その水平、ホントに合ってる?
風景や建物などを撮るときに大事なのが画面の水平。特に左右方向の傾きはほんの少しでも気になりやすいもの。微妙に傾いていたりすると見映えがよくないのでカメラはきちんと水平にセットして撮るのが基本です。
最近は水準器を内蔵したカメラも多くなっていて、液晶モニターやファインダー画面上で水平かどうかを確認しながら撮影できるようになっています。
でも、カメラに内蔵されている水準器、正確かどうかをチェックしたことはありますか?
単体のバブル水準器や三脚の水準器と比べてみるという手はありますが、そもそもその水準器が正確だという保証はありませんし、水準器と撮像センサーが平行かどうかの保証もありません。
というような事情もあって、水準器の正確さをチェックするのは簡単ではないのです。
そんなわけで、今回は、あまり面倒くさくなくてお金もかけずにカメラの内蔵水準器の正確さをチェックする方法を紹介します。
各社の水準器についてのまとめ
現在は低価格なローエンドモデルをのぞくほとんどの一眼レフ、ミラーレスカメラに電子式の水準器が内蔵されています。基本的にはカメラの縦位置、横位置を検知する姿勢センサーを利用したもので、精度はけして高くはありません。各社の使用説明書を見ると、±1度程度の誤差があると考えてよさそうです(記載のないメーカーもあります)。
自分で調整できるメーカーは限られる
水準器の基準を自分で調整(校正)できるかどうかはメーカーによります。もし自分で調整出来ないカメラを使っている人はメーカーに調整に出すことになります。主要なカメラメーカーの対応/非対応は以下の通りです。
調整機能を備えているメーカー
- オリンパス
- シグマ
- パナソニック
自分で調整出来ないメーカー
- キヤノン
- ソニー
- ニコン
- 富士フイルム
- リコー / ペンタックス
これらのメーカーのカメラを使っている人は今回の方法でズレを確認して、大きくズレていればメーカーに相談してみましょう。
水準器チェックするために必要なもの
さて、ここからは内蔵の水準器が正確かどうかをチェックするための準備を行ないます。用意するものは以下の3点です。
- タコ糸…2.5〜3mほど(毛糸などでも可)
- 5円玉…1枚(ほかのものでも代用可)
- 粘着テープ…少々
今回はタコ糸がなかったので、細めのゴム紐で代用します。5円玉とパーマセルテープを用意しました。
あとは、カメラを固定するのに三脚が必要です。できれば3ウェイ雲台付きのがベターです。
作業するのは床が硬くて平らな部屋ならどこでも大丈夫。床の凹凸がひどいとか傾いているとかの場合や、畳あるいはカーペット敷きの部屋も避けたほうがいいと思います。
水準器チェックの手順
ここからは実際に水準器が正確かどうかを確かめる方法を順を追って紹介していきます
5円玉を高い所からぶら下げる
まず、タコ糸の端に5円玉を結びつけ、もう一方の端を天井か壁の高い位置に粘着テープで貼りつけます。テープで貼るときに大きめの結び目を作っておくかなにかに結びつけておくとはずれにくくなります。
このようにセットして5円玉が宙に浮くようにしておきます。
カメラをきちんと設置する
カメラを縦位置で三脚に固定します。縦位置にするのは画面の長辺側を使ったほうがズレが見えやすくなるので精度的に有利になるからです。
水準器が水平を指す位置にセットする
カメラの水準器にしたがって左右方向、前後方向とも水平にセットしておきます。5円玉がぶら下がっている紐は一旦無視して、カメラの水準器が水平になる位置にセットしましょう。
手ブレ補正は必ずオフに、フォーカスモードはMFにしておいてください。一眼レフはファインダー撮影でもかまいませんが、ライブビューのほうがやりやすいですし、正確に合わせられます。
それと、画面にグリッド(格子線)を表示しておきます。グリッド表示機能がないカメラ、表示があっても画面中心をとおるラインがないカメラの場合は少し手間がかかりますが、そのへんについては後述します。
ここからカメラをきちんと水平にしていきます(水準器による水平ではなく、正しい水平)。
カメラを水平にセッティングする手順
