別おすすめ付き】)では写真向けモニター選びのポイントとして画面のサイズや解像度からカバーする色域やキャリブレーションといった専門的な内容まで10項目をまとめてみました。
今回はその中でも紹介したハイアマチュアからプロが使うに十分な本格的広色域カラーマネジメント対応モニター SW2700PT (BenQ) のレビューをがっつりやってみたいと思います!
機能的にはハイアマ~プロのレベルですが使い方は簡単なので中級レベルのユーザーや写真をやらなくても高品質なディスプレイで作業したい!って人にも向いているかと思います。
なにが凄いかってこのモニター、本格的な性能にもかかわらずコストパフォーマンスがとんでもないんです。
SW2700PTの概要 – プロ機並の本格機能が満載
写真編集向きのカラーマネジメント対応モニター(ディスプレイ)と言えばEIZOやNECといった昔から「プロ御用達」のモニターが一般的です。確かに非常に高品質なのですが、お値段も20~30万円と趣味用途では簡単に手を出すのが難しいレベルの高級品なんですよね。。
7万円以下で買える本格モニター
ここに大きな風穴を開けたのが今回ご紹介するBenQのSW2700PT。
このモニターの主な機能を並べてみましょう。まさにプロ機並の機能です。
- 27インチ / WQHD(2560x1440)の作業スペース
- IPSパネル採用
- ノングレアパネル
- AdobeRGB99%カバー
- 出荷時キャリブレーション済み
- ハードウェアキャリブレーション対応
- 14bit 3D LUT搭載
- 10bit入力対応
- フリッカーレス液晶
- 本格モニターフード付き
- ワンボタンでモニター設定変更可能
といった感じです。
各スペックの意味が分からない方はぜひ前回の記事をご覧下さい。
ほぼプロ機と同様の性能
プロ御用達モニターに搭載されるユニフォーミティ補正機能以外はほぼプロ機と同等の機能を備えているんですね。そして、買ったら1~2万円するモニターフードが標準で付いていたり、独自のOSDコントローラーという超絶便利なコントローラー(後述)が付いていたりと非常に充実した機能を有します。
それでいてお値段が実売7万円以下(執筆時、Amazonの価格)なんです。今までのモニターの常識を打ち破るようなコスパでヤバいです。
BenQ カラーマネージメントモニター ディスプレイ SW2700PT 27インチ/WQHD/IPS/DisplayPort,HDMI,DVI搭載/遮光フード付/AdobeRGB/写真編集用
アマチュアの救世主になるんじゃないか?
このSW2700PTの機能は印刷業界など除いてプロでも十分な機能(現に私が使ってる)ですし、前回の記事でも書きましたが、アマチュアの救世主となるモニターだと思うんですよね。
今まで5~6万円のそこそこ良いモニターと20~30万円クラスのめっちゃ良いモニターの間を繋ぐちょうど良い本格モニターが市場にはほとんど無かったんです。そこの隙間をキッチリ埋めたのがこのSW2700PTと言うわけです。
ハードウェアキャリブレーションできない5~6万円のそこそこ良いモニターにちょっと足すだけでプロ機並の本格モニターが買えてしまうんですね(モニターフードを考えると実質同価格ぐらいかも)
ちなみに、モニターに7万円もかけられない。。と思っている方もいるかも知れませんが、撮影後に自分好みに編集したり家でプリントするなら7万円のレンズ買うよりモニター買った方が個人的には結果は良くなると思います。
ここからはBenQ SW2700PTの優れている点についてもう少し詳しく紹介していきますね。
追記:さらにパワーアップしたモニターも登場しています
SW2700PTを4Kに進化させたSW271、解像度はそのままにムラ補正機能、USB TypeC搭載、16bit 3D LUT化した全部入りのSW270Cもレビューしていますのでこちらもどうぞ!
