カメラ撮影レクチャー本の選び方を解説!
世の中に数多あるカメラ撮影のレクチャー本(以下、カメラ本)。書店に行けば、カメラコーナーにズラリと並んだカメラ本を目にできます。筆者も気がつけば、色んなカメラ本を購入していました。下記はその一部です。
今回は、多数のカメラ本を購入してきた筆者の体感を交え、良書の選び方についてお伝えします。
4タイプのカメラ撮影本
ではさっそく、どんなカメラ本があるのか確認しましょう。テーマは、大きく4つに分類されると思います。
1. 撮影基礎を重視
カメラ本と言えば、一番にこれが挙がるでしょう。撮影が上手くなるための理論やテクニックを解説してくれる本です。初心者はこれを手に取るのが良いでしょう。
撮影基礎とは、主にシャッタースピード・絞り・感度の3つをメインとしたカメラの撮影方法です。この3つの働きや、色温度の仕組みなどもこの部類です。基礎を解説するものは、これらの内容を、総合的に掲載するものが多いです。
オススメの1つは、中井精也さんの“世界一わかりやすいシリーズ”。『世界一わかりやすい デジタル一眼レフカメラと写真の教科書』は、撮影の本質的な部分を優しく解説してくれます。写真以外にイラスト、解説DVDもついていて分かりやすいです。
2. 上級テクニック(撮影・ライティング・レタッチ)重視
1の次、中井さんの著書よりさらに高度なテクニック、撮影に付随した細かいテクニックを解説する本です。撮影基礎を覚えて、上級テクニックや知識を身につけたい方向けです。
写真撮影にあたって仕上がりを左右する3つの要素(それぞれ奥が深い)、撮影・ライティング・レタッチに関して個別に解説したものが2に該当します。
2.のカメラ本を購入する際は、自身のニーズをよく見極めることが大切です。「ライティングを勉強したい」と一口に言っても、クリップオンストロボの上級テクニックを学びたいのか、たくさんの機材をゴリゴリ使うスタジオライティングについて学びたいのか。「レタッチが上達したい」と言っても、それはPhotoshopの操作方法なのかLightroomの使い方なのか。本によって中身は様変わりします。1.のカメラ本以上に中身を吟味しましょう。
選ぶ際の目線は、技術向上あるいは問題解決。自身の撮影環境に照らし合わせて選ぶのがオススメ。「読了すれば、今の状況を改善し、さらにレベルアップできる!」と手応えの感じられる本を選びましょう。
3. 感性や哲学を重視
この種類のカメラ本は、なかなかクセモノです。読む人を選びます。
著名な写真家さんが、自身の撮影哲学や代表作の撮影プロセス、あるいは撮影時の心がけなどについて語るものが該当します。
筆者も、数冊購入して読んでみて「買ったの失敗だったかな……」と思うことが多々ありました。
その時不満を抱いたのは、言わんとしていることが、なんとなく分かるようで、結局分からないという点です。つかみどころのない、フワフワとした話が続き、抽象的な議論を重ねる哲学書、深遠な思いをありふれた物語でつづる名著に似ています。撮影の初心者が、新しい知識・技術を学ぶという点では不向きかもしれません。
ですが1年、2年……と撮影を続け、知識と経験が深まってから読み返すと「おぉ! なるほど、凄い参考になる!」と驚いたことがあります。つまり、本の内容を理解するために、読み手のより高いレベルが求められるのです。
ただし、この類のカメラ本は映画やドラマ、小説のように読み手の好みが出やすいです。「良いことを書いていると思うけど、自分の肌には合わない」という本にも出会うでしょう。
4. アイテムを重視
アイテムとは、主にカメラボディ、レンズを指します。その次にライティング器具やカメラアクセサリなどがあるでしょう。
大手メーカーは製品の歴史が長く、カメラボディやレンズの種類が豊富です。それらを紹介するだけで、本が1冊出来上がってしまうのです。
4.のカメラ本の用途は、新しいアイテム購入時の比較、または鑑賞。前者の場合はサードパーティー製のレンズも解説しているカメラ本がオススメです。鑑賞用の場合は、パラパラめくって楽しむだけでOKです。ただしあまり何度も読み返しているとカメラ沼にはまりかねません。ご注意を。
本と読み手のレベルのマッチングが大切
「何言ってるのか分からない」
時としてそういうカメラ本に出くわすかもしれません。
3.でも少し触れたように、往々にしてあるのが、本と読み手のミスマッチングです。本の中身を理解するのに自身の技術・知識・経験が不足しているケースが少なくないです。
もしも、昔「つまらない」と思っていた本が、面白いものに変身したら。本の内容は一切変わっていません。変わったのは自分です。自分の技術や知識が増したことで、本に書いてある本当の内容、著者の思いを、より深く読み取れるようになったということ。つまり、あなたのカメラの腕が向上し、知識が深まった証拠です。
カメラ撮影レクチャー本の良し悪しを見分けるポイント4点!
