なぜ4Kモニターを使うのがいいのか
以前studio9でレビューしたBenQの27インチ 4KモニターSW271C、かれこれ4ヶ月ほど毎日使用しているのですが抜群の安定感で日々のお仕事をしっかり支えてくれております。
これを見ている人の中にはまだFHD(1920x1080)やWQHD(2560x1440)のモニターを使っている人も多いと思いますが、このエントリーでは『なぜ私が写真編集に4Kモニターを使うのか』ということをLightroomを使った作業の視点で紹介していこうと思います。
結構長期間使っていますので、使い始めから今までの使用感だったり、画質や色再現性の長期変化についてもレビューしていこうと思います!
*この記事はBenQさんとのタイアップです
私が写真編集に4Kモニターを使う理由
カメラマンの私がなぜ写真編集に4KモニターのSW271Cを使うのか?という理由について、多くの人は「精細な表示で細部まで細かく正確に編集出来るから」と思うかも知れません。もちろんこれも理由の一つなのですが、個人的には「画面に多くの情報を表示して効率良く編集出来るから(かもカラーマネジメントモニターで)」というのが最大の理由です。
正確な色は4Kじゃなくても表示できる
写真編集の正確性に最も大きく関わるのは広い色域を安定して表示することができるカラーマネジメント性能なので、ここに関しては4KのSW271CとWQHDのSW270Cで大きな差は感じません。手元に両方のモニターがありますが、両者ともに表示性能は優れているのでWQHDだから色の正確性に劣るということは感じません。私の場合は。
色に関してより厳密さが求められる現場のプロでもFHDやWQHDのモニターを使っている人はかなり多いと思います。
4Kモニターを使うと気持ちが良い2つのポイント
ではなぜ高価な4Kモニターを使うのかと言えば「快適だから」です。とてもざっくりした表現ですがw
4Kモニターを使うとどこが快適なのか具体的に紹介してみましょう。誤解なきように言うと、ここでの4Kモニターとは広色域かつ画面の均一性が保たれたカラーマネジメントモニターを前提にしています。
1.眼が疲れにくい
4Kモニターはドットが密なの表示がとてもなめらかです。画面の大きさにもよりますが、27インチWQHDのモニターは集中して画面を凝視すると僅かにドット感が見えてしまうんですよね。一方、27インチ4Kの場合はよほど近づかない限りドット感はありません。今メインモニターとして使っている32インチ4KのSW321Cですらとても滑らかに感じます。
細かく写真編集するときにプリントを見ているような感覚で編集出来るのがとても良いです。
それと、忘れてはならないのが文字が読みやすいこと。文字は白と黒のコントラストがとても大きいのでドット密度が低いとどうしてもジャキジャキした感じに見えてしまうんですよね。4Kにすると文字の輪郭もかなり滑らかになるので長文やPDFの資料を読み込む時も快適です。眼が疲れにくいのです(私の場合は)。
画面の端でも輝度が変化しないユニフォーミティ補正済みパネルである点も快適ポイントの一つですね。
*4Kにすると文字が小さくなって眼が疲れてしまう場合もあります。後述しますが適切なスケール設定をして文字サイズを変更しておきましょう。
2.作業効率がアップする
続いての気持ちいポイントは1画面に入れることの出来る情報量の多さです。単純計算で4KモニターはフルHDの4倍、WQHDの2倍の情報量を表示できます。
画面サイズが同じなら、情報を詰め込むほど文字も小さく読みづらくなってしまいますが、WindowsにもMacにも表示スケールを変更する機能があるので自分が読めるサイズに変更しておくのが良いでしょう。
以下に4Kモニターの各スケール設定に応じた有効解像度と多のモニターとの比較(面積比)をまとめました。
スケール | 有効解像度 | vs FHD 100% | vs WQHD 100% | vs WQHD 125% | vs WQHD 150% |
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100% | 3840x2160 | 4.00 | 2.25 | 3.52 | 5.06 |
125% | 3072x1728 | 2.56 | 1.44 | 2.25 | 3.24 |