発色豊かな表示機能
写真向けモニター(ディスプレイ)ですので一番気になるのはやっぱり表示性能かと思います。じっくり紹介していきましょう。
AdobeRGBを超える色域
SW2700PTが写真編集向きといえるポイントの一つがAdobeRGBを99%カバーする広色域モニターである点です。様々なところで出る図ですが、一般的な液晶モニターで採用されるsRGBとAdobeRGBの色域の違いを見てみましょう。
特に高彩度な緑~青の表示可能域が大きく異なります。デジタルカメラで記録可能な色の範囲は非常に大きい*ため(AdobeRGBすら超える)青や緑が鮮やかなシーンを撮影した場合、モニターがAdobeRGB対応かsRGB対応かで同じ写真でも見え方が違ってくる場合があるのです。
*RAWから現像した場合。JPEG記録でカメラ内設定をsRGBにしていれば当然sRGBを超える色は記録されません。
ここで、私の所有するSW2700PTの色域(実測値*)を見てみるとこんな感じです。AdobeRGBの領域をほぼ完全(98.9%)にカバーしつつ、それを超える領域も発色出来ていることが分かります。(*i1 Pro 2で測定)
赤色の再現力も高い
見て分かるようにAdobeRGBの色域をほぼカバーし実測値で98.9%と公称のAdobeRGB99%カバーは間違いなさそうですね。さらに注目は赤方面の色。AdobeRGBを大きく超えてさらに彩度の高い赤色を表示可能なことが分かりますね(緑側もより広く表示)。
例えば真っ赤な彼岸花や紅葉の写真はどうしても赤が飽和してのっぺり見えてしまいますが、SW2700PTなら赤色の再現性も高くキチンと見ることができそうです。
AdobeRGBカバー率とAdobeRGB比?
モニターの色域を表現する方法として一般的なのは「カバー率」表示です。今回のようにSW2700PTの色域の「広さ」はAdobeRGBより広いけど、緑色のごく一部(1%)が表現できないためこのような場合は「AdobeRGBカバー率99%」となります。
一方、紛らわしいのが単に「比」で表している場合です。この場合、目的の色域をどれだけカバーしているかは問題ではなく、単純に色域の広さを比べたものになります。なので「比」を見ただけでは正しく色が表示できるかは全く分かりません。
最近は少なくなりましたがスペックが「AdobeRGB比98%」とか「sRGB比95%」といった表記の場合はよく注意しましょう。
ちなみにSW2700PTのAdobeRGB「カバー率」と「比」は実測値でそれぞれ98.9%、109.0%と「比」では100%を大きく超えます(赤色の部分のおかげ)。
プリントを考える場合にも有利
広色域カラーマネジメントモニターを導入する一番の動機はモニターでの編集結果をプリントに正しく反映したいからという方が多いと思いますが、インクジェットプリンターを使う場合AdobeRGB対応モニターはsRGBに対してとても有利です。
というのも一般的なインクジェットプリンターはsRGBを大きく超えた色を出力可能なんですね。例えばEPSONのPX-7Vというインクジェットプリンターで出力可能な色域を図にしたのがこちら。
*EPSONで提供するプロファイル(光沢紙使用時)を元に表示
ちなみに、私が事務用に使ってる家庭用普及機のEP-808A(EPSSON)とかでも今回のPX-7Vにかなり近い広さの色がだせるので高級なプリンターしか意味のない機能という訳ではないのもポイント。
高彩度の緑~青の領域はプリンター側では出力可能でもsRGB表示のモニターでは正しく見て編集できないのですね。。SW2700PTだとこの緑~青の領域やちょっとAdobeRGBを超えている赤の領域などPX-7Vで出力可能な色の大半をカバーしています。
sRGBモニターでは編集時に見えていなかった色がプリント時に出力されたり、設定によってプリンターの出力可能域を狭めてしまう可能性があります(写真の色がsRGBを超えている場合は)。
高品質なプリントをしたいならAdobeRGBモニターがとても有利なわけです。
滑らかな階調表現が可能
では広色域モニター(ディスプレイ)で発色さえ良ければいいのかというとそうでもありません。写真はグラデーションの表現(階調表現)も非常に重要ですから、きちんと滑らかなグラデーションを表示できるかどうかも大きなポイントですね。
上記のような色度図は見た目にも分かりやすいので「モニターと言えば発色!」って感じで意識しがちですが、階調表現も発色と同じくらい大事です(編集を考えるならこっちの方が大事かも)
正しく見えますか?