上記で解説してきたとおり、カメラ本は、種類豊富です。全てを買って読む、というのはほぼ不可能に近いでしょう。読み手は、手に取る本を選ぶ必要に迫られます。では、どんな点に注意して選べば良いのでしょうか。
1. 楽しめる or 感動できる写真が掲載されている
たとえ学ぶために手にした本とはいえ、何も興味が惹かれないものは読んでいて(あるいは見ていて)楽しくありません。
自分が楽しめる、あるいは感動できる写真が掲載されていると、本を読み進めるモチベーションになります。「この素晴らしい写真をどうやって撮影したんだろう?」という分析欲も出ます。
まずは立ち読みしたり通販サイトに掲載されている参考ページをチェックしたりして、まっさらな気持ちで写真を鑑賞してみましょう。
2. 撮影例とテキストのバランスが良い
良いカメラ本は、撮影例とテキストのバランスが良いです。
撮影例となる写真でページが丸々埋まっていると、説明がないから知識を増やせない。かといって、つらつら解説テキストでページがびっしり埋まっていると、肝心の撮影例がなくて理解が深まらない。いずれかに偏っていると消化不良に陥りがちです。
バランスの良いカメラ本は、写真と文章の比率(見開き)がおよそ1:1、2:1、3:1、4:1くらいで構成されています。やはり撮影に関する本なので、写真がページに占める割合が多い傾向です。ドーン!と掲載している大きい写真のほうが、細部までじっくり見ることができて嬉しいです。
3. 撮影データ・使用アイテムがしっかり分かる
掲載される写真についてです。
撮影例は、撮影にまつわるデータ詳細が分かるものが良いです。特にISO感度・F値・シャッタースピードの3つは必ずほしいところ。
撮影に慣れてくると、誰しもISO感度・F値・シャッタースピードが分かれば、おおよその撮影方法がイメージできます。加えてカメラのメーカーや機種、レンズの種類や焦点距離が分かれば、どんな特徴のアイテムを使って撮影したのか理解できます。
例えば、「肉じゃがを作りました」と言って完成品を見せるだけではなく、「◯◯と◯◯を材料に煮込み、◯◯を5g、◯◯を小さじ1杯、◯◯を大さじ1杯入れています」ということです。料理の得意な方なら、作り方や味を大まかにイメージできるのではないでしょうか。
それと同じです。だからこそ、撮影データは必要なのです。
4. 本1冊にテーマ or ストーリーがある
個人的な主張です。
良いカメラ本は、本1冊を通じて、一貫したテーマや思いが感じられます。読み手を新しい境地(大げさかもしれませんが)へ導くためのストーリーが備わっています。
例えば、前述した中井精也さんの“世界一わかりやすいシリーズ”は「圧倒的な分かりやすさを通じて、一眼レフカメラの撮影に対する読み手の理解を深める」という首尾一貫した思いを根底に感じます。
書き手のテーマやストーリー性がブレると、読み手にとって読みづらい本になりがちです(もちろん本を作る苦労は察しますが)。
筆者オススメ「ナショナルジオグラフィック」シリーズ
「撮影が上手くなりたい。オススメの本を教えてくれ」
こう問われて筆者がすぐ思い浮かぶカメラ本は、”ナショジオ”ことナショナル・ジオグラフィック社の長年の知見が凝縮されたカメラ本シリーズです。露出・構図・シャッタースピードなど様々なテーマごとに、1冊使って丁寧に解説しています。