150% | 2560x1440 | 1.78 | 1.00 | 1.56 | 2.25 |
175% | 2194x1234 | 1.31 | 0.73 | 1.15 | 1.65 |
200% | 1920x1080 | 1.00 | 0.56 | 0.88 | 1.27 |
文字を大きくしたら結局表示できる量は減るじゃん!と思われるかもしれませんが、27インチ4Kモニター利用時に推奨されている150%表示なら有効解像度はWQHDと同じ2560x1440となります。文字を150%まで大きくしても、WQHDの100%表示と同じ量の情報が入ります。
このときのポイントは文字は大きくなるけど、写真は4K解像度のまま精細な表示のままであり、文字の輪郭も滑らかになっていると言うこと。
若くて眼が元気な方ならSW271Cを125%のスケールで使用することもできるでしょう。この場合はWQHD100%と比べて1.44倍、WQHD125%と比べると2.25倍の情報量を1画面で表示して効率的に作業を進められることでしょう。
もし、ノートPCに接続して拡張モニターとして使用する方なら、ノートPC画面との情報量の差に驚くでしょう。今まで自分はこんなに狭い領域で作業をしていたのか。。と感じるはずです。
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仕事でPCを使っている人であれば長時間の利用でも眼が疲れにくく、効率アップに繋がる情報量の多さ、なおかつ広色域で正確に表示できるSW271Cのような4Kカラーマネジメントモニターは投資する価値のあるアイテムだと思うのです。
SW271CがLightroomと相性が良い理由
では4KのSW271CをLightroomで活用する私の方法を紹介してみましょう。Lightroomは高解像度の広色域モニターと非常に相性が良いのです。理由は2つ。
1つはアプリの中でスケール設定が可能である事。通常、高解像度モニター使用時の文字の大きさ(スケーリング)を設定する場合はOS側で全アプリ一括でコントロールしますが、Lightroomはアプリ内で文字のサイズをコントロールできるのでより柔軟な運用が可能になります。
2つめはLightroomの現像モジュールで使用される標準色域はProPhotoRGBというAdobeRGBよりずっと広い色空間である事。前回のレビューでも紹介したようにSW271CはAdobeRGBよりさらに広い色域を持っているため、Lightroomだとモニターの性能がフルに発揮できます。(キャリブレーション時にターゲット色域を「PanelNative」にしておきましょう)
Lightroom Classicで文字のサイズを変える
Lightroom(Classic)でアプリ内の文字を変えるには編集 > 環境設定(MacはLightroom Classic > 環境設定 )からインターフェイスタブ > パネル の中の「フォントサイズ」を調整します。
デフォルトでは「自動(初期設定)」になっていると思いますが、この「自動」というのはOS側のスケーリング設定とは関係なく、単純にディスプレイの解像度から割り当てられているようで、4Kの場合は自動的に150%のスケーリングになっていると思われます(Windowsの場合)。
中と大を使い分けるのがよさげ
文字サイズの心地よさは人それぞれですが、眼が若い人にとってはデフォルトの150%相当のサイズはちょっと大きすぎ、1画面に入る情報量が少なくなってしまい作業効率が落ちてしまうと思います。
中(100%)と大(150%)でLightroomの現像モジュールを開いたときの情報量の差を見てみましょう。下図が「中(100%)」で見た時の画面。右側の調整用パネルではカラーグレーディングまでスクロール無しで見渡せます。明るさ、コントラスト、色までスクロールなしで調整できます。
私はいつも「中(100%)」で使用しています。
一方、150%ではトーンカーブまでしか見えません。多くの人にとってはこちらの方が見慣れた画面かも知れませんが、これだと調整するときに右側のパネルを行ったり来たりしながら調整しなければならないので作業性がグンと落ちてしまうんですよね。。スクロールする量が長大になります。
OSから独立したサイズ設定で柔軟に作業しよう
