発売から3ヶ月経とうとしている24.1インチ 広色域カラーマネジメントモニターのBenQ SW240、私の部屋でもしばらくSW271のサブモニターとして活躍してくれております。
実売5万円台でAdobeRGB 99%、ハードウェアキャリブレーション対応という凄まじいコスパのSW240。主な機能の長所、短所は以前書いた記事にがっつりまとまっているのでそちらを見ていただくとして、今回はSW240を3ヶ月程度使った上での感想や快適に使うためのTIPSなどをまとめてみようと思います!
モニターフードの自作方法についても寸法付きで紹介しますよ!
*今回の記事はBenQさんに長期間モニターをお借りしてのレビューです。
カラーマネジメント機能はやっぱりいい
SW240の発色性やカラーマネジメント機能については以前の記事(下記リンク)にがっつり詳しくまとまっているのでそちらをお読みいただきたいのですが、メインで使っている上位機のSW271とほとんど同じ発色とカラーマネジメント機能があるためサブで使っている間も快適でした。
計測器(キャリブレーター)さえ持っていれば同じ設定をしてキャリブレーションすることで画面間の色も簡単に揃えることができるためデュアルモニターで使っていても違和感を感じません。同じBenQ同士なので使用するアプリケーションも同じだし。
サブモニターなんだからカラーマネジメント機能付けなくてもいいんじゃね?って言う考えも確かにありますが、やっぱりカラマネ機能はあった方が安心して使えます。
複数の設定でキャリブレーション出来る
その前に使っていたカラーマネジメント非対応のモニターの場合、メインと同じ設定にするには別のキャリブレーション用アプリを使ってソフトウェアキャリブレーションをしなければなりませんでした。この場合でも多少手間を掛ければほぼ同じ色合いに持っていくことはできたのですが、一時的に画面の色温度を変えたいといった「ちょっと設定を変えたい」時が大変なのです。
一方、SW240はハードウェアキャリブレーションしたモニター設定を内部に3つまで保存できるのが便利。
ソフトウェアキャリブレーションの場合はモニター内部にその設定を保存できないため、画面の設定を変えたいと思ったらまたキャリブレーションし直しなんですね(もしくは正確性に欠けるプリセットを使うか)。
こういう細かな機能は一度使ってしまうとやめられない快適なポイントです。(そのためにも別売りのキャリブレーターは無理してでも買うべきです。一家に一台計測器をw)
ちなみに、対応キャリブレーターは『X-Rtie i1 Display Pro / i1 Pro /i1 Pro 2 , Datacolor Spyder 4/5』となっており主なものは一通り対応していますね。個人的には使いやすく耐久性もある i1 Display Proがおすすめ。3~3.5万円くらいで買えます。
縦で使った時に快適な16:10
私は今回、メインにSW271、セカンドにSW2700PTを使っており、サードモニターとしてSW240を縦で使っていました。縦のモニターが1枚あるとPDFを広々読めたりと何かと便利なのです。
ところでみなさん、普通の16:9のモニターを縦で使った事ありますか?