1冊あたりのボリュームは大きく、ページ数が非常に多いです(そしてなかなか高価です)。ですが、示唆に富んだ写真や解説が豊富で、今後何度も繰り返して読みたい良書だと思っています。
以下、やや褒めすぎの感もありますが、オススメする理由を列挙します。
オススメする理由1:解説が論理的かつ明快。そしてタップリ
同シリーズの良い点は、論理的で分かりやすい解説がタップリあることです。技術的な要素から徹底的に解説し、紹介した写真の撮影理由や効果、撮るに至るまでのプロセスを教えてくれます。
何より、読み終わった後のレベルアップ感が大きいです。ドラゴンクエストに出てくる「悟りの書」(賢者に転職するためのアイテム)も、読み終えるとこういう気持ちになるのかもしれません。
オススメする理由2:完成写真に至るまでの “経過写真”も掲載
ナショジオ本の分かりやすさの源泉の1つが、写真の数です。1つの事例に対し、複数枚の写真を掲載しています。こうした掲載方法を取る本は、ありそうで、なかなかありません。写真が出来上がるまでの経過が分かるので、主題の内容が理解しやすいです。
オススメする理由3:カッコいい&オシャレな写真がいっぱい
これも見逃せません。本シリーズは、とにかくカッコいい写真、オシャレな写真がいっぱい掲載されています。「自分もこんな写真撮ってみたい……!」という写真だらけです。
実際に、本に書いてある解説を参考にすれば、すぐ撮れるものもあります。「撮影が急に上手くなった……!」と錯覚できます。読み進めながら、使えるテクニックは即トライしてみてほしいです。
おまけ
「撮影マル秘テクニック◯◯点紹介!」タイプは辞書感覚で
カメラ本でよく見かける種類に「撮影マル秘テクニック◯◯点紹介!」「レタッチテクニック100点解説!」というものがあります。
1点ずつ丁寧に技術を解説してくれます。ただしボリューム満点です。このタイプのカメラ本を読むにあたって、1つオススメの心得が辞書感覚を備えることです。
辞書を使うにあたって「全て暗記してやろう!」と思いませんよね? それと同じです。たしかに、全てを覚えられればそれに越したことはありません。ですが「1日◯点ずつ覚えるんだ!」と義務化すると、撮影が楽しくなくなってしまいます(ただし、プロの方が仕事のために覚えるのは例外)。それでは本末転倒です。
1度全体を通して読んだ後は、ムリをせず、必要な時に辞書感覚でめくってみると良いでしょう。
定期発売のカメラ誌も面白い 最新機種の撮影例が豊富
定期発売のカメラ誌も面白いです。
カメラ誌の特徴の1つは、各メーカーの最新機種に関する情報をぎっしり載せていること。スペックの似たカメラ同士の比較や、感度耐性を知るべく、ISO感度を細かく刻んで撮った夜景写真など購入にあたって参考にしたい情報が詰まっています。
プロカメラマンやカメラ開発者のインタビューなども掲載しており、カメラの最前線の情報を得ることができます。
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今回は以上です。
ナショナル・ジオグラフィック社のシリーズのみならず、良いカメラ本は、新しい知識やテクニックを提供してくれます。「急に撮影が上手くなった……!」と錯覚してしまいます。ただ、この錯覚の積み重ねこそが、撮影現場で頭からすぐ引き出せる技術、知識になっていくと信じています。
皆様も、良いカメラ本を手にとって、良いカメラライフをお過ごしください。