例えばこのグラデーションは黒(RGB:0)から白(RGB:255)までのグラデーションを64段階で表示したものですが、きちんと滑らかに表示できているでしょうか?(簡易グラデーションのため間隔は厳密に一定ではありません)
途中で赤や青っぽい色が混ざったように見えたり、グラデーションがキチンと分離されず飛んだように見えたりするモニターは正しく階調が表現できていません(黒や白付近の両端2コマ程度が繋がっている程度なら普通の性能かと)
私のSW2700PTでは64コマすべてきっちり分離してキレイなグラデーションが確認できます。
上のグラデーションがこんな感じで表示されていたら要注意。この画像がおかしいことが分からない場合はさらにヤバいモニターをお使いかもしれません。。(色がおかしいところは青の▲、階調が繋がっている所は赤の▲で表示しています)
*人の色の見え方にはかなり大きな個人差があるため見えないから絶対おかしいとも言えません。正しく評価するにはキャリブレーターが必要。
LUTの性能が重要
現在市場に出回っているモニターはほぼすべて8bitの階調(256階調)で表現するため、スペック的には安いモニターもSW2700PTも同じ階調性能を持っているはずですが、実は違うんですね。
*SW2700PTは10bit入力にも対応していますが今回の評価はすべて普通の8bit入力です。
単純に液晶パネルの品質といったところもありますが、SW2700PTの階調の滑らかさや正確さを担っているのは14bit 3D-LUTという機能です。安価なモニターはPCからの8bitの信号をそのまま8bitで表示しますが、SW2700PTではPCからの8bitの信号をモニター内部で14bitに多値化して演算することでより正しい8bitの出力をできるわけ。
モニター内部の色を演算するLUT(ルックアップテーブル)でもっとも高品質なのが3D LUTというもので、これが搭載されているのはごく一部の高級モニターだけなんです。
この文字読めますか?
また、次の画像に表示されている文字が読めるでしょうか?
こちらは黒(RGB:0)の下地に一文字ずつRGB:1, RGB:2, …, RGB:8まで少しずつ明るくした8つの文字が書かれています。
---
ハイライト側はどうでしょう? 白(RGB:255)の下地にRGB:254, RGB:253,…, RGB:247 まで少しずつ暗くした8つの文字が書かれています。
*ブラウザによっては正しく見えないかも。画像クリックしてみたり大きめ画像を右クリック > リンク先を名前を付けて保存 としてPhotoshopなどで見てみると正確です。
256階調すべて分離して見える!
ここにある全文字がきちんと見える場合、そのモニターはきっと良い階調性能を有するモニターなはず。
ちなみにこれも私のSW2700PTはすべて判別可能です(モニター輝度120cdくらいと暗め設定でも)。つまり、モニターのスペックである8bit 256階調すべてを分離して表示することができる機能を有しているわけです。
*見え方のイメージはRGB:1、RGB:254(一文字目)は注意深く見ないと見えないけど、RGB:2、RGB:253(二文字目)からは余裕で見える感じです。
ちなみに、黒地の方は「SW2700PT」、白地は「STUDIO9!」が書かれています。普通のモニターなら最初の2〜3文字は潰れて見えないことが多いのではないかと思いますし、性能の低いモニターなら最後の1〜2文字しか見えない。。という事もありますね。
私の手元にあるモニターですべて読めるのはSW2700PTだけ。MacbookPro(Late2013)でもモニター輝度を最大まで上げて2文字目がギリギリ、普通の輝度だと4文字めから。。(黒地の場合)という感じ。7年くらい前に買った古い普通の液晶モニターでは黒地はほぼ全部潰れて読めませんでした(笑)
プリントの場合はここまで微妙な明るさの違いを出し分けることが難しいので最初の2〜3文字は見えなくても大きく困ることはないですが、最後の2〜3文字しか見えない。。というモニターは要注意かと思います。
データとして存在している階調がキチンと表示できるというのは気持ちいいものです。
10bit入出力にも対応している
また、PC側のグラフィックボードさえ対応していれば10bit(1024階調)入出力にも対応しています。現在はnVIDIA QuadroやAMD FireProなどプロ向けグラフィックボードに限られますが、モニターは1〜2年で買い換えるものでもありませんから将来10bit入力が普及したとしてもすぐ使えますね。
10bit表示は確かに優れていますが、上述したとおり8bitか10bitかよりも、モニター内部のLUTの性能のほうが写真編集には重要な機能だと思います。(最近は比較的安いモニターでも10bit謳っているものが多いので注意)
ハードウェアキャリブレーション搭載でいつでも一定品質