普段見慣れた横から縦にしてみると「細っ!」ってなると思います(私はなりました)。横から縦にするのだから縦に細長くなるのは当然ですが、なんというか予想していたよりもずっと横幅が狭く感じるんですよね。慣れてしまえばなんてこと無いのかもしれませんが結構使いにくいのです。
でも16:10だと縦にしたときの横幅が大きくなるのでその違和感がかなり少なくなって快適に使い始められます。
1200pxはウェブブラウジングにも快適
見た目の違和感だけでなく、縦表示したときの1080pxと1200pxの差はウェブブラウジングしたときにも違ってきます。多くのウェブサイトは横幅1000px程度で作られているため、1080pxだと余白が無くて窮屈な印象なのですが、1200pxあると余裕を持って読みやすくなります。
たった120pxの違いで縦にしたときの印象がずいぶん変わってくるんですよね。
写真の縦横比にも近い
一眼レフで撮影した写真の多くは縦横比3:2のもので、マイクロフォーサーズ機やスマホで撮影した写真はより四角い4:3。
16:9だと細長すぎて写真を画面いっぱいに表示した時の余白が多いのですが、16:10だと3:2に近づくため写真をより大きく表示出来ます。こうした点も16:10のメリットの一つです。
以前のレビューで書いたように横位置で縦の写真を表示したときも16:10の方が大きく表示出来るんですよね。
収納が楽ちんで持ち出して使用するのも快適
画面サイズが24.1インチと小型なので、プロカメラマンの中にはロケや外部スタジオに持ち出して使いたいということもあると思います。
SW240の非常に良いところの一つに、分解、設置が容易であるだけでなく付属の箱への収納もしやすいことが挙げられます。ここは持ち出し用途を考えている人には非常に大きなメリットかと。
メーカーによっては緩衝材も段ボールだったり、ピッタリすぎて一度取り出すと収納困難だったり、上下で挟むのではなく左右で挟む方式だったりと頻繁に取りだし、収納することが考えられていない作りになっているのが多いのですね(まぁ当然だけど)
ところが、SW240の箱は緩衝材が上下の発泡スチロールで、上から入れるタイプなのですぐ撤収できるのです。
緩衝材には適度な余裕もあって収納がめちゃ楽。分解、組み立ても余計な工具いっさい不要。手だけで作業できます。現場にモニター持ち出したい人はぜひこの箱は捨てずに手元に置いておきましょう。ホント優秀な箱ですw
ちなみに、SW271も同じく上下から挟むタイプなのですが、モニターフード付属のため箱が馬鹿デカく気軽に持ち出せる感じではないです^^;
動画編集のサブモニターとして使うのもいいよ
専門はスチル(写真)な私ですが、動画編集もちょいちょいやったりしています。SW240のレビュー動画もYoutubeに1本あげてます。
私は動画編集にAdobe Premiere Pro CCを使っているのですが、Premiereは再生を別画面に出力できるため大きな画面でプレビューを見ながら編集作業を進められるといったメリットもあるんです。
Premiereで編集の場合はモニターの色域設定にも注意
ただデュアルで表示するだけなら安いモニターでも良いのですが、Premiereの場合モニターの色設定が重要になってきます。
というのも、Premiereは編集画面のモニターに表示されるプレビューの色はカラーマネジメントされずにスルーで出ているようなんですよね。(Win, Macともに)
上のリンク先の質問と同じくカメラで動画を撮影して編集しているとめっちゃ肌の色が赤く見えてしまいなんで??ってハマったことがあります。それを書き出してYouTubeで見たりするとまた色が浅くなるのです(元の色に戻る)。
ちょうど広色域モニターでカラマネ非対応アプリで見た場合に彩度がめっちゃ上がって見える現象に似ています。
モニターのカラー設定を変えればOK
こういう場合はカラマネ非対応アプリの対応と同じでモニターの設定をsRGBやRec.709に設定しておくことで編集時の色のズレが解消できます。ちなみに、写真編集は5000Kでやっている人が多いかと思いますが、動画は6500Kが標準のようですのでモニター側に動画編集用の設定でキャリブレーションして保存しておくと何かと便利です。
SW240はホットキー押すだけで画面設定変えられますし。これで安心して動画の編集も可能です。
普通のモニターの場合はどの程度の色域で表示されているのか不明なため、Premiereで編集していると仕上がりと違う見た目で色をいじってた。。という悲しい結果になることも。
(動画はまだまだ分からない事いっぱいあるのでもっと良い方法ある場合はぜひ教えてください^^;)
無ければ作ろう、モニターフード
SW240が他のSWシリーズと異なっているのはモニターフードが標準装着されていない点です。
私のようにサブモニターとして使う場合、モニターフード付けてしまうとメインモニターのフードと干渉してしまい使いにくかったりするので無くても良いかなとは思っています。(私の場合、フードを付けているのはメインのSW271だけでSW240だけでなく、SW2700PTにもフードは付けてません)
ただ、メインモニターとして使ったりどうしても映り込みが気になる場合にはモニターフードはあるに越したことはありません。
SW240もオフィシャルで専用モニターフードが別売りされているのですが、1万円以上と結構なお値段なんですよね。。
そこまでのコストは掛けなくても良いと考えているならモニターフードを自作してしまうというのも手です。
ということで作ってみました、SW240専用のモニターフード!
