三脚を使えばブレないとは限らないのです
カメラをしっかり固定することができる三脚は持ち歩くことを考えれば軽いほどありがたいですよね。
でも、軽い三脚は強度や剛性が低くなりがちなのも事実です。最近は軽くてもしっかりしたものが増えているとは言え、自分の機材や撮り方にマッチしていなければブレてしまうかもしれません。
旅先で目をみはる夜景に出会ったときに、「この三脚だとブレちゃいそう?」なんて心配しながら撮るのも落ち着きませんよね。そんな事態を避けるためにも、あらかじめ三脚の実力を把握しておく必要があるのです。
でも、どんなふうにテストすればいいのかわかんないよ!と言う人も多いでしょう。今回は、誰でもできる簡単な三脚の実力チェック方法を紹介します。この方法なら特別な機材は使わず簡単にブレの影響を見ることができますよ。
三脚の揺れをチェックするにはライブビューの拡大表示を使えばいい
三脚を使い長時間露光で撮るとき、レリーズを使わず2秒タイマーで撮影する人も多いと思います。ここで問題になるのがシャッターボタンを押すなどの操作によって起きる揺れです。
露光中、つまりシャッターが開いているあいだに三脚が揺れればカメラも揺れるので、当然ブレてしまいます。ですから、カメラを操作したときの揺れがなるべく短時間でおさまることが大事です。たとえば、シャッターボタンを全押ししてから揺れがおさまるまでに3秒かかる場合に、2秒セルフタイマーで撮ると、まだ揺れが残っているうちに露光開始=シャッターが開いてしまいます。
これでシャッタースピードが1秒以下だと露光開始から終了までずっと揺れっぱなしになるのですから、これはもう壊滅的にブレますよね。でも、これがたとえば10秒ぐらいの長時間露光になると、揺れているのは1割だけ。残りの9割は揺れていないのでわりとシャープに写ったりします。そうなると、ブレているのに気づかない、なんてことも起きてしまいます。
レリーズやリモコンを使っていてもカメラの操作後すぐにシャッター操作をするとブレる可能性がありますし、ブレやすい状況は風などの影響も受けやすいでしょう。
自分の三脚は何秒で揺れがおさまる?
さて、揺れが3秒つづくのがわかっていれば、3秒待ってから電子レリーズなりリモコンなりでシャッターを切れば大丈夫ですし、50mm(相当)よりも広角レンズなら2秒で揺れがおさまるのであれば、2秒セルフタイマーを使えばブレません。
そういう見きわめがあらかじめできていれば、撮るときになってからあれこれ思い悩まずにすみますよね。
問題は、実際にどれぐらいの揺れが起きるのか?それをどうやってチェックすればいいか?
すでにおわかりの方もおられるでしょうけれど、ライブビューの拡大表示機能を使うのが手っ取り早いです。ライブビュー映像を拡大すれば細かい揺れも拡大されて見やすくなりますから、揺れの度合いや揺れがつづく時間の長さもチェックしやすいです。これなら現場で確認する事もできますね。
実際の揺れ具合を動画でチェックしてみた
試用するのはレオフォトの小型カーボン5段三脚LS-255Cと標準装備の自由雲台LH-30の組み合わせ。
強度や剛性はけして高くありません。荷物を軽くすることを最優先に考えて、速めのシャッタースピードで撮れる条件で比較作例を撮るのに構図を安定させたいとき用に選んだものだからです。
載せるのはソニーα7R IIIとシグマ135mm F1.8 DG HSM Artの組み合わせ。重さはLプレート込みで2kgとちょっと。この細さの三脚にはそこそこしんどい荷物のはずです。
この状態でシャッターボタン半押しから指を離したり、右手側肩の露出補正ダイヤルのあたりを、とんっ、と叩いたりしたときの揺れ具合を12.4倍に拡大した画面でチェックしてみます。
揺れの度合いをお見せするために動画も撮ってみたので、そちらをごらんください。
5段伸ばしの場合(延長ポールは非使用)
脚は5段すべてを伸ばした状態でカメラ側のLプレートで雲台に固定してチェック。重いレンズが前側に飛び出している分前寄りのバランスになっています
脚パイプは全段伸ばした状態で延長ポールは使っていません。雲台込みの高さは147cmあります。
ちょっと触っただけで揺れるのがわかります。上から押したり叩いたりしているのに対して、画面は横方向に揺れています。これは上から見て回転方向=ねじれ方向の剛性が足りないのだと思われます。
揺れている時間も長めなので、2秒セルフタイマーではブレる可能性がかなり高そうです。この組み合わせで夜景を撮るのであれば、拡大表示を使って揺れがおさまるのを確認してから電子レリーズやリモコンを使ってシャッターを切るのが安心そうです。