ここからはカメラを水平にセッティングしていく手順です。と言っても、基本的には3ステップでOKです。
ステップ1:中心を出す
カメラをタコ糸にできるだけ近づけて(だいたいでいいのでピントを合わせます)、タコ糸の画面中心と同じ高さの位置にカットしたテープでマーキングします。
これでレンズの光軸とマークの高さがだいたいそろいます。
ステップ2:前後方向の水平を出す
タコ糸から2〜3mほど離れ(三脚の高さはそのまま)、タコ糸に付けたマークにピントを合わせ、画面の中心になるよう雲台を調整します。
これでカメラの前後方向が水平になります。
カメラの内蔵水準器の前後方向の誤差が仮に2度あったとすると、ステップ1で距離30cmだった場合、タコ糸上での誤差は1cmほど。2m離れれば0.3度ほどの誤差になります。
この誤差が気になるのであれば、再度30cmまで近づいて、今度はエレベーターの高さを変えて、マークを画面中心でとらえてから、再度2〜3m離れて雲台を再調整します。
ステップ3:左右方向の水平を出す
タコ糸が画面の中心線に重なるように雲台を調整します。
これでカメラの左右方向が水平になります(縦位置にしているので「垂直」ですけど)。
ちなみに、カメラを縦位置にしたのは、画面の長辺側を使ったほうが精度的に有利になるからです。
さて、通常はここまでで十分な正確さで前後左右ともに水平にセットできているはずです。
でも、もっと高精度に合わせたい、あるいは画面中心をとおるグリッドのラインがないカメラの場合は次のステップを追加してください。
ステップ3.5:より正確に合わせる
画面中央部をめいっぱいの倍率で拡大表示します。画面の中心マークやスクロールアロー(スクロールできる方向を示す矢印や三角形のマークのこと)が表示されていれば、それに重なるように雲台を調整します。
画面の上端または下端に近いところまでスクロールして、タコ糸が中心マークやスクロールアローとズレている場合はカメラが少し傾いていることを意味します。なので、雲台を微調整して合わせなおしてください。
画面の上端、下端でタコ糸が同じ位置に見えればばっちりです。
これでかなり正確にカメラが水平にセットできました。
ステップ4:カメラの水準器を調整する
水準器を手動で補正できるカメラであればメニューから設定を行って校正しましょう。
なお、水準器の調整の方法についてはそれぞれのカメラの使用説明書などでご確認ください。ちなみに、ここで使っているパナソニックLUMIX DC-S5の場合はカメラが横位置の状態で調整を行なう必要がありますので注意してください。
手動補正できないカメラはメーカーに相談を
もし手動で直すことが出来ないカメラで、この状態でカメラの水準器が水平を示していない場合はその水準器が狂っていると言うことが考えられますので気になる方はメーカに相談してみましょう。
手持ちの水準器もチェック可能
この状態はカメラがかなり水平になっていますので手持ちのホットシューに取り付けるタイプの水準器も正しいかどうかチェックすることが出来ますね。激安の水準器は結構精度がいい加減だったりするので見てみるのも良いと思います。
▼こういう安いやつも意外とズレてたりする。。
まとめ:キチンと合っているのか自分の眼で確かめるのも大事
カメラの内蔵水準器は正確であたりまえと思いがちですが、ワタシ自身、水準器が合っていないカメラに何度か遭遇していますし、ネットを検索してみるとぽつぽつとですが、合っていなかったという事例も見られます。
もしかすると、水準器が合っていないことに気づかないまま、あるいはズレてるんじゃないかと疑いつつ使っている人もいるのではないかと思います。
今回紹介した方法は特別な機器を用意する必要もなく、お金もあまりかかりません。が、手順どおりにやればかなり高い精度でチェックできるので、気になっている人はぜひお試しください。
なお、水準器の調整が可能なカメラの場合、水準器の設定を出荷時の状態にもどす項目があるはずなので、調整を行なったが不安が残る、効果が認められないなどの際はリセットしてください。
また、調整を行なった結果については、studio9および筆者はすべての責を負いかねますので、あくまで自己責任でお試しください。