いかにモニター(ディスプレイ)の表示機能が優れていたとしてもモニターとPC間の設定が正しくなければ正確な色は表示できませんよね。そのためには、「このモニターは〇〇の表示性能を持っていますよ!」という情報(モニタープロファイル)をPCに教えなければなりません。
それをするための作業がモニターキャリブレーションです。
工場出荷時点ですでに調整されている
SW2700PTは工場出荷時点でAdobeRGB(6500K)にキャリブレーションされた状態となっているため、モニターに付属のプロファイルを使えば専用機器がなくてもすぐに正しい色で表示可能です。
色に強くこだわらないのであればこのままでも十分な性能です。
一定に保ったり、カスタマイズしたい場合はキャリブレーションが必須
ただし、液晶モニターというのは経時で色が徐々に変化してしまう性質があるため(数ヶ月とか年単位で見たら)、常に一定の色で表示させるためには変化してしまった色をモニター側で調整して元に戻してあげなければならないのです。
少しの色の違いを目視で調整するというのは非常に難しいため、周りの環境に左右されずに色を計るための「キャリブレーター」という機器が別途必要です。このキャリブレーターとモニターが直接協調して色を補正できるのが「ハードウェアキャリブレーション」という機能。これも上位機種ならではの機能です。
一般のモニターはキャリブレーターとモニターを直接繋いで調整する事ができず、PC側の出力のみを補正するためモニターの性能を出し切るのはとても難しいです(ソフトウェアキャリブレーションといいます)
SW2700PTはこのハードウェアキャリブレーションにも対応。別途キャリブレーターを用意する必要がありますが、カラーマネジメント初心者でもモニターのキャリブレーションを行いやすいのがポイント。
i1やSpyderなど様々な機器に対応
対応しているキャリブレーターは比較的購入しやすく高性能なi1 Display Proやプロ向けのi1 Pro 2などX-Rite製品だけでなく、datacolorのSpyderシリーズにも対応しており、すでにこれらの製品をお持ちの方も多いのではと思います。
SW2700PTの仕様表によると対応機器は以下の製品です。
X-Rite: i1 Display Pro / i1 Pro / i1 Pro 2 & Datacolor Spyder 4 / Spyder 5
キャリブレーションツールは別途用意する必要があり、2~3万円から購入可能。1つ持っていればSW2700PTだけでなく他のモニターのキャリブレーション(ソフトウェアキャリブレーションだけど)にも使えます。
*追記:BenQのカラーマネジメントディスプレイ上位版PV270ではX-rite社のキャリブレーターのみ対応となっているので、i1 DipslayProを選んでおく方がいろいろ無難です。
Palette Master Elementで簡単にキャリブレーション可能
SW2700PTでハードウェアキャリブレーションを行う場合は付属の専用アプリPalette Master Elementを使って行えます。画面の指示通りに進めるだけで簡単にキャリブレーションできるので便利です。(次回詳細に紹介予定)
結構細かな設定まで指定してキャリブレーションすることが可能。
詳しいハードウェアキャリブレーションの方法などはこちらでまとめています!
Windowsの人もMacの人も、初心者でも使えますよ
スッキリした外観:意外とスリムな27インチ
先にみなさん気になる表示性能を中心に長く書いてしまいましたがここでは外観の話もしましょう。
広色域かつハードウェアキャリブレーションに対応したモニターは機能がてんこ盛りなのでどうしてもモニター部が分厚く、重くなってしまうのですがSW2700PTは意外とスリムで軽いです。
5年ほど前に購入した27インチ広色域ディスプレイ(ハードウェアキャリブレーションなし)のモニターと比べると数キロ軽いレベル。モニターを支える台もスリムで個人的に好きなデザインですし、モニター部が8.3kgと(高性能モニターとしては)軽いのでモニターアームの選択肢も増えるかと思います。
組み立ても簡単で15~30分もあれば使える状態に持っていくことが可能だと思います(かなり大きな箱で届き、それなりに重量があるので作業スペースを確保しておきましょう)。
説明書もきちんと日本語で書いているのでご安心を^^
・SW2700PTの仕様 (BenQ公式サイト)
27インチ WQHD(2560x1440)
SW2700PTの表示領域は27インチでWQHD(2560x1440)の広さを持ちます。FullHD(1920x1080)と比べて約78%も作業領域が広がります。
画素密度も高い
また、現在主流の24インチFullHDの画素密度は約82ppiですが、SW2700PTは109ppi。約34%高密度な表示で写真を見ることができます。
結構この差は大きいですよ!
いろんな角度で使える
机面ギリギリの高さから調整可能のほか、上下方向のティルトが-3.5~20度、左右のピボットも十分に可能です。画面を90度回転させて縦表示として使うこともできますよ!