ただ、レンズの重さによるフレーミングのズレが目立つので、使い勝手としてはあまりよくありません。
5段伸ばし+ロングプレート併用の場合
同じく全段伸ばして、レオフォトのNR-140というロングプレートを使用します。カメラの取り付け位置を雲台の中心軸から後方(カメラの背面側)に7cm、左に0.5cmずらした状態でほぼバランスが取れました。
前後左右のバランスが取れているので、雲台のロックを締めたあとで、レンズの重みで前に傾くことがないため、フレーミングを決めやすくなります。
が、動画を見ればおわかりいただけるとおり、ロングプレートを使わないときよりも揺れが気になります。
横揺れなのは同じですが、それが大きくて長いです。しかも、ぷるるん、ぷるるん、という感じの脈打つような揺れ方をしています。まるでカメラに触った揺れが三脚で増幅されてもどってきたようにも見えます。
日中の速いシャッターが切れるときなら大丈夫でしょうが、スローシャッターになると問題になりそうです。カメラと雲台のバランスがとれていても三脚全体でのブレが小さくなるとは限らないようです。
4段伸ばしの場合(最下段を縮める)
最下段(5段目パイプ)を縮めたセッティングです。カメラ側のLプレートで雲台に固定しています。いちばん細くて弱い部分(パイプ径13mm)を使わないのでその分強度や剛性は上がるはずです。
高さは119cmと低くなりますが、チルト式やバリアングル式モニターを備えたカメラで遠景を撮るといった用途にならそれほど困らないでしょう。
5段伸ばしの状態と比べると、明らかに揺れは小さくなり、おさまるまでの時間も短くなっています。これぐらいの揺れであれば2秒セルフタイマーや電子レリーズ、リモコンを使っての夜景撮影もそこそこいけそうな感じがします。
○4段伸ばし+ロングプレート併用の場合(7cmずらし)
同じく最下段を縮めたセッティングで、ロングプレートを使ってバランスを取っています。雲台のロックを締めたときに前が下がらないのでフレーミングを決めやすくなります。
やはり5段伸ばしに比べると揺れは格段に小さくなります。また、脈打つような揺れ方はしなくなりました。
揺れ具合としてはロングプレートを使わないときよりもやや大きくて長いようにも思えますが、その差は大きくはありませんので、実用上は問題なさそうに思います。
○4段伸ばし+ロングプレート併用の場合(4.5cmずらし)
こちらも最下段を縮めてロングプレートを併用していますが、ずらす量を7cmから4.5cmに減らしています。
バランスの取れた、つまり3本の脚に均等に負荷がかかった状態のほうが揺れやすいように思えるので、あえてバランスを崩してみたわけです。
これも動画を見ればわかるとおり、このセッティングがもっとも揺れが少ない結果になりました。半押しから指を離したときの揺れも、軽く叩いたときの揺れも小さくて、しかも短時間でおさまっています。
これならブレの心配は格段に抑えられますし、ロックを締めたときのフレーミングのズレ量も小さくてすみます。
試用した三脚と機材の組み合わせで夜景を撮るのであれば、このセッティングがよさそうです。これぐらいの揺れですむなら風の弱い条件なら夜景も安心して撮れそうです。
まとめ
今回試してみてわかったことは、
- 揺れがおさまるのを待って撮ればブレない
- 最下段を縮めると揺れは減らせる
- 重量バランスによって揺れ具合が変わる
ということ。
ブレを抑えるには待って撮るのがいちばんで、10秒セルフタイマーでも平気な人なら細めの軽量三脚でも実用的と言えます。逆に言えば、気の短い人ほど太くて頑丈な三脚が必要となります。
ただ注意してほしいのは、今回のテスト結果はあくまでα7R IIIと135mm F1.8 DG HSM Art、LS-255C+LH-30の組み合わせでのものであって、カメラやレンズ、三脚、雲台が別のものであれば、また違った結果が出る可能性が高いです。
したがって、お使いの三脚の実力を把握したいのであれば、ご自身の常用機材での揺れ具合をチェックする必要があります。
また、屋外では風の影響を受けますし、付近を通行する車両などからの振動もありますから、条件としてはもっときびしくなることを覚えておいてください。室内でのテストで大丈夫だったからと言って安心はできませんからね。
なお、カメラ店などに展示されている三脚で試してみたいときは、店員さんにひと言断わってから、ほかのお客さんの邪魔にならないように配慮してください。