色んな動物を撮ってみよう!
ネコやイヌ、小動物……などなど巷で人気の動物。「どうせ撮るなら、よりキレイに動物を撮りたい!」と考える方のために、今回は動物撮影の基本ポイントを解説していきます。
「知らなかった」はアウト!動物撮影の2大NG行動
人間以外の様々な動物たちは、それぞれ習性が異なり、個々に性格も違います(性格の違いは育った環境にもよります)。例えばネコの知能は人間の2~5歳くらいだと言われ、人懐っこいネコもいれば、特定の人にしか気を許さないネコもいます。
動物の撮影にあたって、「知らなかった」では済まされない動物撮影の注意点を確認しておきましょう。
フラッシュやAF補助光の使用はNG:動物の目は超繊細
動物撮影は、大原則としてフラッシュやオートフォーカス補助光の使用は常にNG*です。特にフラッシュに関しては、ネコカフェに行っても競馬場に行ってもペットショップに行っても、全く同じことを言われるでしょう。「フラッシュを使うのはダメです」と。
理由は、フラッシュの光が動物の目に刺激が強すぎるから。動物は人間に比べてフラッシュの光に対する耐性がなくストレスを感じます。最悪のケースとして、失明に陥る可能性もあります。
例えば馬は繊細な動物です。フラッシュの光に対して敏感に反応し、心理状態に大きく左右します(そしてレース結果に影響するでしょう)。競馬場でフラッシュを焚こうものなら、周囲の観客や係員にすぐ注意されるでしょう。
また、魚の撮影でもフラッシュは控えましょう。一時、水族館でマグロが激突死するニュースなどもあり、お客さんのカメラによるフラッシュが原因ではないかとも言われ、フラッシュNGの水族館が近年増えてきています。
野良の動物への安易なエサやりはNG
動物の注意を引きつけるためにエサをあげる、という方法は効果的です。ただしエサをあげる状況をよく考えましょう。
お店や家庭の飼いネコなどに対し、一定のルールを守ってエサをあげるなら大丈夫です。ですが野良ネコはNG。一部地域では野良ネコの繁殖等の問題があり、十分注意が必要です。
場合によっては「わぉ! 僕のご主人様になってくれるんだね! ありがとう!」と興奮して家までついてくる野良ネコもいます。責任を持って面倒を見るならOKですが、責任を持てない安易な行動はいけません。
初心者向け!オススメの撮影設定や心がけ
本編です。ここからは、動物撮影にまつわる初心者向けのオススメ設定を解説していきます。ポイントを確認しながら、アナタにあった撮影方法を考えてみてください。
シャッタースピードは"速め"を意識
初めての環境で、初めて接する動物を撮影する際のオススメ設定です。シャッタースピードは速めにすることを意識してみましょう。
理由は一つです。人間や物体のようにジッとしていることが少ないからです。シャッタースピードが遅いと、被写体たる動物がブレやすいです。
決まったルールはありませんが、少なくとも1/80秒以下の遅いシャッタースピードで撮らないようにしましょう。
光源の位置と向きを意識して撮影
動物撮影では、フラッシュを使った撮影がNGだとお伝えしました。そのため自然光や環境光、つまり光源を意識して撮影していきましょう。
屋内であれば窓から入る自然光や天井のライトの位置を、屋外なら太陽の位置をよく確認し、被写体となる動物に良い光が当たる位置や向きをよく考えましょう。
この際、動物をつかまえて、光源のあるポイントへムリヤリ連れて行くのは控えましょう。動物にストレスを与えかねません。
"追従型"のオートフォーカスを活用
動物は、人間のポートレイト撮影やモノを撮るときと異なり、ジッとしてくれることはあまり多くありません。絶えず動き回るので、撮影者との距離が常に変化します。そのため撮影者が、動く動物に合わせて撮ることを要求されます。
人間が手動でピントを合わせていては、撮影に間に合わないことがしばしばです。そのため、カメラが自動的にピントを合わせてくれるオートフォーカス(以下、AF)の使用をオススメします。特に、動く被写体を追従するタイプのAF設定にして撮影すると良いでしょう。
例えばNikonでは「コンティニュアンスAF」、Canonでは「AIサーボAF」などと呼ばれる追従AFの設定をしておき、AFエリアの設定をオートエリア(ニコン)、自動選択(キヤノン)など画面全体からカメラが自動でピントを合わせるポイントを決めるモードにしておけばOKです。