目立たないところですが高さ調整やティルトではきちんと目盛りも付いてます。裏面は鏡面仕上げて結構カッコいい。
本格遮光フード付き
外観の特徴でもう一つポイントになるのが、本格モニターフードが標準で付いてくるということでしょうか。レンズに強い光が当たるとフレアを起こしてコントラスト低下が起こるように、モニターにも強い光が直接当たると明るさやコントラストが変化して見えてしまいます。
そのためプロ用のモニターにはオプションで遮光フードが用意されているのですが、これがまた高くて買ったら1〜2万円するんですね。
ところがSW2700PTはその本格モニターフードが標準で付いてくるのでとてもお得です。内側はきちんと反射防止加工してあります。フードの奥行きは15センチくらいでデュアルモニターで使ってても視線の移動を妨げない程よい長さ。
遮光出来れば良いので黒い段ボールなどで自作する方法もあるのですが、当然専用フードのほうが見た目もカッコいいですし、モニターにジャストフィットするのでズレたりする心配がありません。
フードつけたままキャリブレーター使うための小窓も付いてて便利ですよ!
豊富な入出力ポート
入力は DVI-DL x1、DisplayPort1.2 x1、HDMI1.4 x 1 と主要な方式をカバーしています。DVI-DL(デュアルリンク)、DisplayPort(DP-miniDP)のケーブルは付属しています。
HDMIやDP-DPのケーブルが必要な方は別途用意しましょう。付属ケーブルの長さは約1.8mくらいです。
USB3.0のケーブルも付属していますよ(1.2mくらい)。
豊富なOSDメニュー
モニター側の設定項目であるOSDメニューも豊富です。
カラーモード(プリセット)の選択ではAdobeRGB, sRGBのほかRec.709, DCI-P3といった色域のほか、モノクロやブルーライト軽減モードなんかも用意されています。(DCI-P3は完全にカバーしていない)
ユーザーのオリジナル設定ももちろん可能で2つまで登録できます。
輝度やコントラストなど定番の項目の他、ガンマ、色域、色相、彩度、黒レベルなどかなり細かく設定可能。キャリブレーターがなくても目視の調整項目がたっぷり用意されています(精度を求めるならキャリブレーター使いましょう)
*キャリブレーターを繋いでキャリブレーションすればこの項目はほとんどいじる必要はありません(自動で最適化してくれるから)。ただしキャリブレーション後に感じるちょっとした色の違和感やプリンターとのマッチングを優先して色を微調整することは可能。
SW2700PTの独自機能がかなり便利!
OSDコントローラー
これマジ便利です。何かというと、ボタン一つでモニターの設定を切り換える事の出来る機能。
普通のモニターは画面の側面などに付いているメニューボタンを使い、お世辞にも使いやすいとは言えないUIでチマチマと設定を変えなければなりませんが、OSDコントローラーを使うとあらかじめ登録していたオリジナルのモニター設定を一発で呼び出せるほか、通常のOSDメニューもコントローラーの十字キーでサクサク変更できます。
WindowsはAdobeRGBに対応していないソフトが多い
カラーマネジメント環境がきちんと整った環境であれば、キャリブレーションした設定を使い続ければOKなのですが、特にWindows用のアプリケーションはカラーマネジメントに対応していないものも多く、広色域モニターでは本来の写真の色より大幅に彩度が高く表示されるといった現象が起こります(例えばWindows向けWordとかExcelですら対応していない)ブラウザでネット上の写真を見るときもブラウザによってカラーマネジメントへの対応状況がマチマチなので確認するのが大変です。。
そこで便利なのがOSDコントローラー。あらかじめ用意されているsRGBモードを登録しておくとボタンを押すだけでsRGB表示に切り替わるためカラーマネジメントに対応していないアプリを使うときにも有利だったりするのですね。
ハードウェアキャリブレーション後の設定も2つまで登録出来るので、6500Kに合わせた結果と環境光に合わせた結果を保存しておき、ボタンに登録しておくという使い方もできるでしょう。事務作業するときはブルーライト軽減モードに一時的に切り換えて作業するなんてのもOKです。
ここはプロ向けの超高機能モニターにもない独自の機能かと思います。
モノクロモードが意外と便利
またSW2700PTの独自機能としてもう一つ面白いのがモノクロモードを搭載している点。これは画面の表示をモニター側で強制的にモノクロにする機能です。
例えば、たくさんあるカラーで撮影した写真をモノクロ用にセレクトするときにソフト側でモノクロ化するのではなく、カラーのままモニター側でモノクロ化してしまえば非常に効率的ですよね。