材料費200円で作るモニターフード
以前studio9でもモニターフードの自作方法は詳しく紹介していますが、今回はさらに手軽に作る方法を紹介してみたいと思います。ここではサラッと作り方を紹介するので興味あれば元記事も参考にしてみてください。
用意するもの
使用する材料は黒のプラダンと黒のガムテープ(なければ幅広の黒パーマセルでも)だけ。工具もカッターだけしか使いません。
今回はセリアに売っていた50x35センチのプラダンを2枚使いました。たったの200円!(セリアのプラダンは厚さ3mmと薄く、少し小さいのでできればホームセンターで買える厚さ5mmのものが丈夫で良いです)
1.材料を切る
SW240の画面サイズは横532mm、縦355mmなので以下の寸法でプラダンを切り取ります。セリアのプラダンは横の大きさ足りないので1枚を長辺半分に切って横に繋げます(ホントは1枚で作った方が強度出る)。
切り取ったら上面にキャリブレーター用の穴を作ります。
左右の部材をくっつけます。以前の記事では小さい蝶番を使っていましたが、よく考えたらガムテでもできるじゃん!ということでガムテで結合。
ポイントは板の厚み2枚分+α(今回だと7mmくらい)あけて繋げること。こうすることで外したときにパタパタ折りたためて収納も楽ちんです。
続いて左右に余ったプラダンでストッパーをつけます(両面テープで付ける方が良い)。これでほぼ完成。
ただし、このままだとかなり不安定なため側面の裏側に切り込みを入れて輪ゴムを5個くらい連結させたものを取り付けるとかなりしっかり止まります。
これで完成です!
純正のしっかりしたものに比べればかなりチープな見た目ではありますが、これだけでもあるとないとでは雲泥の差です。コスト的に専用フード買うのは厳しいという場合はぜひ試してみてください。
専用フードにはないメリットも!
今回作ったのはオーソドックスなモニターフードですが、たとえばメインモニターの右にサブとしてSW240を使っているなら、メインモニターのフードと干渉しないように、SW240のフードの左側面の形を変えてしまうといったオリジナル変形フードを作ることも可能です。
モニターを左右並べて干渉で困っている方はサブのフードを自作してしまうというのもアリですね。
イマイチだったところは?
3ヶ月使っていろいろ良かった点を上げていきましたが、イマイチだった点はなんだったでしょうか。いくつか感じた点を上げてみましょう。
メインで使うにはやや物足りない解像度
ここ数年でWQHD(2560x1440)や4K UHD(3820x2160)といった高解像度(高画素密度)ディスプレイが広まってきたこともあり、1920x1200という解像度はメインで使うにはちょっと物足りなさを感じます。
例えば27インチ WQHDのSW2700PTは近くで見ても画素が密に感じられ、それほどドット感は気にならないで運用できるのですが(4KのSW271は言うまでもなく超滑らか)、SW240は少し近づいてみるとドット感が結構気になってしまいます。
私の目が高画素ディスプレイに慣れてしまっているといったこともあると思いますが、WQHD以上の解像度に慣れてしまっている人はメインとしての運用の場合違和感感じるかもしれません。
ただし、サブで使用する場合はそれほど長時間モニター凝視することもないのでそんなに気にならないです(個人的には)。
もしこれが24.1インチのままWQHD(2560x1440)程度の解像度になれば(しかも16:10で)SW2700PTよりも画素密度が高くなりサイコーな使用感になると思うのですが、間違いなくお値段1.5~2倍にはなるでしょうから難しい所ではありますね。。
24.1インチという画面サイズにはそれほど不満はなく(むしろサブとして優秀なサイズ)、解像度がもう少し欲しい感じです。
Palette Master Elementの使い勝手が気持ちよくない
これはSW240に限らず、SWシリーズ全体の問題でもあるのですが、モニターキャリブレーションする上で必須となる専用キャリブレーションソフト(Palette Master Element)に気合いを感じません。