100%表示では文字が小さいので使い慣れていない人にはどこにどんな項目があるのか分からず使いにくいという場合もあると思いますが、Lightroomに慣れている人ならどこにどんな項目があるのか体で覚えていると思いますので文字がなんとなく見えるという状態でも問題なく作業が出来ると思います。
OS全体の設定は文字が見やすい150%設定にしておきつつ、効率を重視したいLightroomでの大量現像では100%表示でサクサク行い、少数の写真をじっくり調整したいときだけLightroom側でも150%表示で作業するというようなワークフローを作ることもできるんですね。Lightroom側にも125%設定があるとさらに良いのですが。。
ちなみに、フォントサイズを変更しても表示されている写真は4K解像度の滑らかな表示のままですのでご安心を。変わるのは文字だけ。また、「小」と「中」はどちらも100%表示ですが、その中で「中」を選ぶとフォントサイズだけが僅かに大きくなります(文字間が詰まる)。違いは僅かですが高解像度モニターなら「中」を選ぶ方が視認性は良いでしょう。
この方法は4Kという高解像度モニターだからこそ使えるワークフローであり、SW271Cならカメラで撮影した広い色域を忠実に表現しつつ、作業効率もアップ出来るわけですね。
たくさん情報表示したいけど文字が見にくい場合
Lightroom内で文字サイズを変更することのデメリットは変更するためにLightrooomを再起動する必要がある点でしょうか。そんなときは拡大鏡を使ってみると良いと思います。この方法はLightroomに限らず全アプリに使えます。
Windows10の場合は「Windowsボタン+ プラス記号(+)」で表示できます。スタートメニュー > 設定 > 簡単操作 > 拡大鏡 から拡大方法などいろいろカスタマイズすることが可能です。
Macの場合は「Command + Option + 8」でズームできます。もしくは「Command + Option + ^/-」で拡大/縮小(日本語キーボードの場合)。こちらもシステム環境設定 > アクセシビリティ > ズーム機能 でいろいろ変更可能です。
こうしておけばフォントを小さくして効率的に管理しつつ、一時的文字を大きくしたい場合は拡大鏡を使用して確認するという作業が可能になりますね。(Windowsの拡大時は文字の滑らかさが一時的に失われてしまいます)
頻繁に拡大を使うのであれば始めからOS側でスケールアップしておくのがよいでしょうが、使い慣れたアプリでたまに文字が読みづらくて困るというなら拡大鏡を使って見るのもアリだと思います。
マルチモニター環境の人は「ZoomIt」が良いかも
Windowsでマルチモニター環境の人はOS標準の拡大鏡を使うと、拡大した領域が隣のモニターにはみ出てしまい使いにくくなる現象が起きてしまいます。。(解決法あったら教えてください)
そんなときはサードパーティの「ZoomIt」がおすすめです。英語版しかありませんがMicrosoft公式の無償ツール集「Windows Sysinternals」に収録されているアプリなので安心できます。
これを使えば「Ctrl +1」を使う事でアクティブなモニター内のみ拡大されるので隣のモニターにはみ出ることはありません。マルチモニター環境でも快適に使えます。詳しい使い方などは以下の記事が分かりやすいです。
大きいことは良いことだ
フルHDやWQHDのモニターを4K相当で使うことはできませんが、はじめから4K解像度があればスケール設定など調整する事でWQHDやフルHD相当の文字サイズへ調整して表示させることができるのですね。
もちろん、スケール設定を変えても大事な写真は4K解像度の滑らかな表示のまま作業することが出来ます。
超高画素のカメラはファイルサイズがデカかったり、現像時にマシンパワーが必要になる、高感度に弱い場合があるなどデメリットも結構あるわけですが、モニターの場合は4K程度であれば最近のPCにとっては負荷もさほど影響は無く、デメリットは限られます。
予算が許すのならモニターの解像度はデカければデカい方が良いというのが私の考えです(8Kになるとグラボやケーブルに制限が出たりもするけど)
SW271Cの長期安定性はどうなの?
さて、SW271Cを使って半年以上時間が経ちますが、長期の安定性はどんなものでしょうか。いくつかデータをとってみたので紹介します。
経時の色ズレはどのくらいある?