もちろんこれもOSDコントローラーに登録して使えます。
SW2700PTのデメリットを挙げるなら。。
良い所ばかり並べてきましたが、かなり性能に対してかなり安いモニターなので、いくつか不満点はあります。
画面ムラ補正機能がない
今までも何度か言及しましたが、SW2700PTにはプロ向け高級モニターに搭載される画面のムラを補正する機能はありません。ここはデメリットというよりは、価格を考えればさすがにそこまで要求できないしょうがないなぁって感じでしょうか。
そもそも市場に出ているほぼすべてのモニターにはこのムラ補正は搭載されておらず、今まで特に気になっていない方ならSW2700PTでも気になることはないかと思います(SW2700PTが他の一般的なモニターに対してムラが大きいわけではないので)。
私の使うSW2700PTで画面内9点の輝度を測定したところ、白(RGB:255)で最大の輝度差が12cd/m2, グレー(RGB:127)で4cd/m2程度です(130cd/m2設定)。真っ白に表示したら気になる人には気になるかなぁといったレベルかと思います(私はあまりきにならない^^;)。
色ムラは個人的にはほぼ気にならないレベルで、印刷業界などモニターとプリンターのカラーマッチングが厳密に求められる状況でなければ許容範囲かと思います。
Palette Master Elementが少し遅い
SW2700PTの大きなメリットの一つのハードウェアキャリブレーションですが、惜しいのはキャリブレーションに少し時間がかかるという点です。
手持ちの機器で計測したところ、i1 DisplayPro使用時で10〜15分、i1 Pro2で20〜30分ほどかかります。(i1の純正ソフトでソフトウェアキャリブレーションすると半分くらいの時間で終わる)
いままでキャリブレーターを使っていた人にとっては遅いなぁと感じるかと思いますが、キャリブレーションの必要頻度は厳密にやる場合でも2週間に1回程度、普通は1〜2ヶ月に1回行えば十分な精度が出ますので致命的にはならないでしょう。
このへんはオリジナルのキャリブレーション用ソフトであるPalette Master Elementのアップデートで短縮できる可能性もあるかと思いますのでBenQさんにはぜひ今後も改善をお願いしたいところ。
まとめ:良いモニターだと思います
ということでSW2700PTの全体的な機能についてまとめてみました。また今回も長ーい内容になってしまいましたが、それだけこのモニターには様々な機能が搭載されていると言うことです。
現在、普通の広色域モニター(27インチ)を買うとだいたい5〜6万円くらいしますが、これに1〜2万円足せば本格的な広色域カラーマネジメントモニターが手に入るのですからスゴいことです。
BenQ カラーマネージメントモニター ディスプレイ SW2700PT 27インチ/WQHD/IPS/DisplayPort,HDMI,DVI搭載/遮光フード付/AdobeRGB/写真編集用
また、上から見ればプロ御用達の高機能モニターの1/2〜1/3の価格でそれに近い性能のモニターが使えるというのもポイントですね。
こういう意欲的な製品が出てくれるとアマチュアの人でもカラーマネジメント環境を整える敷居がグンと下がってくれますし、プロカメラマンでも業務内容によってはこのモニターで十分といえる判断も付くかと思います。
(例えばプロなら20万の予算でモニター買うなら、プロ向け1台買うより、SW2700PTを2台買ってデュアルで運用した方が業務効率上がってメリットが多い人も結構いるはず)
次回はSW2700PTがスゴそうなモニターだと言うことは分かったけど、使いこなせるかどうか不安。。という方のために、ハードウェアキャリブレーションの具体的な使い方やPhotoshopやLightroomといったソフトでのプリント設定などを重点的に紹介していきます!
---
【続編】SW2700PTの使いこなしやプリントの設定などはこちらが超詳しいです
そもそもモニター選びってどこがポイントなの?という方はこちらの記事をどうぞ!
SW2700PTの4Kパワーアップバージョン、SW271のレビューはこちら
SW2700PTを全方位で進化させたモニターが2019年に発売されました。SW270Cです。もう全部入りという感じに仕上がり、10万円を切るコスパですごいです。ザッと機能を挙げると以下のような感じ。
SW270Cの詳細レビューも行っておりますので興味ある方はこちらもどうぞ!
SW2700PTを全方位で進化させた全部入りのSW271のレビューはこちら
*本記事はBenQさんからスポンサード頂いておりますが、レビューで使用しているSW2700PTは私の私物です^^;
提供、取材協力:ベンキュージャパン株式会社(http://www.benq.co.jp/)