オススメアイテムその1:ズームレンズ
撮影設定の次は、オススメアイテムを紹介します。撮影者との距離が常に変化する、という点を考慮すると、撮影距離を自由に調整できるズームレンズの使用がオススメです。特に初めのうちはある程度距離があっても狙える望遠ズームが良いでしょう。
例えば警戒心の強い野良ネコは、人間の動きにスゴく敏感です。単焦点レンズは、えてしてカメラマンが動かないといけません。人が体を動かすだけで逃げてしまうネコもいるので、なるべく動かないようにするためにズームレンズが重宝するでしょう。
また、マクロレンズもオススメの一つ。
人懐っこい犬やネコは、逆にカメラに寄ってきてレンズにダイブしてきたりします。標準のズームレンズはある一定距離(通常30~40センチ。レンズによる)より近い被写体にはピントが合わないのですが、マクロレンズなら焦点距離が短くてもピントが合うため重宝するシーンが増えます。
オススメアイテムその2:レンズフィルター
人懐っこい動物がカメラに寄ってくる、という点で追加のお話です。接写していたら、突然レンズにぶつかってきたりパンチを繰り出してきたりするイヌ・ネコもいるでしょう。ふとした攻撃を受けて、「◯万円で購入した大事なレンズに傷がついた……」なんて悪夢も考えられます。
そんな不測の事態にそなえて用意したいのがレンズフィルター。レンズの上に重ねて、そのまま撮影ができる透明なフィルターです。大事なレンズに傷をつけないようにしっかり保護しましょう。
よりカッコよく&カワイク撮りたい時のチャレンジ設定
ここまでは、初めて動物撮影を行う方向けのオススメ設定をお伝えしてきました。ここからは、よりカッコよく、あるいはよりカワイク撮影する時にチャレンジしていきたい方のヒントになる撮影設定についてお伝えしていきます。
シングルAFやマニュアルフォーカスにチャレンジ
動物撮影に慣れてきたら、自動追従型のAFから、特定の場所にピントを合わせるシングルAFやマニュアルフォーカス(以下、MF)にチャレンジしてみましょう。
これらの方法は、自動追従型のAFに比べてピント合わせが難しいです。なぜなら、動く被写体はピント位置が刻一刻とズレていくから。しかし、思い通りの場所でピントを合わせることができれば、より思い通りの構図で写真を撮ることができます。
そこで、試してみたいテクニックの一つが"置きピン"です。被写体の動きを予測して、あらかじめピント位置を固定して合わせ、被写体がそこを通過する時に撮影する方法です。自動追尾型のAFでは、被写体に合わせてレンズを動かしたりしますが、置きピンなら狙った場所でシャッターを押すことができます。
ちなみにAFを使う際は、シャッターボタンの半押しよりも"親指AF"が圧倒的にオススメ。親指AFの詳しいやり方に関しては以下の記事をご参照ください。
ピント位置は、人間と同じ「目」が基本
シングルAFやMFの利点は、繰り返しになりますが、ピント位置を自ら設定できることです。難易度は高くなりますが、撮影者の意図に応じた写真を撮ることができるようになります。
被写体である動物のどこにピントを合わせるのがいいのか。オススメのピント位置は、人間と同じく「目」。より印象的で、力強い写真を撮ることができるでしょう。
単焦点レンズで背景にボケを作り出す
単焦点レンズは開放F値が小さく設定されているため、被写界深度がより浅い背景がボケた写真を撮ることが可能です。背景から被写体が浮き出るような写真になりやすいので印象的な写真が撮りやすいです。
F値が小さければレンズに入る光の量も大きくなるため屋外に比べて光量が足りない屋内でも、速いシャッタースピードで撮影しやすくなるでしょう。動きのある動物のぶれ対策にも効果的です。
ただし、被写界深度が浅いと、少しでもピントが外れればボンヤリした写真になりがちです。動物との距離感や空気感を大事にしながら、慎重にシャッターを押しましょう。
動物園で撮影してみよう!
たまには犬やネコ以外の動物も撮ってみたい。そんなときは動物園に出かけてみましょう。普段はお目にかかることができない巨大動物やオモシロ動物が多数存在し、撮影に熱が入ること間違いなしです!
ということで今回は、東京・上野動物園にお邪魔して撮影してきました。以下、動物園におけるオススメポイントを紹介します。
望遠レンズが活躍!