モニターの色の話をするときはいつでも言うことですが、モニターの色は経時で少しずつズレていきます。だから、正しい色をきちんと表示し続けるには定期的なキャリブレーション(校正)が必須なわけです。
モニターのキャリブレーションは一般的に200時間に1回くらいが適当だと言われています。だいたい月に1回くらいですね。今回はあえてしばらく時間をおいて約2ヶ月(400時間程度)キャリブレーションせずに放置した場合どのくらい色がズレてくるのか調査してみました。それがこちら。
この状態から2ヶ月前と同じ設定でキャリブレーションを行った結果がこちら。元に戻りました。
2ヶ月前からだいたい色差(ΔE)が1程度変化している感じです。ΔEが2以内であれば普通の人は気付かないレベルの色ズレなので結構優秀ですね。色温度もほぼ変わっていません。一応、月に1回程度キャリブレーションをしましょうと言われていますが、SW271Cの安定性であれば2ヶ月くらいサボっていても色ズレは許容範囲内に収まりそうですw
表示できる色域の経時変化は?
つづいて色域の変化について。導入初期の状態からの変化はこちら。
紫の破線が使用開始時、ピンクの実線が現在のSW271Cの色域を表します(グレーの破線はAdobeRGB)。こちらは4ヶ月程度経った後のデータですが、ほぼ同じですね。面積比を計算しても使用開始時と比較して99.1%と誤差の範囲内だと思います(±1%くらいは測定ごとにズレることがある)。
数ヶ月の使用なので変わらないのが当然なわけですが、実際に調べてみて変わっていないのは良かったです。
画面のムラの経時変化は?
続いて画面の輝度ムラについて。SW271Cの大きな特徴は画面の周辺に対しても出荷時に輝度が均一になるよう調整がなされているので画面全体を均一に表示できるということです。高級モニターの証でもあります。
前回レビューでもお見せした、初期の輝度ムラは以下になります。画面上部の輝度が+7%とやや高めに出ましたが、全体的に落ち着いておりかなり均一に近い結果でした(普通のモニターは15%以上異なる事が多い)。
より均一になったのだけど。。
つづいて、現在のモニターの状況は以下になります。なんか改善しているんだけどw
中心輝度に対して全点で2%以内の輝度変化に収まってます。ほとんど均一といっていいでしょう。これも約4ヶ月経過した時の値になります。
良く解釈すれば使用開始直後からエージングが進み設計値に収まり安定化しているということでしょうか。2点のデータしかないため、もしかすると今後ズレが大きくなっていくという読み方もできるのですが、外周部の値が一律に一方向に変化しているのではなく、中心輝度に近づくように増減しているため安定化していると見ても良さそうな気がします。
ちなみに私はこの変化は使っていて気付いていません。測定してはじめて分かりました。
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半年近くしようしていますが、SW271Cは長期安定性も高いようです。
まとめ:安定感抜群の4Kカラーマネジメントモニター
ということで4Kモニターで写真を編集する意義とSW271Cの長期使用レビューを紹介してみました。
サービスメニューでSW271Cの詳細な使用時間をチェックしてみたところ、電源投入時間は約3000時間、バックライトオン時間が約1000時間とかなりしっかり使った結果のレビューですが、ハードウェアトラブルも使用中はゼロで非常に快適でした。
前回のレビューで感じた「死角のない安定した4Kカラーマネジメントモニター」というイメージは今も変わっていません。前回レビューがまだの人はこちらからどうぞ!細かなところまでレビューしています。
2年くらい前なら解像度はWQHDでも十分!と言っていたと思いますが、最近の世の中のトレンドはかなり4K(またはそれ以上)に傾いてきています。
SW271Cの保証期間は3年(パネル、バックライトを含む)とかなり長く設定されており、万が一の故障時に代替品を借りられるセンドバックサービスにも対応しています。少し未来の状況も考えて新しいモニターに投資するのであれば、ちょっと背伸びをして4Kを選ぶというのも悪くないと思います。間違いなく、これから何年ものあいだ第一線で活躍してくれるモニターになってくれるでしょう。
動画でもレビューしているので見てみてね!
提供、取材協力:ベンキュージャパン株式会社 (http://www.benq.co.jp/)