ターゲットの色域を設定したり、色温度や輝度、ガンマの目標値を任意に設定できるなどカラーマネジメントに必要な一通りの機能は揃っているし、しっかりと使えるのですが、アプリケーションのUIが洗練されていなかったり、微妙な日本語訳がずっと直らないなどハード側(モニター)は優れているのにソフト側がちょっとイマイチ感があります。
このアプリケーション部分の使い勝手や機能性の部分は例えばEIZOのColor Navigatorなんかには2、3歩及んでいない所かなと感じます。
モニターキャリブレーション自体は月に1回程度やるだけで通常は十分なので、Palette Master Elementの操作感が多少悪くても我慢できる範囲ではあるのですが、もう少し気合い入れてアプリケーションの開発もしてくれたらなと思う所です。
右90度でしか縦にできない
今回SW240は縦を中心に使用していましたが、付属の台だと右90度でしか縦にできません。
メインモニターとして使ったり、メインモニターの左側に配置して使う場合は特に問題はないのですが、メインの右にサブとして配置する場合、モニターとモニターの間に下部ベゼルが来てしまいます。
せっかく狭ベゼルでモニターを並べた運用でも快適に使えるSW240ですが、縦位置にすると必ず左側に下部ベゼルが来てしまうのが惜しい所。
モニターアームで解決出来る
この場合はモニターアーム(画面の回転機能のあるもの)を使えば解決可能です。私もメインモニターの右側にSW240を縦で配置していますが、モニターアームを使って左90度回転させて使ってます。
しかもパネル自体は結構軽いので比較的安価なモニターアームでもしっかり保持できるのもポイントですね。
私はAmazonで4000円ちょいで売ってるグリーンハウスのアームに付けてますががっちり固定されて快適です。
SW2700PTと悩む
デメリットというよりはこのモニターを導入するかどうかの最大の問題は同じSWシリーズのSW2700PTとどっちにするか悩むとことだと思いますw
SW240が実売で5.5万円程度、SW2700PTが7万円程度とその差1.5万円で画面が広くなり、解像度も増加、専用モニターフードやホットキーパッドも付いてくる(色やカラマネ機能はほぼ同等)となるとぐぬぬ・・・となります。
BenQ カラーマネジメントモニター ディスプレイ SW240 (24.1型/1920×1200/IPS/16:10/AdobeRGB 99%/DCI-P3 95%/キャリブレーション対応)
画面サイズで選ぼう
あくまで個人的な意見ではありますが、どっちか悩んだ場合は画面サイズだけ考えて決めたら良いと思っています。使用する環境が狭い、外への持ち出しが多いというならコンパクトなSW240、逆に固定利用がメインで27インチを設置するスペースが十分あるなら1.5万円の差は無理してでもSW2700PTなのかなと。あくまで写真編集用途で考えればですが。
この2機種を並べてみるとなんだかSW240のコスパが悪いのでは?と思ってしまいますが、SW2700PTのコスパが異常に良いと考えた方が良いと思います^^;
まとめ
ということでSW240の長期使用レビューを紹介してみました。
今回はサブモニター運用が中心でしたが、発色やカラマネ機能は上位機とほぼ同じ性能でありながら、コンパクトでコスパも良く非常に優秀なサブモニターとして使う事ができました。
私のように3枚使う人は少ないでしょうが、2枚のデュアルでモニターを使うだけでも作業効率超アップすると思うので1枚運用の方はぜひ検討してみてはいかがでしょう?
SW240の詳細なレビューは下の記事にまとめていますので気になった方はこちらもご覧下さいませ!
これでBenQ SWシリーズは32インチから24インチまで一通りのラインナップを見せてくれたわけですが、今後はどんなモニターを出してくれるのか楽しみですねー。(個人的には4:3とかのより四角に近いアスペクト比のカラマネモニター出してくれたらサイコーすぎるのですが、パネルの入手性とか大変そうですよね。。)
もしよければ過去にレビューした他のSWシリーズの記事も合わせてご覧下さいませ!
提供、取材協力:ベンキュージャパン株式会社(http://www.benq.co.jp/)