動物園では、動物に合わせて様々な柵やエリアが設けられています。大抵は来場者の安全を考えて距離を保っていることが多いです。そんな動物園で持っていると便利なオススメアイテムが望遠レンズです。望遠レンズなら、遠くにいる動物たちを間近に感じながら撮影できるようになります。
35mm換算で200mm以上のレンズが良いでしょう。
そのため望遠レンズは、数十、数百メートル離れたところにいる動物もしっかり撮影できるので重宝します。距離がなくても、より被写体に迫るような描写も可能になります。
サードパーティー製ですが、TAMRONやSIGMAから150-600mmの望遠ズームレンズがお手頃価格で発売されています。
AEブラケット撮影を活用して激しい光量変化に対応
動物は絶えず動き回るため、環境によっては光の当たらない場所に行ったり、あるいは日なたに突然出ていったり……と環境光がバンバン変わります。
そのため撮影する動物が白い毛皮に覆われていれば白とび(明るすぎて写真が白くなること)、黒い毛皮に覆われていれば黒つぶれ(暗すぎて写真が黒くなること)しやすいです。
そんな時にオススメなのが、オートブラケット(Auto Bracket)撮影(※Canonではオートエクスポージャーブラケティング撮影などと呼びます)です。露出や色温度、フラッシュの発光量など各種設定を小刻みに変更しながら撮影する方法です。
なおブラケット撮影の機能は、カメラボディについている「BKT」などと表示されたボタンを使いましょう。
例えばニコンのフルサイズ機「D810」では、前方に小さなボタンが用意されています。こちらを押しながら画面を確認すると、以下のように表示されます。
今回は露出の設定を小刻みに変える「AE(Auto Exposure)ブラケティング」です。メモリはオートブラケティングのインジケーターで、3Fは撮影コマ数を示し、右の0.3という数字は「1/3段ずつ露出を変えますよ」という意味です。メインコマンドダイヤルを回すと設定を変更できます。
また、オートブラケティング撮影でどの値を変えていきたいのか変更する時は、カスタムメニューから
「オートブラケティングのセット」を選択してください。「AEブラケティング」は露出値を、「フラッシュブラケティング」はストロボの発光量(ストロボ側の設定も必要)を、「WBブラケティング」はホワイトバランス(色味)を、そして「ADLブラケティング」はアクティブD-ライティング(白飛び・黒つぶれを軽減する機能)のどの値を変えるか設定できます。
ちなみに、フラッシュ撮影は動物園でもほとんどの場合NGです。動物たちに優しい撮影を心がけましょう。
最後に:"動物愛護"の視点を忘れない
たくさんの魅力が詰まった動物撮影。前述のフラッシュNG以外にも心にとどめておきたい注意点があります。最後に確認していきましょう。
動物写真の法的問題
法律上、私たち一人ひとりの「人間」には、自身の容姿に関わる肖像権が存在します。また、肖像権を商業的に活用するパブリシティ権というものがあります。SNSが発達し、人々の画像が巷にあふれるようになった今、特にセンシティブな問題になってきました。
「動物」に関しては、原則的には「モノ」扱いされ、肖像権やパブリシティ権はありません。ですが動物園やその他商業施設で飼育されている動物は、"管理者サイドが管理する動物の肖像権を有する"という解釈が多いです(パブリシティ権に関しては、2004年のギャロップレーサー事件など、最高裁が動物のパブリシティ権を否定した判例あり。非常に繊細な問題なので、本記事では深く追求しません。悪しからず)。ですので、金銭が発生するような商業利用を行う場合、管理施設などへ許可を取る必要が生じます。
例えば今回、撮影に協力頂いた「公益財団法人 東京動物園協会 恩賜上野動物園」は東京都の指定管理下にあり、写真や映像の撮影する場合、取材内容を記した企画書を提出し、一定の占用料を支払う必要がありました。
ただし必ずしも全ての施設がそうとは限りませんし、商用で撮る方も多くはないでしょう。ケースバイケースだと言えます。とはいえ「商用ではないから、いつでもどこでも無断で撮影してOKでしょ」とは言えません。ネット上に掲載する写真・動画は、撮影時に一般の方の迷惑にならないように配慮しましょう。そして施設内・店内で撮影した写真はSNS等に使って良いか店員さんや動物管理者(あるいは飼い主さん)に聞くことを最低限心がけましょう。
撮影にまつわる法律やマナーをもっと知りたい方は、こちらの書籍がオススメです。
法律で裁けないグレーゾーン:動物にまつわる社会問題
動物写真の掲載にあたって、マナーの観点から鑑みて掲載を控えた場合もあります。今回の撮影でも、様々な事情により掲載できなかった写真が少なくないです。ということで、動物写真にめぐって生じた掲載NG例を参考までに紹介します。
ケース1. ネコスポットの悩み:野良ネコの増加と誘拐
本記事の作成にあたって、某有名スポットで野良ネコを撮影していたところ、近隣住民に「このエリアで撮ったネコのネット上への掲載はやめてほしい」という意見をもらいました。
同スポットは、世間的にも有名なネコスポットなのですが、知名度が上がって「デメリットが生じてきた」と言うのです。
まず一つはネコを捨てに来る人が増えたこと。そしてもう一つは、最近のネコブームもあってかネコを誘拐する人が増えたと言うのです。そのため気苦労が多く「ネコスポットとして有名になりたくないのよ……」と切実に語る近隣住民の意を汲み、同スポットで撮影した写真の掲載を見送りました。また、そうした経緯も考慮して、今回の記事全体で屋外の撮影場所は伏せております。
ケース2. 動物虐待を増長する恐れ
これは筆者の失敗談です。筆者にとって恥ずかしい話なのですが、皆様の参考のために、あえて紹介したいと思います。某スポットに出現する有名なネコの撮影写真をネット上へ掲載したところ、「巷で有名な、虐待されているネコではないか」とご指摘を受け、掲載を取り下げました。
動物写真を撮っていくうちに、他にも様々なケースに遭遇するかと思います。法的に考えれば、動物は肖像権はなく、撮影しても問題のないことが多々あるでしょう。ただし動物愛護の観点から考えれば、撮影を控えるべきケースが少なくありません。「こういう場合はどうすればいいのかな」と迷ったら動物愛護の視点から考えて、判断しましょう。